short story
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「神田さん、お夕飯食べに………って、あれ?」
ノックを二回。
神田の部屋をそろりと覗きみれば、そこは無人だった。
がらんとした部屋。
生活感があまりない部屋は、神田らしいといえば神田らしい。
何処かへ出掛けているのだろう。
六幻は壁に立て掛けられ、団服もベッドに放り投げられたままだった。
(シワになっちゃったら大変)
団服をハンガーに掛けようと手に持てば、ずしりとした重みに少々面食らった。
自分の団服よりもずっと大きい上、神田の団服はロングコートのように丈が長い。
更に丈夫に作られ、繊維の密度が高ければ重いのは当然といえば当然だ。
「…………………。」
魔が差した。
そう、魔が差したのだ。
のそりと腕を通せば、袖口からは指先すら出てこない。
裾は床に引き摺るし肩幅だって全然大きい。
そして何より、
(神田さんの匂い。)
すん、と鼻を鳴らせば嗅ぎなれた香り。
そのまま近くのベッドにころりと寝転べば、何だかホクホクと幸せな気持ちでいっぱいになった。
ふかふかのベッド。
すっぽりと大きな団服に包まれば、まるで神田に抱きしめられているようだった。
(……………………って、待て待て私。なんか変態みたいじゃない?早く脱いでしまおっと)
もそりと上半身を起こせば、
ガチャッ。
ノックもなしに入ってくるのは、勿論部屋の主。
最高のタイミングで、最悪のタイミングだ。
「「……………………。」」
両者の間に沈黙が流れる。
神田は切れ長の目を僅かに見開き、名無しはといえば顔を真っ赤にして言葉が出ないようだった。
澱みない足取りでベッドへ近づく神田。
一歩、二歩、三歩。
名無しにとってはただの危険信号。
神田にしてみたらご馳走へありつくまでのカウントダウンだ。
靴の踵が床を打ち鳴らす音がやけに大きく部屋に響いたのは…きっと気のせいではない。
「ち……違っ、あの、出来心だったんです!本当はハンガーに掛けようと、」
「俺にはただの据え膳にしか見えねぇがな」
「す、据え膳!?あの、そうじゃなくてですね、お夕飯を食べに行きませんかって呼びに来」
慌てて言い訳を並べる名無しの唇を手慣れた動作でいとも簡単に塞ぐ。
くぐもった声を呑み込んで、柔らかく甘い唇を軽く食んでやれば細い肩が小さく揺れた。
そのままベッドへもう一度沈めれば、華奢な身体にそぐわない団服がくしゃりと広がる。
皺になることなんて最初から気にしないと言わんばかりに馬乗りになれば、神田は愉しそうに口角を僅かに上げた。
「お前が晩飯になるんだろ。」
「な、なりません!」
「そもそも俺の団服嗅いで、ベッドでナニするつもりだったんだ?」
「違っ…!神田さんに、ぎゅーってしてもらってるみたいだな…って思ってただけです!」
ナニって、何だ。
素直に洗いざらい白状すれば、もう一度神田は固まり、瞬きを何度か繰り返した後――
「…………………………はーーー」
盛大な溜息を長く長く零した。
「なんですか、その溜息……」
「決めた。やっぱり抱く。」
「待ってください!何が決定打だったんですか!?」
「無自覚なのがタチ悪い。絶対教えねぇ」
ぐうぐう鳴っている名無しの腹の虫はスルーされ、神田は彼女の着ていたシャツのボタンに手を掛けるのであった。
団服ハプニング
(つーか本人がいるんだから抱きしめるくらいいくらでもしてやるってのに)
まさか自分の団服に嫉妬する日が来るなんて。
神田元帥の苦労はまだまだ続く。
ノックを二回。
神田の部屋をそろりと覗きみれば、そこは無人だった。
がらんとした部屋。
生活感があまりない部屋は、神田らしいといえば神田らしい。
何処かへ出掛けているのだろう。
六幻は壁に立て掛けられ、団服もベッドに放り投げられたままだった。
(シワになっちゃったら大変)
団服をハンガーに掛けようと手に持てば、ずしりとした重みに少々面食らった。
自分の団服よりもずっと大きい上、神田の団服はロングコートのように丈が長い。
更に丈夫に作られ、繊維の密度が高ければ重いのは当然といえば当然だ。
「…………………。」
魔が差した。
そう、魔が差したのだ。
のそりと腕を通せば、袖口からは指先すら出てこない。
裾は床に引き摺るし肩幅だって全然大きい。
そして何より、
(神田さんの匂い。)
すん、と鼻を鳴らせば嗅ぎなれた香り。
そのまま近くのベッドにころりと寝転べば、何だかホクホクと幸せな気持ちでいっぱいになった。
ふかふかのベッド。
すっぽりと大きな団服に包まれば、まるで神田に抱きしめられているようだった。
(……………………って、待て待て私。なんか変態みたいじゃない?早く脱いでしまおっと)
もそりと上半身を起こせば、
ガチャッ。
ノックもなしに入ってくるのは、勿論部屋の主。
最高のタイミングで、最悪のタイミングだ。
「「……………………。」」
両者の間に沈黙が流れる。
神田は切れ長の目を僅かに見開き、名無しはといえば顔を真っ赤にして言葉が出ないようだった。
澱みない足取りでベッドへ近づく神田。
一歩、二歩、三歩。
名無しにとってはただの危険信号。
神田にしてみたらご馳走へありつくまでのカウントダウンだ。
靴の踵が床を打ち鳴らす音がやけに大きく部屋に響いたのは…きっと気のせいではない。
「ち……違っ、あの、出来心だったんです!本当はハンガーに掛けようと、」
「俺にはただの据え膳にしか見えねぇがな」
「す、据え膳!?あの、そうじゃなくてですね、お夕飯を食べに行きませんかって呼びに来」
慌てて言い訳を並べる名無しの唇を手慣れた動作でいとも簡単に塞ぐ。
くぐもった声を呑み込んで、柔らかく甘い唇を軽く食んでやれば細い肩が小さく揺れた。
そのままベッドへもう一度沈めれば、華奢な身体にそぐわない団服がくしゃりと広がる。
皺になることなんて最初から気にしないと言わんばかりに馬乗りになれば、神田は愉しそうに口角を僅かに上げた。
「お前が晩飯になるんだろ。」
「な、なりません!」
「そもそも俺の団服嗅いで、ベッドでナニするつもりだったんだ?」
「違っ…!神田さんに、ぎゅーってしてもらってるみたいだな…って思ってただけです!」
ナニって、何だ。
素直に洗いざらい白状すれば、もう一度神田は固まり、瞬きを何度か繰り返した後――
「…………………………はーーー」
盛大な溜息を長く長く零した。
「なんですか、その溜息……」
「決めた。やっぱり抱く。」
「待ってください!何が決定打だったんですか!?」
「無自覚なのがタチ悪い。絶対教えねぇ」
ぐうぐう鳴っている名無しの腹の虫はスルーされ、神田は彼女の着ていたシャツのボタンに手を掛けるのであった。
団服ハプニング
(つーか本人がいるんだから抱きしめるくらいいくらでもしてやるってのに)
まさか自分の団服に嫉妬する日が来るなんて。
神田元帥の苦労はまだまだ続く。