Good bye,halcyon days
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『嫌だ!銀時、銀時!!』
それは源外のところでだった。
中々長い付き合いになるが、私は名無しが泣くのを見たことがなかった。
名無しが二階に住み始めた時、銀時に聞いたことがある。
どんな子なんだい?
そう問うたら奴は『生粋のお人好しでいつもニコニコ笑っている癖に、泣き虫な女』と言っていた。
実際話をしてみれば確かにいつも笑っている子だった。
気立てもよく、愛想もいい。
かぶき町周辺の年配には特に可愛がられており、頼りにもされていた。
老人会での日帰り旅行などは万が一の時の医者として、快く同伴もよくしていた。
嫌な顔ひとつせず老人の話にも耳を傾けていた様子から、恐らく元来苦ではないのだろう。
まさにお人好し。
ダラダラしている銀時には勿体無いくらいの子だった。
泣き虫、だなんて、銀時が言った戯言だと思っていた。
それがどうだ。
突然源外のところに呼び出したかと思ったら、私に名無しを預けてきた。
自分はいつか地球にとって厄災になる、今でも自分が自分じゃなくなるような感覚で怖い、と。
いつにもなく殊勝な顔で、そう銀時は言った。
自分を、死んだことにしてくれ、と。
そう言って源外の工場を後にしようとしたヤツの背中に向かって、名無しは子供のように泣きじゃくった。
真っ赤な柘榴色の目からボロボロと涙を流して、何度も何度も、名前を呼んで。
それでもアイツは振り返らなかった。
『悪ィ。』
そう一言言って、銀時は姿を消した。
***
「また手酷くやられたもんだね」
源外の工場の床で死んだように眠っている名無し。
血塗れになった作務衣は、殆どその原型を留めていなかった。
『彼』の血ではなく、恐らく彼女の血で。
散々泣き腫らしたのか、閉じられた目元は赤くなってしまっている。
まだ二階の万事屋に残っている作務衣を持って、私は源外のところに来ていた。
「…タイムマシーンが先か、それとも名無しが銀の字を斬るのが先か、ってな」
「馬鹿にするわけじゃないけどね。恐らく斬れないだろうよ、この子は。…そんな子だよ」
過去の銀時に、自分自身を斬らせる訳にはいかない。
そう言って刀を取った彼女は、今にも泣きそうな顔をしていた。
決別するかのように墓を建て、笑わなくなった名無し。昔のように穏やかな日々は、もう恐らく戻ってこない。
Good bye,halcyon days#落涙
(馬鹿だね、銀時。この子が泣くのは、いつもアンタ絡みじゃないか)
そう言ってやりたいのに、彼はここにはいない。
きっと何処かで、自分の死期を孤独に待っているのだろう。
自分を、過去の自分に殺させるために。
「…不器用な子達だよ、全く」
お登勢の憎らしげに小さく呟いた言葉は、誰にも届かない。
それは源外のところでだった。
中々長い付き合いになるが、私は名無しが泣くのを見たことがなかった。
名無しが二階に住み始めた時、銀時に聞いたことがある。
どんな子なんだい?
そう問うたら奴は『生粋のお人好しでいつもニコニコ笑っている癖に、泣き虫な女』と言っていた。
実際話をしてみれば確かにいつも笑っている子だった。
気立てもよく、愛想もいい。
かぶき町周辺の年配には特に可愛がられており、頼りにもされていた。
老人会での日帰り旅行などは万が一の時の医者として、快く同伴もよくしていた。
嫌な顔ひとつせず老人の話にも耳を傾けていた様子から、恐らく元来苦ではないのだろう。
まさにお人好し。
ダラダラしている銀時には勿体無いくらいの子だった。
泣き虫、だなんて、銀時が言った戯言だと思っていた。
それがどうだ。
突然源外のところに呼び出したかと思ったら、私に名無しを預けてきた。
自分はいつか地球にとって厄災になる、今でも自分が自分じゃなくなるような感覚で怖い、と。
いつにもなく殊勝な顔で、そう銀時は言った。
自分を、死んだことにしてくれ、と。
そう言って源外の工場を後にしようとしたヤツの背中に向かって、名無しは子供のように泣きじゃくった。
真っ赤な柘榴色の目からボロボロと涙を流して、何度も何度も、名前を呼んで。
それでもアイツは振り返らなかった。
『悪ィ。』
そう一言言って、銀時は姿を消した。
***
「また手酷くやられたもんだね」
源外の工場の床で死んだように眠っている名無し。
血塗れになった作務衣は、殆どその原型を留めていなかった。
『彼』の血ではなく、恐らく彼女の血で。
散々泣き腫らしたのか、閉じられた目元は赤くなってしまっている。
まだ二階の万事屋に残っている作務衣を持って、私は源外のところに来ていた。
「…タイムマシーンが先か、それとも名無しが銀の字を斬るのが先か、ってな」
「馬鹿にするわけじゃないけどね。恐らく斬れないだろうよ、この子は。…そんな子だよ」
過去の銀時に、自分自身を斬らせる訳にはいかない。
そう言って刀を取った彼女は、今にも泣きそうな顔をしていた。
決別するかのように墓を建て、笑わなくなった名無し。昔のように穏やかな日々は、もう恐らく戻ってこない。
Good bye,halcyon days#落涙
(馬鹿だね、銀時。この子が泣くのは、いつもアンタ絡みじゃないか)
そう言ってやりたいのに、彼はここにはいない。
きっと何処かで、自分の死期を孤独に待っているのだろう。
自分を、過去の自分に殺させるために。
「…不器用な子達だよ、全く」
お登勢の憎らしげに小さく呟いた言葉は、誰にも届かない。
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