日常篇//壱
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銀時が風邪を拗らせ、神楽が万事屋グラさんをした次の日。
「ちょっと…死屍累々じゃない」
名無し以外が全員風邪を引いた。
茜色ドロップ#万事屋銀ちゃん代行人
「で、何でこうなるの。」
「いや頼むって。今日の依頼、ただの猫探しなのに金振りのいい仕事なんだよ」
「そうじゃなくて。」
銀時のいつも着ている服を掴んで名無しは溜息をついた。
中のシャツはまぁ、よしとしよう。胸元が少し気になるが。
しかし着物に関してはサイズが大きいからか、裾を見事に引き摺っている。
昨日の神楽程ではないが、やはり大きいものは大きい。
「昨日神楽がオメー、その格好したんだから、代行なら名無しだってするべきだろ…ゲホッ、」
「銀時のコスプレみたいで、ちょっと恥ずかしいんだけど…」
「俺は眼福だけどな」
そういう問題じゃない。
かと言って『脱ぐ。』と言い張ったらこの病人は煩いだろう。
妙なこだわりがあるから、時々銀時は本当に面倒くさい。
「…はいはい。万事屋代行、今日だけだからね。神楽ちゃんも、新八くんもしっかり寝てなきゃダメよ。
お粥は冷蔵庫の中にあるから、仲良く食べること。薬は机の上にあるから」
テキパキと支度を終えて名無しが臥せっている三人に伝える。隣に定春がいるのを見た限りでは、どうやら彼も連れていくようだった。
「特に銀時、治りかけなんだから絶対に大人しくしててよね」
「オイオイ…年長者が一番問題児みたいな言い方しちゃうわけ?」
「問題児でしょ、もう」
いってきます。
名無しは呆れたように肩を小さく竦めて、定春と一緒に万事屋から出かけて行った。
***
「猫探し簡単だったね。
定春の鼻は凄いな〜偉いぞ〜。ご褒美にビーフジャーキーをあげちゃおう」
「ワン!」
自販機で買った缶コーヒーを飲みながら、名無しと定春は公園のベンチで一休みしていた。
猫をおびき寄せるため念の為マタタビなどを入れていたリュックから、定春のおやつのジャーキーを取り出して首の下を撫でた。
モフモフとした毛並みは魅惑的の一言に尽きる。動物ってセラピー効果があると言われているが、たしかにその通りかもしれない。
休憩もそこそこに、定春を連れて公園を出た後すぐだった。
張り込みでもしているのだろうか、白黒ツートンのパトカーにはよく見慣れた人物が険しい顔で乗っていた。
「あ、土方さん」
「…名無しか?お前、どしたその格好…」
「万事屋代行中です。全員風邪で倒れまして。格好についてはもうそっといておいてください」
遠い目をしてそう言えば、事情を何となく察してくれたのか、土方は「そうか」と一言だけ呟いた。
「ところで、どうしてこんな辺鄙なところに?」
「銀行強盗が町中で起きたんだが、総悟のせいで犯人見失っちまったんだよ」
「それはそれは。」
恐らく土方へバズーカでも打ったのだろう。
彼の隊服は所々煤で汚れていた。
「その泥棒って、もしかしてあの人ですか?」
そっと声を抑えて名無しが屋根の上を指差す。
こちらにまだ気づいていないのか、忍びのような装束を纏った男が周りを忙しなく警戒していた。
「…あれだわ」
パトカーから無線を取り出し、指示を飛ばそうとする土方の手を慌てて抑える名無し。
訝しげに鋭い視線を向けてくる土方に対して、彼女は困ったように小さく笑った。
「駄目ですよ、土方さん。臆病な動物は単騎で狩るに限ります。多勢で囲めば呆気なく隠れちゃいます。逆に女子供ひとりだと油断して斬りかかって来る。
ということで、そこの川で張ってて貰えます?ちょっと追い込み漁でもしましょうか」
定春をあやしつけるように撫でる名無しを、スっと細めた目で土方が視線を向ける。
「何言って、」
「私は今、万事屋代行ですから。犯人確保に協力したら、少しは報酬くださいね。
可愛い従業員へのお給料も出さなきゃいけませんし」
ニッと悪戯っぽい笑顔で名無しが笑う。
ひらりと定春に跨ると、巨大な狛犬は大きく跳躍した。
軽い身のこなしで定春から飛び降り、屋根瓦の上へ降り立つ名無し。
「な、何だ、お前!」
「万事屋銀ちゃん代行でーす。
もう。駄目ですよ強盗なんて。さ、そのお金の入ったケースを渡してください」
「うるせぇ!」
忍者刀を抜き、躍り出るように男が切りかかってくる。
それを紙一重で躱せば、足元の瓦がカラリと鳴った。
「そんな危ないもの、振り回したら駄目ですってば」
もう一度振り下ろされる太刀筋を、くるりと避ければ銀時の白い着物がふわりと空気を孕んで膨らむ。
男の手首目掛けて、鞘に入ったままの短刀で強打すれば、手首の骨が折れる鈍い感覚。
暫くこれで刀は握れないだろう。
「ぐ、あぁ!」
「行きますよー、土方さん」
屋根の上から痛みに呻く男の背中を蹴り落とせば、屋根から川へ、水柱を立てて強盗犯が落水した。
それを縄と手錠で拘束する真選組。
犯人確保をパトカーの後部座席に押し詰められるのを確認して、土方は屋根の上を見上げた。
(なんでただの医者がこんな場慣れしてんだ)
当の本人は定春を褒めながら撫で回している。
ただの医者じゃないのか?
土方のささやかな疑問を他所に、屋根の上から名無しは無邪気に手を振った。
「ちょっと…死屍累々じゃない」
名無し以外が全員風邪を引いた。
茜色ドロップ#万事屋銀ちゃん代行人
「で、何でこうなるの。」
「いや頼むって。今日の依頼、ただの猫探しなのに金振りのいい仕事なんだよ」
「そうじゃなくて。」
銀時のいつも着ている服を掴んで名無しは溜息をついた。
中のシャツはまぁ、よしとしよう。胸元が少し気になるが。
しかし着物に関してはサイズが大きいからか、裾を見事に引き摺っている。
昨日の神楽程ではないが、やはり大きいものは大きい。
「昨日神楽がオメー、その格好したんだから、代行なら名無しだってするべきだろ…ゲホッ、」
「銀時のコスプレみたいで、ちょっと恥ずかしいんだけど…」
「俺は眼福だけどな」
そういう問題じゃない。
かと言って『脱ぐ。』と言い張ったらこの病人は煩いだろう。
妙なこだわりがあるから、時々銀時は本当に面倒くさい。
「…はいはい。万事屋代行、今日だけだからね。神楽ちゃんも、新八くんもしっかり寝てなきゃダメよ。
お粥は冷蔵庫の中にあるから、仲良く食べること。薬は机の上にあるから」
テキパキと支度を終えて名無しが臥せっている三人に伝える。隣に定春がいるのを見た限りでは、どうやら彼も連れていくようだった。
「特に銀時、治りかけなんだから絶対に大人しくしててよね」
「オイオイ…年長者が一番問題児みたいな言い方しちゃうわけ?」
「問題児でしょ、もう」
いってきます。
名無しは呆れたように肩を小さく竦めて、定春と一緒に万事屋から出かけて行った。
***
「猫探し簡単だったね。
定春の鼻は凄いな〜偉いぞ〜。ご褒美にビーフジャーキーをあげちゃおう」
「ワン!」
自販機で買った缶コーヒーを飲みながら、名無しと定春は公園のベンチで一休みしていた。
猫をおびき寄せるため念の為マタタビなどを入れていたリュックから、定春のおやつのジャーキーを取り出して首の下を撫でた。
モフモフとした毛並みは魅惑的の一言に尽きる。動物ってセラピー効果があると言われているが、たしかにその通りかもしれない。
休憩もそこそこに、定春を連れて公園を出た後すぐだった。
張り込みでもしているのだろうか、白黒ツートンのパトカーにはよく見慣れた人物が険しい顔で乗っていた。
「あ、土方さん」
「…名無しか?お前、どしたその格好…」
「万事屋代行中です。全員風邪で倒れまして。格好についてはもうそっといておいてください」
遠い目をしてそう言えば、事情を何となく察してくれたのか、土方は「そうか」と一言だけ呟いた。
「ところで、どうしてこんな辺鄙なところに?」
「銀行強盗が町中で起きたんだが、総悟のせいで犯人見失っちまったんだよ」
「それはそれは。」
恐らく土方へバズーカでも打ったのだろう。
彼の隊服は所々煤で汚れていた。
「その泥棒って、もしかしてあの人ですか?」
そっと声を抑えて名無しが屋根の上を指差す。
こちらにまだ気づいていないのか、忍びのような装束を纏った男が周りを忙しなく警戒していた。
「…あれだわ」
パトカーから無線を取り出し、指示を飛ばそうとする土方の手を慌てて抑える名無し。
訝しげに鋭い視線を向けてくる土方に対して、彼女は困ったように小さく笑った。
「駄目ですよ、土方さん。臆病な動物は単騎で狩るに限ります。多勢で囲めば呆気なく隠れちゃいます。逆に女子供ひとりだと油断して斬りかかって来る。
ということで、そこの川で張ってて貰えます?ちょっと追い込み漁でもしましょうか」
定春をあやしつけるように撫でる名無しを、スっと細めた目で土方が視線を向ける。
「何言って、」
「私は今、万事屋代行ですから。犯人確保に協力したら、少しは報酬くださいね。
可愛い従業員へのお給料も出さなきゃいけませんし」
ニッと悪戯っぽい笑顔で名無しが笑う。
ひらりと定春に跨ると、巨大な狛犬は大きく跳躍した。
軽い身のこなしで定春から飛び降り、屋根瓦の上へ降り立つ名無し。
「な、何だ、お前!」
「万事屋銀ちゃん代行でーす。
もう。駄目ですよ強盗なんて。さ、そのお金の入ったケースを渡してください」
「うるせぇ!」
忍者刀を抜き、躍り出るように男が切りかかってくる。
それを紙一重で躱せば、足元の瓦がカラリと鳴った。
「そんな危ないもの、振り回したら駄目ですってば」
もう一度振り下ろされる太刀筋を、くるりと避ければ銀時の白い着物がふわりと空気を孕んで膨らむ。
男の手首目掛けて、鞘に入ったままの短刀で強打すれば、手首の骨が折れる鈍い感覚。
暫くこれで刀は握れないだろう。
「ぐ、あぁ!」
「行きますよー、土方さん」
屋根の上から痛みに呻く男の背中を蹴り落とせば、屋根から川へ、水柱を立てて強盗犯が落水した。
それを縄と手錠で拘束する真選組。
犯人確保をパトカーの後部座席に押し詰められるのを確認して、土方は屋根の上を見上げた。
(なんでただの医者がこんな場慣れしてんだ)
当の本人は定春を褒めながら撫で回している。
ただの医者じゃないのか?
土方のささやかな疑問を他所に、屋根の上から名無しは無邪気に手を振った。