とあるカルデアの一幕
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そう。例えるならば夏から秋にかけて、徐々に色濃くなっていく山の匂いだ。
彼から僅かに薫る草木の香りはどこか懐かしさを覚える。
無機質なカルデアの中で、こうも中々自然物に近い匂いに触れる機会は御目にかかれない。
強いて言うならレイシフト先で嫌という程嗅げるが、状況が状況だ。
しっかり肺いっぱいに木々の香りを堪能する・なんてことは、思い返せばなかったかもしれない。
他にいい匂いのするサーヴァント…と思い返せば真っ先に某・花の魔術師が出てくるが、彼はどちらかというと甘い香りだ。
「で、おたくはさっきから何やってんですか」
「いや、つい森に帰りたい気分になって。」
何となしに呼び止めて、彼の宝具でもあるマントを掴んで匂いを嗅ぐ。
草木の香りがするが、やはり何となく薄い…気がする。
「マスター、あんたそこまで田舎育ちじゃないでしょーが」
「そうだけど。ほら、カルデアって中も外も草木が生えてなくて。」
スンスンと服を嗅げば木々の匂いに紛れて煙草の匂いが僅かに鼻につく。
「ロビン、さっき煙草吸った?」
「よく分かりますねぇ」
「非喫煙者だから気がつくのかもね」
副流煙独特の煙の臭いに思わず苦笑いを零してしまう。
私の求めている匂いとは、少し違うからだ。
ということは匂いの元は服…からでは、なさそうだ。
「ロビン、しゃがんでしゃがんで。」
「さっきから何なんっすか、もう」
文句を言いながらも中腰になってくれる彼は優しい。私はロビンのこういう所が好きだった。
「ちょっと失礼。」
「うおっ!?」
目の前に出された頭を抱えて鼻を埋めれば、求めていた匂いがそこにあった。
柔らかな木の匂い。
なるほど。彼自身の匂いだったのか。
森の狩人の名に、確かに相応しい。
「ちょ、ちょっと。落ち着け。どうした。」
「ロビンから森の匂いがするなぁ、って。」
背筋を戻して慌てる彼を無遠慮に見上げて、私は笑う。
アロマテラピーに近いのだろうか。鼻腔を擽る心地よい木の香りに思わず頬が緩んでしまった。
「だからって年頃の娘が男の頭を抱えて嗅ぎます?」
「だってロビンだもん」
マスターとして歩み始めたとほぼ同時に、彼は私のサーヴァントとして隣にいてくれた。
時には軽薄に、時には優しく、時に不器用に。
付き合いとしてはマシュとほぼ同じと言っても過言ではないだろう。
更に彼はどちらかというと一般人寄りの思考回路だ。
悉く性格が突拍子もない、かつ身分が凄い英霊ばかりが呼び出されるものだから、彼を纏う穏やかな空気は癒しそのものだった。
騎士道とか暑苦しいものは苦手・だとか、正々堂々戦うのは疲れる・だとか。
自分を卑怯者と卑下する面もあるが、誰よりも苦手としているソレに憧れていることも知っている。
人間らしいジレンマを抱える彼へ、近親感に近い好意を向けてしまうのは当然の流れだったかもしれない。
彼には、口が裂けても言えないが。
「ロビンだからだよ」
皐月の残香
あぁ。
恋とも親愛ともとれぬ曖昧な感情は、今日も緑の薫りで淡く燻られる。
彼から僅かに薫る草木の香りはどこか懐かしさを覚える。
無機質なカルデアの中で、こうも中々自然物に近い匂いに触れる機会は御目にかかれない。
強いて言うならレイシフト先で嫌という程嗅げるが、状況が状況だ。
しっかり肺いっぱいに木々の香りを堪能する・なんてことは、思い返せばなかったかもしれない。
他にいい匂いのするサーヴァント…と思い返せば真っ先に某・花の魔術師が出てくるが、彼はどちらかというと甘い香りだ。
「で、おたくはさっきから何やってんですか」
「いや、つい森に帰りたい気分になって。」
何となしに呼び止めて、彼の宝具でもあるマントを掴んで匂いを嗅ぐ。
草木の香りがするが、やはり何となく薄い…気がする。
「マスター、あんたそこまで田舎育ちじゃないでしょーが」
「そうだけど。ほら、カルデアって中も外も草木が生えてなくて。」
スンスンと服を嗅げば木々の匂いに紛れて煙草の匂いが僅かに鼻につく。
「ロビン、さっき煙草吸った?」
「よく分かりますねぇ」
「非喫煙者だから気がつくのかもね」
副流煙独特の煙の臭いに思わず苦笑いを零してしまう。
私の求めている匂いとは、少し違うからだ。
ということは匂いの元は服…からでは、なさそうだ。
「ロビン、しゃがんでしゃがんで。」
「さっきから何なんっすか、もう」
文句を言いながらも中腰になってくれる彼は優しい。私はロビンのこういう所が好きだった。
「ちょっと失礼。」
「うおっ!?」
目の前に出された頭を抱えて鼻を埋めれば、求めていた匂いがそこにあった。
柔らかな木の匂い。
なるほど。彼自身の匂いだったのか。
森の狩人の名に、確かに相応しい。
「ちょ、ちょっと。落ち着け。どうした。」
「ロビンから森の匂いがするなぁ、って。」
背筋を戻して慌てる彼を無遠慮に見上げて、私は笑う。
アロマテラピーに近いのだろうか。鼻腔を擽る心地よい木の香りに思わず頬が緩んでしまった。
「だからって年頃の娘が男の頭を抱えて嗅ぎます?」
「だってロビンだもん」
マスターとして歩み始めたとほぼ同時に、彼は私のサーヴァントとして隣にいてくれた。
時には軽薄に、時には優しく、時に不器用に。
付き合いとしてはマシュとほぼ同じと言っても過言ではないだろう。
更に彼はどちらかというと一般人寄りの思考回路だ。
悉く性格が突拍子もない、かつ身分が凄い英霊ばかりが呼び出されるものだから、彼を纏う穏やかな空気は癒しそのものだった。
騎士道とか暑苦しいものは苦手・だとか、正々堂々戦うのは疲れる・だとか。
自分を卑怯者と卑下する面もあるが、誰よりも苦手としているソレに憧れていることも知っている。
人間らしいジレンマを抱える彼へ、近親感に近い好意を向けてしまうのは当然の流れだったかもしれない。
彼には、口が裂けても言えないが。
「ロビンだからだよ」
皐月の残香
あぁ。
恋とも親愛ともとれぬ曖昧な感情は、今日も緑の薫りで淡く燻られる。