short story
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新年を、まさか任務先で迎えることになるとは。
イギリスでは年末年始を盛大に祝う風習はないらしく、年末だからといって休暇があるわけではなかった。
それは勿論、黒の教団も同じ風習なのであって。
が。今現在滞在しているのはフランス。
凱旋門から花火が打ち上げられ、シャンゼリゼ通りはまさに歩行者天国と化していた。
年越しの様子を無邪気に眺めていた名無しは、任務疲れもあって今はすっかり夢の中だ。
まぁすっかり朝になってしまっているから、残酷だが起こさなければいけないのだが。
Good luck call!
「デザート、ですかね?」
クロワッサンにカフェオレ。シンプルな朝食を終えたあと、テーブルに出されたのはパイ菓子のような一切れのケーキ。
俺もこれを見るのは、初めてだ。
「ガレット・デ・ロワだよ。ホールで切り分けてるんだ。まぁ食べてみなよ」
気さくなホテルマンに勧められ、一切れ頬張る。
アーモンドクリームの香ばしい香りと、カスタードクリームのまったりとした甘みが口いっぱいに広がった。
……正直甘いものはあまり得意ではない。残りは目の前で幸せそうに頬張る弟子にあげることにしよう。
「美味しい!やっぱりフランスの洋菓子は格別ですね!」
ほこほこと満足そうに笑う名無しを見るだけでもある意味腹いっぱいだ。
その様子は小動物さながら…だが本人に言ったら機嫌を損ねるだろうから、黙っておくことにしよう。
「あれ?」
フォークにカツン・と当たる何か。
しっとりとしたパイ生地の中から出てきたのは、陶器のコロリとした人形。
「なんだそれ」
「可愛いですね。」
パイの欠片を指先で払い、紙ナプキンで丁寧に拭う。
小人のようなフィギュアはどこかレトロな雰囲気だ。
「お。フェーブじゃないか」
「ふぇーぶ?」
「それが当たったら一年、幸せに過ごせるのさ」
ホテルマンが言うには一枚のパイにひとつだけ入っている陶器の人形らしい。
それを引き当てることが出来ると幸福に満ちた一年が過ごせるという慣わしだ。
「わぁ!やりました、神田さん!」
「よかったな」
「はい!」
ふにゃふにゃと機嫌よく笑いながら名無しがはしゃぐ。…口の端にパイの欠片がついているのは黙っておこう。
「でもこれがなくても、いい一年になるのは決まってますけどね」
大事そうにフェーブをポケットにしまい、少し温くなったカフェオレをそろりと口に含む。
少し眉を顰めて彼女を見遣れば、悪戯っぽくはにかんだ。
「なんでだよ。」
「そりゃあ親愛なる師匠と年越し出来ましたから!」
笑う門には福来るとは、まさにコイツのことだろう。
機嫌よくガレット・デ・ロワを齧る名無しを見て『あぁコイツには今年も敵わないな』と思う俺だった。
イギリスでは年末年始を盛大に祝う風習はないらしく、年末だからといって休暇があるわけではなかった。
それは勿論、黒の教団も同じ風習なのであって。
が。今現在滞在しているのはフランス。
凱旋門から花火が打ち上げられ、シャンゼリゼ通りはまさに歩行者天国と化していた。
年越しの様子を無邪気に眺めていた名無しは、任務疲れもあって今はすっかり夢の中だ。
まぁすっかり朝になってしまっているから、残酷だが起こさなければいけないのだが。
Good luck call!
「デザート、ですかね?」
クロワッサンにカフェオレ。シンプルな朝食を終えたあと、テーブルに出されたのはパイ菓子のような一切れのケーキ。
俺もこれを見るのは、初めてだ。
「ガレット・デ・ロワだよ。ホールで切り分けてるんだ。まぁ食べてみなよ」
気さくなホテルマンに勧められ、一切れ頬張る。
アーモンドクリームの香ばしい香りと、カスタードクリームのまったりとした甘みが口いっぱいに広がった。
……正直甘いものはあまり得意ではない。残りは目の前で幸せそうに頬張る弟子にあげることにしよう。
「美味しい!やっぱりフランスの洋菓子は格別ですね!」
ほこほこと満足そうに笑う名無しを見るだけでもある意味腹いっぱいだ。
その様子は小動物さながら…だが本人に言ったら機嫌を損ねるだろうから、黙っておくことにしよう。
「あれ?」
フォークにカツン・と当たる何か。
しっとりとしたパイ生地の中から出てきたのは、陶器のコロリとした人形。
「なんだそれ」
「可愛いですね。」
パイの欠片を指先で払い、紙ナプキンで丁寧に拭う。
小人のようなフィギュアはどこかレトロな雰囲気だ。
「お。フェーブじゃないか」
「ふぇーぶ?」
「それが当たったら一年、幸せに過ごせるのさ」
ホテルマンが言うには一枚のパイにひとつだけ入っている陶器の人形らしい。
それを引き当てることが出来ると幸福に満ちた一年が過ごせるという慣わしだ。
「わぁ!やりました、神田さん!」
「よかったな」
「はい!」
ふにゃふにゃと機嫌よく笑いながら名無しがはしゃぐ。…口の端にパイの欠片がついているのは黙っておこう。
「でもこれがなくても、いい一年になるのは決まってますけどね」
大事そうにフェーブをポケットにしまい、少し温くなったカフェオレをそろりと口に含む。
少し眉を顰めて彼女を見遣れば、悪戯っぽくはにかんだ。
「なんでだよ。」
「そりゃあ親愛なる師匠と年越し出来ましたから!」
笑う門には福来るとは、まさにコイツのことだろう。
機嫌よくガレット・デ・ロワを齧る名無しを見て『あぁコイツには今年も敵わないな』と思う俺だった。