aster days
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朝が来た。
義骸のサンプルは、夜一が隊首私室へあったものを拝借してきた。
『おぬしが、平子達をこちらへ連れてくるんじゃ。このあと野暮用もある上、流石に八人一気に連れてくる芸当は儂には無理じゃ。
…大丈夫、おぬしならば、』
「誰にも、気取られない」
そう言い残して、夜一は『野暮用』でここを立ち去った。
浦原に預けられた外套のフードを深く被る。
あの後、何度か夜一に手伝って貰って『アレ』の練習をした。
おかげで徹夜だが、頭は妙に冴え渡っている。
よく見知ったひよ里の霊圧は、今にも消えそうになっている。
何かが混ざり歪みきった霊圧は、知っている気配のはずなのに知らないもののようだった。
それを頼りに八人分の霊圧を探る。
ひとりひとり確かな霊圧を確認した後、集中するように大きく息を吸い込んだ。
付け焼刃の術。
失敗は許されないはずなのに、心の何処かで高揚していた。
『恐らく、こちらへ『呼ぶ』のに失敗すれば、藍染に気取られる上に、平子達は確実に処分じゃろう』
--大丈夫だ。お前ならやれる。
頭の中に、懐かしい声が響いた気がした。
「さぁ、ここへ『来い』」
aster days#15
「あ…ありがとっス…夜一サン」
手枷を壊しながら、礼を言う浦原。
顔を隠す布を取り払いながら不満そうに睨みつけるのは夜一だ。
「礼なんぞいらん。昨夜、何故儂に一言も声をかけんかったかと蹴り飛ばすのも後にしておいてやる」
彼女が後ろを振り向けば、身体が折り重なった状態で、虚化した平子達がぐったりと地面に横たわっていた。
その近くには慣れない術に疲れたのか、うずくまったまま眠る名無しの姿も。
「…まさか本当に連れてくるとはの」
「どういうことっスか」
「義骸は監視がなかったから持ってこれた。平子達は監視があったから『儂は』連れてこれなんだ。つまりそういう事じゃ」
「言ってる意味が、」
「おぬしも薄々気がついておったのだろう」
夜一の言葉に、ぐっと息を呑む浦原。
「…空間転移は、禁術っス。そんな力、」
「『転移』じゃと?…なるほどな。
そうだったら、よかったんじゃが」
「どういうことっスか」
「これは『空間の隷属』じゃ。
そんな異常性を持っているのは…おぬしが見た事のある『アレ』だけじゃろう」
義骸の箱を開け、浦原に言い放つ。
「さっさとやってしまえ。今回の事件の話を最初に平子から聞いた瞬間から、おぬしが考えておった最悪の顛末と、それに対する最善の策を」
「…何もかもお見通しっスね。いやらしい人だ」
「おぬしが言うか」
全ては現世へ、逃れるため。
***
「ん…」
目を覚ませば、だだっ広い岩ばかりの空間。
そうだ、ここへ夜一に連れてこられて、平子達を、
ガバッ
ゴッ!!!
傾いていた身体を勢いよく起こせば、頭頂部に鈍い痛み。
あまりの衝撃に声が出ない。何にぶつかったんだ。
「大丈夫ですかな」
「て、鉄裁さん」
肩を借りて眠っていたらしい。
私の脳天が彼の顎にクリーンヒットしたというのに、彼の表情は微動だにしなかった。本当に生き物なのか。
「おはようございます、名無しサン」
目元に隈を作った顔で笑う浦原。
一日程しか彼の顔を見ていないというのに、何ヶ月ぶりかの再会のように思えた。
「浦原さん、」
「平子サン達のこと、ありがとうございました」
「い、いえ。なんか、上手くいってよかったです。…あの、夜一さんは?」
「彼女は帰りました」
「そう、ですか」
「結論から言っちゃいますね。ボクら尸魂界にいられなくなっちゃいました」
「はい、……はい?」
今の話の流れで、どうしてそうなったのか。
つい聞き返してしまった。
「色々ありまして。それはとりあえず説明は後にしましょ。
さ、皆さんはもう義骸に入りました。あとは名無しサンだけっス」
「え、ぎがい?義骸って、浦原さんが最近作ってるとか言ってたあの、」
「そうそう。ほら、早くしないと鉄裁サンの結界も持ちませんから。
行きましょう、--現世へ」
義骸のサンプルは、夜一が隊首私室へあったものを拝借してきた。
『おぬしが、平子達をこちらへ連れてくるんじゃ。このあと野暮用もある上、流石に八人一気に連れてくる芸当は儂には無理じゃ。
…大丈夫、おぬしならば、』
「誰にも、気取られない」
そう言い残して、夜一は『野暮用』でここを立ち去った。
浦原に預けられた外套のフードを深く被る。
あの後、何度か夜一に手伝って貰って『アレ』の練習をした。
おかげで徹夜だが、頭は妙に冴え渡っている。
よく見知ったひよ里の霊圧は、今にも消えそうになっている。
何かが混ざり歪みきった霊圧は、知っている気配のはずなのに知らないもののようだった。
それを頼りに八人分の霊圧を探る。
ひとりひとり確かな霊圧を確認した後、集中するように大きく息を吸い込んだ。
付け焼刃の術。
失敗は許されないはずなのに、心の何処かで高揚していた。
『恐らく、こちらへ『呼ぶ』のに失敗すれば、藍染に気取られる上に、平子達は確実に処分じゃろう』
--大丈夫だ。お前ならやれる。
頭の中に、懐かしい声が響いた気がした。
「さぁ、ここへ『来い』」
aster days#15
「あ…ありがとっス…夜一サン」
手枷を壊しながら、礼を言う浦原。
顔を隠す布を取り払いながら不満そうに睨みつけるのは夜一だ。
「礼なんぞいらん。昨夜、何故儂に一言も声をかけんかったかと蹴り飛ばすのも後にしておいてやる」
彼女が後ろを振り向けば、身体が折り重なった状態で、虚化した平子達がぐったりと地面に横たわっていた。
その近くには慣れない術に疲れたのか、うずくまったまま眠る名無しの姿も。
「…まさか本当に連れてくるとはの」
「どういうことっスか」
「義骸は監視がなかったから持ってこれた。平子達は監視があったから『儂は』連れてこれなんだ。つまりそういう事じゃ」
「言ってる意味が、」
「おぬしも薄々気がついておったのだろう」
夜一の言葉に、ぐっと息を呑む浦原。
「…空間転移は、禁術っス。そんな力、」
「『転移』じゃと?…なるほどな。
そうだったら、よかったんじゃが」
「どういうことっスか」
「これは『空間の隷属』じゃ。
そんな異常性を持っているのは…おぬしが見た事のある『アレ』だけじゃろう」
義骸の箱を開け、浦原に言い放つ。
「さっさとやってしまえ。今回の事件の話を最初に平子から聞いた瞬間から、おぬしが考えておった最悪の顛末と、それに対する最善の策を」
「…何もかもお見通しっスね。いやらしい人だ」
「おぬしが言うか」
全ては現世へ、逃れるため。
***
「ん…」
目を覚ませば、だだっ広い岩ばかりの空間。
そうだ、ここへ夜一に連れてこられて、平子達を、
ガバッ
ゴッ!!!
傾いていた身体を勢いよく起こせば、頭頂部に鈍い痛み。
あまりの衝撃に声が出ない。何にぶつかったんだ。
「大丈夫ですかな」
「て、鉄裁さん」
肩を借りて眠っていたらしい。
私の脳天が彼の顎にクリーンヒットしたというのに、彼の表情は微動だにしなかった。本当に生き物なのか。
「おはようございます、名無しサン」
目元に隈を作った顔で笑う浦原。
一日程しか彼の顔を見ていないというのに、何ヶ月ぶりかの再会のように思えた。
「浦原さん、」
「平子サン達のこと、ありがとうございました」
「い、いえ。なんか、上手くいってよかったです。…あの、夜一さんは?」
「彼女は帰りました」
「そう、ですか」
「結論から言っちゃいますね。ボクら尸魂界にいられなくなっちゃいました」
「はい、……はい?」
今の話の流れで、どうしてそうなったのか。
つい聞き返してしまった。
「色々ありまして。それはとりあえず説明は後にしましょ。
さ、皆さんはもう義骸に入りました。あとは名無しサンだけっス」
「え、ぎがい?義骸って、浦原さんが最近作ってるとか言ってたあの、」
「そうそう。ほら、早くしないと鉄裁サンの結界も持ちませんから。
行きましょう、--現世へ」