short story
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夕食ピークも落ち着き、厨房の面々も賄いを食べる時間帯。
神田の我儘……もとい、名無しちゃんの作った食事が食べたいというリクエストで、厨房の一角を彼女へ貸し出した。
その代わりといってはなんだけど、ついでに私の分も作ってもらったんだけど……
「あら、美味しいじゃないの!」
お世辞抜きで、美味しい。
年齢の割に手馴れていると思いながら見ていたが、味も…なるほど。神田が味恋しくなるのも無理もない。
少し洋風に寄せたホイル焼きの味付けはコンソメだろうか。わさびとマヨネーズ、少しの醤油を和えたソースをつければ大人向けの味に早変わりする。
すまし汁の出汁も綺麗に透き通っており、薄く切った椎茸からたっぷり出た旨味が、疲れた胃袋に染み渡った。これ絶対コムイ好きな味だわ。
蓮根のきんぴらもアクセントに入れた鷹の爪の輪切りのお陰で、いい塩梅で甘辛い。箸が止まらなくなる。
ほうれん草の胡麻和えも箸休めにはピッタリで、絵に書いたような和食の定食に彩りを加えていた。
『日本の家庭料理を食べたい』という純粋な興味からお願いしてみたのだが──これは、思わぬ収穫だ。
「あ、ありがとうございます。」
「お出汁もよくきいてるわ〜。神田、名無しちゃん家に転がり込んでいた時にこんな美味しいもの食べてたの?妬けちゃうわねぇ」
恥ずかしそうに照れ笑いする名無しちゃんの後ろで、いるのがさも当然のように椅子へ座り、食後の茶を啜る神田の表情は満足気だ。
それもそう。好きな子の美味しい手料理をお腹いっぱいに食べれば、多幸感で満たされるに決まっている。
「えへへ…お世辞でも嬉しいです」
「失礼ね、お世辞じゃないわよ。家庭の味って感じで、ほっとする味だわ。
──これは将来の旦那さんの胃袋もガッチリなんじゃない?名無しちゃん」
冗談半分、冷やかし半分。
最後の一言は番犬のように彼女の後ろにいる元帥様に向けて。
きっと『揶揄うな』と呆れ返り、眉間のシワが刻まれるものとばかり思っていたのだが──
「もう掴まれてる。」
しれっと当然のように答える神田。
その爆弾発言の意図に気づいたのか、はにかんで照れ笑いを浮かべていた名無しちゃんの表情がフリーズし、数秒後真っ赤に茹で上がった。
「かっ、かんッ、神田さん!?」
「やだ!ラブコメの気配だわ!」
声を裏返して動揺する名無しちゃんの悲鳴と、突然の惚気を浴びて上げてしまった私の黄色い悲鳴が、賑わいが遠ざかった夜更けの食堂に響き渡った。
恋人食堂〜料理長の余談〜
若いっていいわね!
神田の我儘……もとい、名無しちゃんの作った食事が食べたいというリクエストで、厨房の一角を彼女へ貸し出した。
その代わりといってはなんだけど、ついでに私の分も作ってもらったんだけど……
「あら、美味しいじゃないの!」
お世辞抜きで、美味しい。
年齢の割に手馴れていると思いながら見ていたが、味も…なるほど。神田が味恋しくなるのも無理もない。
少し洋風に寄せたホイル焼きの味付けはコンソメだろうか。わさびとマヨネーズ、少しの醤油を和えたソースをつければ大人向けの味に早変わりする。
すまし汁の出汁も綺麗に透き通っており、薄く切った椎茸からたっぷり出た旨味が、疲れた胃袋に染み渡った。これ絶対コムイ好きな味だわ。
蓮根のきんぴらもアクセントに入れた鷹の爪の輪切りのお陰で、いい塩梅で甘辛い。箸が止まらなくなる。
ほうれん草の胡麻和えも箸休めにはピッタリで、絵に書いたような和食の定食に彩りを加えていた。
『日本の家庭料理を食べたい』という純粋な興味からお願いしてみたのだが──これは、思わぬ収穫だ。
「あ、ありがとうございます。」
「お出汁もよくきいてるわ〜。神田、名無しちゃん家に転がり込んでいた時にこんな美味しいもの食べてたの?妬けちゃうわねぇ」
恥ずかしそうに照れ笑いする名無しちゃんの後ろで、いるのがさも当然のように椅子へ座り、食後の茶を啜る神田の表情は満足気だ。
それもそう。好きな子の美味しい手料理をお腹いっぱいに食べれば、多幸感で満たされるに決まっている。
「えへへ…お世辞でも嬉しいです」
「失礼ね、お世辞じゃないわよ。家庭の味って感じで、ほっとする味だわ。
──これは将来の旦那さんの胃袋もガッチリなんじゃない?名無しちゃん」
冗談半分、冷やかし半分。
最後の一言は番犬のように彼女の後ろにいる元帥様に向けて。
きっと『揶揄うな』と呆れ返り、眉間のシワが刻まれるものとばかり思っていたのだが──
「もう掴まれてる。」
しれっと当然のように答える神田。
その爆弾発言の意図に気づいたのか、はにかんで照れ笑いを浮かべていた名無しちゃんの表情がフリーズし、数秒後真っ赤に茹で上がった。
「かっ、かんッ、神田さん!?」
「やだ!ラブコメの気配だわ!」
声を裏返して動揺する名無しちゃんの悲鳴と、突然の惚気を浴びて上げてしまった私の黄色い悲鳴が、賑わいが遠ざかった夜更けの食堂に響き渡った。
恋人食堂〜料理長の余談〜
若いっていいわね!