日常篇//壱
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「ちょっと。何これ」
回診の仕事が終わって、花見会場についた時。
そこは地獄と化していた。
近藤は白目剥いて倒れているし、沖田と神楽はピコピコハンマー持って間合いを測っている。
「お妙ちゃん、これは何事?」
「あ、名無しちゃん、お仕事お疲れ様。何って、見ての通りお花見よ。」
「桜の木、切り倒されてるけど?」
茜色ドロップ#花見の後は片付けましょう
「こういう後処理のために来たんじゃないんですけど。ねぇ、山崎くん」
「すみません、名無しさん。…っていうか、知り合いだったんですね、万事屋の旦那達と」
「知り合いっていうか、同居人だけど」
「え。」
酒瓶転がる会場の中、酔っぱらいの介護やら何故か出ている怪我人の手当をする名無しさん。
普段はないはずの眉間のシワが悩ましげに刻まれている。
「それ家に帰っても心休まらないんじゃ…」
「そんなことはないですよ、幼馴染なので慣れたもんですし。」
ええぇ…あんなハチャメチャな旦那と幼馴染?道理でうちの連中を初めて見た時も特に動じなかったわけだ。
「で、桜の木を斬った馬鹿はどっちなんですか」
「だ…旦那の方ですけど」
「……はぁ。探して説教してきます」
ゲロを撒き散らしている隊士を介抱し終わったあと、名無しさんは周りの一般客に対して頭を下げながら副長と旦那を探しに行った。
確かに、あんな性格だと尻拭いも多いことだろう。
なんだ、彼女も苦労人なのか。
妙な所でシンパシーを感じる山崎だった。
***
「土方さん。起きてください。」
少し強めに頬を叩かれる感覚。
ぺしっと乾いた音を立てられ、俺は重たい瞼をゆっくり開けた。
…ここ、どこだ?
「やっと起きましたか。次は土方さんのお説教の番ですよ」
にっこりと満面の笑みを浮かべ、仁王立ちで見下ろしてくる名無し。
頭には葉っぱがついていたり、作務衣の袖が無造作にたくし上げられていた。
近くにある自販機の上にはゲロの跡。
ちなみに自販機の足元にも撒かれた嘔吐物があった。まるで地獄絵図だ。
確か、万事屋の野郎と勝負して……あれ、そこから記憶がねェ。
その件の万事屋は…というと、正座をさせられていた。
次は、ということはおそらく説教済みなのだろう。
「さて、何をされたか覚えていますか?」
「…あまり。」
「そうでしょうね。
まぁ、酔っ払って犬相手にガチギレしたり、真剣を公共の場で振りまわしたり、自販機の上に登って嘔吐物を撒き散らしたりしてたんですけどね。」
マジかよ。
「いやね、いいんですよ、この天パは。自営業ですし、生活態度がなってないのはかぶき町町内に知れ渡っていますから」
「名無し、それ酷くねぇか?」
「銀時。黙ってて」
「ハイ。」
…素直すぎるだろ。
「土方さんは警察で、副長ですよ。こんな自販機の上で寝るとか…どんな目に遭っても知りませんよ」
「カーチャンか、お前は。別に、どうなったっていいだろ」
「よくありません。」
ピシャリと言い切る彼女は、少し呆れている。
小さく溜息をついて困ったように眉を寄せた。
「万が一怪我したら手当するのは私ですよ。仕事を増やさないでください。医者はヒマくらいなのが丁度いいんですから」
それに、と言葉を一旦切って、もう一度溜息をつく。
「言っておきますけど、真選組の健康診断は明後日ですからね。問答無用で数値悪かったら再検査しますから」
…………。
「オイ、名無し。それは卑怯なんじゃ、」
「侍は潔く、ですよ。
…ほら、手伝いますから此処掃除しちゃいましょう」
小さく肩を竦めながら目の前の女は笑う。
よくもまぁ、他人の吐瀉物の掃除を手伝う気になるもんだ。ある意味感心する。
「変な女。」
「失礼ですね、私だって勤め先がゲロ警察って言われるのが嫌なだけですよ」
「ぷぷっ、ゲロ警察だってよ、土方くん」
「言っておくけど銀時。住んでいる家の家業が万ゲロ屋って言われるのも嫌だからね」
「なんだよ、万ゲロ屋って!語呂悪すぎだろ!」
万事屋の野郎とギャーギャー言いながら、バケツに汲んできた水で嘔吐物を側溝へ流す名無し。
手慣れているというか、なんというか。
わざわざ彼女が手伝う必要がないというのに、さも当たり前かのように手を差し伸べる。
言葉は多少の憎まれ口だが、要約すると『真選組の風評被害を軽くするため』ということだろう。
外部の人間がそこまで気にする事はないというのに、なんというか、
「…お人好し。」
ぽそりと呟いた俺の言葉は、桜吹雪にかき消えた。
回診の仕事が終わって、花見会場についた時。
そこは地獄と化していた。
近藤は白目剥いて倒れているし、沖田と神楽はピコピコハンマー持って間合いを測っている。
「お妙ちゃん、これは何事?」
「あ、名無しちゃん、お仕事お疲れ様。何って、見ての通りお花見よ。」
「桜の木、切り倒されてるけど?」
茜色ドロップ#花見の後は片付けましょう
「こういう後処理のために来たんじゃないんですけど。ねぇ、山崎くん」
「すみません、名無しさん。…っていうか、知り合いだったんですね、万事屋の旦那達と」
「知り合いっていうか、同居人だけど」
「え。」
酒瓶転がる会場の中、酔っぱらいの介護やら何故か出ている怪我人の手当をする名無しさん。
普段はないはずの眉間のシワが悩ましげに刻まれている。
「それ家に帰っても心休まらないんじゃ…」
「そんなことはないですよ、幼馴染なので慣れたもんですし。」
ええぇ…あんなハチャメチャな旦那と幼馴染?道理でうちの連中を初めて見た時も特に動じなかったわけだ。
「で、桜の木を斬った馬鹿はどっちなんですか」
「だ…旦那の方ですけど」
「……はぁ。探して説教してきます」
ゲロを撒き散らしている隊士を介抱し終わったあと、名無しさんは周りの一般客に対して頭を下げながら副長と旦那を探しに行った。
確かに、あんな性格だと尻拭いも多いことだろう。
なんだ、彼女も苦労人なのか。
妙な所でシンパシーを感じる山崎だった。
***
「土方さん。起きてください。」
少し強めに頬を叩かれる感覚。
ぺしっと乾いた音を立てられ、俺は重たい瞼をゆっくり開けた。
…ここ、どこだ?
「やっと起きましたか。次は土方さんのお説教の番ですよ」
にっこりと満面の笑みを浮かべ、仁王立ちで見下ろしてくる名無し。
頭には葉っぱがついていたり、作務衣の袖が無造作にたくし上げられていた。
近くにある自販機の上にはゲロの跡。
ちなみに自販機の足元にも撒かれた嘔吐物があった。まるで地獄絵図だ。
確か、万事屋の野郎と勝負して……あれ、そこから記憶がねェ。
その件の万事屋は…というと、正座をさせられていた。
次は、ということはおそらく説教済みなのだろう。
「さて、何をされたか覚えていますか?」
「…あまり。」
「そうでしょうね。
まぁ、酔っ払って犬相手にガチギレしたり、真剣を公共の場で振りまわしたり、自販機の上に登って嘔吐物を撒き散らしたりしてたんですけどね。」
マジかよ。
「いやね、いいんですよ、この天パは。自営業ですし、生活態度がなってないのはかぶき町町内に知れ渡っていますから」
「名無し、それ酷くねぇか?」
「銀時。黙ってて」
「ハイ。」
…素直すぎるだろ。
「土方さんは警察で、副長ですよ。こんな自販機の上で寝るとか…どんな目に遭っても知りませんよ」
「カーチャンか、お前は。別に、どうなったっていいだろ」
「よくありません。」
ピシャリと言い切る彼女は、少し呆れている。
小さく溜息をついて困ったように眉を寄せた。
「万が一怪我したら手当するのは私ですよ。仕事を増やさないでください。医者はヒマくらいなのが丁度いいんですから」
それに、と言葉を一旦切って、もう一度溜息をつく。
「言っておきますけど、真選組の健康診断は明後日ですからね。問答無用で数値悪かったら再検査しますから」
…………。
「オイ、名無し。それは卑怯なんじゃ、」
「侍は潔く、ですよ。
…ほら、手伝いますから此処掃除しちゃいましょう」
小さく肩を竦めながら目の前の女は笑う。
よくもまぁ、他人の吐瀉物の掃除を手伝う気になるもんだ。ある意味感心する。
「変な女。」
「失礼ですね、私だって勤め先がゲロ警察って言われるのが嫌なだけですよ」
「ぷぷっ、ゲロ警察だってよ、土方くん」
「言っておくけど銀時。住んでいる家の家業が万ゲロ屋って言われるのも嫌だからね」
「なんだよ、万ゲロ屋って!語呂悪すぎだろ!」
万事屋の野郎とギャーギャー言いながら、バケツに汲んできた水で嘔吐物を側溝へ流す名無し。
手慣れているというか、なんというか。
わざわざ彼女が手伝う必要がないというのに、さも当たり前かのように手を差し伸べる。
言葉は多少の憎まれ口だが、要約すると『真選組の風評被害を軽くするため』ということだろう。
外部の人間がそこまで気にする事はないというのに、なんというか、
「…お人好し。」
ぽそりと呟いた俺の言葉は、桜吹雪にかき消えた。