茜色ノ小鬼//人に焦がれた鬼
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「どうやったら笑ってくれるんでしょうね」
彼女がじっと私の顔を見ながら首を傾げた。
茜色ノ小鬼//人に焦がれた鬼#参
「何のことですか?」
「あなたの事に決まってるじゃないですか、もう」
むう、と口先を尖らせて彼女が不満を漏らす。
笑顔…なんて、
「彼此、数百年…笑った記憶なんてありませんね」
「えぇー…数百年は言い過ぎなんじゃ」
「実際、そんな長いこと生きてる化物だったら、どうします?」
少し意地の悪い問いだろうか。
そう投げかければ彼女は腕を組んで「うーん…」と唸り、考え込み始める。
「うーん化物なんですかね?それ。どちらかというと仙人ですよねぇ」
「怖くないのですか?」
「流石にとって食われるのなら怖いですけど、無害ならどうってことはありませんよ。素直に長生きで凄いなぁ、とは思いますね」
あっけらかんと笑って彼女は答える。
その仙人らしき生き物は目の前にいる、と告げたら、彼女はどんな反応を返すだろう。
興味があるような、少しだけ怖いような。
「そうだ!笑顔の練習してみません?」
「…必要ありますか?それ」
「笑ってくれたら私が嬉しいからに決まってるじゃないですか」
なんて自分勝手な動機なんだ。
それでも不思議と不快感はなかった。
本当に、人間とは自分本位な生き物だ。
「まずは頬をほぐしましょう!」
いそいそと私の烏の面を外す彼女の表情は、好奇心に満ちている。
時々、彼女はこういう子供みたいな顔をする。
それは農民の高齢者を診察している時には絶対に見せない顔だった。恐らく、私だけが知っている顔だ。
えも言えぬこの擽ったくなる感情の名前を、私は知らない。
「このお面、息苦しくないですか?」
「そうですね。少し、」
やっぱり。
小さくそう呟いて、彼女はクスクスと笑った。
「こんなの付けてるから笑えないんですよ、ほら」
面を外し、丁寧に風呂敷の上に置かれる。
天照院奈落の象徴であり私が暗殺者としてのシンボルを、彼女に触れられるのは何だか複雑だった。
「えい。」
不意に彼女の両手で挟まれる頬。
生暖かく、少し薬草の匂いがする独特の雰囲気手は、紛れもなく彼女の手だった。
人に触れられたことの無い頬肉をやわやわと、しかし無遠慮に揉まれる。
揉まれるとこ自体は別に大したことはないのだが、触れる彼女の手が心地よくて思わず目を細めた。
「…なんというか思ったより表情筋、柔らかいですね」
「そうですか?どれ」
彼女の頬を両手で挟めば、餅のように不格好に潰れた。
…お世辞にも分厚いとは言えない頬肉だが、なんとも言えない触り心地に心が躍る。
指先でつまんで伸ばせば面白いくらいに伸びた。
珍しく不満そうに眉を寄せる彼女。しかし顔が間抜けになっているので、迫力はイマイチ欠けている。
「ひっはりふひへふ…」
「何言ってるのか分かりませんよ」
何となく言っていることは分かるが、それでもいつもと随分違う声に自然と笑みがこぼれた。
私の顔を見て一瞬目を丸くする彼女だが、今までで一番綻んだ笑顔で笑い返された。
あぁ、やっぱり彼女の笑顔が一番素敵だ。
彼女がじっと私の顔を見ながら首を傾げた。
茜色ノ小鬼//人に焦がれた鬼#参
「何のことですか?」
「あなたの事に決まってるじゃないですか、もう」
むう、と口先を尖らせて彼女が不満を漏らす。
笑顔…なんて、
「彼此、数百年…笑った記憶なんてありませんね」
「えぇー…数百年は言い過ぎなんじゃ」
「実際、そんな長いこと生きてる化物だったら、どうします?」
少し意地の悪い問いだろうか。
そう投げかければ彼女は腕を組んで「うーん…」と唸り、考え込み始める。
「うーん化物なんですかね?それ。どちらかというと仙人ですよねぇ」
「怖くないのですか?」
「流石にとって食われるのなら怖いですけど、無害ならどうってことはありませんよ。素直に長生きで凄いなぁ、とは思いますね」
あっけらかんと笑って彼女は答える。
その仙人らしき生き物は目の前にいる、と告げたら、彼女はどんな反応を返すだろう。
興味があるような、少しだけ怖いような。
「そうだ!笑顔の練習してみません?」
「…必要ありますか?それ」
「笑ってくれたら私が嬉しいからに決まってるじゃないですか」
なんて自分勝手な動機なんだ。
それでも不思議と不快感はなかった。
本当に、人間とは自分本位な生き物だ。
「まずは頬をほぐしましょう!」
いそいそと私の烏の面を外す彼女の表情は、好奇心に満ちている。
時々、彼女はこういう子供みたいな顔をする。
それは農民の高齢者を診察している時には絶対に見せない顔だった。恐らく、私だけが知っている顔だ。
えも言えぬこの擽ったくなる感情の名前を、私は知らない。
「このお面、息苦しくないですか?」
「そうですね。少し、」
やっぱり。
小さくそう呟いて、彼女はクスクスと笑った。
「こんなの付けてるから笑えないんですよ、ほら」
面を外し、丁寧に風呂敷の上に置かれる。
天照院奈落の象徴であり私が暗殺者としてのシンボルを、彼女に触れられるのは何だか複雑だった。
「えい。」
不意に彼女の両手で挟まれる頬。
生暖かく、少し薬草の匂いがする独特の雰囲気手は、紛れもなく彼女の手だった。
人に触れられたことの無い頬肉をやわやわと、しかし無遠慮に揉まれる。
揉まれるとこ自体は別に大したことはないのだが、触れる彼女の手が心地よくて思わず目を細めた。
「…なんというか思ったより表情筋、柔らかいですね」
「そうですか?どれ」
彼女の頬を両手で挟めば、餅のように不格好に潰れた。
…お世辞にも分厚いとは言えない頬肉だが、なんとも言えない触り心地に心が躍る。
指先でつまんで伸ばせば面白いくらいに伸びた。
珍しく不満そうに眉を寄せる彼女。しかし顔が間抜けになっているので、迫力はイマイチ欠けている。
「ひっはりふひへふ…」
「何言ってるのか分かりませんよ」
何となく言っていることは分かるが、それでもいつもと随分違う声に自然と笑みがこぼれた。
私の顔を見て一瞬目を丸くする彼女だが、今までで一番綻んだ笑顔で笑い返された。
あぁ、やっぱり彼女の笑顔が一番素敵だ。