short story
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任務地に到着する直前に、雨に降られてしまった。
濡れ鼠になりながら到着した宿では小さな水たまりを作ってしまった。
「凄い雨でしたね…」
「これだから山間は…。しっかり拭いておけよ」
溜息をつきながら団服を脱ぐ神田。
彼の言葉に「はーい」と返事をしながら、荷物からタオルを一枚取り出す。
晴れた空の下で干したタオルはフカフカに仕上がっており、顔を埋めれば幸せな気持ちになった。
「名無し、俺の荷物からタオル取ってくれ」
「はい!」
長い丈の団服をハンガーに掛けながら神田が声を掛ける。
元気よく返事をした名無しは、神田が持っていた荷物のファスナーをいつも通り開けた。
そこには布らしい布は殆どなく、代わりに紙の束が目に入った。
本だ。
いや、雑誌と言った方が近いだろうか。
それなりの厚みがある雑誌がぎっちり詰め込まれていた。
しかし、残念ながら情報誌やファッション誌などではなく――水着の表紙は…まだ可愛らしい部類だった。
裸の女性が扇情的なポーズをとった、生々しい写真が印象的な雑誌だ。
――この際だ。はっきり言おう。
神田の荷物が七割、エロ本になっていた。
「!?」
あまりの衝撃的な事実に、思わず両手でカバンの口を咄嗟に隠す。
その衝撃的な光景を見るとすればカバンの持ち主の彼だけなのだが、それでも反射的に隠してしまうのが人間の性だろう。至ってまともな反応だ。
「…名無し?」
「へ!?あ、す、すみません!ファスナーが布を噛んだみたいで…あはは……。わ、私のタオルお貸ししますね!」
慌てて自分の荷物から予備のタオルを取り出す。
訝しげな表情を浮かべながら神田は「…あぁ」と返事をしたが――。
(……………いやいや、どうしてこうなったの。)
神田に隠すようにして、そっとカバンの中身をもう一度確認する。
エロ本。
カバンの大きさの割には、妙に少ない替えの服。
そして――
「…………………へっ!?」
思わず声を上げてしまった。
無理もない。
中から出てきたのはあからさまな形をした玩具だったのだから。
「……………どうした?」
「な、なんでもないです!」
「…そうか?ついでだ、任務の資料も出してくれ。」
「わっ…私のを、どうぞ!」
極限まで詰められた荷物に、任務の資料なんて見当たらない。
いや。入っていないはずはないのだろうが、恐らくエロ本の一番下に入っているのだろう。
取り出すのは至難の業だ。なぜなら、カバンの中身をひっくり返す必要があるから。
「……なんか隠してねぇか?」
「かっ、かくしてません!」
疑われている。
いや、自分に非は全くないのだから堂々とすればいいのだろうが……。
師匠兼恋人が、目の前でこれらを検閲する様を想像して欲しい。
どういう顔をすればいいのか分からないの。
「カバンから出てるのにか?」
「えっ、嘘!?」
慌てて後ろ手で隠していたカバンへ振り返る。
その隙を神田が見逃すはずもなく、呆気なく神田のカバン(仮)が取り上げられてしまった。
「…………………………………………………は?」
長い沈黙を経て、神田が声を上げる。
名無しはというと『この世のおしまいだ』と言わんばかりに耳と目を塞いでしゃがみこんでいた。
ベッドの上へひっくり返されるカバンの中身。
エロ本。
大人の玩具。
エロ本。
エロ本。
神田の着替え。
エロ本。
任務の資料。
エロ本。
エロ本。
大人の玩具。
神田の着替え。
以下、エロ本。
犯人は検討がついている。
十中八九、ラビだ。
「………あのクソうさぎ…」
地を這うような低い声に、名無しの背筋が反射的に伸びる。
……帰ったらラビの墓を建てようか。
そんなことを考えながら恐る恐る青筋を浮かべる師匠を見上げた。
うさぎの悪戯
「……前科一犯め…またやりやがった…」
「あ、二度目なんですね…」
「前はエロ本だけだったがな。」
「……荷物の重さで気がつきましょうね…。……ていうか何ですかこれ…。」
「バイブとローター」
「いや、そうじゃなくて。」
「使い方か?」
「いえ、あの、片方は見れば分かります。」
「…………………………とりあえず、任務は明日からだからな。」
「…あの、なんでその二つを持って、こっちに来るんです?」
「腹は立つが折角だからな。」
「何でそうなるんですか!!ちょっと、服に手を掛けるのはやめてくださっ……あー!」
名無しの可哀想な悲鳴が、山間の長閑な宿に響き渡った。
後日。
彼女の怒りを買ったラビは、コーヒーに豆板醤をたっぷり混ぜられたそうな。
「オイ、クソうさぎ。あれはどこで買った?」
「え。」
……余談だが。
あまりの辛さに悶絶しているラビの元へ、機嫌がさほど悪くない神田が問うてきたのは――名無しの知る由もない。
濡れ鼠になりながら到着した宿では小さな水たまりを作ってしまった。
「凄い雨でしたね…」
「これだから山間は…。しっかり拭いておけよ」
溜息をつきながら団服を脱ぐ神田。
彼の言葉に「はーい」と返事をしながら、荷物からタオルを一枚取り出す。
晴れた空の下で干したタオルはフカフカに仕上がっており、顔を埋めれば幸せな気持ちになった。
「名無し、俺の荷物からタオル取ってくれ」
「はい!」
長い丈の団服をハンガーに掛けながら神田が声を掛ける。
元気よく返事をした名無しは、神田が持っていた荷物のファスナーをいつも通り開けた。
そこには布らしい布は殆どなく、代わりに紙の束が目に入った。
本だ。
いや、雑誌と言った方が近いだろうか。
それなりの厚みがある雑誌がぎっちり詰め込まれていた。
しかし、残念ながら情報誌やファッション誌などではなく――水着の表紙は…まだ可愛らしい部類だった。
裸の女性が扇情的なポーズをとった、生々しい写真が印象的な雑誌だ。
――この際だ。はっきり言おう。
神田の荷物が七割、エロ本になっていた。
「!?」
あまりの衝撃的な事実に、思わず両手でカバンの口を咄嗟に隠す。
その衝撃的な光景を見るとすればカバンの持ち主の彼だけなのだが、それでも反射的に隠してしまうのが人間の性だろう。至ってまともな反応だ。
「…名無し?」
「へ!?あ、す、すみません!ファスナーが布を噛んだみたいで…あはは……。わ、私のタオルお貸ししますね!」
慌てて自分の荷物から予備のタオルを取り出す。
訝しげな表情を浮かべながら神田は「…あぁ」と返事をしたが――。
(……………いやいや、どうしてこうなったの。)
神田に隠すようにして、そっとカバンの中身をもう一度確認する。
エロ本。
カバンの大きさの割には、妙に少ない替えの服。
そして――
「…………………へっ!?」
思わず声を上げてしまった。
無理もない。
中から出てきたのはあからさまな形をした玩具だったのだから。
「……………どうした?」
「な、なんでもないです!」
「…そうか?ついでだ、任務の資料も出してくれ。」
「わっ…私のを、どうぞ!」
極限まで詰められた荷物に、任務の資料なんて見当たらない。
いや。入っていないはずはないのだろうが、恐らくエロ本の一番下に入っているのだろう。
取り出すのは至難の業だ。なぜなら、カバンの中身をひっくり返す必要があるから。
「……なんか隠してねぇか?」
「かっ、かくしてません!」
疑われている。
いや、自分に非は全くないのだから堂々とすればいいのだろうが……。
師匠兼恋人が、目の前でこれらを検閲する様を想像して欲しい。
どういう顔をすればいいのか分からないの。
「カバンから出てるのにか?」
「えっ、嘘!?」
慌てて後ろ手で隠していたカバンへ振り返る。
その隙を神田が見逃すはずもなく、呆気なく神田のカバン(仮)が取り上げられてしまった。
「…………………………………………………は?」
長い沈黙を経て、神田が声を上げる。
名無しはというと『この世のおしまいだ』と言わんばかりに耳と目を塞いでしゃがみこんでいた。
ベッドの上へひっくり返されるカバンの中身。
エロ本。
大人の玩具。
エロ本。
エロ本。
神田の着替え。
エロ本。
任務の資料。
エロ本。
エロ本。
大人の玩具。
神田の着替え。
以下、エロ本。
犯人は検討がついている。
十中八九、ラビだ。
「………あのクソうさぎ…」
地を這うような低い声に、名無しの背筋が反射的に伸びる。
……帰ったらラビの墓を建てようか。
そんなことを考えながら恐る恐る青筋を浮かべる師匠を見上げた。
うさぎの悪戯
「……前科一犯め…またやりやがった…」
「あ、二度目なんですね…」
「前はエロ本だけだったがな。」
「……荷物の重さで気がつきましょうね…。……ていうか何ですかこれ…。」
「バイブとローター」
「いや、そうじゃなくて。」
「使い方か?」
「いえ、あの、片方は見れば分かります。」
「…………………………とりあえず、任務は明日からだからな。」
「…あの、なんでその二つを持って、こっちに来るんです?」
「腹は立つが折角だからな。」
「何でそうなるんですか!!ちょっと、服に手を掛けるのはやめてくださっ……あー!」
名無しの可哀想な悲鳴が、山間の長閑な宿に響き渡った。
後日。
彼女の怒りを買ったラビは、コーヒーに豆板醤をたっぷり混ぜられたそうな。
「オイ、クソうさぎ。あれはどこで買った?」
「え。」
……余談だが。
あまりの辛さに悶絶しているラビの元へ、機嫌がさほど悪くない神田が問うてきたのは――名無しの知る由もない。