茜色ドロップ//再会篇
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不意に見せたその射抜くような眼光が一瞬捉えたのは、戦いの記憶。
茜色ドロップ//再会篇#06
「ってことで、パフェ食いに行こうぜ」
「何でですか。」
「俺が食いてェからだよ」
至極単純な理由だった。
パフェって、スプーンで食べるから片手でも食えるし、やっぱり最高だ。
「甘いもの、お好きですよね」
「ん?なんだ、何か思い出したのか?」
「いえ。製菓子用の道具が一通りキッチンにあったので」
さいですか。
それにしてもよく見ているな、と感心した。
菓子作りは趣味といえば趣味だが、最近はめっきり作っていない気がする。
「男性で台所に立たれるのは珍しいですね」
「ま、一人暮らしだしな」
「うちのドクターなんて、メスは握れるのに包丁がてんでダメなんですよ」
あぁ、あの爺さん。
確かに亭主関白って感じの時代の人間だしな。
「…なんでドクター?先生でいいんじゃねぇか?」
「…確かに。先生…先生、か…」
そう提案してみれば歩きながら考え込む名無し。
暫く思案した後、困ったような苦笑いを浮かべながら彼女は肩を竦めた。
「…んー、やっぱりドクターでいいです。なんか、ちょっとこれじゃない感が…」
「テメェ、この間のボディーガードの男!」
名無しの声を遮るように張り上げられたのは、耳障りな男の声だった。
人の往来が多い道を十人ほどで横に広がり、ふてぶてしく歩いている男は……どこか見たことがあるような、ないような。
「オタク、どちら様?」
「この間テメェに兄貴を病院送りされた舎弟だよ!」
「え?なんだって?となりの山〇くん?」
「銀時、それはジブ〇に怒られますよ」
名無しが的確なツッコミを入れる。
そのやり取りを見て頭に血が登ったのか、男が懐からナイフを取り出した。
「舐めてンのか、テメェ!」
無防備だった名無しを引き寄せるように捕まえ、後から首元へナイフを突きつける。
彼女はというと何が起こったのか分かっていないのか、大きな目を丸くしているだけだ。
「名無し!」
「チャラチャラ女とデート何かしやがって!
今度は腕一本で済まねぇようにしてやる!」
「すみません、デートじゃないです。今からパフェ食べに行くだけですよ」
「十分デートじゃねェか!」
特に動揺することもなく、淡々と名無しがデートであることを否定する。その言葉には少し俺も傷つく。
逆上した男は、名無しの首筋の薄皮一枚に刃を当てる。
プツリと赤い珠のような血が滲むが、名無しは眉を顰めるだけで悲鳴すら上げなかった。
「駄目ですよ、そんな危ないもの出しちゃ」
「うっせェ!その野郎諸共、ぶっ殺、」
唾を撒きながら叫ぶ男の鳩尾に名無しの肘が深く沈む。
怯んだ隙を見逃さずナイフを取り上げると、男の眼球ギリギリへ切先を突き付ける。
睨みつける赤い目は、昔見た刀を振るう時の彼女と同じ目をしていた。
「誰を殺すって?もう一度言ってみろ」
口元に弧を描く表情に冷徹さが滲み出る。
腰を抜かして後退る男に向けてジリっと刃が迫ったのを見て、白く細い手首を掴んだ。
「はいはい名無し。ストップ。」
何度か瞬きを繰り返した後、不思議そうな顔で手元を見遣る名無し。
「…あれ?なんか、今、」
僅かに戸惑ったような声を上げたのを見て、彼女からナイフを軽々と取り上げて地面へ放り投げた。
完全に腰を抜かした舎弟と、顔を青ざめさせた取り巻きを放置して、俺は名無しの手を取ってさっさとその場を去った。
「銀時、」
「こんなチンピラほっとけ」
まぁ俺がまいた種…じゃないな、仕事での逆恨みか。
利き手が使えない時に絡んでくるなんて運が悪い。
「ほら、とっとと行くぞ。こんなとこにゃ長居は無用だ」
くしゃりと頭を撫でれば、困ったような顔で名無しは苦笑いした。
茜色ドロップ//再会篇#06
「ってことで、パフェ食いに行こうぜ」
「何でですか。」
「俺が食いてェからだよ」
至極単純な理由だった。
パフェって、スプーンで食べるから片手でも食えるし、やっぱり最高だ。
「甘いもの、お好きですよね」
「ん?なんだ、何か思い出したのか?」
「いえ。製菓子用の道具が一通りキッチンにあったので」
さいですか。
それにしてもよく見ているな、と感心した。
菓子作りは趣味といえば趣味だが、最近はめっきり作っていない気がする。
「男性で台所に立たれるのは珍しいですね」
「ま、一人暮らしだしな」
「うちのドクターなんて、メスは握れるのに包丁がてんでダメなんですよ」
あぁ、あの爺さん。
確かに亭主関白って感じの時代の人間だしな。
「…なんでドクター?先生でいいんじゃねぇか?」
「…確かに。先生…先生、か…」
そう提案してみれば歩きながら考え込む名無し。
暫く思案した後、困ったような苦笑いを浮かべながら彼女は肩を竦めた。
「…んー、やっぱりドクターでいいです。なんか、ちょっとこれじゃない感が…」
「テメェ、この間のボディーガードの男!」
名無しの声を遮るように張り上げられたのは、耳障りな男の声だった。
人の往来が多い道を十人ほどで横に広がり、ふてぶてしく歩いている男は……どこか見たことがあるような、ないような。
「オタク、どちら様?」
「この間テメェに兄貴を病院送りされた舎弟だよ!」
「え?なんだって?となりの山〇くん?」
「銀時、それはジブ〇に怒られますよ」
名無しが的確なツッコミを入れる。
そのやり取りを見て頭に血が登ったのか、男が懐からナイフを取り出した。
「舐めてンのか、テメェ!」
無防備だった名無しを引き寄せるように捕まえ、後から首元へナイフを突きつける。
彼女はというと何が起こったのか分かっていないのか、大きな目を丸くしているだけだ。
「名無し!」
「チャラチャラ女とデート何かしやがって!
今度は腕一本で済まねぇようにしてやる!」
「すみません、デートじゃないです。今からパフェ食べに行くだけですよ」
「十分デートじゃねェか!」
特に動揺することもなく、淡々と名無しがデートであることを否定する。その言葉には少し俺も傷つく。
逆上した男は、名無しの首筋の薄皮一枚に刃を当てる。
プツリと赤い珠のような血が滲むが、名無しは眉を顰めるだけで悲鳴すら上げなかった。
「駄目ですよ、そんな危ないもの出しちゃ」
「うっせェ!その野郎諸共、ぶっ殺、」
唾を撒きながら叫ぶ男の鳩尾に名無しの肘が深く沈む。
怯んだ隙を見逃さずナイフを取り上げると、男の眼球ギリギリへ切先を突き付ける。
睨みつける赤い目は、昔見た刀を振るう時の彼女と同じ目をしていた。
「誰を殺すって?もう一度言ってみろ」
口元に弧を描く表情に冷徹さが滲み出る。
腰を抜かして後退る男に向けてジリっと刃が迫ったのを見て、白く細い手首を掴んだ。
「はいはい名無し。ストップ。」
何度か瞬きを繰り返した後、不思議そうな顔で手元を見遣る名無し。
「…あれ?なんか、今、」
僅かに戸惑ったような声を上げたのを見て、彼女からナイフを軽々と取り上げて地面へ放り投げた。
完全に腰を抜かした舎弟と、顔を青ざめさせた取り巻きを放置して、俺は名無しの手を取ってさっさとその場を去った。
「銀時、」
「こんなチンピラほっとけ」
まぁ俺がまいた種…じゃないな、仕事での逆恨みか。
利き手が使えない時に絡んでくるなんて運が悪い。
「ほら、とっとと行くぞ。こんなとこにゃ長居は無用だ」
くしゃりと頭を撫でれば、困ったような顔で名無しは苦笑いした。