Dear sister!
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いつものように越前の家へ向えば、なんだかどことなく雰囲気が違った。
…何が、とは具体的には言えないけれど。
インターホンを鳴らせば、中から人の気配。
ガラリと開いた日本家屋の引き戸の向こうからは、よくよく見知った顔がひょこりと顔を出す。
「明けましておめでとうございます」
越前……………………じゃ、ない?
かなり似ている。似ているのだが、
「何してんだよ桃。…あれぇ?おチビどしたの?スカートなんか履いて」
「菊丸先輩、」
別人だとは気づいていないのだろう。俺の後ろからひょこりと顔を出す彼を見て、目の前の『越前』は小さく首を傾げる。
「ええっと、リョーマはまだ支度が出来ていなくて…外は寒いですし、中で待たれますか?」
越前そっくりの顔で、小さく首を傾げる。
美少年だとは思っていたが、仕草が女の子らしくなり格好も女の子らしくなれば…なるほど、これは美少女だろう。
「ん?どゆこと?」
「名無し。もう支度出来たからいいよ」
「あ、リョーマ。」
少し息を切らせて玄関へ走ってきたのは、我らが青学のエース・越前リョーマだ。
…こう並んでみると、かなり顔が似ているのがよく分かる。
『彼女』の方が幾分か襟足が長く、少し輪郭が柔らかそうなくらいしか違いがないくらいだ。
「先輩達の迎えはしなくていいって言ったじゃん」
「だって、お父さんが『行ってこい』って、」
「あのクソ親父」
毒づく越前に対して「ごめんね、リョーマ」と申し訳なさそうに笑う、『名無し』と呼ばれた少女。
…姉がいる、と聞いていたが…。
いや、たしか菜々子さんは従姉だったか。ということは、
「……はぁ。『一応姉』の名無しっス」
「一応姉って何よ、もう。
越前名無しです。いつもリョーマがお世話になってます」
越前とほぼ同じ顔で、花が咲くように愛想よく笑う名無し。
その場にいた全員が越前と名無しを見比べたのは、言うまでもない。
***
「…疲れた。」
テニス部の面々で初詣に行ったのはいいが、これはかなり疲れた。
主に菊丸先輩や桃ちゃん先輩からの、興味からくる『名無し』の質問で・だけど。
「おかえりなさい、リョーマ。みかん食べる?」
周りは似てる似てると声を上げるが、全くどこが似ているのやら。
顔つきは、似てると思う。
二卵生とはいえ、本当にそっくりだ。
残念ながら性格は真逆だけど。
「ん。」
「はい。」
コタツに入りながら口を開ければ、当たり前かのようにみかんをひと房口に入れてくれる。
ほら。こういうとことか。
「今日の夕飯は?」
「お雑煮だって。お餅、美味しいよねぇ。毎日お雑煮でもいいなぁ」
呑気にふにゃふにゃ表情を崩しながら名無しは笑う。
…流石に俺は毎日同じ食事は嫌だな。
「初詣、楽しかった?」
「疲れた。やたら名無しのこと聞かれたし。」
「双子だから珍しいんじゃない?」
双子といえばルドルフと六角にだっている。
あれはそう、ただの『興味』だけじゃない気がする。
「テニス出来るのかとか」
「あはは、運動からきしだもんねぇ」
「どの学校行ってるのかとか」
「なるほどなるほど。」
「彼氏いるのかとか」
「この歳で?あんまり興味ないかなぁ。お勉強楽しいし。」
運動音痴、勉強出来る。まぁつまり、俺の逆のタイプだ。
日がな一日カルピンと遊びながら本を読んでいたのだろう、近くに猫じゃらしが無造作に置かれていた。
コタツの上には山積みにされたハードカバーの本。…よくこんなに読めるのだと、呆れるやら感心するやら。
「青学に来ればいいのに・ってさ。」
「それはそれで楽しそうだなぁ。リョーマも前、言ってたもんね?」
そう。
確か期末テスト前にそれは言った。
勉強が出来る分、人に教えるのも名無しは上手い。
だから同じ範囲の勉強をしている名無しに教えてもらいたくて『…名無しも青学だったらよかったのに…』と恨みがましく言った覚えはある。
が。
「やっぱり来なくていいや。」
「え、ええぇ~!反抗期!?それはそれでお姉ちゃん寂しいな…」
膨れっ面で拗ねる名無しは、姉とは言うがどこか子供っぽい。いや、年相応といえばそうなのかもしれないが。
(だって変な虫がつきかねないし)
変な気苦労が増えるのは勘弁して欲しい。
……いや、あの変人の巣窟である名無しの通っている学校も大概だけど。
「さて。ほら、行くよ」
「行く?どこに?」
「初詣。まだ名無し、行ってないんじゃない?」
親父や母さんは挨拶回りで忙しかっただろうし、菜々子さんも帰省している。
文字通り引きこもっていたであろう姉を、たまには外に連れ出さなければ。
これは世話を普段されている、恩返しのようなものだ。
「行く!行く行く!すぐ支度するね!」
「五分以内にしないと、神社までダッシュだからね」
「ダメだよ、すぐバテちゃうもん。無理無理。」
ケラケラと笑いながら、名無しは足早にコートを取りに部屋へ戻る。
まぁ別に五分を超えたとしても、変な野菜汁の罰ゲームもなければ、追加ダッシュもするつもりもない。
たまにはのんびり待つのも悪くないだろう。
神頼み、君頼み。
「ね、リョーマは何お願いしたの?」
夜でもやっていた屋台の綿あめを食べながら名無しが尋ねる。
ほわりほわりと白い息を吐きながら、無遠慮に願い事を訊いてくるなんて名無しらしいといえば名無しらしい。
「内緒。」
「えぇー、つまんないの。」
そう言いながらも「でも教えたら叶わなくなりそうだもんね」と名無しが笑う。
(名無しに変な虫がつきませんように、なんて言えるわけないじゃん。)
きっと今年も、キミは無邪気に笑ってくれているのだろう。
あぁ。いい年になるのは、間違いなさそうだ。
…何が、とは具体的には言えないけれど。
インターホンを鳴らせば、中から人の気配。
ガラリと開いた日本家屋の引き戸の向こうからは、よくよく見知った顔がひょこりと顔を出す。
「明けましておめでとうございます」
越前……………………じゃ、ない?
かなり似ている。似ているのだが、
「何してんだよ桃。…あれぇ?おチビどしたの?スカートなんか履いて」
「菊丸先輩、」
別人だとは気づいていないのだろう。俺の後ろからひょこりと顔を出す彼を見て、目の前の『越前』は小さく首を傾げる。
「ええっと、リョーマはまだ支度が出来ていなくて…外は寒いですし、中で待たれますか?」
越前そっくりの顔で、小さく首を傾げる。
美少年だとは思っていたが、仕草が女の子らしくなり格好も女の子らしくなれば…なるほど、これは美少女だろう。
「ん?どゆこと?」
「名無し。もう支度出来たからいいよ」
「あ、リョーマ。」
少し息を切らせて玄関へ走ってきたのは、我らが青学のエース・越前リョーマだ。
…こう並んでみると、かなり顔が似ているのがよく分かる。
『彼女』の方が幾分か襟足が長く、少し輪郭が柔らかそうなくらいしか違いがないくらいだ。
「先輩達の迎えはしなくていいって言ったじゃん」
「だって、お父さんが『行ってこい』って、」
「あのクソ親父」
毒づく越前に対して「ごめんね、リョーマ」と申し訳なさそうに笑う、『名無し』と呼ばれた少女。
…姉がいる、と聞いていたが…。
いや、たしか菜々子さんは従姉だったか。ということは、
「……はぁ。『一応姉』の名無しっス」
「一応姉って何よ、もう。
越前名無しです。いつもリョーマがお世話になってます」
越前とほぼ同じ顔で、花が咲くように愛想よく笑う名無し。
その場にいた全員が越前と名無しを見比べたのは、言うまでもない。
***
「…疲れた。」
テニス部の面々で初詣に行ったのはいいが、これはかなり疲れた。
主に菊丸先輩や桃ちゃん先輩からの、興味からくる『名無し』の質問で・だけど。
「おかえりなさい、リョーマ。みかん食べる?」
周りは似てる似てると声を上げるが、全くどこが似ているのやら。
顔つきは、似てると思う。
二卵生とはいえ、本当にそっくりだ。
残念ながら性格は真逆だけど。
「ん。」
「はい。」
コタツに入りながら口を開ければ、当たり前かのようにみかんをひと房口に入れてくれる。
ほら。こういうとことか。
「今日の夕飯は?」
「お雑煮だって。お餅、美味しいよねぇ。毎日お雑煮でもいいなぁ」
呑気にふにゃふにゃ表情を崩しながら名無しは笑う。
…流石に俺は毎日同じ食事は嫌だな。
「初詣、楽しかった?」
「疲れた。やたら名無しのこと聞かれたし。」
「双子だから珍しいんじゃない?」
双子といえばルドルフと六角にだっている。
あれはそう、ただの『興味』だけじゃない気がする。
「テニス出来るのかとか」
「あはは、運動からきしだもんねぇ」
「どの学校行ってるのかとか」
「なるほどなるほど。」
「彼氏いるのかとか」
「この歳で?あんまり興味ないかなぁ。お勉強楽しいし。」
運動音痴、勉強出来る。まぁつまり、俺の逆のタイプだ。
日がな一日カルピンと遊びながら本を読んでいたのだろう、近くに猫じゃらしが無造作に置かれていた。
コタツの上には山積みにされたハードカバーの本。…よくこんなに読めるのだと、呆れるやら感心するやら。
「青学に来ればいいのに・ってさ。」
「それはそれで楽しそうだなぁ。リョーマも前、言ってたもんね?」
そう。
確か期末テスト前にそれは言った。
勉強が出来る分、人に教えるのも名無しは上手い。
だから同じ範囲の勉強をしている名無しに教えてもらいたくて『…名無しも青学だったらよかったのに…』と恨みがましく言った覚えはある。
が。
「やっぱり来なくていいや。」
「え、ええぇ~!反抗期!?それはそれでお姉ちゃん寂しいな…」
膨れっ面で拗ねる名無しは、姉とは言うがどこか子供っぽい。いや、年相応といえばそうなのかもしれないが。
(だって変な虫がつきかねないし)
変な気苦労が増えるのは勘弁して欲しい。
……いや、あの変人の巣窟である名無しの通っている学校も大概だけど。
「さて。ほら、行くよ」
「行く?どこに?」
「初詣。まだ名無し、行ってないんじゃない?」
親父や母さんは挨拶回りで忙しかっただろうし、菜々子さんも帰省している。
文字通り引きこもっていたであろう姉を、たまには外に連れ出さなければ。
これは世話を普段されている、恩返しのようなものだ。
「行く!行く行く!すぐ支度するね!」
「五分以内にしないと、神社までダッシュだからね」
「ダメだよ、すぐバテちゃうもん。無理無理。」
ケラケラと笑いながら、名無しは足早にコートを取りに部屋へ戻る。
まぁ別に五分を超えたとしても、変な野菜汁の罰ゲームもなければ、追加ダッシュもするつもりもない。
たまにはのんびり待つのも悪くないだろう。
神頼み、君頼み。
「ね、リョーマは何お願いしたの?」
夜でもやっていた屋台の綿あめを食べながら名無しが尋ねる。
ほわりほわりと白い息を吐きながら、無遠慮に願い事を訊いてくるなんて名無しらしいといえば名無しらしい。
「内緒。」
「えぇー、つまんないの。」
そう言いながらも「でも教えたら叶わなくなりそうだもんね」と名無しが笑う。
(名無しに変な虫がつきませんように、なんて言えるわけないじゃん。)
きっと今年も、キミは無邪気に笑ってくれているのだろう。
あぁ。いい年になるのは、間違いなさそうだ。
1/2ページ