short story
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「ユウって新しく弟子をとる予定あるんさ?」
珍しく誰も任務に出ておらず、エクソシストの面々はカードゲームに興じていた。
勿論、アレンのイカサマは禁止にし、単純に運と相手の顔色を見ながらの、公平平等な遊びである。
そんな中、たまたま一番にあがったラビが呑気に観戦しながら、思いつきで問うた。
「ねぇよ。」
「即答かーい。」
ババ抜きの、手持ちカードがあと数枚。
神田は名無しの隣に陣取り、テーブルを囲って右斜め前に座っているアレンからカードを一枚引き抜く。
「クロス・マリアンだって弟子はモヤシ一人だっただろ。」
「それは多分あの人が教団一の問題児かつ借金癖も女癖も悪かったですし、師匠としては…まぁ…社会不適合というか……。」
「あと、僕もいたし。」と言いながら、アレンが苦笑いを浮かべる。
事情を知っている面々は「あー」と納得したように声を上げ、小さく頷いた。
どうやら神田の手札は揃わなかったらしい。
不服そうに口元を歪めながら手札のカードを軽くシャッフルし、名無しに向けてカードの背を向けた。
「名無しがいるから別にいいだろ。」
「えー、でも名無しも立派に一人前さ?新人時期はとうに終わってるし」
アレンが座っている一人掛けソファの背もたれの後ろで「な〜、名無し」とラビは笑う。
にこやかなラビとは対照的に、名無しはというと……あんぐりと大きく口を開け、ショックを受けていた。
「わ、私、まだ手のかかる半人前でしたか…?」
そっちか。
「そうじゃねぇ。」と息をつきながら神田は前髪をくしゃりと掻きむしる。
てっきり他の弟子を取ることが嫌なのかと思ったが──彼女の自己評価の低さは相変わらずらしい。
「名無し以外の弟子を取りたくないのよ、神田は。」
「少し黙ってろ、リナリー。」
「あら、ホントのことじゃない。」
テーブルを挟んでアレンの向かい側に座っていたリナリーが、それはそれは綺麗に笑う。
まるで全ての事情を把握している、茶番劇の脚本家のような笑顔で。
「でも名無しちゃん、もし他にお弟子さんが増えたら一番弟子になるのね。」
手札がまだたんまり残っているミランダだが、トランプが楽しいのだろう。
にこにこと上機嫌で笑いながら想像を膨らませた。
「一番。弟子。」
何とも耳障りのいい、魅力的な言葉を一単語一単語を丁寧に噛み締める。
一番大好きな、恋人であり、師である彼の、一番。
それはなんて素敵なことだろう。一言で言ってしまえば、憧れだ。
いいなぁ、と幸せな想像を巡らせ、だらしなくふにゃふにゃと笑う名無し。
だがそれを容赦なく一刀両断するのがこの男、神田ユウである。
──そう。彼にも譲れないことがあるのだ。
「取る予定はねぇからな。」
「どうしてですか?神田さん、折角いい師匠なのに。」
神田の手札から一枚抜くが、どうやら名無しも手札が揃わなかったらしい。
むっと眉を寄せて手札を凝視して確認するが、五枚の数字はどう見ても揃っていない。残念。
手放して褒めてくれる愛弟子には悪いが、そもそも誰に対しても手塩をかけるわけではない。
それは他の誰でもない、名無しだからこそ弟子として迎え入れたのであって、分け隔てなく育てるつもりは毛頭ないのだ。
彼女だけでいい。
彼女のだけの、名無しだけの師でいたい。
「お前以外いらねぇし、お前だけがいい。」
No.1でOnly one
神田の勘違いを生みそうな(いや、別の意味でも的を射ているし間違いではないのだが)爆弾発言に、名無しは頬を真っ赤にしてトランプを床へ落としてしまう。
そんな彼女の反応を見て、ここが談話室であり、旧知の仲間達が集っていることを思い出し、神田は珍しく動揺を隠しきれず赤面した。
周りはというと、
「はいはい、神田。ご馳走様。」
「ふふっ、コーヒー入れよっか?ブラックのやつ。」
「いいさね、あま〜い言葉には、にっが〜いコーヒーで丁度いいんじゃね?」
アレン、リナリー、ラビの順で、ニタニタと笑いながら神田を見遣れば、毛を逆立てた猫のように怒りを露わにし、神田は久しぶりに声を荒らげたのだった。
「うるせぇ、黙ってろ!」
珍しく誰も任務に出ておらず、エクソシストの面々はカードゲームに興じていた。
勿論、アレンのイカサマは禁止にし、単純に運と相手の顔色を見ながらの、公平平等な遊びである。
そんな中、たまたま一番にあがったラビが呑気に観戦しながら、思いつきで問うた。
「ねぇよ。」
「即答かーい。」
ババ抜きの、手持ちカードがあと数枚。
神田は名無しの隣に陣取り、テーブルを囲って右斜め前に座っているアレンからカードを一枚引き抜く。
「クロス・マリアンだって弟子はモヤシ一人だっただろ。」
「それは多分あの人が教団一の問題児かつ借金癖も女癖も悪かったですし、師匠としては…まぁ…社会不適合というか……。」
「あと、僕もいたし。」と言いながら、アレンが苦笑いを浮かべる。
事情を知っている面々は「あー」と納得したように声を上げ、小さく頷いた。
どうやら神田の手札は揃わなかったらしい。
不服そうに口元を歪めながら手札のカードを軽くシャッフルし、名無しに向けてカードの背を向けた。
「名無しがいるから別にいいだろ。」
「えー、でも名無しも立派に一人前さ?新人時期はとうに終わってるし」
アレンが座っている一人掛けソファの背もたれの後ろで「な〜、名無し」とラビは笑う。
にこやかなラビとは対照的に、名無しはというと……あんぐりと大きく口を開け、ショックを受けていた。
「わ、私、まだ手のかかる半人前でしたか…?」
そっちか。
「そうじゃねぇ。」と息をつきながら神田は前髪をくしゃりと掻きむしる。
てっきり他の弟子を取ることが嫌なのかと思ったが──彼女の自己評価の低さは相変わらずらしい。
「名無し以外の弟子を取りたくないのよ、神田は。」
「少し黙ってろ、リナリー。」
「あら、ホントのことじゃない。」
テーブルを挟んでアレンの向かい側に座っていたリナリーが、それはそれは綺麗に笑う。
まるで全ての事情を把握している、茶番劇の脚本家のような笑顔で。
「でも名無しちゃん、もし他にお弟子さんが増えたら一番弟子になるのね。」
手札がまだたんまり残っているミランダだが、トランプが楽しいのだろう。
にこにこと上機嫌で笑いながら想像を膨らませた。
「一番。弟子。」
何とも耳障りのいい、魅力的な言葉を一単語一単語を丁寧に噛み締める。
一番大好きな、恋人であり、師である彼の、一番。
それはなんて素敵なことだろう。一言で言ってしまえば、憧れだ。
いいなぁ、と幸せな想像を巡らせ、だらしなくふにゃふにゃと笑う名無し。
だがそれを容赦なく一刀両断するのがこの男、神田ユウである。
──そう。彼にも譲れないことがあるのだ。
「取る予定はねぇからな。」
「どうしてですか?神田さん、折角いい師匠なのに。」
神田の手札から一枚抜くが、どうやら名無しも手札が揃わなかったらしい。
むっと眉を寄せて手札を凝視して確認するが、五枚の数字はどう見ても揃っていない。残念。
手放して褒めてくれる愛弟子には悪いが、そもそも誰に対しても手塩をかけるわけではない。
それは他の誰でもない、名無しだからこそ弟子として迎え入れたのであって、分け隔てなく育てるつもりは毛頭ないのだ。
彼女だけでいい。
彼女のだけの、名無しだけの師でいたい。
「お前以外いらねぇし、お前だけがいい。」
No.1でOnly one
神田の勘違いを生みそうな(いや、別の意味でも的を射ているし間違いではないのだが)爆弾発言に、名無しは頬を真っ赤にしてトランプを床へ落としてしまう。
そんな彼女の反応を見て、ここが談話室であり、旧知の仲間達が集っていることを思い出し、神田は珍しく動揺を隠しきれず赤面した。
周りはというと、
「はいはい、神田。ご馳走様。」
「ふふっ、コーヒー入れよっか?ブラックのやつ。」
「いいさね、あま〜い言葉には、にっが〜いコーヒーで丁度いいんじゃね?」
アレン、リナリー、ラビの順で、ニタニタと笑いながら神田を見遣れば、毛を逆立てた猫のように怒りを露わにし、神田は久しぶりに声を荒らげたのだった。
「うるせぇ、黙ってろ!」