Re:set
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それは、寒い冬の季節だった。
Re:set#01
今日も今日とてよく働いたと思う。
友人関係もそれなり。バイトのお給料もそれなり。
不自由しているといえば親がいないことくらいか。
いざとなれば遠い親戚がいるけれど、世知辛いこの世の中。中卒で働いている人だっているのだ。
今のところひとりで生きていけないこともないのだから、自立するに越したことはない。
(ふぁ、寒い。)
多めに詰めてもらえた賄い入りのビニール袋が耳障りな音を立てながらユラユラ揺れる。
雪もちらつく寒空の下。
温かかったはずのおかずはすっかり冷えきってしまっているだろう。
街灯があるとはいえ、薄暗い住宅街はお世辞にも安心して通れる夜道とは言い難い。
(明日は土曜日…洗濯して、掃除して、スーパーで買い物して、夕方からバイトで…)
あれやこれやと考えながら歩いていれば、アパートは目の前だった。
よし。今日も無事、何もない『普通』の一日だった。
平穏に過ごせた今日に感謝しながら、アパートのドアへ向かおうとした時。
ゴッ、と何かがローファーに当たる。
大きなゴミ袋か、それとも動物の死体だったか。
思わず半歩飛び退いて、握りしめていたスマホで地面を照らした。
……人、だ。
黒い服。所々赤い装飾を施した高そうなコート。
ざっくばらんに広がった長い長い黒髪。
(動物の、死体どころか、ひとの、)
こんなところで人が寝ているわけがない。
酔っ払い…でもなさそうだ。
「もしもーし…生きて……は、いるか。あぁよかった…」
規則的に上下する背中。
うつ伏せでよく見えないが女の人のように見える。
(女の人だったら…大丈夫かな。うん、よし、)
ほら。今日のお客様も『仕事が忙しすぎてうちの上司なんて公園で仮眠とってるし』って言ってたし。
もしかしたらその類かもしれない。過労って怖い。
(いざとなれば、110番しよう)
思った以上に重い身体を引き摺りながら、私は寒い冬の空の下見知らぬ誰かを助けたのだった。
毎日目まぐるしく流れていく、『普通』を崩せることに、
…ほんの少しだけ淡い期待をして。
――ほんの、少しだけ。
Re:set#01
今日も今日とてよく働いたと思う。
友人関係もそれなり。バイトのお給料もそれなり。
不自由しているといえば親がいないことくらいか。
いざとなれば遠い親戚がいるけれど、世知辛いこの世の中。中卒で働いている人だっているのだ。
今のところひとりで生きていけないこともないのだから、自立するに越したことはない。
(ふぁ、寒い。)
多めに詰めてもらえた賄い入りのビニール袋が耳障りな音を立てながらユラユラ揺れる。
雪もちらつく寒空の下。
温かかったはずのおかずはすっかり冷えきってしまっているだろう。
街灯があるとはいえ、薄暗い住宅街はお世辞にも安心して通れる夜道とは言い難い。
(明日は土曜日…洗濯して、掃除して、スーパーで買い物して、夕方からバイトで…)
あれやこれやと考えながら歩いていれば、アパートは目の前だった。
よし。今日も無事、何もない『普通』の一日だった。
平穏に過ごせた今日に感謝しながら、アパートのドアへ向かおうとした時。
ゴッ、と何かがローファーに当たる。
大きなゴミ袋か、それとも動物の死体だったか。
思わず半歩飛び退いて、握りしめていたスマホで地面を照らした。
……人、だ。
黒い服。所々赤い装飾を施した高そうなコート。
ざっくばらんに広がった長い長い黒髪。
(動物の、死体どころか、ひとの、)
こんなところで人が寝ているわけがない。
酔っ払い…でもなさそうだ。
「もしもーし…生きて……は、いるか。あぁよかった…」
規則的に上下する背中。
うつ伏せでよく見えないが女の人のように見える。
(女の人だったら…大丈夫かな。うん、よし、)
ほら。今日のお客様も『仕事が忙しすぎてうちの上司なんて公園で仮眠とってるし』って言ってたし。
もしかしたらその類かもしれない。過労って怖い。
(いざとなれば、110番しよう)
思った以上に重い身体を引き摺りながら、私は寒い冬の空の下見知らぬ誰かを助けたのだった。
毎日目まぐるしく流れていく、『普通』を崩せることに、
…ほんの少しだけ淡い期待をして。
――ほんの、少しだけ。
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