日常篇//壱
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秋。
食欲の季節とは言えども、流石に我が家の家計では松茸なんか買えない。
だからと言って…
「折角の休みが…」
「いいじゃねーか、休みだからこそアレだ、キノコ狩りだろーが。お前好きだろ、山ン中。」
「人を野生児みたいに言うのやめてよね」
山の中は確かに好きだが、それは別に趣味だから、というわけではない。
仕事と、食糧を得るために踏み入る必要があるあったから、必然的に山慣れしているというか。
「そうですよ、銀さん。名無しさんに失礼ですよ」
「ガキの頃にイノシシ鍋食わされてもか?」
「……え?イノシシ…なべ?」
予想していなかった単語に、新八が思わず聞き返す。
神楽は辺りを散策してくる、と言って、はしゃいで駆けて行ったためこの場にはいなかった。
恐らくあの大食漢ならぬ大食娘ですらイノシシに関しては聞き返しただろう。
「美味しかったでしょ」
「そういう問題じゃねーよ、仕留めて捌いて、全部処理をこなすガキが野生児以外の何なんだ」
シレッと味の感想を求めてくる名無し。
珍しく銀時がまともなツッコミをいれているのだが、そんなことよりも彼女の幼少期の方が気になる。
今どき鶏ですら庭の裏でしめたりしないというのに、猪って。
「名無しさん、アンタものの〇姫か何かですか?」
「酷いな新八くん。あ、そうそう。猪じゃないけど鹿肉も美味しくてね、干し肉は非常食にオススメだよ」
「作ったんかィィィ!」
新八の全力で叫んだツッコミが、秋の野山に響き渡った。
***
そして次の日。
「ということで、ぼたん鍋作ってみました。」
「オイ、名無し。昨日散々あんなにキノコやらクマで痛い目見たってのに…」
ぐつぐつと煮えたぎる鍋で赤々とした肉がまさに牡丹の花のように並べられている。
見た目は美味そうな鍋そのものだが、野生味溢れる肉と、たっぷり添えられたシメジが昨日のキノコを思い出してしまう。
「大丈夫だよ、普通のシメジだから。ちゃんと猪肉は大丈夫なのか、摩理之介さんに聞いたし」
「頭からキノコ生えねェ?」
「もう。文句言うなら銀時は食べなくていいよ」
テーブルにコンロを出し、ぶつぶつ言いながら名無しが鍋を運んでくる。
一度機嫌を損ねたら意外と尾を引くのだ、彼女は。
「いやいやいや、食う!食うから!」
慌ててそう言えば、じとりと視線を向けられる。
数秒目が合った後、呆れたように小さく溜息をついて苦笑いを浮かべる名無し。
どうやら今晩の食事はちゃんとありつけるらしい。
万事屋の面々が口々に「いただきます」と手を合わせ、そろりと箸を伸ばす。
未成年二人は猪肉は初体験だ。
少し神妙な顔で口に運べば、
「あ。美味しい」
「豚や牛よりワイルドな味がするネ!名無し、おかわりまだある!?」
「一頭分あるからね。ちなみに明日はイノシシ肉カレーだよ〜」
「キャッホーイ!」
どうやら口に合ったらしく、しばらく続く肉祭りに神楽がはしゃぐ。
(肉はありがたいが猪肉祭りか…)
各地を松陽と名無しと三人で放浪していた時も、松下村塾を本格的に開いた後も時々出てきていた猪肉。
攘夷戦争中もそういえば片手で数えるような回数だが猪肉が出てきた。
どちらかというと鹿の干し肉を食べた記憶の方が新しい。あれは筋張った硬いビーフジャーキーだった。
数年ぶりのジビエ肉に恐る恐る銀時も箸を伸ばす。
「あ、うめぇな」
「でしょ」
茜色ドロップ#ワイルド・ドクター
余談だが真選組とお登勢にも猪肉分けたらしい。
…ちゃんと彼らは調理できるのだろうか。
銀時はぼんやりとそんなことを考えながら、久しぶりの肉祭りに舌鼓を打った。
その頃、
「「なんで猪肉ゥゥゥ!?」」
名無しから送られた野生味溢れるお裾分けに、土方とお登勢が声を上げたのは同時だったとか。
食欲の季節とは言えども、流石に我が家の家計では松茸なんか買えない。
だからと言って…
「折角の休みが…」
「いいじゃねーか、休みだからこそアレだ、キノコ狩りだろーが。お前好きだろ、山ン中。」
「人を野生児みたいに言うのやめてよね」
山の中は確かに好きだが、それは別に趣味だから、というわけではない。
仕事と、食糧を得るために踏み入る必要があるあったから、必然的に山慣れしているというか。
「そうですよ、銀さん。名無しさんに失礼ですよ」
「ガキの頃にイノシシ鍋食わされてもか?」
「……え?イノシシ…なべ?」
予想していなかった単語に、新八が思わず聞き返す。
神楽は辺りを散策してくる、と言って、はしゃいで駆けて行ったためこの場にはいなかった。
恐らくあの大食漢ならぬ大食娘ですらイノシシに関しては聞き返しただろう。
「美味しかったでしょ」
「そういう問題じゃねーよ、仕留めて捌いて、全部処理をこなすガキが野生児以外の何なんだ」
シレッと味の感想を求めてくる名無し。
珍しく銀時がまともなツッコミをいれているのだが、そんなことよりも彼女の幼少期の方が気になる。
今どき鶏ですら庭の裏でしめたりしないというのに、猪って。
「名無しさん、アンタものの〇姫か何かですか?」
「酷いな新八くん。あ、そうそう。猪じゃないけど鹿肉も美味しくてね、干し肉は非常食にオススメだよ」
「作ったんかィィィ!」
新八の全力で叫んだツッコミが、秋の野山に響き渡った。
***
そして次の日。
「ということで、ぼたん鍋作ってみました。」
「オイ、名無し。昨日散々あんなにキノコやらクマで痛い目見たってのに…」
ぐつぐつと煮えたぎる鍋で赤々とした肉がまさに牡丹の花のように並べられている。
見た目は美味そうな鍋そのものだが、野生味溢れる肉と、たっぷり添えられたシメジが昨日のキノコを思い出してしまう。
「大丈夫だよ、普通のシメジだから。ちゃんと猪肉は大丈夫なのか、摩理之介さんに聞いたし」
「頭からキノコ生えねェ?」
「もう。文句言うなら銀時は食べなくていいよ」
テーブルにコンロを出し、ぶつぶつ言いながら名無しが鍋を運んでくる。
一度機嫌を損ねたら意外と尾を引くのだ、彼女は。
「いやいやいや、食う!食うから!」
慌ててそう言えば、じとりと視線を向けられる。
数秒目が合った後、呆れたように小さく溜息をついて苦笑いを浮かべる名無し。
どうやら今晩の食事はちゃんとありつけるらしい。
万事屋の面々が口々に「いただきます」と手を合わせ、そろりと箸を伸ばす。
未成年二人は猪肉は初体験だ。
少し神妙な顔で口に運べば、
「あ。美味しい」
「豚や牛よりワイルドな味がするネ!名無し、おかわりまだある!?」
「一頭分あるからね。ちなみに明日はイノシシ肉カレーだよ〜」
「キャッホーイ!」
どうやら口に合ったらしく、しばらく続く肉祭りに神楽がはしゃぐ。
(肉はありがたいが猪肉祭りか…)
各地を松陽と名無しと三人で放浪していた時も、松下村塾を本格的に開いた後も時々出てきていた猪肉。
攘夷戦争中もそういえば片手で数えるような回数だが猪肉が出てきた。
どちらかというと鹿の干し肉を食べた記憶の方が新しい。あれは筋張った硬いビーフジャーキーだった。
数年ぶりのジビエ肉に恐る恐る銀時も箸を伸ばす。
「あ、うめぇな」
「でしょ」
茜色ドロップ#ワイルド・ドクター
余談だが真選組とお登勢にも猪肉分けたらしい。
…ちゃんと彼らは調理できるのだろうか。
銀時はぼんやりとそんなことを考えながら、久しぶりの肉祭りに舌鼓を打った。
その頃、
「「なんで猪肉ゥゥゥ!?」」
名無しから送られた野生味溢れるお裾分けに、土方とお登勢が声を上げたのは同時だったとか。