anemone days//short story
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日は井上と松本が買い物に出掛けて行った。
おかげで今日は一人、井上の家で何もすることがない。
問題は昼食もそうだが、夕飯もない。
かと言って家主の了承も得ずに冷蔵庫を開けるのもはばかられる。
「…阿散井のとこに行ってみるか。」
確かアイツは浦原喜助のところへ身を寄せていたはず。
何やら修行を頼みにいったらしいが…さて、上手くいっているのだろうか。
Shall we dance,diamond dust.
「おやおや、珍しいっスねぇ。隊長サンがこんな辺鄙なトコに、よーこそ」
扇子を広げて呑気に眺めていた浦原喜助。
何を眺めていたか・というと一見すれば土煙だが、その中に人影が三人。
「くっそ!吠えろ、蛇尾丸!!」
「おっとと。茶渡くーん」
「任せろ。巨人の、一撃!」
耳をつんざくような轟音を立てて岩が砕ける。そこは先程まで阿散井が立っていた場所だ。
「チィッ!」
「ほいっ『五柱鉄貫』!」
両手をパンッ!と名無しが打ち鳴らせば、宙から降り注ぐ五角柱。
阿散井の五体を押し潰すように穿つ鉄柱は、動きを封じるには十分だった。
「わーい、これで53勝目!」
「…大丈夫か?阿散井。」
「ぐ…大丈夫に見えるか…?」
地面にめり込む程の縛道はかなり苦しいのだろう。擦り傷だらけの阿散井は地面に這ったまま忌々しそうに茶渡と名無しを見上げた。
「浦原喜助に修行つけて貰うんじゃなかったのか?」
「うおっ!日番谷隊長!?」
縛道を解かれた阿散井が慌てて居住まいを正すが、まぁその姿はボロボロの一言に尽きる。
茶渡もそれなりに傷だらけだが、ひとりだけピンピンしている人間が約一名。
浦原商店のTシャツを着た、呑気に笑っている目の前の女だ。
「日番谷くんも是非どうですか?修行。」
「日番谷『隊長』だ。」
***
「日番谷隊長が天才児って言われるの、分かる気がするぜ」
「そうだな。…それと手合わせ出来る名無しもどうかと思うが」
目を爛々と輝かせて詠唱破棄した鬼道を放つ名無しと、氷輪丸を始解した日番谷。
空間を切り裂いては避ける少女を氷の龍が執拗に追いかける。
「破道の七十三『双蓮蒼火墜』!」
「鬼道で溶かせられる程、氷輪丸は甘くないぞ」
「あぁ〜やっぱりそうですよね、どうしようかな。」
かと言って詠唱するには隙がない。
恐らく現役の隊長とまともに手合わせするのはこれが初めてだろう。
「浦原さん、止めなくていいのか?日番谷隊長、本気になりかけてますけど。」
「いやぁ、名無しサンのいい勉強になるかと思って」
止める道理はない。
現に彼女は嬉々とした表情で次の策を考えている。
あの手この手と駆使できるのは底なしの霊力が根底にあるおかげでもあるのだが、一番の原動力はその不屈の精神と頭の回転の良さだ。
「よーし。縛道の三十七『吊星』!」
氷輪丸が繰り出す氷の龍を遮るように霊力の膜が張られる。が、それは呆気なく破られる。
「まだまだ!縛道の六十一『六杖光牢』、六十二『百歩欄干』」
氷の龍の動きを止めるかのように次々と光の帯や棒が突き刺さる。
「そぉれ!破道の八十八『飛竜撃賊震天雷砲』!」
縛道によって動きを止めた氷の竜が音を立てて砕かれる。
光に照らされて四散する氷の破片は硝子のようで思わず息を呑む、儚くとも美しい光景だ。
だが、
「残念だったな。空気中に水分があれば、」
砕かれた竜が再び形を成す。
パキパキと水分が結晶化する乾いた音が、無情にも辺りに響いた。
「何度でも蘇るぞ。」
「うそ。ええぇー…それはズルいですよ!
…そうだ!地下室を火の海にしたら水分蒸発するんじゃ、」
「オイ!浦原さん!名無しのヤツいい事思いついた!って顔で物騒なこと言ってるんだけど!?」
「名無しサン〜。この勉強部屋、苦労して作ったんっスから火の海にしたらダメっスよぉ〜」
「そうじゃねぇ!!」
恋次の絞り出すような罵声が、地下室に響き渡った。
***
「あぁ〜もう、悔しいなぁ」
そう言いながら来客用の茶碗に白米を盛っていく名無し。
今日の夕飯は唐揚げらしい。大皿にいっぱい積み上げられた肉の塊はある意味圧巻だ。
どうやら井上家よりも、随分とまともな食事が食べられそうだ。
「一本も取れなかったっスねぇ」
「全くですよ。次までに新しい対策考えておかなきゃ。現役隊長は強いですね、どうしようかなぁ。」
呑気に味噌汁を啜る浦原と、眉間にシワを寄せてウンウン唸る名無し。
食卓にお邪魔しつつ、俺は呆れた顔でその光景をつい眺めてしまった。
「……なんであの女ピンピンしてんだ。」
「流石の隊長も霊力切れっスか」
「あれだけ氷輪丸の龍を砕かれたらな」
作るのにも最後の方は一苦労だった。
あの手この手で挑んでくる彼女の表情は、まさに『楽しい』と言わんばかりの顔だった。
更木ほど狂気に満ちたものではないものの、それは子供のような無邪気さに近い。
(強い、というか)
少しだけ、恐怖を覚えた。
向こうの霊力の底が見えないということは、根比べになったらこちらが不利だ。
それより早く彼女の腹の虫が限界になったのが、不幸中の幸いだった。
「ここは化物揃いだな。」
「俺もそう思います」
クタクタにくたびれた身体を壁に預けてボヤけば、隣の阿散井が呆れたように小さく肩を竦めた。
おかげで今日は一人、井上の家で何もすることがない。
問題は昼食もそうだが、夕飯もない。
かと言って家主の了承も得ずに冷蔵庫を開けるのもはばかられる。
「…阿散井のとこに行ってみるか。」
確かアイツは浦原喜助のところへ身を寄せていたはず。
何やら修行を頼みにいったらしいが…さて、上手くいっているのだろうか。
Shall we dance,diamond dust.
「おやおや、珍しいっスねぇ。隊長サンがこんな辺鄙なトコに、よーこそ」
扇子を広げて呑気に眺めていた浦原喜助。
何を眺めていたか・というと一見すれば土煙だが、その中に人影が三人。
「くっそ!吠えろ、蛇尾丸!!」
「おっとと。茶渡くーん」
「任せろ。巨人の、一撃!」
耳をつんざくような轟音を立てて岩が砕ける。そこは先程まで阿散井が立っていた場所だ。
「チィッ!」
「ほいっ『五柱鉄貫』!」
両手をパンッ!と名無しが打ち鳴らせば、宙から降り注ぐ五角柱。
阿散井の五体を押し潰すように穿つ鉄柱は、動きを封じるには十分だった。
「わーい、これで53勝目!」
「…大丈夫か?阿散井。」
「ぐ…大丈夫に見えるか…?」
地面にめり込む程の縛道はかなり苦しいのだろう。擦り傷だらけの阿散井は地面に這ったまま忌々しそうに茶渡と名無しを見上げた。
「浦原喜助に修行つけて貰うんじゃなかったのか?」
「うおっ!日番谷隊長!?」
縛道を解かれた阿散井が慌てて居住まいを正すが、まぁその姿はボロボロの一言に尽きる。
茶渡もそれなりに傷だらけだが、ひとりだけピンピンしている人間が約一名。
浦原商店のTシャツを着た、呑気に笑っている目の前の女だ。
「日番谷くんも是非どうですか?修行。」
「日番谷『隊長』だ。」
***
「日番谷隊長が天才児って言われるの、分かる気がするぜ」
「そうだな。…それと手合わせ出来る名無しもどうかと思うが」
目を爛々と輝かせて詠唱破棄した鬼道を放つ名無しと、氷輪丸を始解した日番谷。
空間を切り裂いては避ける少女を氷の龍が執拗に追いかける。
「破道の七十三『双蓮蒼火墜』!」
「鬼道で溶かせられる程、氷輪丸は甘くないぞ」
「あぁ〜やっぱりそうですよね、どうしようかな。」
かと言って詠唱するには隙がない。
恐らく現役の隊長とまともに手合わせするのはこれが初めてだろう。
「浦原さん、止めなくていいのか?日番谷隊長、本気になりかけてますけど。」
「いやぁ、名無しサンのいい勉強になるかと思って」
止める道理はない。
現に彼女は嬉々とした表情で次の策を考えている。
あの手この手と駆使できるのは底なしの霊力が根底にあるおかげでもあるのだが、一番の原動力はその不屈の精神と頭の回転の良さだ。
「よーし。縛道の三十七『吊星』!」
氷輪丸が繰り出す氷の龍を遮るように霊力の膜が張られる。が、それは呆気なく破られる。
「まだまだ!縛道の六十一『六杖光牢』、六十二『百歩欄干』」
氷の龍の動きを止めるかのように次々と光の帯や棒が突き刺さる。
「そぉれ!破道の八十八『飛竜撃賊震天雷砲』!」
縛道によって動きを止めた氷の竜が音を立てて砕かれる。
光に照らされて四散する氷の破片は硝子のようで思わず息を呑む、儚くとも美しい光景だ。
だが、
「残念だったな。空気中に水分があれば、」
砕かれた竜が再び形を成す。
パキパキと水分が結晶化する乾いた音が、無情にも辺りに響いた。
「何度でも蘇るぞ。」
「うそ。ええぇー…それはズルいですよ!
…そうだ!地下室を火の海にしたら水分蒸発するんじゃ、」
「オイ!浦原さん!名無しのヤツいい事思いついた!って顔で物騒なこと言ってるんだけど!?」
「名無しサン〜。この勉強部屋、苦労して作ったんっスから火の海にしたらダメっスよぉ〜」
「そうじゃねぇ!!」
恋次の絞り出すような罵声が、地下室に響き渡った。
***
「あぁ〜もう、悔しいなぁ」
そう言いながら来客用の茶碗に白米を盛っていく名無し。
今日の夕飯は唐揚げらしい。大皿にいっぱい積み上げられた肉の塊はある意味圧巻だ。
どうやら井上家よりも、随分とまともな食事が食べられそうだ。
「一本も取れなかったっスねぇ」
「全くですよ。次までに新しい対策考えておかなきゃ。現役隊長は強いですね、どうしようかなぁ。」
呑気に味噌汁を啜る浦原と、眉間にシワを寄せてウンウン唸る名無し。
食卓にお邪魔しつつ、俺は呆れた顔でその光景をつい眺めてしまった。
「……なんであの女ピンピンしてんだ。」
「流石の隊長も霊力切れっスか」
「あれだけ氷輪丸の龍を砕かれたらな」
作るのにも最後の方は一苦労だった。
あの手この手で挑んでくる彼女の表情は、まさに『楽しい』と言わんばかりの顔だった。
更木ほど狂気に満ちたものではないものの、それは子供のような無邪気さに近い。
(強い、というか)
少しだけ、恐怖を覚えた。
向こうの霊力の底が見えないということは、根比べになったらこちらが不利だ。
それより早く彼女の腹の虫が限界になったのが、不幸中の幸いだった。
「ここは化物揃いだな。」
「俺もそう思います」
クタクタにくたびれた身体を壁に預けてボヤけば、隣の阿散井が呆れたように小さく肩を竦めた。