日常篇//壱
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銀時が、交通事故にあった。
「一体誰だい、君達は?僕の知り合いかい?」
目と眉が近い銀時がいつになく真面目な声でそう言った。
茜色ドロップ#あなたがいれば、それだけで
「で、この人が幼馴染の名無しさんですよ。銀さん」
「こんな美人が僕の幼馴染!?」
新八に丁寧に紹介され、頭に包帯を巻いた銀時が目を丸くして驚く。
褒められれば少なくとも嬉しいはずなんだが、どうしてだろう。
何だか寒気がした。
「どうかされましたか?」
「いや…ちょっと今、ゾワッとしちゃって。今まで一言もそんなこと言われたことなかったから」
あぁ、ほら。
現に腕に寒イボが。
「酷い男ですね、前の僕は」
「本当に。」
一人称が僕、だなんて。
何だか可笑しくて思わず笑ってしまった。
記憶がなかった時の私も、こんな感じ何だろうか。
俯いて小さく笑っていると、じっとこちらを見てくる視線に気がつき、顔を上げる。
「どうかした?」
「いえ、赤い瞳があまりにも綺麗で」
どこか、見覚えがあるような。
口説き文句のような台詞。
いつか言われたことのある言葉に、何だか涙が出そうになった。
「ふふっ」
「どうか、されましたか?」
「んーん。やっぱり銀時は銀時だな、って思って」
記憶がなくても、貴方は貴方。
きっと私が何も覚えてない時も、貴方ならこう思ったのだろう。
***
辰馬の宇宙船が万事屋に突っ込み、半壊してしまった。
それを見て銀時は『万事屋を解散しましょう』と言った。
一瞬、考えてしまった。
このまま記憶が戻らなければ、彼は悪夢のような過去を忘れたまま生きていられるのでは、と。
万事屋を去る彼の背中を、止められなかった。
「はぁーあ、やってらんない。」
「名無し、どうして銀ちゃん止めなかったアルか?」
酢昆布を食べながら、銀時がいつも座っていた席で膝を抱える神楽。
ギコギコとぎこちない音の鳴る椅子は、少し頼りなさげだ。
「本当にね。一緒に住もうって言い出したの、よーく考えたら銀時からなのになぁ」
冷蔵庫に入っていたいちご牛乳を飲みながら名無しがボヤく。
甘ったるい、ハイカロリーな飲み物は彼の大好物だ。
「一発、殴っとけばよかった」
言いたいことは山ほどある。
糖分とりすぎだとか、いつも怪我ばっかしてとか、ジャンプはまとめて捨てなさいとか。
「名無しさんが殴ったら記憶戻ったりして。」
「あはは、小太郎とか皆に殴られてすぐ記憶失くす、あのポンコツ頭が?私が怒りを込めて殴ったら、言語野まで支障きたすわよ」
ファミコン以下の耐久度に思わず乾いた笑いが出てくる。
物騒な名無しの物言いに新八は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「殴りに行くかい?」
家主のいなくなった万事屋に、一枚メモを持ってお登勢がやってくる。
そこにはとある工場の住所が書かれていた。
***
「まさか記憶喪失になるとは思わなかったな」
「普段から頭を使ってないからそうなるのよ」
「ひでぇ物言いだな、オイ」
マムシ工場での一件で記憶が戻った銀時と、万事屋へ着替えを取りに来た名無し。
寝泊まりできる状態ではないため、今は志村邸に身を寄せているが…さて、この家の二階をどうやって現状復帰させてやろうか。
そう考えると頭が痛くなりそうだったが、不思議と何とかなる気がした。
「新八から聞いたぞ、記憶が戻るか戻らないか、あんまり心配してなかった、って」
「するわけないじゃない」
シレッと名無しが即答して、思わず脱力してしまう。
漫画のようなズッコケ方をした銀時を見て、楽しそうに名無しはクスクスと笑った。
「記憶が戻ろうが戻らまいが関係ないからね。
銀時は銀時だもの。万事屋だろうが、次期工場長だろうが、元気に暮らしてくれていれば私はそれでいいよ」
「お前なぁ…そこは銀さんといないと寂しい〜とかアイツらみたいに可愛げのあること言えないわけ?」
いや、ファミコン並の記憶能力が悪いのかもしれないが。
長年連れ添った幼馴染のあっさりとした反応に不満が漏れないわけがなかった。
「そりゃ寂しかったよ。」
困ったように笑う彼女の瞳が柔らかく細められる。
僅かに憂いを帯びた赤を見て銀時は一瞬息を呑む。
「あの子達の前で言うのは、何かね、ほら。」
歯を向いて苦笑いする名無しを見て、銀時はバリバリと頭を掻いた。
そうだ、名無しはこういう性格だった。
痛いのを痛いとも言わず、辛いのを辛いとも言わず、笑っているような、
「意地っ張りめ」
「誰のせいよ」
「オイオイ、俺は事故に関しては過失ゼロだぞ?」名無し
銀時がそう言えば「それもそうね」と言って名無しは笑う。
いつもの着物とシャツ・ズボンを丁寧に畳んだ物を渡して、彼女は笑う。
「おかえり、銀時」
「…おう」
「一体誰だい、君達は?僕の知り合いかい?」
目と眉が近い銀時がいつになく真面目な声でそう言った。
茜色ドロップ#あなたがいれば、それだけで
「で、この人が幼馴染の名無しさんですよ。銀さん」
「こんな美人が僕の幼馴染!?」
新八に丁寧に紹介され、頭に包帯を巻いた銀時が目を丸くして驚く。
褒められれば少なくとも嬉しいはずなんだが、どうしてだろう。
何だか寒気がした。
「どうかされましたか?」
「いや…ちょっと今、ゾワッとしちゃって。今まで一言もそんなこと言われたことなかったから」
あぁ、ほら。
現に腕に寒イボが。
「酷い男ですね、前の僕は」
「本当に。」
一人称が僕、だなんて。
何だか可笑しくて思わず笑ってしまった。
記憶がなかった時の私も、こんな感じ何だろうか。
俯いて小さく笑っていると、じっとこちらを見てくる視線に気がつき、顔を上げる。
「どうかした?」
「いえ、赤い瞳があまりにも綺麗で」
どこか、見覚えがあるような。
口説き文句のような台詞。
いつか言われたことのある言葉に、何だか涙が出そうになった。
「ふふっ」
「どうか、されましたか?」
「んーん。やっぱり銀時は銀時だな、って思って」
記憶がなくても、貴方は貴方。
きっと私が何も覚えてない時も、貴方ならこう思ったのだろう。
***
辰馬の宇宙船が万事屋に突っ込み、半壊してしまった。
それを見て銀時は『万事屋を解散しましょう』と言った。
一瞬、考えてしまった。
このまま記憶が戻らなければ、彼は悪夢のような過去を忘れたまま生きていられるのでは、と。
万事屋を去る彼の背中を、止められなかった。
「はぁーあ、やってらんない。」
「名無し、どうして銀ちゃん止めなかったアルか?」
酢昆布を食べながら、銀時がいつも座っていた席で膝を抱える神楽。
ギコギコとぎこちない音の鳴る椅子は、少し頼りなさげだ。
「本当にね。一緒に住もうって言い出したの、よーく考えたら銀時からなのになぁ」
冷蔵庫に入っていたいちご牛乳を飲みながら名無しがボヤく。
甘ったるい、ハイカロリーな飲み物は彼の大好物だ。
「一発、殴っとけばよかった」
言いたいことは山ほどある。
糖分とりすぎだとか、いつも怪我ばっかしてとか、ジャンプはまとめて捨てなさいとか。
「名無しさんが殴ったら記憶戻ったりして。」
「あはは、小太郎とか皆に殴られてすぐ記憶失くす、あのポンコツ頭が?私が怒りを込めて殴ったら、言語野まで支障きたすわよ」
ファミコン以下の耐久度に思わず乾いた笑いが出てくる。
物騒な名無しの物言いに新八は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「殴りに行くかい?」
家主のいなくなった万事屋に、一枚メモを持ってお登勢がやってくる。
そこにはとある工場の住所が書かれていた。
***
「まさか記憶喪失になるとは思わなかったな」
「普段から頭を使ってないからそうなるのよ」
「ひでぇ物言いだな、オイ」
マムシ工場での一件で記憶が戻った銀時と、万事屋へ着替えを取りに来た名無し。
寝泊まりできる状態ではないため、今は志村邸に身を寄せているが…さて、この家の二階をどうやって現状復帰させてやろうか。
そう考えると頭が痛くなりそうだったが、不思議と何とかなる気がした。
「新八から聞いたぞ、記憶が戻るか戻らないか、あんまり心配してなかった、って」
「するわけないじゃない」
シレッと名無しが即答して、思わず脱力してしまう。
漫画のようなズッコケ方をした銀時を見て、楽しそうに名無しはクスクスと笑った。
「記憶が戻ろうが戻らまいが関係ないからね。
銀時は銀時だもの。万事屋だろうが、次期工場長だろうが、元気に暮らしてくれていれば私はそれでいいよ」
「お前なぁ…そこは銀さんといないと寂しい〜とかアイツらみたいに可愛げのあること言えないわけ?」
いや、ファミコン並の記憶能力が悪いのかもしれないが。
長年連れ添った幼馴染のあっさりとした反応に不満が漏れないわけがなかった。
「そりゃ寂しかったよ。」
困ったように笑う彼女の瞳が柔らかく細められる。
僅かに憂いを帯びた赤を見て銀時は一瞬息を呑む。
「あの子達の前で言うのは、何かね、ほら。」
歯を向いて苦笑いする名無しを見て、銀時はバリバリと頭を掻いた。
そうだ、名無しはこういう性格だった。
痛いのを痛いとも言わず、辛いのを辛いとも言わず、笑っているような、
「意地っ張りめ」
「誰のせいよ」
「オイオイ、俺は事故に関しては過失ゼロだぞ?」名無し
銀時がそう言えば「それもそうね」と言って名無しは笑う。
いつもの着物とシャツ・ズボンを丁寧に畳んだ物を渡して、彼女は笑う。
「おかえり、銀時」
「…おう」