aster days
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ひた走る。
縺れそうになる足を叱咤しながら、ただひたすら走る。
どこに向かっているのか、分からないまま。
帰る方法は、先ほど自らの手で壊したばかりだ。帰れる手筈は、なくなった。
心残りはある。
帰りたい。あちらには残してきた『彼』がいる。何者にも代えられない、かけがえのない家族だ。
でも、それでも
(それでも、あんなやり方、)
納得するわけがない。
出来るはずがない。
瀞霊廷の路地裏に座り込み、息を整える。
ぐらぐらと揺れる視界。変な冷や汗が背中を伝う。
体調の不調がピークに達して、あまりの気分の悪さに思わず口元を手で覆った。
あぁ、もう限界。
「見つけたっス」
音もなく現れたのは、今一番会いたくない男だった。
aster days#11
「ちょっ、なんで逃げるんスか!」
「理由が分からないなら真性のバカですよ!」
落ち着け。
霊力がダダ漏れになっているのか、頭痛が酷くなっていく。
蛇口のイメージだ。
溢れるソレを、ぐっと身体の中で飲み込むイメージ。
でなければ、周りでバタバタ倒れていく一般の死神の方々に申し訳ない。
「ダメっスよ、名無しサン。むしろ霊圧高くなってます」
「う、うるさい!」
こちらの考えなんてお見通しかのように、後ろから声をかけてくる。
「仕方ないっスね…『縛道の一 塞』」
つんのめる足元。
突然、足が何かに掴まれたように動かなくなった。
「うわっ!?こ…のっ!」
足に力を込めて転けそうになるのを踏ん張れば、ガラスが砕けるような音が辺りに響く。
後ろの方で「げ、」と呟く浦原の声が聞こえた。
変な方法で足止めしようとしたのか、ザマァミロ。
「縛道を霊圧で破るなんて、無茶苦茶っスよ」
「変な飛び道具使うほうが無茶ですよ!」
「そうっスか、なら」
今もてる全速力で走っていれば、後をついてきていた浦原の足音が消えた。
「つかまえた」
衝突事故、と言っても過言ではない。
突然目の前に立ちふさがった浦原の胸板に、額を思い切りぶつけた。
「いっ、たい!!」
「ボクもっス」
嘘だ、全然痛そうじゃない。
逃がさまいと固く掴まれる両肩。
金色の前髪から覗く双眸は、いつものように笑っていなかった。
「なんで、壊したんですか」
「なんでって、」
「もし、あれしか帰る方法がないって言ったら、どうするんスか」
ほんの少しの怒りと、狼狽えた色を浮かべた視線。
…どうすると、言われても。
恐らく、あの方法しか帰る方法がなかったのだろう。
今までの彼の努力を無下にする結果だったのだろう。
けれど、
「どうもしません。あの方法だと浦原さんがどうなるか分からなかったんでしょう?」
「…だから、黙っていたんです」
「そうですか。じゃあ尚更、私はあの方法でかえされるなら何度でも逃げ出しますし、機械も壊します」
驚いたように目を見開く浦原。
まるで、意外だと言わんばかりに。
「確かに、約束はして頂きました。あの方法で帰れたかもしれない。
でも、あの方法で帰れたとして貴方を犠牲にした私を、きっと明日の私は許せません。
もちろん、浦原さんのことも」
『生きなさい』
そう言ってくれた人は、もうこの世にいない。
生きてやる、どこでだって。
けれど、誰かの命を踏み台にして生きることは、私にとって死ぬことと同義だ。
「帰る方法を見つけるのを約束させたり、見つけたら見つけたで却下、すか。
意外と…名無しサンは我儘っスね」
張り詰めていた空気が一気に緩む。
諦めたように、呆れたように。頭を掻きながら浦原が小さくため息をついた。
「そうですよ、私は我儘なんです。
手に届く拾えるものは拾う、欲張りな性格なんですよ」
「はは、確かに」
「浦原さん、」
先程ぶった左頬をそっと指でなぞる。
すっかり赤みは引いたけども、悪いことをした。
「ごめんなさい。…あと、ありがとうございました」
きっとあれは彼なりのケジメだったのだろう。
拒んだのは、私だ。
人生なんて、一回きりの常にラストチャンス。
未練もある、後悔だってタラタラだ。
残してきた『彼』のことも気がかりだ。それでも、
生きていれば、どこだって天国になる。
居場所なんてどこにだって作れる。
最後の肉親が、そう言っていた。
(ごめんね)
もう会えないであろう最後の『家族』に、心の中で小さく呟いた。
縺れそうになる足を叱咤しながら、ただひたすら走る。
どこに向かっているのか、分からないまま。
帰る方法は、先ほど自らの手で壊したばかりだ。帰れる手筈は、なくなった。
心残りはある。
帰りたい。あちらには残してきた『彼』がいる。何者にも代えられない、かけがえのない家族だ。
でも、それでも
(それでも、あんなやり方、)
納得するわけがない。
出来るはずがない。
瀞霊廷の路地裏に座り込み、息を整える。
ぐらぐらと揺れる視界。変な冷や汗が背中を伝う。
体調の不調がピークに達して、あまりの気分の悪さに思わず口元を手で覆った。
あぁ、もう限界。
「見つけたっス」
音もなく現れたのは、今一番会いたくない男だった。
aster days#11
「ちょっ、なんで逃げるんスか!」
「理由が分からないなら真性のバカですよ!」
落ち着け。
霊力がダダ漏れになっているのか、頭痛が酷くなっていく。
蛇口のイメージだ。
溢れるソレを、ぐっと身体の中で飲み込むイメージ。
でなければ、周りでバタバタ倒れていく一般の死神の方々に申し訳ない。
「ダメっスよ、名無しサン。むしろ霊圧高くなってます」
「う、うるさい!」
こちらの考えなんてお見通しかのように、後ろから声をかけてくる。
「仕方ないっスね…『縛道の一 塞』」
つんのめる足元。
突然、足が何かに掴まれたように動かなくなった。
「うわっ!?こ…のっ!」
足に力を込めて転けそうになるのを踏ん張れば、ガラスが砕けるような音が辺りに響く。
後ろの方で「げ、」と呟く浦原の声が聞こえた。
変な方法で足止めしようとしたのか、ザマァミロ。
「縛道を霊圧で破るなんて、無茶苦茶っスよ」
「変な飛び道具使うほうが無茶ですよ!」
「そうっスか、なら」
今もてる全速力で走っていれば、後をついてきていた浦原の足音が消えた。
「つかまえた」
衝突事故、と言っても過言ではない。
突然目の前に立ちふさがった浦原の胸板に、額を思い切りぶつけた。
「いっ、たい!!」
「ボクもっス」
嘘だ、全然痛そうじゃない。
逃がさまいと固く掴まれる両肩。
金色の前髪から覗く双眸は、いつものように笑っていなかった。
「なんで、壊したんですか」
「なんでって、」
「もし、あれしか帰る方法がないって言ったら、どうするんスか」
ほんの少しの怒りと、狼狽えた色を浮かべた視線。
…どうすると、言われても。
恐らく、あの方法しか帰る方法がなかったのだろう。
今までの彼の努力を無下にする結果だったのだろう。
けれど、
「どうもしません。あの方法だと浦原さんがどうなるか分からなかったんでしょう?」
「…だから、黙っていたんです」
「そうですか。じゃあ尚更、私はあの方法でかえされるなら何度でも逃げ出しますし、機械も壊します」
驚いたように目を見開く浦原。
まるで、意外だと言わんばかりに。
「確かに、約束はして頂きました。あの方法で帰れたかもしれない。
でも、あの方法で帰れたとして貴方を犠牲にした私を、きっと明日の私は許せません。
もちろん、浦原さんのことも」
『生きなさい』
そう言ってくれた人は、もうこの世にいない。
生きてやる、どこでだって。
けれど、誰かの命を踏み台にして生きることは、私にとって死ぬことと同義だ。
「帰る方法を見つけるのを約束させたり、見つけたら見つけたで却下、すか。
意外と…名無しサンは我儘っスね」
張り詰めていた空気が一気に緩む。
諦めたように、呆れたように。頭を掻きながら浦原が小さくため息をついた。
「そうですよ、私は我儘なんです。
手に届く拾えるものは拾う、欲張りな性格なんですよ」
「はは、確かに」
「浦原さん、」
先程ぶった左頬をそっと指でなぞる。
すっかり赤みは引いたけども、悪いことをした。
「ごめんなさい。…あと、ありがとうございました」
きっとあれは彼なりのケジメだったのだろう。
拒んだのは、私だ。
人生なんて、一回きりの常にラストチャンス。
未練もある、後悔だってタラタラだ。
残してきた『彼』のことも気がかりだ。それでも、
生きていれば、どこだって天国になる。
居場所なんてどこにだって作れる。
最後の肉親が、そう言っていた。
(ごめんね)
もう会えないであろう最後の『家族』に、心の中で小さく呟いた。