日常篇//壱
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いつもの回診を終わり、半ば備品置き場と化している元・花岡診療所へ向かおうとした時だった。
突然鳴る名無しの携帯電話。
着信は近藤からだった。
「もしもし。どうされました?近藤さん」
風鈴が軽やかに鳴る駄菓子屋の軒先へ入り、名無しは涼しさに顔を綻ばせた。
だがそれは一瞬で消え失せる。
訝しげな表情で、小さく首を傾げて。
「へ。隊士が次々と倒れてる?」
茜色ドロップ#夏と心霊と着物の女と(前篇)
「どうだ?名無しちゃん。」
「うーん…毒を盛られた、とかではないと思うんですけど」
倒れた隊士数名から採血した血液を小さな試験管の中で振りながら名無しが答える。
何か刺されたような跡があり、隊士が口々に『赤い着物の女が』と魘されていた。
「じゃあやっぱり幽霊の仕業なんじゃ」
「まさか。」
最近の幽霊が首筋に何か刺すというのか。そんな猟奇的な幽霊がいてたまるか。
怯える近藤を見て思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「いや、でも怪談話した時から、皆倒れてるしな」
「何やってんですか、真選組。」
寝込んでいる隊士の汗を拭きながら名無しが溜息をつく。
まさか民間人は夜な夜な男達が集まって怪談話をしているとは露程も思っていないだろうに。
「局長!お祓い屋が来られました!」
「おお、来たか。すまない、名無しちゃん。ここは任せてもいいか?」
「はいはい。いってらっしゃい」
また胡散臭いものを呼んだなぁ、と首を傾げたところで、ふと気がついた。
…そう言えば万事屋三人が『夏と言えば怪談だから儲かるんじゃね?』とコソコソ何かしていたのを。
「……いやいや、まさかね」
クスクスと笑いながら、名無しは氷水を張った盥の中で手拭いを絞った。
***
「名無し!ちょうどいいところに!このサド王子を止めてくれェェ!」
「詐欺まがいことは良くないからね。沖田さん、容赦なくやっちゃってください」
「おう、許可でたぜィ、旦那」
「おいコラ、名無し!あだだだだ!」
そんなまさか、と思った自分が馬鹿だった。
インチキ商法で金を巻き上げようとした万事屋三人(主犯は銀時だが)は、真選組の庭の木に吊るされていた。
逆様に吊るされた姿を見ると多少は憐れみの気持ちも湧かなくはないが、人様に言えないような方法で金を稼ぐのは以ての外だ。
鼻腔への水責めをする沖田と、水責めされる銀時を見て名無しは思わず溜息をついた。
「はー、頭が破裂するかと思った…」
「こんな服まで用意して…何やってるのよ」
「名無しのも用意してたんだぞ。」
「まさかとは思うけど巫女さん服とかじゃないでしょうね」
そもそもこんな怪しい商売の片棒を担がせるつもりだったのか。
問い詰めれば見事に目が泳ぐ銀時。図星か。
「……巫女さんいた方が信憑性高そうだろ?」
「馬鹿。」
銀時の頬をぎゅうっと抓って、本日何度目かの溜息をついた。
「本来ならテメーら皆叩き斬ってやるとこだが、生憎今は俺達もヒマじゃねェんだ」
「あー幽霊が恐くて何も手につかねーってか」
「かわいそーアルな、トイレ一緒についていってあげようか?」
呆れきった土方に対して、銀時と神楽がプスプスと笑っている。
まぁ当たらずも遠からずだ。少なくとも、こんな胡散臭い拝み屋に依頼するくらいには。
「武士を愚弄するかァ!トイレの前までお願いします、チャイナさん!」
「お願いすんのかィ!」
元気よく声を上げる近藤に対して、間髪入れずにツッコミを入れる土方。
もう真選組で漫才が結成すればいいんじゃないだろうか。
そう思わざるを得ない、名無しだった。
この後、近藤の断末魔が聞こえるまでは。
突然鳴る名無しの携帯電話。
着信は近藤からだった。
「もしもし。どうされました?近藤さん」
風鈴が軽やかに鳴る駄菓子屋の軒先へ入り、名無しは涼しさに顔を綻ばせた。
だがそれは一瞬で消え失せる。
訝しげな表情で、小さく首を傾げて。
「へ。隊士が次々と倒れてる?」
茜色ドロップ#夏と心霊と着物の女と(前篇)
「どうだ?名無しちゃん。」
「うーん…毒を盛られた、とかではないと思うんですけど」
倒れた隊士数名から採血した血液を小さな試験管の中で振りながら名無しが答える。
何か刺されたような跡があり、隊士が口々に『赤い着物の女が』と魘されていた。
「じゃあやっぱり幽霊の仕業なんじゃ」
「まさか。」
最近の幽霊が首筋に何か刺すというのか。そんな猟奇的な幽霊がいてたまるか。
怯える近藤を見て思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「いや、でも怪談話した時から、皆倒れてるしな」
「何やってんですか、真選組。」
寝込んでいる隊士の汗を拭きながら名無しが溜息をつく。
まさか民間人は夜な夜な男達が集まって怪談話をしているとは露程も思っていないだろうに。
「局長!お祓い屋が来られました!」
「おお、来たか。すまない、名無しちゃん。ここは任せてもいいか?」
「はいはい。いってらっしゃい」
また胡散臭いものを呼んだなぁ、と首を傾げたところで、ふと気がついた。
…そう言えば万事屋三人が『夏と言えば怪談だから儲かるんじゃね?』とコソコソ何かしていたのを。
「……いやいや、まさかね」
クスクスと笑いながら、名無しは氷水を張った盥の中で手拭いを絞った。
***
「名無し!ちょうどいいところに!このサド王子を止めてくれェェ!」
「詐欺まがいことは良くないからね。沖田さん、容赦なくやっちゃってください」
「おう、許可でたぜィ、旦那」
「おいコラ、名無し!あだだだだ!」
そんなまさか、と思った自分が馬鹿だった。
インチキ商法で金を巻き上げようとした万事屋三人(主犯は銀時だが)は、真選組の庭の木に吊るされていた。
逆様に吊るされた姿を見ると多少は憐れみの気持ちも湧かなくはないが、人様に言えないような方法で金を稼ぐのは以ての外だ。
鼻腔への水責めをする沖田と、水責めされる銀時を見て名無しは思わず溜息をついた。
「はー、頭が破裂するかと思った…」
「こんな服まで用意して…何やってるのよ」
「名無しのも用意してたんだぞ。」
「まさかとは思うけど巫女さん服とかじゃないでしょうね」
そもそもこんな怪しい商売の片棒を担がせるつもりだったのか。
問い詰めれば見事に目が泳ぐ銀時。図星か。
「……巫女さんいた方が信憑性高そうだろ?」
「馬鹿。」
銀時の頬をぎゅうっと抓って、本日何度目かの溜息をついた。
「本来ならテメーら皆叩き斬ってやるとこだが、生憎今は俺達もヒマじゃねェんだ」
「あー幽霊が恐くて何も手につかねーってか」
「かわいそーアルな、トイレ一緒についていってあげようか?」
呆れきった土方に対して、銀時と神楽がプスプスと笑っている。
まぁ当たらずも遠からずだ。少なくとも、こんな胡散臭い拝み屋に依頼するくらいには。
「武士を愚弄するかァ!トイレの前までお願いします、チャイナさん!」
「お願いすんのかィ!」
元気よく声を上げる近藤に対して、間髪入れずにツッコミを入れる土方。
もう真選組で漫才が結成すればいいんじゃないだろうか。
そう思わざるを得ない、名無しだった。
この後、近藤の断末魔が聞こえるまでは。