aster days
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「今、繁忙期なのかって?」
「うん。」
「虚の出現も最近落ち着いてるからなァ。護廷の仕事は、正直ヒマやな」
「そうなんだ」
aster days#08
隊首私室に居候するようになってから、きちんと自炊できるようになった。
久しぶりに作った普通の食事は、我ながら納得の出来だった。
デザートに作った白玉フルーツをタッパーに入れて、研究室でふてぶてしく手伝いをしているひよ里に差し入れをすればマユリの手伝いをしていたにも関わらず投げ出して休憩を取り始めた。いいのだろうか、それで。
「それに他の隊に虚退治を回してることが多いんねん。
ぶっちゃけ喜助のせいでウチらは陰気な科学者集団みたいになった、ちゅーわけや」
「そこはおかげ、といいたまえ」
まだ余っていた白玉フルーツポンチを勝手によそい、椅子に座って食べ始めるマユリ。
…見た目のギャップ故か、それとも普段白玉妖怪とひよ里が言っているためか。
思わず笑いそうになるのを堪えてしまった。
「なに白玉妖怪が勝手に白玉食ってんねん!」
「全然面白くないヨ、キミ。
疲れた脳に糖分は効果的だネ。悪くない」
「ありがとうございます」
ひよ里とマユリの喧嘩(といってもひよ里が一方的に絡んでるだけだ)も随分見慣れた。
というか、
「マユリさんも休憩とられるんですね」
「当たり前だヨ。いい研究は適度な休憩と糖分だネ」
「ずっとぶっ通しで研究されてるイメージだったので。少し、意外でした。すみません」
「没頭してる時もあるけどネ。納期もあれば、イイところまで研究進んでいたら、寝る間も惜しむヨ」
「なるほど」
「…」
「……」
「…今、浦原喜助のことを考えていたネ?」
「ぶっふぉ!ゴホッ、ごふっ!」
「うわっ!名無し、大丈夫か!?」
ひよ里に差し出された茶で白玉を流し込み、息を整える。
なんなんだ、マユリはエスパーなのか。エスパーマユリってかっこいいな畜生!
「ゲホッ…危うく鼻から白玉が出るとこでした」
「あかん、それ最高にオモロい」
「人間の鼻から白玉出てきたら、新たな進化の瞬間だネ」
「そしたらウチがちゃんと証拠の写真撮ったるわ」
なんでこういう時に限って仲がいいんだ、この二人は。
「……あの人、休んでるの見たことないな、と思って」
「名無しが来るまでは結構サボっとったで」
「え?」
「あ。」
しまった、と言わんばかりに口を押さえるひよ里。
…どういうことだ?
「寝る間惜しんで調べてるんだヨ。キミを帰す方法を」
ピッと私を指さすマユリ。
言葉が、出なかった。
いや確かに約束はした。したとも。
でも寝る間を惜しんで…だとか、
一休みする間を与えず、なんて考えたことがなかった。
帰りたい。それは紛れもない事実だ。
かといって身体を壊す勢いで頑張られても困る。そんなことをしたら元も子もない。
「オイ、アンタのせいで名無し、うんうん唸り始めたで」
「元はと言えばキミが失言するからだヨ」
「なんやて!?」
ダンッとテーブルを叩くひよ里。
器に入った白玉団子がゆらりと揺れる。
それをじっと見て、私は多少強引だがあることを心に決めた。
***
「ふぅ、サッパリっスね…」
生きている人間を尸魂界に連れてくるには霊子に変換する必要がある。
けれど彼女から聞いた話によれば、元いた世界では『霊子変換なんて聞いたこともない。そもそもレイシって何?』と聞き返された。
偶然の産物なのだから帰せる保証はない。
けど、
『約束ですよ』
そう言った彼女の言葉が頭から離れない。
もし、自分が全く知らない世界に紛れ込んだら。
取り乱すのだろうか、それとも好奇心にかられるのだろうか。
(そういえば、思った以上に彼女は取り乱さなかったっスね)
まだ未成年の彼女。
落ち着ききった性格。
いや、あれはどちらかと言うと『達観』と言ってもいい。
そして、滝のように溢れてくる霊力。
本人にはあまり自覚がないようだけど、かなり稀有だ。
それを使いこなしコントロールできるかは別の話だけども。
(変な子だ)
途中まで解析できたものの、途中で行き詰まった。恐らくこれ以上この線を調べても解決策は出てこないだろう。
さて、どうしようか。
「浦原さん、失礼します」
ひょこりと扉から顔を出したのは、先程まで思っていた子だった。
「どうかしました?」
「……その、休憩しませんか?」
じっとこちらを見上げる視線。
まるで様子をうかがっている小動物のようだ。
「…そうっスね、じゃあ」
「だそうです」
「よっしゃあ!喜助、行くで!」
「今日の夕飯のメニューは何だネ」
「秋刀魚の塩焼きと、茄子の味噌汁、あと小松菜の玉子とじと、キノコと水菜のサラダです」
「味噌汁にネギは入れてないだろうネ」
「入れましたよ?」
「…」
「そんな嫌そうな顔してもダメですよ、好き嫌いしないでください」
「えっ、ちょ、ちょっと」
ひよ里サンに背中を押され、研究室と化した隊首室を出る。
ぞろぞろと大人数で向かった先はボクに充てがわれた私室、もとい今は名無しサンの住まいになっている隊首私室。
「ひよ里ちゃん、阿近さん、運ぶの手伝って頂けますか?」
「ん。」
「任しときィ」
部屋に入れば秋刀魚の香ばしい匂い。
隊員の何人かが配膳の手伝いに台所へ向かった。
この部屋にこんな人数が入るのも珍しいが、この部屋から生活感のある匂いがするのは初めてだった。
「何驚いているかネ」
「そりゃ驚きますよ、誰かの誕生日でしたっけ?」
「キミがちっとも休まないから、強制的に休ませる会だヨ。企画立案は名無しだネ」
「彼女が。」
「根を詰めすぎられても迷惑やねん、って話や。配膳の邪魔や、退けんかい!」
背後から噛み付くような声。ひよ里サンだ。
味噌汁をお盆に載せているからか、いつものように背中は蹴られなかった。
席につけば焼きたての秋刀魚がテーブルに鎮座していた。もちろん大根おろしは当たり前のようについている。
味噌汁も出汁からとったのか、食欲をそそるいい香りが漂う。
夜一サンの屋敷に世話になっていた時以来か。こんな、部屋でとるきちんとした食事は。
「皆さん、ごはんのおかわりありますからね。では、」
いただきます。
「うん。」
「虚の出現も最近落ち着いてるからなァ。護廷の仕事は、正直ヒマやな」
「そうなんだ」
aster days#08
隊首私室に居候するようになってから、きちんと自炊できるようになった。
久しぶりに作った普通の食事は、我ながら納得の出来だった。
デザートに作った白玉フルーツをタッパーに入れて、研究室でふてぶてしく手伝いをしているひよ里に差し入れをすればマユリの手伝いをしていたにも関わらず投げ出して休憩を取り始めた。いいのだろうか、それで。
「それに他の隊に虚退治を回してることが多いんねん。
ぶっちゃけ喜助のせいでウチらは陰気な科学者集団みたいになった、ちゅーわけや」
「そこはおかげ、といいたまえ」
まだ余っていた白玉フルーツポンチを勝手によそい、椅子に座って食べ始めるマユリ。
…見た目のギャップ故か、それとも普段白玉妖怪とひよ里が言っているためか。
思わず笑いそうになるのを堪えてしまった。
「なに白玉妖怪が勝手に白玉食ってんねん!」
「全然面白くないヨ、キミ。
疲れた脳に糖分は効果的だネ。悪くない」
「ありがとうございます」
ひよ里とマユリの喧嘩(といってもひよ里が一方的に絡んでるだけだ)も随分見慣れた。
というか、
「マユリさんも休憩とられるんですね」
「当たり前だヨ。いい研究は適度な休憩と糖分だネ」
「ずっとぶっ通しで研究されてるイメージだったので。少し、意外でした。すみません」
「没頭してる時もあるけどネ。納期もあれば、イイところまで研究進んでいたら、寝る間も惜しむヨ」
「なるほど」
「…」
「……」
「…今、浦原喜助のことを考えていたネ?」
「ぶっふぉ!ゴホッ、ごふっ!」
「うわっ!名無し、大丈夫か!?」
ひよ里に差し出された茶で白玉を流し込み、息を整える。
なんなんだ、マユリはエスパーなのか。エスパーマユリってかっこいいな畜生!
「ゲホッ…危うく鼻から白玉が出るとこでした」
「あかん、それ最高にオモロい」
「人間の鼻から白玉出てきたら、新たな進化の瞬間だネ」
「そしたらウチがちゃんと証拠の写真撮ったるわ」
なんでこういう時に限って仲がいいんだ、この二人は。
「……あの人、休んでるの見たことないな、と思って」
「名無しが来るまでは結構サボっとったで」
「え?」
「あ。」
しまった、と言わんばかりに口を押さえるひよ里。
…どういうことだ?
「寝る間惜しんで調べてるんだヨ。キミを帰す方法を」
ピッと私を指さすマユリ。
言葉が、出なかった。
いや確かに約束はした。したとも。
でも寝る間を惜しんで…だとか、
一休みする間を与えず、なんて考えたことがなかった。
帰りたい。それは紛れもない事実だ。
かといって身体を壊す勢いで頑張られても困る。そんなことをしたら元も子もない。
「オイ、アンタのせいで名無し、うんうん唸り始めたで」
「元はと言えばキミが失言するからだヨ」
「なんやて!?」
ダンッとテーブルを叩くひよ里。
器に入った白玉団子がゆらりと揺れる。
それをじっと見て、私は多少強引だがあることを心に決めた。
***
「ふぅ、サッパリっスね…」
生きている人間を尸魂界に連れてくるには霊子に変換する必要がある。
けれど彼女から聞いた話によれば、元いた世界では『霊子変換なんて聞いたこともない。そもそもレイシって何?』と聞き返された。
偶然の産物なのだから帰せる保証はない。
けど、
『約束ですよ』
そう言った彼女の言葉が頭から離れない。
もし、自分が全く知らない世界に紛れ込んだら。
取り乱すのだろうか、それとも好奇心にかられるのだろうか。
(そういえば、思った以上に彼女は取り乱さなかったっスね)
まだ未成年の彼女。
落ち着ききった性格。
いや、あれはどちらかと言うと『達観』と言ってもいい。
そして、滝のように溢れてくる霊力。
本人にはあまり自覚がないようだけど、かなり稀有だ。
それを使いこなしコントロールできるかは別の話だけども。
(変な子だ)
途中まで解析できたものの、途中で行き詰まった。恐らくこれ以上この線を調べても解決策は出てこないだろう。
さて、どうしようか。
「浦原さん、失礼します」
ひょこりと扉から顔を出したのは、先程まで思っていた子だった。
「どうかしました?」
「……その、休憩しませんか?」
じっとこちらを見上げる視線。
まるで様子をうかがっている小動物のようだ。
「…そうっスね、じゃあ」
「だそうです」
「よっしゃあ!喜助、行くで!」
「今日の夕飯のメニューは何だネ」
「秋刀魚の塩焼きと、茄子の味噌汁、あと小松菜の玉子とじと、キノコと水菜のサラダです」
「味噌汁にネギは入れてないだろうネ」
「入れましたよ?」
「…」
「そんな嫌そうな顔してもダメですよ、好き嫌いしないでください」
「えっ、ちょ、ちょっと」
ひよ里サンに背中を押され、研究室と化した隊首室を出る。
ぞろぞろと大人数で向かった先はボクに充てがわれた私室、もとい今は名無しサンの住まいになっている隊首私室。
「ひよ里ちゃん、阿近さん、運ぶの手伝って頂けますか?」
「ん。」
「任しときィ」
部屋に入れば秋刀魚の香ばしい匂い。
隊員の何人かが配膳の手伝いに台所へ向かった。
この部屋にこんな人数が入るのも珍しいが、この部屋から生活感のある匂いがするのは初めてだった。
「何驚いているかネ」
「そりゃ驚きますよ、誰かの誕生日でしたっけ?」
「キミがちっとも休まないから、強制的に休ませる会だヨ。企画立案は名無しだネ」
「彼女が。」
「根を詰めすぎられても迷惑やねん、って話や。配膳の邪魔や、退けんかい!」
背後から噛み付くような声。ひよ里サンだ。
味噌汁をお盆に載せているからか、いつものように背中は蹴られなかった。
席につけば焼きたての秋刀魚がテーブルに鎮座していた。もちろん大根おろしは当たり前のようについている。
味噌汁も出汁からとったのか、食欲をそそるいい香りが漂う。
夜一サンの屋敷に世話になっていた時以来か。こんな、部屋でとるきちんとした食事は。
「皆さん、ごはんのおかわりありますからね。では、」
いただきます。