Re:pray
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真新しい団服。
驚く程にサイズがピッタリで、オーダーメイドの服のクオリティに驚いてしまった。
コムイに『スカートにする?可愛いよ?』と勧められたが丁重に遠慮した結果。
「…ショートパンツもどうなんだろう。」
動きやすいから、まぁよしとしよう。
冬はタイツを履いてしまえばそれなりに防寒になるだろうし。
渡された資料もしっかり読み解いた。
英語も不自由がない程度にはマスターした。
体力もそれなりに。思った以上に筋肉はつかなかったが、それは今後の課題にしておこう。
「よし。」
さぁ、初任務だ。
Re:pray#04
Mont Saint-Michel of heresy-01
「今回、は!アレンさんの、方舟使わないんですか!?」
「あれはモヤシが教団にいる時だけだ。今回は任務でいねぇからな。本来の行き方で向かうぞ。」
教団の地下水路から外へ出る。そこから最寄りの『線路』まで徒歩で向かう…のだが。
人里離れた場所に教団があるせいか、最寄り駅という駅はない。
そして何故か今、私は全力疾走をしている。
「間に合ったか。」
「な、何が、です…っひゃ、あ!?」
到着したのは鉄道の線路を跨ぐ大きな陸橋。
不意に小脇に抱えられ宙に浮く感覚に、思わず変な声が出た。
「あの、神田さん!?」
「降りるぞ。」
「お…降り…!?う、ひゃぁぁぁ!?」
それは翼が生えたかのような足取りだった。
ふわりと宙に舞う神田さんのコートの裾。長い黒髪。
とても絵になりそうな光景だっただろうが、私は思わず目を瞑ってしまった。
まさか、動いている列車に飛び乗ることになろうとは。
***
「せめて、心の準備をする時間は欲しかったです…」
「あれくらいの高さなら平気だろ。」
「え、えぇ…」
三階建てのアパートより高かった気がしたのは気のせいか?
そもそもフリーフォールがあまり好きではないというのに無茶苦茶すぎる。
しかも動いている汽車に。…うん。やっぱり無茶苦茶すぎる。
「少し前まであれが普通だったぞ。」
「どう考えても、良い子は真似したらダメな乗り方ですね。」
なるべくアレンさんがいる時に任務に行きたいものだ。
「ここから港へ向かって…船に乗って…ル・アーブルに向かうんですよね?」
「あぁ。」
コンパートメント席の向かいに座る神田さんは列車の旅に慣れているのだろう。
車窓を流れていく景色には目もくれず、黙々と資料に目を通していた。
…景色は気になるが、師匠がしっかり熟読しているのだ。私がはしゃぐわけにはいかないだろう。
チラリと景色を一瞥して、持ってきていたカバンから昨晩熟読した資料を取り出した。
少し眠いし、読み飽きたし…あぁ、徹夜するんじゃなかった。
「…景色見たいなら見とけ。初めてだろ」
列車の走る音に紛れて、ぽそりと聞こえる神田さんの声。
心中を見透かしたような一言に思わず目を丸くしてしまった。
「え、でも…」
「目にクマが出来るほど読んでるなら必要ないだろ。」
呆れたように小さく肩を竦める彼を見て、思わず目元を指で抑える。
車窓のガラスを見れば、確かに目の下が少し沈んだ色になってしまっていた。
「う…ぐ……じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて、」
「あぁ。」
情けないというか恥ずかしいというか。
車窓へ張り付くように外を見れば、きっとこの格好悪い目のクマを彼に見られることはないだろう。
(今度から徹夜で頭に叩き込むのはやめておこう)
緊張して眠れなかったとはいえ、今後はなるべく控えるようにしよう。
あぁ。早く任務に慣れなければ。
***
30分程、機嫌よく外の景色を眺めていたが、気がつけば壁に頭を預けて眠る名無しがいた。
規則的な揺れと、車輪の音が余程心地よかったのだろう。
通路を歩いていた乗務員に声をかけ、毛布を一枚受け取った。
それを肩までかけてやればあっという間に仮眠の体勢だ。春先とはいえ、まだイギリスは肌寒い。
(昔は逆の立場だったな)
ティエドール元帥に匿われ、各地を転々としていた時。
移動するために乗った鉄道でうたた寝をしていたら、いつの間にか毛布を掛けられていた事があった。
『風邪なんか引かねぇ身体だから、余計な世話しなくてもいい。』
今思えば、なんと生意気な発言だっただろうか。
気が立っていた。少しずつ自分に絶望していた。他人から与えられる優しさなんて迷惑なだけだと思っていた。
色々言い訳は立つだろうが当時のティエドールがどう思ったのか、俺には知る由がない。
それがどうだ。
元帥になって、初めての弟子を引き連れて任務に出ている。
違う点といえば、俺はかの師匠である元帥ほど人格者でもなければ、弟子である名無しは愚直なまでに素直ということ。
「…あんま肩肘張るなよ。」
柔らかく閉じられた瞼を縁取る、意外と長いまつ毛。
血色のいい頬にふわりと掛かった黒髪をそっと指で払えば、むにゃりと彼女の口元がそっと緩む。
(アホ面だな)
あまりにも無防備な寝顔を見ていると、こちらの気まで緩んでしまいそうになる。
不思議と…不愉快ではなかったが。
向かう先はモン・サン・ミッシェル。
修道院であり監獄だった、フランスの聖地へ。
驚く程にサイズがピッタリで、オーダーメイドの服のクオリティに驚いてしまった。
コムイに『スカートにする?可愛いよ?』と勧められたが丁重に遠慮した結果。
「…ショートパンツもどうなんだろう。」
動きやすいから、まぁよしとしよう。
冬はタイツを履いてしまえばそれなりに防寒になるだろうし。
渡された資料もしっかり読み解いた。
英語も不自由がない程度にはマスターした。
体力もそれなりに。思った以上に筋肉はつかなかったが、それは今後の課題にしておこう。
「よし。」
さぁ、初任務だ。
Re:pray#04
Mont Saint-Michel of heresy-01
「今回、は!アレンさんの、方舟使わないんですか!?」
「あれはモヤシが教団にいる時だけだ。今回は任務でいねぇからな。本来の行き方で向かうぞ。」
教団の地下水路から外へ出る。そこから最寄りの『線路』まで徒歩で向かう…のだが。
人里離れた場所に教団があるせいか、最寄り駅という駅はない。
そして何故か今、私は全力疾走をしている。
「間に合ったか。」
「な、何が、です…っひゃ、あ!?」
到着したのは鉄道の線路を跨ぐ大きな陸橋。
不意に小脇に抱えられ宙に浮く感覚に、思わず変な声が出た。
「あの、神田さん!?」
「降りるぞ。」
「お…降り…!?う、ひゃぁぁぁ!?」
それは翼が生えたかのような足取りだった。
ふわりと宙に舞う神田さんのコートの裾。長い黒髪。
とても絵になりそうな光景だっただろうが、私は思わず目を瞑ってしまった。
まさか、動いている列車に飛び乗ることになろうとは。
***
「せめて、心の準備をする時間は欲しかったです…」
「あれくらいの高さなら平気だろ。」
「え、えぇ…」
三階建てのアパートより高かった気がしたのは気のせいか?
そもそもフリーフォールがあまり好きではないというのに無茶苦茶すぎる。
しかも動いている汽車に。…うん。やっぱり無茶苦茶すぎる。
「少し前まであれが普通だったぞ。」
「どう考えても、良い子は真似したらダメな乗り方ですね。」
なるべくアレンさんがいる時に任務に行きたいものだ。
「ここから港へ向かって…船に乗って…ル・アーブルに向かうんですよね?」
「あぁ。」
コンパートメント席の向かいに座る神田さんは列車の旅に慣れているのだろう。
車窓を流れていく景色には目もくれず、黙々と資料に目を通していた。
…景色は気になるが、師匠がしっかり熟読しているのだ。私がはしゃぐわけにはいかないだろう。
チラリと景色を一瞥して、持ってきていたカバンから昨晩熟読した資料を取り出した。
少し眠いし、読み飽きたし…あぁ、徹夜するんじゃなかった。
「…景色見たいなら見とけ。初めてだろ」
列車の走る音に紛れて、ぽそりと聞こえる神田さんの声。
心中を見透かしたような一言に思わず目を丸くしてしまった。
「え、でも…」
「目にクマが出来るほど読んでるなら必要ないだろ。」
呆れたように小さく肩を竦める彼を見て、思わず目元を指で抑える。
車窓のガラスを見れば、確かに目の下が少し沈んだ色になってしまっていた。
「う…ぐ……じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて、」
「あぁ。」
情けないというか恥ずかしいというか。
車窓へ張り付くように外を見れば、きっとこの格好悪い目のクマを彼に見られることはないだろう。
(今度から徹夜で頭に叩き込むのはやめておこう)
緊張して眠れなかったとはいえ、今後はなるべく控えるようにしよう。
あぁ。早く任務に慣れなければ。
***
30分程、機嫌よく外の景色を眺めていたが、気がつけば壁に頭を預けて眠る名無しがいた。
規則的な揺れと、車輪の音が余程心地よかったのだろう。
通路を歩いていた乗務員に声をかけ、毛布を一枚受け取った。
それを肩までかけてやればあっという間に仮眠の体勢だ。春先とはいえ、まだイギリスは肌寒い。
(昔は逆の立場だったな)
ティエドール元帥に匿われ、各地を転々としていた時。
移動するために乗った鉄道でうたた寝をしていたら、いつの間にか毛布を掛けられていた事があった。
『風邪なんか引かねぇ身体だから、余計な世話しなくてもいい。』
今思えば、なんと生意気な発言だっただろうか。
気が立っていた。少しずつ自分に絶望していた。他人から与えられる優しさなんて迷惑なだけだと思っていた。
色々言い訳は立つだろうが当時のティエドールがどう思ったのか、俺には知る由がない。
それがどうだ。
元帥になって、初めての弟子を引き連れて任務に出ている。
違う点といえば、俺はかの師匠である元帥ほど人格者でもなければ、弟子である名無しは愚直なまでに素直ということ。
「…あんま肩肘張るなよ。」
柔らかく閉じられた瞼を縁取る、意外と長いまつ毛。
血色のいい頬にふわりと掛かった黒髪をそっと指で払えば、むにゃりと彼女の口元がそっと緩む。
(アホ面だな)
あまりにも無防備な寝顔を見ていると、こちらの気まで緩んでしまいそうになる。
不思議と…不愉快ではなかったが。
向かう先はモン・サン・ミッシェル。
修道院であり監獄だった、フランスの聖地へ。