aster days
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「名無し、ちょっとここ支えてぇな」
「わかった。これでいい?ひよ里ちゃん」
「おおきに」
フラスコを支えれば、漏斗で慎重に薬剤を流し込むひよ里。
「なんでウチが喜助の手伝いなんて」とブツブツ言いながらも手伝う彼女は、いい子だと思う。
ここに来て、2週間が経った。
aster days#03
「名無し、こっちへ来たまえ」
ちょいちょいと手招きするのは、技術開発局の副局長の涅マユリ。
特徴的なダミ声。振り返らずとも彼だと分かるのは、少しだけ面白かった。
「何ですか?マユリさん」
「この球体に手を当てたまえ」
「手?」
ペタリと触れば、ひんやりとした感触。
占いに使うガラス玉のような見た目をしており、台座からは無数のコードが刺さっている。
怪しさ満点の機械だが、何だか見慣れた光景になってしまった。
「霊力を込めたまえ」
「れい、ええっと…どうやるんですか?」
「鬼道を使うようにダヨ」
「…あの、」
「なんだネ、宝の持ち腐れかネ。霊圧だけは総隊長並の逸材だと言うのに…」
ブツブツと文句を言う彼の姿も、見慣れてきた。
ここへ来た初日、風呂に通された時に手首の鎖を外した。
いや、普通こんなアクセサリーみたいな貴金属、風呂につけて入らないはずだ。
ひよ里に言われた肌身離さず、というのは文字通りだったらしい。
外した瞬間、身体の奥から何かが溢れ出す感覚。
ダムの放水。堤防の決壊。例えるなら、それが一番近い。
身体が粟立ち、全身の毛が逆だったようだった。
寒気のような、武者震いに近い感覚。
これが、霊力と、霊圧。
何かしらの方法で察知したらしい。
浦原が風呂場に慌ててやってきた時には、流石にタライを投げてしまった。
ノックなしに入ってくる彼も悪いが、迂闊に外した私も悪かった。
あの後一応謝ったら、ここの技術開発局の研究員の殆どが卒倒、どうやら外にいた死神数名も同じ目にあったらしい。
『霊圧のコントロールは…まぁゆっくり覚えましょ。それまではソレ、外したらダメっスよ』
なんだか自分が要注意人物に指定されているようで、少し複雑だった。
「マユリさん。霊圧の、コントロール…?って、どうやってするんですか?」
「そんなの呼吸をするのと同じくらい容易いことだヨ。キミは呼吸の方法も親に教えてもらわなければ出来ないのかネ」
死神は呼吸をするレベルで出来ることなのか。
こんなものを自覚したのが二週間ほど前なんだ。その物言いは少し無理があるのでは。
不満そうに見上げれば、少し小馬鹿にするように彼はため息をついた。
「イメージだヨ」
「イメージ?」
「以前、キミは浦原喜助に霊力と霊圧を水で例えられたネ?」
「はい」
「では、これに手を置いたまま目を閉じたまえ」
目を大人しく閉じれば、遮られる光。
「キミの手にしている玉は水槽だ。金魚鉢のような物だとしよう。
キミの奥底から、湧き出る水。コポコポと湧き出ているネ?
それが背骨を伝い、腕を通り、指先を伝い水槽に流し込むイメージだヨ」
それは渦巻き、ゆっくり、ゆっくりと丸い水槽を満たす水。
そっと、そっと。少しずつ。慎重に。
渦巻き、混ざり、球体になるように――
「もういい。ゆっくり目を開けるネ」
ゆるゆると目を開ければ、無色透明だったガラス球は煌々と光を放っていた。
ぐるぐるとガラス玉の中を巡る光。
あれが霊力、なのだろうか。
「ふむ、上々だヨ。満タンになるまでもっと時間がかかるかと思ったが、流石霊力バカと言ったところかネ」
「霊力バカ。」
「そうだヨ。ゆっくりと言っただろう?もう少し霊圧に勢いがついていたら、折角の装置が台無しになるとこだったヨ」
「えぇ…だいぶゆっくりのイメージだったんですけど…なんか、すみません」
「まぁいい。キミは充分な働きをした。褒めてあげるヨ」
満足そうに軽く手を挙げ、奥の研究室に消えていったマユリ。
…彼が人を褒めるなど、珍しいのでは。
今すごく貴重な体験をした気がする。
「…でも霊力バカってネーミングは、ちょっと嫌だなぁ…」
「わかった。これでいい?ひよ里ちゃん」
「おおきに」
フラスコを支えれば、漏斗で慎重に薬剤を流し込むひよ里。
「なんでウチが喜助の手伝いなんて」とブツブツ言いながらも手伝う彼女は、いい子だと思う。
ここに来て、2週間が経った。
aster days#03
「名無し、こっちへ来たまえ」
ちょいちょいと手招きするのは、技術開発局の副局長の涅マユリ。
特徴的なダミ声。振り返らずとも彼だと分かるのは、少しだけ面白かった。
「何ですか?マユリさん」
「この球体に手を当てたまえ」
「手?」
ペタリと触れば、ひんやりとした感触。
占いに使うガラス玉のような見た目をしており、台座からは無数のコードが刺さっている。
怪しさ満点の機械だが、何だか見慣れた光景になってしまった。
「霊力を込めたまえ」
「れい、ええっと…どうやるんですか?」
「鬼道を使うようにダヨ」
「…あの、」
「なんだネ、宝の持ち腐れかネ。霊圧だけは総隊長並の逸材だと言うのに…」
ブツブツと文句を言う彼の姿も、見慣れてきた。
ここへ来た初日、風呂に通された時に手首の鎖を外した。
いや、普通こんなアクセサリーみたいな貴金属、風呂につけて入らないはずだ。
ひよ里に言われた肌身離さず、というのは文字通りだったらしい。
外した瞬間、身体の奥から何かが溢れ出す感覚。
ダムの放水。堤防の決壊。例えるなら、それが一番近い。
身体が粟立ち、全身の毛が逆だったようだった。
寒気のような、武者震いに近い感覚。
これが、霊力と、霊圧。
何かしらの方法で察知したらしい。
浦原が風呂場に慌ててやってきた時には、流石にタライを投げてしまった。
ノックなしに入ってくる彼も悪いが、迂闊に外した私も悪かった。
あの後一応謝ったら、ここの技術開発局の研究員の殆どが卒倒、どうやら外にいた死神数名も同じ目にあったらしい。
『霊圧のコントロールは…まぁゆっくり覚えましょ。それまではソレ、外したらダメっスよ』
なんだか自分が要注意人物に指定されているようで、少し複雑だった。
「マユリさん。霊圧の、コントロール…?って、どうやってするんですか?」
「そんなの呼吸をするのと同じくらい容易いことだヨ。キミは呼吸の方法も親に教えてもらわなければ出来ないのかネ」
死神は呼吸をするレベルで出来ることなのか。
こんなものを自覚したのが二週間ほど前なんだ。その物言いは少し無理があるのでは。
不満そうに見上げれば、少し小馬鹿にするように彼はため息をついた。
「イメージだヨ」
「イメージ?」
「以前、キミは浦原喜助に霊力と霊圧を水で例えられたネ?」
「はい」
「では、これに手を置いたまま目を閉じたまえ」
目を大人しく閉じれば、遮られる光。
「キミの手にしている玉は水槽だ。金魚鉢のような物だとしよう。
キミの奥底から、湧き出る水。コポコポと湧き出ているネ?
それが背骨を伝い、腕を通り、指先を伝い水槽に流し込むイメージだヨ」
それは渦巻き、ゆっくり、ゆっくりと丸い水槽を満たす水。
そっと、そっと。少しずつ。慎重に。
渦巻き、混ざり、球体になるように――
「もういい。ゆっくり目を開けるネ」
ゆるゆると目を開ければ、無色透明だったガラス球は煌々と光を放っていた。
ぐるぐるとガラス玉の中を巡る光。
あれが霊力、なのだろうか。
「ふむ、上々だヨ。満タンになるまでもっと時間がかかるかと思ったが、流石霊力バカと言ったところかネ」
「霊力バカ。」
「そうだヨ。ゆっくりと言っただろう?もう少し霊圧に勢いがついていたら、折角の装置が台無しになるとこだったヨ」
「えぇ…だいぶゆっくりのイメージだったんですけど…なんか、すみません」
「まぁいい。キミは充分な働きをした。褒めてあげるヨ」
満足そうに軽く手を挙げ、奥の研究室に消えていったマユリ。
…彼が人を褒めるなど、珍しいのでは。
今すごく貴重な体験をした気がする。
「…でも霊力バカってネーミングは、ちょっと嫌だなぁ…」