short story
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「神田さん!海ですよ!」
「見りゃ分かる。」
神田の淡々とした返答にめげず、名無しはきゃいきゃいと子供のようにはしゃいだ。
「すごーい!綺麗!底まで見える!」
「普通だろ。」
「そんなことないですよ。私の住んでた地域の海は、こんなに綺麗じゃなかったですもん。」
波打ち際で漣と戯れる。
ざわりと泡立つ白波が、まるで麦酒の泡のように弾けて消えた。
「入っていいですかね…?」
「……………海にか?」
「足だけ!足だけですから!」
懇願してくる可愛い恋人兼弟子。
パンッと両手を合わせ、こちらを窺ってくる視線に勝てるはずもなく。
「……モヤシが方舟のゲート開くまでだぞ。」
「やったー!」
師匠というより、まるで飼い主だ。
海で遊べる許可を得た名無しが、履いていた靴下とブーツを浜辺に置き、一目散に浅瀬へ走っていった。
燦々と照りつける太陽は眩く、季節柄もあって非常に暑い。
こんな時には日陰でざる蕎麦を啜りたいところだが、残念ながら避暑できる場所も蕎麦もここにはなかった。
太陽光を熱に変える黒い団服は、前から思っていたが真夏の大敵だ。
熱苦しい団服を脱げば、汗が潮風に当てられほんの僅かに涼しくなる。
「ふぅ……」
「神田さんもせっかくですし、入りましょうよー。涼しいですよ?」
「俺はいい。」
浅瀬からザバザバと音を立てながら戻ってくる名無し。
どうやら神田が上着を脱いでいたのを見たらしい。同じように黒い団服を白い砂の上に放り投げた。
「ちぇ」と口先を尖らせながら浅瀬へ戻っていく名無し。
恐らく魚でも見つけたのだろう。
黒曜石の瞳をキラキラさせながら海中を見つめていた。
夏の日差し。
水面に輝く白い光。
呼吸をするような速さで繰り返される波の音。
黒いショートパンツと白いシャツ一枚になった少女が、打ち寄せては引いていく細波と戯れる。
まるで、アクマもヴァチカンも、何も無いと錯覚してしまいそうになる、夏の一幕。
――正直、悪くない。
次の休みは、ちゃんと海に連れて行こう。
出来れば、蕎麦と日陰と、君とゆっくり過ごせる場所があるところへ。
初夏のさざなみ
「神田さん!ナマコ見つけました!」
「戻してこい。」
「見りゃ分かる。」
神田の淡々とした返答にめげず、名無しはきゃいきゃいと子供のようにはしゃいだ。
「すごーい!綺麗!底まで見える!」
「普通だろ。」
「そんなことないですよ。私の住んでた地域の海は、こんなに綺麗じゃなかったですもん。」
波打ち際で漣と戯れる。
ざわりと泡立つ白波が、まるで麦酒の泡のように弾けて消えた。
「入っていいですかね…?」
「……………海にか?」
「足だけ!足だけですから!」
懇願してくる可愛い恋人兼弟子。
パンッと両手を合わせ、こちらを窺ってくる視線に勝てるはずもなく。
「……モヤシが方舟のゲート開くまでだぞ。」
「やったー!」
師匠というより、まるで飼い主だ。
海で遊べる許可を得た名無しが、履いていた靴下とブーツを浜辺に置き、一目散に浅瀬へ走っていった。
燦々と照りつける太陽は眩く、季節柄もあって非常に暑い。
こんな時には日陰でざる蕎麦を啜りたいところだが、残念ながら避暑できる場所も蕎麦もここにはなかった。
太陽光を熱に変える黒い団服は、前から思っていたが真夏の大敵だ。
熱苦しい団服を脱げば、汗が潮風に当てられほんの僅かに涼しくなる。
「ふぅ……」
「神田さんもせっかくですし、入りましょうよー。涼しいですよ?」
「俺はいい。」
浅瀬からザバザバと音を立てながら戻ってくる名無し。
どうやら神田が上着を脱いでいたのを見たらしい。同じように黒い団服を白い砂の上に放り投げた。
「ちぇ」と口先を尖らせながら浅瀬へ戻っていく名無し。
恐らく魚でも見つけたのだろう。
黒曜石の瞳をキラキラさせながら海中を見つめていた。
夏の日差し。
水面に輝く白い光。
呼吸をするような速さで繰り返される波の音。
黒いショートパンツと白いシャツ一枚になった少女が、打ち寄せては引いていく細波と戯れる。
まるで、アクマもヴァチカンも、何も無いと錯覚してしまいそうになる、夏の一幕。
――正直、悪くない。
次の休みは、ちゃんと海に連れて行こう。
出来れば、蕎麦と日陰と、君とゆっくり過ごせる場所があるところへ。
初夏のさざなみ
「神田さん!ナマコ見つけました!」
「戻してこい。」