Re:pray
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あの、ラビさん。新聞をたくさん持っていらっしゃるって…聞いたんですけど、」
珍しい。
中々接点のない俺に、彼女が話しかけてくるなんて。
Re:pray#09
「ちょっとこれは多すぎやしませんか。」
緊張していた面持ちが一気に呆れた顔に変わる。
うんうん、大体この部屋見たヤツはそう言うさー。
「まぁ、次期ブックマンだからなー」
「えーっと…歴史を記録する人、でしたっけ」
「そんなとこ。」
今日はジジイもいないし、部屋でゆっくりされても構わないだろう。
強いて言うなら彼女の『師匠』が何を言ってくるやら。…あ、もしかしたら俺、刀の錆になるかも。
「うわぁ…世界中の新聞がありますね!凄い!これとか全然読めないです。」
「ん?あー、ロシアか。キリル文字もアルファベットの一種だから覚えたら面白いさ」
「ラビさん、読めるんですか!?」
印象的な黒い瞳を丸くして名無しが驚く。
うん、この反応は何かいいな。
「勿論さー。行ったことのある国なら、大抵は。」
「すごい!じゃあすっごく頭いいんじゃ…」
「いやいや~普通さ~」
よいしょする下心は微塵もなく、純粋に尊敬の目で見られるのは…うんうん、悪くない。
少なくともユウよりは頭いい・と言いかけたが、とりあえず黙っておこう。言わぬが花だ。
「えーっと、確かフランスの新聞だったよな。…読めるんさ?」
「……えーっと、」
フランス語で書かれた記事は…まぁそうだよな、やっと英語が不自由なく使えるようになったもんな。
「記事、探すの手伝うさ?」
「い、いえいえ、そこまで手を煩わせるわけには、」
「辞書でゆっくり引いて調べるのも勉強家で感心するけどな~。早く知りたいんだろ?」
図星だったのだろう。あれこれ悩み、ウンウンと唸った末「じゃあ…すみません。お願いします」と申し訳なさそうに彼女は言った。
同じ日本人なのにこの差はなんだろうな~。日本人の印象がガラリと変わるかもしれない。
…いや、あのパッツン剣士を基準にするのがそもそも間違いか。
「で、何を調べるんさ?」
「ええっと、任務に行ったのが一週間前だったから…それ以降の、モンサンミッシェルに関する記事を、」
あぁ、なるほど。
イノセンスを悪用して偽りの信仰を集めていた・っていう。
「ほいほい。ちょーっと待ってな、確かこの辺りに、」
新聞で埋め尽くされた床を漁り、まずはフランス新聞を探すことから始まる。
記事は覚えてるんだけどなぁ。どこに置いたやら。
…今度部屋を掃除することにするさ、うん。
***
「あぁ、よかった。島の人達は罰された様子がなくて…」
「まぁ、暫くはヴァチカンの目が光っているだろうけどなぁ。よかったな」
「はい!」
任務先で関わった人達の今後が、どうやら気に掛かったらしい。
そういえばこんな風に任務地の後の様子なんて、気にかけたことがなかった。
俺は勿論、アレンも、恐らくリナリーですら。
戦争でそれどころじゃなかった・と言えば正当化されるのかもしれないが。
イノセンスに少なからず関わってしまった一般人の様子が気になってしまう辺り、彼女は真っ当な感覚を持っていると言うべきだろう。
「モンサンミッシェルかぁ。俺は行ったことないさねー」
「オムレツが美味しかったです!」
あ。そっちか。
真っ先に食レポから入るあたり、何だか食欲大魔王である親友がダブって見えた。
「うんうん、他には?」
「えっと、任務の内容ってお話してもいいんですかね?」
「教団内だから問題ないさ~」
あぁ、そういうの気にするタイプか。年齢の割には考えがしっかりしているな・と感心してしまった。
「えーっと、そうですね。あ、列車!
列車に飛び乗るなんて人生初体験でした!」
あんなの一人では乗れないですね。
困ったように笑いながら名無しが楽しそうに語る。
列車で寝ていたら毛布を掛けてもらっていたこと。
フランスに行くために船に乗ったこと。
モンサンミッシェルの街並みから、司祭の言う『奇跡』を信じていた、多国籍の人達のこと。
任務の核心にはなるべけ触れないように、楽しかったことを掻い摘んで話をする少女の話は予想以上に面白かった。
それは俺の知らない友人の新しい一面や、彼女が島であった出来事を楽しそうに語っているからだろう。
まぁ「神田さんが、」「その時神田さんったら、」と、ユウの話をしている時が一番目をキラキラさせていたんだけど。
「ホントに名無しはユウに懐いてるんさねー」
「はい!尊敬する師匠ですから!」
屈折のない、眩い笑顔で即答される。
なるほど。これはあの仏頂面も絆されるわけだ。
「ユウの面白エピソード、また見つけたら教えて欲しいさ~」
「?、はい!」
ふにゃふにゃと可愛らしい笑顔で元気な返事をする彼の『弟子』。
(あーあ、俺も将来こんな素直で可愛い弟子が欲しいさねー)
まぁブックマンなんて役柄、自分のような性根が曲がった人間しか出来ないだろうけど。
にこにこと無邪気に笑う名無しを見て、俺もつられて笑みを零したのであった。
珍しい。
中々接点のない俺に、彼女が話しかけてくるなんて。
Re:pray#09
「ちょっとこれは多すぎやしませんか。」
緊張していた面持ちが一気に呆れた顔に変わる。
うんうん、大体この部屋見たヤツはそう言うさー。
「まぁ、次期ブックマンだからなー」
「えーっと…歴史を記録する人、でしたっけ」
「そんなとこ。」
今日はジジイもいないし、部屋でゆっくりされても構わないだろう。
強いて言うなら彼女の『師匠』が何を言ってくるやら。…あ、もしかしたら俺、刀の錆になるかも。
「うわぁ…世界中の新聞がありますね!凄い!これとか全然読めないです。」
「ん?あー、ロシアか。キリル文字もアルファベットの一種だから覚えたら面白いさ」
「ラビさん、読めるんですか!?」
印象的な黒い瞳を丸くして名無しが驚く。
うん、この反応は何かいいな。
「勿論さー。行ったことのある国なら、大抵は。」
「すごい!じゃあすっごく頭いいんじゃ…」
「いやいや~普通さ~」
よいしょする下心は微塵もなく、純粋に尊敬の目で見られるのは…うんうん、悪くない。
少なくともユウよりは頭いい・と言いかけたが、とりあえず黙っておこう。言わぬが花だ。
「えーっと、確かフランスの新聞だったよな。…読めるんさ?」
「……えーっと、」
フランス語で書かれた記事は…まぁそうだよな、やっと英語が不自由なく使えるようになったもんな。
「記事、探すの手伝うさ?」
「い、いえいえ、そこまで手を煩わせるわけには、」
「辞書でゆっくり引いて調べるのも勉強家で感心するけどな~。早く知りたいんだろ?」
図星だったのだろう。あれこれ悩み、ウンウンと唸った末「じゃあ…すみません。お願いします」と申し訳なさそうに彼女は言った。
同じ日本人なのにこの差はなんだろうな~。日本人の印象がガラリと変わるかもしれない。
…いや、あのパッツン剣士を基準にするのがそもそも間違いか。
「で、何を調べるんさ?」
「ええっと、任務に行ったのが一週間前だったから…それ以降の、モンサンミッシェルに関する記事を、」
あぁ、なるほど。
イノセンスを悪用して偽りの信仰を集めていた・っていう。
「ほいほい。ちょーっと待ってな、確かこの辺りに、」
新聞で埋め尽くされた床を漁り、まずはフランス新聞を探すことから始まる。
記事は覚えてるんだけどなぁ。どこに置いたやら。
…今度部屋を掃除することにするさ、うん。
***
「あぁ、よかった。島の人達は罰された様子がなくて…」
「まぁ、暫くはヴァチカンの目が光っているだろうけどなぁ。よかったな」
「はい!」
任務先で関わった人達の今後が、どうやら気に掛かったらしい。
そういえばこんな風に任務地の後の様子なんて、気にかけたことがなかった。
俺は勿論、アレンも、恐らくリナリーですら。
戦争でそれどころじゃなかった・と言えば正当化されるのかもしれないが。
イノセンスに少なからず関わってしまった一般人の様子が気になってしまう辺り、彼女は真っ当な感覚を持っていると言うべきだろう。
「モンサンミッシェルかぁ。俺は行ったことないさねー」
「オムレツが美味しかったです!」
あ。そっちか。
真っ先に食レポから入るあたり、何だか食欲大魔王である親友がダブって見えた。
「うんうん、他には?」
「えっと、任務の内容ってお話してもいいんですかね?」
「教団内だから問題ないさ~」
あぁ、そういうの気にするタイプか。年齢の割には考えがしっかりしているな・と感心してしまった。
「えーっと、そうですね。あ、列車!
列車に飛び乗るなんて人生初体験でした!」
あんなの一人では乗れないですね。
困ったように笑いながら名無しが楽しそうに語る。
列車で寝ていたら毛布を掛けてもらっていたこと。
フランスに行くために船に乗ったこと。
モンサンミッシェルの街並みから、司祭の言う『奇跡』を信じていた、多国籍の人達のこと。
任務の核心にはなるべけ触れないように、楽しかったことを掻い摘んで話をする少女の話は予想以上に面白かった。
それは俺の知らない友人の新しい一面や、彼女が島であった出来事を楽しそうに語っているからだろう。
まぁ「神田さんが、」「その時神田さんったら、」と、ユウの話をしている時が一番目をキラキラさせていたんだけど。
「ホントに名無しはユウに懐いてるんさねー」
「はい!尊敬する師匠ですから!」
屈折のない、眩い笑顔で即答される。
なるほど。これはあの仏頂面も絆されるわけだ。
「ユウの面白エピソード、また見つけたら教えて欲しいさ~」
「?、はい!」
ふにゃふにゃと可愛らしい笑顔で元気な返事をする彼の『弟子』。
(あーあ、俺も将来こんな素直で可愛い弟子が欲しいさねー)
まぁブックマンなんて役柄、自分のような性根が曲がった人間しか出来ないだろうけど。
にこにこと無邪気に笑う名無しを見て、俺もつられて笑みを零したのであった。