short story
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カップルの身長差は、13cmが理想!
……昔、何かのテレビで言っていた気がする。
「神田さんって、身長おいくつでしたっけ?」
「……なんだ突然」
「え、その、ただの興味です」
食堂で昼食を食べながらの、他愛ない会話。
蕎麦をつるりと食べていた師匠に問えば、訝しげな視線を向けられた。
「181cm。」
「……身長高いな、とは思ってましたけど、やっぱり上背ありますね…」
そこからマイナス13cm。
168cm。
残念ながら理想の身長差には足りない。
「なんかあるのか?」
「……いえ、その…」
言ったら呆れられるだろうか。
『下らない』と一蹴されること間違いなしだろう。
一瞬言葉に迷っていたら、妙なところで察しがいい。「いいから言え」と催促されてしまった。
「…………………………カップルの身長差は13cmが一番理想なんですって。」
「へぇ。」
「その…足りていないなー…と思って」
かといって今から牛乳を浴びるように飲んでも後の祭りだろう。
とっくに成長期は終えてしまったのだから。
「別にいいだろ。」
下らないと切り捨てられはしなかったが、概ね予想通りの回答だ。
まぁ、それもそうだ。身長に困ることといえば筋肉量と、高い所の物を取るのに不便したり、人混みで窒息しかけたり……あれ?意外とあるな。
「よくないです…。身長があればもう少しくらいムキムキになれたり、神田さんと歩くペース合わせられたり出来るし…」
「キスしやすいとか?」
「そうで……って、突然何を言うんですか…」
危ない。
危うく自然な流れで肯定しそうになった。
いや、確かにその通りなのだが。
頬に熱が集まるのが嫌でも分かる。
逆上せるような熱さを誤魔化すため、コップの中の水を一気に呷った。
「悪くはねぇけどな。」
「え、どこがです?」
「抱けば誰の目にも触れられないように、すっぽり収まるからな」
……それは褒められているのだろうか。
不満の声が喉から出かけたが、ここはぐっと堪える。
代わりに視線で訴えるが、目の前の涼やかな恋人は何もこたえてはいないようだった。
「あぁ、でも」
ニタリ、と。
普段ポーカーフェイスの彼が、酷く愉しそうに口元を歪める。
「キスする時、上を向くだろ。強請られてるみたいで悪くねぇけどな」
言われれば、そうだ。
というかそうしなければ視線はおろか、唇を重ねることも出来ないからであって――
「な、なんて恥ずかしいことを…」
「事実だろ。」
「…………………もう上を向きません…」
「無理矢理向かせてもらいたいのか?」
こうやって。
先程まで箸を持っていた右手で、顎を掴まれる。
吸い込まれるようなスカイブルーの瞳。
眩いくらい端正な顔。
さらりと流れる前髪に、ささくれひとつない唇と――
ボンッと爆発しそうなくらい、熱が上がる。
この人のこういう一挙一動に毎回脳味噌が茹だるのは本当に勘弁して欲しい。
「真っ赤だな。」
「本当に、こういう公共の場でそういうのは、やめましょう…。社会的に死ぬ…」
「俺は気にならないがな」
「でしょうね!」
「身長差の話だぞ。」
からかわれている。完全に、からかわれている。
クク…と笑いを噛み殺す神田に対してジトリと睨むが、やはり本人はどこか吹く風。
どうせ小動物が威嚇しているくらいにしか思っていないのだろう。……事実そうなのだが。
「それに、」
小さくなるリップ音。
掠めるように奪われた唇。
一瞬だけ触れた体温に、目眩がした。
「座ればそれなりにしやすいだろ。」
周りが一瞬ザワついたのは――気づかないフリをしよう。気づいたらしぬ。
キスまでの距離
「ジェリーさん…すみません。しばらく朝昼晩と1Lずつ牛乳ください。」
「どうしたの?名無しちゃん。」
「身長を伸ばすためです…!」
後日顔を真っ赤にした名無しが、長身な料理長に頼み込む姿があったとか、なかったとか。
……昔、何かのテレビで言っていた気がする。
「神田さんって、身長おいくつでしたっけ?」
「……なんだ突然」
「え、その、ただの興味です」
食堂で昼食を食べながらの、他愛ない会話。
蕎麦をつるりと食べていた師匠に問えば、訝しげな視線を向けられた。
「181cm。」
「……身長高いな、とは思ってましたけど、やっぱり上背ありますね…」
そこからマイナス13cm。
168cm。
残念ながら理想の身長差には足りない。
「なんかあるのか?」
「……いえ、その…」
言ったら呆れられるだろうか。
『下らない』と一蹴されること間違いなしだろう。
一瞬言葉に迷っていたら、妙なところで察しがいい。「いいから言え」と催促されてしまった。
「…………………………カップルの身長差は13cmが一番理想なんですって。」
「へぇ。」
「その…足りていないなー…と思って」
かといって今から牛乳を浴びるように飲んでも後の祭りだろう。
とっくに成長期は終えてしまったのだから。
「別にいいだろ。」
下らないと切り捨てられはしなかったが、概ね予想通りの回答だ。
まぁ、それもそうだ。身長に困ることといえば筋肉量と、高い所の物を取るのに不便したり、人混みで窒息しかけたり……あれ?意外とあるな。
「よくないです…。身長があればもう少しくらいムキムキになれたり、神田さんと歩くペース合わせられたり出来るし…」
「キスしやすいとか?」
「そうで……って、突然何を言うんですか…」
危ない。
危うく自然な流れで肯定しそうになった。
いや、確かにその通りなのだが。
頬に熱が集まるのが嫌でも分かる。
逆上せるような熱さを誤魔化すため、コップの中の水を一気に呷った。
「悪くはねぇけどな。」
「え、どこがです?」
「抱けば誰の目にも触れられないように、すっぽり収まるからな」
……それは褒められているのだろうか。
不満の声が喉から出かけたが、ここはぐっと堪える。
代わりに視線で訴えるが、目の前の涼やかな恋人は何もこたえてはいないようだった。
「あぁ、でも」
ニタリ、と。
普段ポーカーフェイスの彼が、酷く愉しそうに口元を歪める。
「キスする時、上を向くだろ。強請られてるみたいで悪くねぇけどな」
言われれば、そうだ。
というかそうしなければ視線はおろか、唇を重ねることも出来ないからであって――
「な、なんて恥ずかしいことを…」
「事実だろ。」
「…………………もう上を向きません…」
「無理矢理向かせてもらいたいのか?」
こうやって。
先程まで箸を持っていた右手で、顎を掴まれる。
吸い込まれるようなスカイブルーの瞳。
眩いくらい端正な顔。
さらりと流れる前髪に、ささくれひとつない唇と――
ボンッと爆発しそうなくらい、熱が上がる。
この人のこういう一挙一動に毎回脳味噌が茹だるのは本当に勘弁して欲しい。
「真っ赤だな。」
「本当に、こういう公共の場でそういうのは、やめましょう…。社会的に死ぬ…」
「俺は気にならないがな」
「でしょうね!」
「身長差の話だぞ。」
からかわれている。完全に、からかわれている。
クク…と笑いを噛み殺す神田に対してジトリと睨むが、やはり本人はどこか吹く風。
どうせ小動物が威嚇しているくらいにしか思っていないのだろう。……事実そうなのだが。
「それに、」
小さくなるリップ音。
掠めるように奪われた唇。
一瞬だけ触れた体温に、目眩がした。
「座ればそれなりにしやすいだろ。」
周りが一瞬ザワついたのは――気づかないフリをしよう。気づいたらしぬ。
キスまでの距離
「ジェリーさん…すみません。しばらく朝昼晩と1Lずつ牛乳ください。」
「どうしたの?名無しちゃん。」
「身長を伸ばすためです…!」
後日顔を真っ赤にした名無しが、長身な料理長に頼み込む姿があったとか、なかったとか。