Re:set
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「シンプルなシャツとズボンだけでモデルさんみたいに見えますね」
「…服まで悪いな」
「いえいえ。家にあった服が殆どサイズ合わないのはなんとなく予想していましたし。」
大手量販メーカーの安売りチラシを片手に服を見繕えば、それは立派なマネキンかと見紛うほどだった。
どうせならいい服を…と言いたいところだが、お金も無限ではない。
まぁ、ユニ〇ロでスーパーモデルの爆誕に立ち会えたのは、予想外だった。
Re:set#04
「…楽しそうだな」
ポツリと呟けば、これまた間抜け面で振り返る名無し。
印象的な黒い瞳が、意外そうに瞬きを何度か繰り返した。
あれやこれやと楽しそうに選んでいる後ろ姿は、街へ立ち寄った時のリナリーを思い出してしまう。
どうして女はこうも買い物が楽しいのだろうか。未だに理解出来なかった。
「そりゃ同居人が増えるなんて一大イベント、楽しいに決まっているじゃないですか」
ふにゃふにゃと笑いながら語る名無しの言葉には裏がない。
そもそも嘘をつく必要がないからか。
…恐らく後者だろう。
「神田さん、あまりお買い物されないんですか?」
「しねぇな。仕事ばかりだったからな」
「えぇ〜まだお若いのに勿体ない。」
お前の方が歳下だろうが。
まるで老婆のような物言いに物申したくなるが、言葉をぐっと呑み込んだ。
ノアとの戦争は教団の勝利で終わったとはいえ、各地にはまだアクマが蔓延っているのが現状だ。
伯爵が巻いた種は根深く、人の業もまた深い。
それの後処理と、今後起きうるかもしれない戦争に備え、イノセンスの回収が現在の教団としての主な任務だ。
…まぁ、その回収任務の最中に事故に巻き込まれてしまったわけだが。
神が創りし物質と言われてはいるが、傍迷惑なモノであることに変わりはない。
「神田さん?」
無遠慮に見上げてくる黒い瞳と、視線が絡む。
『人の話を聞いていませんでしたね?』と言いたげな双眸が、じとりと僅かに細められた。
「聞いてなかった。」
「もう。折角雑貨屋さんで髪紐見つけたのに。赤と青、どっちがお好きですか?」
不満げな色は一瞬で成りを潜め、にこにこと上機嫌で髪紐を見せてくる。
…結べるなら正直どちらでもいいとは言えない。
なんならこの黒い髪ゴムだって十分だ。
しかし此処で『どうでもいい』と答えれば女は不機嫌になるのだと、リナリーで嫌というほど学習している。
「…お前はどっちがいいと思う?」
「私ですか?うーん…両方捨てがたいですけど、赤の方がいいなぁ」
「じゃあそれで。」
そう答えれば「わかりました」とひとつ頷いて、軽やかな足取りで会計を済ませる名無し。
ご丁寧にラッピングまでして、だ。
「どうぞ、神田さん。同居記念です!」
「…ラッピングする必要はあったのか?」
「してもらった方が何だか嬉しくないですか?」
ふにゃふにゃと機嫌よく笑う名無しに対して『別にそんなことはないな』とは言えなかった。
恐らく、普通の環境で過ごしてきた人間としては、その感覚が正常なのだろうから。
「そういう機会はあまりなかったからな」
「お仕事一筋だった、からですか?」
「まぁな」
「じゃあ私が贈り物した人、第一号ですね!」
誇らしげに笑う名無しを見て、思わず小さく肩を竦める。
…あぁ。確かに、人からこういう物を貰うのは初めてかもしれない。
(存外、悪くないもんだな)
贈られた側より贈った人間の方が上機嫌なのはどうなのかと、自分でも思うが。
***
「お買い物の荷物まで持ってもらってすみません」
「居候だぞ。こういう時に使ってなんぼだろう」
袋が擦れる耳障りな音が、歩く度にガサガサと鳴る。
普段は六幻を持っているはずの手には袋いっぱいの食材。
こんな様を教団の連中に見られたらなんて言われるやら。
間違いなくモヤシとウサギはからかってくるだろうな。
通信機が壊れていてほんの少しだけ良かったと安心してしまった。
「神田さん、買い物袋は冷蔵庫の前に置いといて頂けますか?」
「あぁ。」
名無しは歯ブラシなどが入った袋を片手に、脱衣所へ向かった。
夕方から名無しは『仕事』だと言っていた。帰ってくるのは深夜らしい。
…それまで暇を持て余すことになりそうだ。
街へ手がかりを探しにいくか?
しかし夜になってからだと地形が把握しにくい。
(イノセンスを持っていないエクソシストは、中々役に立たないもんだな)
自嘲気味に鼻で小さく笑い、買い物袋を冷蔵庫の前に下ろした時だった。
「う、ひゃあ!?」
脱衣所の方から裏返った悲鳴が聞こえてくる。
何か落としたのだろうか、ガタガタと鈍い音も交えて。
「どうし、た…?」
『あ!ユウ、無事さ〜?』
一日ぶりに聞いた、例のクソウサギ…ラビの声だ。
こっちはえらい目にあっているというのに、あまりに呑気な声に苛立ちがふつふつと蘇ってくる。
「か、神田さん。あの、コウモリ…みたいなの?
ものすごく流暢に…英語…を、喋ってませんか?」
「……あぁ、そうだな。」
『女の子!女の子の声だ!アレン、ユウが女の子と一緒に、』
ブチッ。
ゴーレムのスイッチを切れば静かになる室内。
英語で捲し立てる耳障りなラビの声が聞こえなくなるだけで、なんと快適な空間だろうか。
「…切っちゃって良かったんですか?」
「電話みたいなものだ。あとで繋げ直す」
しかしどうしたことか。
ゴーレムは完全に壊れてしまっていた。それは間違いない。
それなのに、突然動き出すだなんて。
(…後でゴーレムを調べてみるか)
ほっと安心したように息をつく名無しを尻目に、俺は掌の中で大人しくなったゴーレムをポケットにしまい込んだ。
「…服まで悪いな」
「いえいえ。家にあった服が殆どサイズ合わないのはなんとなく予想していましたし。」
大手量販メーカーの安売りチラシを片手に服を見繕えば、それは立派なマネキンかと見紛うほどだった。
どうせならいい服を…と言いたいところだが、お金も無限ではない。
まぁ、ユニ〇ロでスーパーモデルの爆誕に立ち会えたのは、予想外だった。
Re:set#04
「…楽しそうだな」
ポツリと呟けば、これまた間抜け面で振り返る名無し。
印象的な黒い瞳が、意外そうに瞬きを何度か繰り返した。
あれやこれやと楽しそうに選んでいる後ろ姿は、街へ立ち寄った時のリナリーを思い出してしまう。
どうして女はこうも買い物が楽しいのだろうか。未だに理解出来なかった。
「そりゃ同居人が増えるなんて一大イベント、楽しいに決まっているじゃないですか」
ふにゃふにゃと笑いながら語る名無しの言葉には裏がない。
そもそも嘘をつく必要がないからか。
…恐らく後者だろう。
「神田さん、あまりお買い物されないんですか?」
「しねぇな。仕事ばかりだったからな」
「えぇ〜まだお若いのに勿体ない。」
お前の方が歳下だろうが。
まるで老婆のような物言いに物申したくなるが、言葉をぐっと呑み込んだ。
ノアとの戦争は教団の勝利で終わったとはいえ、各地にはまだアクマが蔓延っているのが現状だ。
伯爵が巻いた種は根深く、人の業もまた深い。
それの後処理と、今後起きうるかもしれない戦争に備え、イノセンスの回収が現在の教団としての主な任務だ。
…まぁ、その回収任務の最中に事故に巻き込まれてしまったわけだが。
神が創りし物質と言われてはいるが、傍迷惑なモノであることに変わりはない。
「神田さん?」
無遠慮に見上げてくる黒い瞳と、視線が絡む。
『人の話を聞いていませんでしたね?』と言いたげな双眸が、じとりと僅かに細められた。
「聞いてなかった。」
「もう。折角雑貨屋さんで髪紐見つけたのに。赤と青、どっちがお好きですか?」
不満げな色は一瞬で成りを潜め、にこにこと上機嫌で髪紐を見せてくる。
…結べるなら正直どちらでもいいとは言えない。
なんならこの黒い髪ゴムだって十分だ。
しかし此処で『どうでもいい』と答えれば女は不機嫌になるのだと、リナリーで嫌というほど学習している。
「…お前はどっちがいいと思う?」
「私ですか?うーん…両方捨てがたいですけど、赤の方がいいなぁ」
「じゃあそれで。」
そう答えれば「わかりました」とひとつ頷いて、軽やかな足取りで会計を済ませる名無し。
ご丁寧にラッピングまでして、だ。
「どうぞ、神田さん。同居記念です!」
「…ラッピングする必要はあったのか?」
「してもらった方が何だか嬉しくないですか?」
ふにゃふにゃと機嫌よく笑う名無しに対して『別にそんなことはないな』とは言えなかった。
恐らく、普通の環境で過ごしてきた人間としては、その感覚が正常なのだろうから。
「そういう機会はあまりなかったからな」
「お仕事一筋だった、からですか?」
「まぁな」
「じゃあ私が贈り物した人、第一号ですね!」
誇らしげに笑う名無しを見て、思わず小さく肩を竦める。
…あぁ。確かに、人からこういう物を貰うのは初めてかもしれない。
(存外、悪くないもんだな)
贈られた側より贈った人間の方が上機嫌なのはどうなのかと、自分でも思うが。
***
「お買い物の荷物まで持ってもらってすみません」
「居候だぞ。こういう時に使ってなんぼだろう」
袋が擦れる耳障りな音が、歩く度にガサガサと鳴る。
普段は六幻を持っているはずの手には袋いっぱいの食材。
こんな様を教団の連中に見られたらなんて言われるやら。
間違いなくモヤシとウサギはからかってくるだろうな。
通信機が壊れていてほんの少しだけ良かったと安心してしまった。
「神田さん、買い物袋は冷蔵庫の前に置いといて頂けますか?」
「あぁ。」
名無しは歯ブラシなどが入った袋を片手に、脱衣所へ向かった。
夕方から名無しは『仕事』だと言っていた。帰ってくるのは深夜らしい。
…それまで暇を持て余すことになりそうだ。
街へ手がかりを探しにいくか?
しかし夜になってからだと地形が把握しにくい。
(イノセンスを持っていないエクソシストは、中々役に立たないもんだな)
自嘲気味に鼻で小さく笑い、買い物袋を冷蔵庫の前に下ろした時だった。
「う、ひゃあ!?」
脱衣所の方から裏返った悲鳴が聞こえてくる。
何か落としたのだろうか、ガタガタと鈍い音も交えて。
「どうし、た…?」
『あ!ユウ、無事さ〜?』
一日ぶりに聞いた、例のクソウサギ…ラビの声だ。
こっちはえらい目にあっているというのに、あまりに呑気な声に苛立ちがふつふつと蘇ってくる。
「か、神田さん。あの、コウモリ…みたいなの?
ものすごく流暢に…英語…を、喋ってませんか?」
「……あぁ、そうだな。」
『女の子!女の子の声だ!アレン、ユウが女の子と一緒に、』
ブチッ。
ゴーレムのスイッチを切れば静かになる室内。
英語で捲し立てる耳障りなラビの声が聞こえなくなるだけで、なんと快適な空間だろうか。
「…切っちゃって良かったんですか?」
「電話みたいなものだ。あとで繋げ直す」
しかしどうしたことか。
ゴーレムは完全に壊れてしまっていた。それは間違いない。
それなのに、突然動き出すだなんて。
(…後でゴーレムを調べてみるか)
ほっと安心したように息をつく名無しを尻目に、俺は掌の中で大人しくなったゴーレムをポケットにしまい込んだ。