Re:pray
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「クソ、厄介だな…」
「まるでカメレオンじゃないですか」
翌日。
アクマ製造を行っているミニプラントを発見することが出来た。
が、やはり破壊に至るに一筋縄ではいかず『ジャングル』に特化したレベル3のアクマがいた。
頬に出来た擦り傷を団服の裾で強引に拭う神田と、退魔ノ剣を構えながらも身動きが出来ないアレン。
勿論、彼に内蔵された『アクマの魂』が見えているのだが如何せん、
「こうも動きが速くちゃ捉えるのも難しいですよ」
「チッ、使えねぇな」
「障害物が多いから仕方ないでしょう!っていうか神田だってそうじゃないですか!」
自分のことを棚に上げ文句を言う神田に対し、青筋を立てるアレン。
二人の背中をトントンと叩き、黙って話を聞いていた名無しがひょこりと顔を出した。
「あの、そのアクマ、私に任せて貰ってもいいですか?」
Re:pray#12
jungle cruise-02
「いいですか?名無し。」
「はい。じゃあ、せーのでプラント破壊に走りましょう。お二人はあの守化縷とプラントをお願いしますね」
「本当に上手くいくのか?」
三人同時に走り出せば、誰かをターゲットにするはず。
その中で一番『弱い』のは、
(間違いなく私を狙ってくる)
一見丸腰、走るのも一番遅い。
女であるし一番幼い。
「獣っぽいアクマなら多分十中八九こっちに来るはずなので。ほら、動物の狩りだって逃げ遅れた草食動物から食べられますし。」
これは勘だ。
動きや行動パターンを見ていると、それは狩りをするヒョウのようで、狡猾なカメレオンのようだった。
「――行きますよ。せーの、」
アレンと神田が地面を叩き割り、大きく土煙を上げる。
一見煙幕のように見えるが、目的はそうじゃない。
(土煙の中でも恐らくアクマはこっちが見えている。『煙幕』目的だと錯覚しているなら、)
三方へ散り、プラントに向かって走る。
そう。私は囮だ。
擬態して見えないのなら『見えるようにしてやればいい』話だ。
踵を返し、振り返る。
土煙が不自然な動きをした瞬間を、見逃しはしなかった。
槍のように突き穿つ、アクマの爪。
腹部を狙ったそれを半身で躱すが、僅かに腹の肉を抉っていく。
「見ぃ、つけ、た!」
生々しい傷を掴み、肉を更に抉る。
血を絵の具のようにスプラッタリングすれば『何か』に血飛沫が飛び散った。
血で染まった手で、アクマの腕を『捕らえる』。
振り払われる前に、殺される前に、
さぁ、『視ろ』。
確かにそこに【在る】ならば、見えないはずがない。
掴んだアクマの腕はペイント代わりの赤い血で確かに輪郭を成し、そこへ確かにいるのだ。
いないわけがない。
そこに『いる』。
さぁ、視ろ。この眼ならば捉えられる。
視ろ、
――『視ろ』!
掴んだ腕の反対側の爪が眼前に迫る。
それはまるでスローモーションのように『視えた』。
鼻先数センチのところで、掴んでいたアクマの腕が霧散する。
光の粒子になって土煙へ溶けていった。
「…はー、」
気が抜けたように地面に座り込み、団服の袖で目元を擦る。
土煙の中、両目を見開いていたからかゴロゴロして仕方がない。
「名無し!大丈夫ですか!?」
薄くなってきた土煙の向こうから駆けてきたのはアレンだ。
白銀の髪が揺れ、柔らかい目元が険しく細められる。
…あ、怪我のことか。
「け、怪我しているじゃないですか!」
「や。見た目程深くないので大丈夫です。こうなるつもりでしたし、」
「は、はい!?」
包帯替わりに団服を裂こうとするアレンを必死に止めていると、六幻を鞘に納めながら神田がやってくる。
名無しの傷口を見て小さく舌打ちすると、彼女に対して珍しく不機嫌そうに口を開いた。
「わざと腹を切らせたのか」
神田の言葉に目を丸くしたのはアレンだけ。
名無しは特に動揺する素振りもなく、「はい。」とすんなり頷いた。
「障害物があって動きにくいなら拓けた場所に出てしまえばいい。
囮役は一番『弱そう』な私が適任だと思いましたし、土煙が不自然な動きしてる方角から来るのは分かってました。
アクマが見えないなら、返り血で見えるようにしてしまえば早いかなーって思いまして。」
へらっと気の抜けた笑顔で答える名無し。
理に適っている。
確かにそうだ。それが最適解だろう。
「んなことしてたらいつか死ぬぞ。」
忌々しそうに神田が言うと、名無しは小さく笑った。
彼女にしては珍しく、曖昧に、返事も返さず。
「……チッ。いいから傷見せろ」
「ちょ、ちょっと神田!女の子相手ですよ!」
破れた団服を掴めば指先が生温い血でグチャりと濡れる。
そんなことお構い無しに傷口周りの布を裂こうとするものだから、手当に賛成のアレンも慌てて止めた。
「わ、わ、だ、大丈夫ですから!止血なんて適当にパパーッと布で縛って自分でやりますから!」
「うるせぇ」
苛立ちに任せたまま腹部周りの団服を破れば、生々しい傷。
日に焼けていない白い肌。
同じ場所に『何か』が貫通したような、古い傷跡。
それはアクマに切りつけられたものより深く、柔らかそうな腹には異質な程に大きな古傷。
お世辞にも綺麗に塞がっているとは言えないケロイド状の傷跡は、神田の動きを止めるには十分な代物だった。
「ほ、ほら。慣れているんです、大丈夫ですから早く帰りましょう?」
困ったように眉を寄せて笑う名無し。
――あぁ。ほら『また』だ。
彼女に感じる違和感。
それは初めて会った時から少しずつ、疑問が確信に変わっていく。
(俺は、)
何も知らない。
彼女のことを。
…知ろうとも、していなかった。
「まるでカメレオンじゃないですか」
翌日。
アクマ製造を行っているミニプラントを発見することが出来た。
が、やはり破壊に至るに一筋縄ではいかず『ジャングル』に特化したレベル3のアクマがいた。
頬に出来た擦り傷を団服の裾で強引に拭う神田と、退魔ノ剣を構えながらも身動きが出来ないアレン。
勿論、彼に内蔵された『アクマの魂』が見えているのだが如何せん、
「こうも動きが速くちゃ捉えるのも難しいですよ」
「チッ、使えねぇな」
「障害物が多いから仕方ないでしょう!っていうか神田だってそうじゃないですか!」
自分のことを棚に上げ文句を言う神田に対し、青筋を立てるアレン。
二人の背中をトントンと叩き、黙って話を聞いていた名無しがひょこりと顔を出した。
「あの、そのアクマ、私に任せて貰ってもいいですか?」
Re:pray#12
jungle cruise-02
「いいですか?名無し。」
「はい。じゃあ、せーのでプラント破壊に走りましょう。お二人はあの守化縷とプラントをお願いしますね」
「本当に上手くいくのか?」
三人同時に走り出せば、誰かをターゲットにするはず。
その中で一番『弱い』のは、
(間違いなく私を狙ってくる)
一見丸腰、走るのも一番遅い。
女であるし一番幼い。
「獣っぽいアクマなら多分十中八九こっちに来るはずなので。ほら、動物の狩りだって逃げ遅れた草食動物から食べられますし。」
これは勘だ。
動きや行動パターンを見ていると、それは狩りをするヒョウのようで、狡猾なカメレオンのようだった。
「――行きますよ。せーの、」
アレンと神田が地面を叩き割り、大きく土煙を上げる。
一見煙幕のように見えるが、目的はそうじゃない。
(土煙の中でも恐らくアクマはこっちが見えている。『煙幕』目的だと錯覚しているなら、)
三方へ散り、プラントに向かって走る。
そう。私は囮だ。
擬態して見えないのなら『見えるようにしてやればいい』話だ。
踵を返し、振り返る。
土煙が不自然な動きをした瞬間を、見逃しはしなかった。
槍のように突き穿つ、アクマの爪。
腹部を狙ったそれを半身で躱すが、僅かに腹の肉を抉っていく。
「見ぃ、つけ、た!」
生々しい傷を掴み、肉を更に抉る。
血を絵の具のようにスプラッタリングすれば『何か』に血飛沫が飛び散った。
血で染まった手で、アクマの腕を『捕らえる』。
振り払われる前に、殺される前に、
さぁ、『視ろ』。
確かにそこに【在る】ならば、見えないはずがない。
掴んだアクマの腕はペイント代わりの赤い血で確かに輪郭を成し、そこへ確かにいるのだ。
いないわけがない。
そこに『いる』。
さぁ、視ろ。この眼ならば捉えられる。
視ろ、
――『視ろ』!
掴んだ腕の反対側の爪が眼前に迫る。
それはまるでスローモーションのように『視えた』。
鼻先数センチのところで、掴んでいたアクマの腕が霧散する。
光の粒子になって土煙へ溶けていった。
「…はー、」
気が抜けたように地面に座り込み、団服の袖で目元を擦る。
土煙の中、両目を見開いていたからかゴロゴロして仕方がない。
「名無し!大丈夫ですか!?」
薄くなってきた土煙の向こうから駆けてきたのはアレンだ。
白銀の髪が揺れ、柔らかい目元が険しく細められる。
…あ、怪我のことか。
「け、怪我しているじゃないですか!」
「や。見た目程深くないので大丈夫です。こうなるつもりでしたし、」
「は、はい!?」
包帯替わりに団服を裂こうとするアレンを必死に止めていると、六幻を鞘に納めながら神田がやってくる。
名無しの傷口を見て小さく舌打ちすると、彼女に対して珍しく不機嫌そうに口を開いた。
「わざと腹を切らせたのか」
神田の言葉に目を丸くしたのはアレンだけ。
名無しは特に動揺する素振りもなく、「はい。」とすんなり頷いた。
「障害物があって動きにくいなら拓けた場所に出てしまえばいい。
囮役は一番『弱そう』な私が適任だと思いましたし、土煙が不自然な動きしてる方角から来るのは分かってました。
アクマが見えないなら、返り血で見えるようにしてしまえば早いかなーって思いまして。」
へらっと気の抜けた笑顔で答える名無し。
理に適っている。
確かにそうだ。それが最適解だろう。
「んなことしてたらいつか死ぬぞ。」
忌々しそうに神田が言うと、名無しは小さく笑った。
彼女にしては珍しく、曖昧に、返事も返さず。
「……チッ。いいから傷見せろ」
「ちょ、ちょっと神田!女の子相手ですよ!」
破れた団服を掴めば指先が生温い血でグチャりと濡れる。
そんなことお構い無しに傷口周りの布を裂こうとするものだから、手当に賛成のアレンも慌てて止めた。
「わ、わ、だ、大丈夫ですから!止血なんて適当にパパーッと布で縛って自分でやりますから!」
「うるせぇ」
苛立ちに任せたまま腹部周りの団服を破れば、生々しい傷。
日に焼けていない白い肌。
同じ場所に『何か』が貫通したような、古い傷跡。
それはアクマに切りつけられたものより深く、柔らかそうな腹には異質な程に大きな古傷。
お世辞にも綺麗に塞がっているとは言えないケロイド状の傷跡は、神田の動きを止めるには十分な代物だった。
「ほ、ほら。慣れているんです、大丈夫ですから早く帰りましょう?」
困ったように眉を寄せて笑う名無し。
――あぁ。ほら『また』だ。
彼女に感じる違和感。
それは初めて会った時から少しずつ、疑問が確信に変わっていく。
(俺は、)
何も知らない。
彼女のことを。
…知ろうとも、していなかった。