Re:set
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団服のポケットを探れば大したものは入っていなかった。
入っていたのは唯一の連絡手段であるゴーレムがひとつ。
残念ながらこちらへ『とんだ』時に壊れてしまったのだろう。
忙しなく羽ばたいているはずの機械は、死んだように動かなくなってしまっていた。
――さて、どうするか。
丁寧に畳まれ、用意された着替えとタオルを手に俺は小さく溜息をついた。
…帰ったら、ヘマをしたクソウサギを思い切り殴っておこう。
Re:set#03
「おい。」
『名無し名無し』と名乗った女へ声をかければ、勢いよく顔を上げられる。
部屋いっぱいに広がる香ばしい香りは…パンを焼いた匂いだろうか。
食器が二組ずつ用意されているところを見ると、どうやら俺の分の食事も用意してくれるらしい。
「あぁ。服、なんとか着れて良かった。どうかされましたか?」
安心したように破顔するが、やはりどこか緊張したような面持ちだ。
…一応、恩人だ。
なるべく圧を感じさせないよう心掛けよう。
「髪紐、あるか?」
「紐。ええっと、少し待ってくださいね」
コンロの火を弱火にした後、慌ただしく部屋を出る名無し。
ちょこまかと動く姿はまるで小動物のようだった。
「これでいいですか?」
持ってきたものは何の変哲もない黒い髪ゴムと…女物であろう。モコモコとした、あからさまに可愛らしい髪ゴムも用意されていた。
当たり前だが、シンプルな黒い髪ゴムを受け取った。
しかし彼女はそんな髪が長くないというのに、髪紐のようなものがあったこと自体驚きだった。
髪が長かった時期でもあったのだろうか、少し使われた形跡が残っている。
「あぁ。悪い」
「いえいえ。」
黒い髪ゴムを受け取れば、名無しはふにゃふにゃと呑気に笑う。
…俺を女と勘違いしていたとはいえ、あからさまに怪しい人間を家に招く辺り、警戒心が薄いのかもしれない。
こちらとしては助かったが、半ば呆れてしまうのも事実だ。
「朝ごはんにしましょう。お腹、空いていませんか?」
ふわふわと毒気を抜くような表情につられ、俺は小さく頷いた。
***
「へー…じゃあ神田さんは妙な遺跡物を調べてて、ひょんな事故であそこに倒れていたんですね」
「帰る手段は今のところ分からんがな」
教団のことはなるべく伏せて話をすれば、あまりにも突拍子のない話であるにも関わらず、食後の茶を飲みながら目の前の少女は納得したように小さく頷いた。
…話す俺も俺だが、普通信じるか?
そう言いたげな視線を向ければ「世の中、何が起こるか分かりませんね…」と感慨深そうに呟いていた。
……『愚直』という言葉が脳裏に過ぎる。
バカなのか、それとも大物なのか。はたまた何も考えていない可能性もある。
「そうだ、帰れるようになるまでうちにいますか?」
「……その事だが。期待していなかったといえば嘘になる。けどな、見知らぬ怪しい男を家に匿うか?普通。」
駄々漏れるお人好しオーラも、度が過ぎれば能天気にしか映らない。
今はこれに頼るしかないのだが、他人事とはいえ心配になるのが正直な感想だ。
「いやぁ…だって、神田さん困ってますし。」
事実だ。
しかし考えすぎかもしれないが、何か裏でもあるのではないのかと勘繰ってしまう。
じっと黙ったまま見続ければ、名無しは観念したように小さく苦笑いを零した。
「まぁ、その…一人暮らしは寂しいなーって思っていたんです。理由、それじゃダメですか?」
なんともまぁ単純明快というか。
一見すれば呆れ返ってしまいそうな理由だが、少なくともそれは嘘ではないだろう。
荷物は整理しているが、それでも『誰かと住んでいた』形跡がある。
そう。例えば、棚の上の写真とか。誰かが使っていたであろう服とか。
「…いや。妙なことを聞いたな。暫く世話になる。」
「いえいえ、気にしないでください。帰れるようになるまで、私も出来る限りお手伝いしますから!」
元気のいい子犬よろしく、やる気に溢れている目の前の少女。
…あぁ。底抜けに明るいとは、まさにこういうことを言うのだろう。
こうして、俺は暫く名無し名無しの元で世話になることになった。
入っていたのは唯一の連絡手段であるゴーレムがひとつ。
残念ながらこちらへ『とんだ』時に壊れてしまったのだろう。
忙しなく羽ばたいているはずの機械は、死んだように動かなくなってしまっていた。
――さて、どうするか。
丁寧に畳まれ、用意された着替えとタオルを手に俺は小さく溜息をついた。
…帰ったら、ヘマをしたクソウサギを思い切り殴っておこう。
Re:set#03
「おい。」
『名無し名無し』と名乗った女へ声をかければ、勢いよく顔を上げられる。
部屋いっぱいに広がる香ばしい香りは…パンを焼いた匂いだろうか。
食器が二組ずつ用意されているところを見ると、どうやら俺の分の食事も用意してくれるらしい。
「あぁ。服、なんとか着れて良かった。どうかされましたか?」
安心したように破顔するが、やはりどこか緊張したような面持ちだ。
…一応、恩人だ。
なるべく圧を感じさせないよう心掛けよう。
「髪紐、あるか?」
「紐。ええっと、少し待ってくださいね」
コンロの火を弱火にした後、慌ただしく部屋を出る名無し。
ちょこまかと動く姿はまるで小動物のようだった。
「これでいいですか?」
持ってきたものは何の変哲もない黒い髪ゴムと…女物であろう。モコモコとした、あからさまに可愛らしい髪ゴムも用意されていた。
当たり前だが、シンプルな黒い髪ゴムを受け取った。
しかし彼女はそんな髪が長くないというのに、髪紐のようなものがあったこと自体驚きだった。
髪が長かった時期でもあったのだろうか、少し使われた形跡が残っている。
「あぁ。悪い」
「いえいえ。」
黒い髪ゴムを受け取れば、名無しはふにゃふにゃと呑気に笑う。
…俺を女と勘違いしていたとはいえ、あからさまに怪しい人間を家に招く辺り、警戒心が薄いのかもしれない。
こちらとしては助かったが、半ば呆れてしまうのも事実だ。
「朝ごはんにしましょう。お腹、空いていませんか?」
ふわふわと毒気を抜くような表情につられ、俺は小さく頷いた。
***
「へー…じゃあ神田さんは妙な遺跡物を調べてて、ひょんな事故であそこに倒れていたんですね」
「帰る手段は今のところ分からんがな」
教団のことはなるべく伏せて話をすれば、あまりにも突拍子のない話であるにも関わらず、食後の茶を飲みながら目の前の少女は納得したように小さく頷いた。
…話す俺も俺だが、普通信じるか?
そう言いたげな視線を向ければ「世の中、何が起こるか分かりませんね…」と感慨深そうに呟いていた。
……『愚直』という言葉が脳裏に過ぎる。
バカなのか、それとも大物なのか。はたまた何も考えていない可能性もある。
「そうだ、帰れるようになるまでうちにいますか?」
「……その事だが。期待していなかったといえば嘘になる。けどな、見知らぬ怪しい男を家に匿うか?普通。」
駄々漏れるお人好しオーラも、度が過ぎれば能天気にしか映らない。
今はこれに頼るしかないのだが、他人事とはいえ心配になるのが正直な感想だ。
「いやぁ…だって、神田さん困ってますし。」
事実だ。
しかし考えすぎかもしれないが、何か裏でもあるのではないのかと勘繰ってしまう。
じっと黙ったまま見続ければ、名無しは観念したように小さく苦笑いを零した。
「まぁ、その…一人暮らしは寂しいなーって思っていたんです。理由、それじゃダメですか?」
なんともまぁ単純明快というか。
一見すれば呆れ返ってしまいそうな理由だが、少なくともそれは嘘ではないだろう。
荷物は整理しているが、それでも『誰かと住んでいた』形跡がある。
そう。例えば、棚の上の写真とか。誰かが使っていたであろう服とか。
「…いや。妙なことを聞いたな。暫く世話になる。」
「いえいえ、気にしないでください。帰れるようになるまで、私も出来る限りお手伝いしますから!」
元気のいい子犬よろしく、やる気に溢れている目の前の少女。
…あぁ。底抜けに明るいとは、まさにこういうことを言うのだろう。
こうして、俺は暫く名無し名無しの元で世話になることになった。