とあるカルデアの一幕
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俺は、彼女の手によって『最初』に召喚されたサーヴァントだった。
「えっと、よろしくね。私のアーチャー。」
緊張した面持ちではにかんで笑った彼女の顔は、きっとずっと忘れないだろう。
はにかみミッドナイト
深夜。
夜のカルデアは薄暗く、いつもは職員が行き交っているはずの廊下は静まり返っていた。
部屋でも一応吸えるといえば吸えるのだが、女性陣に『外で吸いなさい!』と言われ、俺は喫煙室で煙草を吸っていた。
いやはや、肩身の狭い世の中になったもんだ。
「…お?」
薄暗い廊下をキョロキョロと見回しながらそろりそろりと歩く人影がひとつ。
メープルリーフのように鮮やかなサイドテールがふわりと揺れる。
吸いかけだった煙草を灰皿に押し当て、俺は喫煙室から廊下へと歩を進めた。
「なーにコソコソしてるんですか、っと」
「う、わぁ!ろ、ロビン…びっくりした…」
本当に心底驚いたのだろう。
床から浮いてしまうのではないのか・と錯覚してしまう程にびっくりしたのは、俺の親愛なるマスターだ。
普段かっちり着ているはずの、カルデアのマスターに支給される制服は多少着崩されていた。
黒いインナーがまるっと見えており、意外とある胸を何だか直視出来なくて、俺は呼び止めたのを少し後悔した。
「出来損ないのアサシンみたいな動きしてましたけど。」
「う……。…そうだ!ロビン、丁度いいところに!」
名案を思いついた・と言わんばかりの表情で笑うリツカ。
…あぁ、嫌な予感がする。
***
「腹が減ったなら赤いアーチャーに頼めばいいじゃないっスか」
「いやぁ…その、夜中だし…」
小言を言われるのが嫌だな・って。
どんぶりを二つ。
インスタント麺も二つ。
卵を二つ抱えたリツカが俺のマントの中にいる。
…いや『顔のない王』をこういう風に使うのは予想外だ。まさか夜食の調達とは。
「まだ起きているのか・って小言も言われるだろうし」
「そうでしょうねぇ」
「インスタント麺は感心しない・とか言われそうだし」
「そうでしょうねぇ」
オカンか。
いや、まぁ年頃の女の子だし、彼女も色々思うところはあるのだろう。
少し、恥ずかしいのだろう。きっと。
「ところで二つも食うんですか?」
「?、いや、ロビンの分だよ?」
何でだ。
いや、腹には入るけども。
「共犯者、作っておかなきゃね」
「そりゃ大変だ。」
マントの下でクスクスと楽しそうに笑う少女は、世界を救うための人類最後のマスターとは思えなかった。
それは出会った当初から今でもずっと変わらない認識。
限りなく一般人に近く、限りなく純粋で、限りなく真っ直ぐで。
よくもまぁこんな重責に耐えられるものだ。
奇特、だと思う。
俺のような卑怯者を英雄だと祀りあげ、事ある毎に手招きをする。
俺の生前では考えられなかったことだ。
彼女のマイルームまで送れば、座る椅子がないからか無遠慮にベッドをぽんぽんと叩くリツカ。
いそいそと電気ケトルでお湯を沸かす彼女の背中はひどく小さい。
最初は少なかったサーヴァントも最近は大分人数が増えてきた。
それは空想上の英雄だったり、誰もが知る英雄だったり、はたまた神と崇め奉られた英雄もいる。
彼女の背中を守る役目は、俺じゃなくとも十分だ。
「なんで俺なんっすかねぇ」
ぽそりと呟けば、不思議そうに振り返るリツカ。
いや、だってそうでしょう。常識的に。
俺なんか正々堂々戦うには向いていないタイプだし。
「いや、他のサーヴァントの方が優秀なやつが多いっしょ?」
「うーん、そうかもしれないけど」
そこは否定しないのかよ!いや事実だけどな!
カチリ・と音が鳴り、湯が沸いたケトルを傾けるリツカ。
どんぶりに入れられたインスタント麺と卵にホカホカとしたお湯がかけられる。
少し待てば夜中に食べるのははばかられるようなジャンクフードの出来上がりだ。
日本では王道なインスタントらしい。…あぁ、だからあの赤外套が常備していたのか。
湯気を立たせるどんぶりにサランラップをふわりと掛けて、彼女は振り返る。
初めて出会った時のように、けれど何処か照れくさそうにはにかんで。
「私はロビンがいいなぁ」
にこにこと人のいい笑顔でリツカはそう言う。
本当に、彼女は奇特だ。
「ほら。英霊に向かってこういうのもなんだけど、感覚が庶民的というか。」
「まぁそこは否定しませんわ。」
「うん。だからね、ロビンの隣が一番落ち着くなぁ・って」
ふにゃふにゃと笑いながら俺のマスターはそう言った。
あぁ、本当に、この子は。
(隣にいてほしい、なんて。言われる日が来るとは思わなかったな)
「えっと、よろしくね。私のアーチャー。」
緊張した面持ちではにかんで笑った彼女の顔は、きっとずっと忘れないだろう。
はにかみミッドナイト
深夜。
夜のカルデアは薄暗く、いつもは職員が行き交っているはずの廊下は静まり返っていた。
部屋でも一応吸えるといえば吸えるのだが、女性陣に『外で吸いなさい!』と言われ、俺は喫煙室で煙草を吸っていた。
いやはや、肩身の狭い世の中になったもんだ。
「…お?」
薄暗い廊下をキョロキョロと見回しながらそろりそろりと歩く人影がひとつ。
メープルリーフのように鮮やかなサイドテールがふわりと揺れる。
吸いかけだった煙草を灰皿に押し当て、俺は喫煙室から廊下へと歩を進めた。
「なーにコソコソしてるんですか、っと」
「う、わぁ!ろ、ロビン…びっくりした…」
本当に心底驚いたのだろう。
床から浮いてしまうのではないのか・と錯覚してしまう程にびっくりしたのは、俺の親愛なるマスターだ。
普段かっちり着ているはずの、カルデアのマスターに支給される制服は多少着崩されていた。
黒いインナーがまるっと見えており、意外とある胸を何だか直視出来なくて、俺は呼び止めたのを少し後悔した。
「出来損ないのアサシンみたいな動きしてましたけど。」
「う……。…そうだ!ロビン、丁度いいところに!」
名案を思いついた・と言わんばかりの表情で笑うリツカ。
…あぁ、嫌な予感がする。
***
「腹が減ったなら赤いアーチャーに頼めばいいじゃないっスか」
「いやぁ…その、夜中だし…」
小言を言われるのが嫌だな・って。
どんぶりを二つ。
インスタント麺も二つ。
卵を二つ抱えたリツカが俺のマントの中にいる。
…いや『顔のない王』をこういう風に使うのは予想外だ。まさか夜食の調達とは。
「まだ起きているのか・って小言も言われるだろうし」
「そうでしょうねぇ」
「インスタント麺は感心しない・とか言われそうだし」
「そうでしょうねぇ」
オカンか。
いや、まぁ年頃の女の子だし、彼女も色々思うところはあるのだろう。
少し、恥ずかしいのだろう。きっと。
「ところで二つも食うんですか?」
「?、いや、ロビンの分だよ?」
何でだ。
いや、腹には入るけども。
「共犯者、作っておかなきゃね」
「そりゃ大変だ。」
マントの下でクスクスと楽しそうに笑う少女は、世界を救うための人類最後のマスターとは思えなかった。
それは出会った当初から今でもずっと変わらない認識。
限りなく一般人に近く、限りなく純粋で、限りなく真っ直ぐで。
よくもまぁこんな重責に耐えられるものだ。
奇特、だと思う。
俺のような卑怯者を英雄だと祀りあげ、事ある毎に手招きをする。
俺の生前では考えられなかったことだ。
彼女のマイルームまで送れば、座る椅子がないからか無遠慮にベッドをぽんぽんと叩くリツカ。
いそいそと電気ケトルでお湯を沸かす彼女の背中はひどく小さい。
最初は少なかったサーヴァントも最近は大分人数が増えてきた。
それは空想上の英雄だったり、誰もが知る英雄だったり、はたまた神と崇め奉られた英雄もいる。
彼女の背中を守る役目は、俺じゃなくとも十分だ。
「なんで俺なんっすかねぇ」
ぽそりと呟けば、不思議そうに振り返るリツカ。
いや、だってそうでしょう。常識的に。
俺なんか正々堂々戦うには向いていないタイプだし。
「いや、他のサーヴァントの方が優秀なやつが多いっしょ?」
「うーん、そうかもしれないけど」
そこは否定しないのかよ!いや事実だけどな!
カチリ・と音が鳴り、湯が沸いたケトルを傾けるリツカ。
どんぶりに入れられたインスタント麺と卵にホカホカとしたお湯がかけられる。
少し待てば夜中に食べるのははばかられるようなジャンクフードの出来上がりだ。
日本では王道なインスタントらしい。…あぁ、だからあの赤外套が常備していたのか。
湯気を立たせるどんぶりにサランラップをふわりと掛けて、彼女は振り返る。
初めて出会った時のように、けれど何処か照れくさそうにはにかんで。
「私はロビンがいいなぁ」
にこにこと人のいい笑顔でリツカはそう言う。
本当に、彼女は奇特だ。
「ほら。英霊に向かってこういうのもなんだけど、感覚が庶民的というか。」
「まぁそこは否定しませんわ。」
「うん。だからね、ロビンの隣が一番落ち着くなぁ・って」
ふにゃふにゃと笑いながら俺のマスターはそう言った。
あぁ、本当に、この子は。
(隣にいてほしい、なんて。言われる日が来るとは思わなかったな)
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