short story
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「新作です。どうぞ。」
白いケーキ箱に入った、色とりどりのタルト。
食欲旺盛な面々と、甘い物大好き女子達は目を輝かせていた。
ちなみに名無しは両方に当てはまる。
「ひんふ…まはふへほはへはへ…」
「ウォーカー。食べながら喋らないでください。」
「んぐ……リンク、また腕を上げたね」
「それは何よりです。」
「鴉やめてパティシエになればいいのに。」
「それ、君が毎日食べたいから言っているでしょう?」
バレたか、と笑うアレンの隣で、黙々と食べるのはティモシーと名無しだ。
頬をもごもごさせている姿は、まるでハムスターだ。
「でも本当にとっても美味しいわ、リンク」
「お口にあって何よりです。」
リナリーやミランダも手放しで褒めている。
その和気藹々とした光景を眺めるのは、男二人。
「ユウは食べないんさー?」
「食わねぇ。」
蕎麦湯を飲みながら神田がピシャリと答える。
どことなく不機嫌そうな彼をちらりと一瞥し、ラビは「ふーん」と気のない返事を返した。
***
「今回も無事に終わって良かったですね!」
「あぁ。珍しくお前も無傷だしな。」
「でしょう。…なーんて、前衛で頑張ってくれる師匠のおかげですよ?」
クスクスと笑いながら名無しがはにかむ。
埃っぽくはなっているものの、お互い怪我もなく任務を遂行できたのは喜ばしいことだ。
「ゲート開くまで時間ありますし…何か飲み物買ってきましょうか?」
「…じゃあコーヒー。」
「はい!」
にこにこと愛想のいい笑顔で子犬はおつかいに走っていく。
賑わいを見せる広場のベンチの一角に座り、神田は小さく息を零した。
笑顔で行き交う人。
陽の光を浴びてキラキラと瞬く噴水の飛沫。
ムカつくくらい晴れ渡った青空。
先程までアクマを切り伏せていた惨状とは打って変わって、まさに平和そのものだ。
まるでこっちの方が夢現のような光景にすら思えてくる。
中央の噴水を囲うように敷かれた広場のタイル。
円形広場の周りには露店を構えてビスケットやチョコレートが売られていた。
ちらりと見れば、それこそ女子供が好きそうな包装できちんと包まれている。
そう。これは別に、他意はない。
ただたまたま。そう、たまたま目に付いただけだ。
「………………………そこの焼き菓子、ひとつ。」
求愛給餌
「神田さん、お待たせしました!」
「走ると零すぞ。」
「大丈夫です、ちゃんと蓋をもらってますから」
ふふんと何故か自慢気な名無しを見て「そうか」と答える。
コーヒーを受け取ると同時に、当たり前かのように代金と焼き菓子を手渡した。
「……………あの、神田さん?これ。」
「菓子。」
「あ、はい。クッキー…ですね。
…………もしかして頂いていいんですか?」
「あぁ。」
ぶっきらぼうに返事をすれば、綻ぶような笑みを浮かべた名無し。
…乾燥肉を貰った犬も、確かこんな反応をするな。
「えへへ…ありがとうございます!永久保存したいくらい嬉しいです!」
「腐るぞ。」
「例えの話ですよー。では遠慮なく頂きます!」
大きなクッキーを一枚。
一口で頬張るには少し難易度が高いそれを、名無しは真っ二つに割った。
「一緒に食べましょ、神田さん。」
無遠慮に。無邪気に。
口元へ突きつけてくる彼女の笑顔は、純粋にはしゃぐ少女のそれだった。
「お前にやったんだぞ。」
「一緒に食べた方が美味しいから、どうかなーと思いまして。」
そう言われれば断る理由もない。
甘い物は苦手だが、食べられなくはないだろう。
名無しの手からクッキーをひと齧りすれば、ビターチョコのほろ苦さと小麦の甘さが口いっぱいに広がった。
悪くはないが、やはり少し甘い。
「悪くねぇな」
「それは何よりです。」
にこにこと上機嫌の名無しは安心したように笑って、もう半分のクッキーを一口で頬張った。
至極の表情で甘味を堪能する彼女の横顔を眺めながら『なるほど、これは餌付けたくなる』と神田は一人納得するのであった。
そんな、穏やかな昼下がり。
白いケーキ箱に入った、色とりどりのタルト。
食欲旺盛な面々と、甘い物大好き女子達は目を輝かせていた。
ちなみに名無しは両方に当てはまる。
「ひんふ…まはふへほはへはへ…」
「ウォーカー。食べながら喋らないでください。」
「んぐ……リンク、また腕を上げたね」
「それは何よりです。」
「鴉やめてパティシエになればいいのに。」
「それ、君が毎日食べたいから言っているでしょう?」
バレたか、と笑うアレンの隣で、黙々と食べるのはティモシーと名無しだ。
頬をもごもごさせている姿は、まるでハムスターだ。
「でも本当にとっても美味しいわ、リンク」
「お口にあって何よりです。」
リナリーやミランダも手放しで褒めている。
その和気藹々とした光景を眺めるのは、男二人。
「ユウは食べないんさー?」
「食わねぇ。」
蕎麦湯を飲みながら神田がピシャリと答える。
どことなく不機嫌そうな彼をちらりと一瞥し、ラビは「ふーん」と気のない返事を返した。
***
「今回も無事に終わって良かったですね!」
「あぁ。珍しくお前も無傷だしな。」
「でしょう。…なーんて、前衛で頑張ってくれる師匠のおかげですよ?」
クスクスと笑いながら名無しがはにかむ。
埃っぽくはなっているものの、お互い怪我もなく任務を遂行できたのは喜ばしいことだ。
「ゲート開くまで時間ありますし…何か飲み物買ってきましょうか?」
「…じゃあコーヒー。」
「はい!」
にこにこと愛想のいい笑顔で子犬はおつかいに走っていく。
賑わいを見せる広場のベンチの一角に座り、神田は小さく息を零した。
笑顔で行き交う人。
陽の光を浴びてキラキラと瞬く噴水の飛沫。
ムカつくくらい晴れ渡った青空。
先程までアクマを切り伏せていた惨状とは打って変わって、まさに平和そのものだ。
まるでこっちの方が夢現のような光景にすら思えてくる。
中央の噴水を囲うように敷かれた広場のタイル。
円形広場の周りには露店を構えてビスケットやチョコレートが売られていた。
ちらりと見れば、それこそ女子供が好きそうな包装できちんと包まれている。
そう。これは別に、他意はない。
ただたまたま。そう、たまたま目に付いただけだ。
「………………………そこの焼き菓子、ひとつ。」
求愛給餌
「神田さん、お待たせしました!」
「走ると零すぞ。」
「大丈夫です、ちゃんと蓋をもらってますから」
ふふんと何故か自慢気な名無しを見て「そうか」と答える。
コーヒーを受け取ると同時に、当たり前かのように代金と焼き菓子を手渡した。
「……………あの、神田さん?これ。」
「菓子。」
「あ、はい。クッキー…ですね。
…………もしかして頂いていいんですか?」
「あぁ。」
ぶっきらぼうに返事をすれば、綻ぶような笑みを浮かべた名無し。
…乾燥肉を貰った犬も、確かこんな反応をするな。
「えへへ…ありがとうございます!永久保存したいくらい嬉しいです!」
「腐るぞ。」
「例えの話ですよー。では遠慮なく頂きます!」
大きなクッキーを一枚。
一口で頬張るには少し難易度が高いそれを、名無しは真っ二つに割った。
「一緒に食べましょ、神田さん。」
無遠慮に。無邪気に。
口元へ突きつけてくる彼女の笑顔は、純粋にはしゃぐ少女のそれだった。
「お前にやったんだぞ。」
「一緒に食べた方が美味しいから、どうかなーと思いまして。」
そう言われれば断る理由もない。
甘い物は苦手だが、食べられなくはないだろう。
名無しの手からクッキーをひと齧りすれば、ビターチョコのほろ苦さと小麦の甘さが口いっぱいに広がった。
悪くはないが、やはり少し甘い。
「悪くねぇな」
「それは何よりです。」
にこにこと上機嫌の名無しは安心したように笑って、もう半分のクッキーを一口で頬張った。
至極の表情で甘味を堪能する彼女の横顔を眺めながら『なるほど、これは餌付けたくなる』と神田は一人納得するのであった。
そんな、穏やかな昼下がり。