茜色ドロップ//再会篇
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「いやいやいやいや、名無しちゃん?今更冗談でしたって言うのは利く?」
「?、私は何も気にしませんけど」
「ちょっとォ!?俺が気にするんだってば!」
タオル一枚で銀時は自分の家の風呂場で叫んでいた。
茜色ドロップ//再会篇#03
事の発端は銀時のボヤキだった。
「腕使えねーとあれだな。風呂が一番面倒だな。背中洗いにくいし、髪も洗った気がしねーし」
「確かに大変そうですね。背中流しましょうか?」
軽く笑いながら名無しが言うもんだから「じゃあお願いすっかな」と軽々しく言ってしまったのが運の尽きだった。
…自分が蒔いた種、とも言うが。
「?、お風呂の介護ですよ?」
「おま…若い男女が、風呂場で、男は裸だぞ?」
「そんなの見れば分かりますよ。私が服を脱ぐわけじゃないんですから。犬猫を風呂に入れるのと同じじゃないですか?」
どういう理屈だ。
そしてシレッと人を動物と同系列に扱ったぞコイツ。
「もう、坂田さんが言い始めたんですから。いいからじっとしてて下さい。」
シャンプーを手に取り、シャワーの湯を含めながら丁度いい加減で髪を洗っていく名無し。
「痒いところはありませんか?」
「…おう」
「…ふふっ」
「何だよ」
「いえ、さっきまでふわふわの髪だったのに、濡れたら雰囲気違ってなんか面白くて。」
「お前天パ馬鹿にすんなよ、人間アレだ、絶対身体のどっかに天パ持ってんだからな」
「馬鹿にしてませんよ、もう。酷い言い掛かりですね。私は坂田さんの髪、好きですよ。ふわふわキラキラしてて。」
鏡越しにとろりと柔らかく蕩ける彼女の目元。
穏やかに弓形になる瞳は甘いりんご飴のようだった。
すき。
その二文字だけで僅かに動揺した心を落ち着かせるため、呆れたように見せかけた深呼吸をひとつ零した。
「…お前なぁ、男にそう簡単に好きとか言うもんじゃねーぞ?そんなンがストーカーをつけ上がらせるんだからよ」
「はーい、気をつけます」
本当に分かってんのか、コイツ。
クスクスと笑いながら「流しますね」と一言断り、シャワーでしっかり地肌から洗われた。
細い指がやさしく髪の合間を縫う度に思わず頬が綻んだ。正直床屋並に上手い。
「次は背中洗いますね」と言いながらボディタオルを泡立てる名無し。
白い泡がモコモコと泡立ち、丁度いい擦り加減で背中を洗われる。
最初は恥やら動揺で少し自分の発言を後悔したが、前言撤回だ。気持ちいい。
…もし記憶が戻っていたら同じように甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのだろうか、と出来もしない想像が一瞬過ぎるが、考えるのをすぐにやめた。
ないものねだりは、余計に虚しくなるばかりだ。
「もしかして坂田さん、危ないお仕事ばっかりしてます?」
「今回はたまたまだ。いつもは金にならないような依頼ばっかだし…」
「でも古い刀傷が沢山あるから、」
あぁ、なるほど。
そう納得した瞬間、銀時の呼吸が一瞬止まる。
――どうして古傷を見ただけで刀傷たと分かったのか。
「…よく分かったな」
「…ん?確かに…何ででしょう?」
答えは、銀時は分かっていた。
毎日のように彼女が『見ていた』からだ。
死体についた生々しい傷も、塞がりかけた傷の上から畳み掛けるように新たにつけられた刀傷も。
「…どっかのジジイの刀傷、見たからじゃねーの?」
「あ、確かに。もしかしたら、そうかもしれませんね」
そう言えば納得したように彼女が笑った。
思い出さなくていい。
あんな凄惨の度合いを越したような生き地獄は、忘れた方が幸せだ。
その時までは、銀時はそう考えていた。
「?、私は何も気にしませんけど」
「ちょっとォ!?俺が気にするんだってば!」
タオル一枚で銀時は自分の家の風呂場で叫んでいた。
茜色ドロップ//再会篇#03
事の発端は銀時のボヤキだった。
「腕使えねーとあれだな。風呂が一番面倒だな。背中洗いにくいし、髪も洗った気がしねーし」
「確かに大変そうですね。背中流しましょうか?」
軽く笑いながら名無しが言うもんだから「じゃあお願いすっかな」と軽々しく言ってしまったのが運の尽きだった。
…自分が蒔いた種、とも言うが。
「?、お風呂の介護ですよ?」
「おま…若い男女が、風呂場で、男は裸だぞ?」
「そんなの見れば分かりますよ。私が服を脱ぐわけじゃないんですから。犬猫を風呂に入れるのと同じじゃないですか?」
どういう理屈だ。
そしてシレッと人を動物と同系列に扱ったぞコイツ。
「もう、坂田さんが言い始めたんですから。いいからじっとしてて下さい。」
シャンプーを手に取り、シャワーの湯を含めながら丁度いい加減で髪を洗っていく名無し。
「痒いところはありませんか?」
「…おう」
「…ふふっ」
「何だよ」
「いえ、さっきまでふわふわの髪だったのに、濡れたら雰囲気違ってなんか面白くて。」
「お前天パ馬鹿にすんなよ、人間アレだ、絶対身体のどっかに天パ持ってんだからな」
「馬鹿にしてませんよ、もう。酷い言い掛かりですね。私は坂田さんの髪、好きですよ。ふわふわキラキラしてて。」
鏡越しにとろりと柔らかく蕩ける彼女の目元。
穏やかに弓形になる瞳は甘いりんご飴のようだった。
すき。
その二文字だけで僅かに動揺した心を落ち着かせるため、呆れたように見せかけた深呼吸をひとつ零した。
「…お前なぁ、男にそう簡単に好きとか言うもんじゃねーぞ?そんなンがストーカーをつけ上がらせるんだからよ」
「はーい、気をつけます」
本当に分かってんのか、コイツ。
クスクスと笑いながら「流しますね」と一言断り、シャワーでしっかり地肌から洗われた。
細い指がやさしく髪の合間を縫う度に思わず頬が綻んだ。正直床屋並に上手い。
「次は背中洗いますね」と言いながらボディタオルを泡立てる名無し。
白い泡がモコモコと泡立ち、丁度いい擦り加減で背中を洗われる。
最初は恥やら動揺で少し自分の発言を後悔したが、前言撤回だ。気持ちいい。
…もし記憶が戻っていたら同じように甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのだろうか、と出来もしない想像が一瞬過ぎるが、考えるのをすぐにやめた。
ないものねだりは、余計に虚しくなるばかりだ。
「もしかして坂田さん、危ないお仕事ばっかりしてます?」
「今回はたまたまだ。いつもは金にならないような依頼ばっかだし…」
「でも古い刀傷が沢山あるから、」
あぁ、なるほど。
そう納得した瞬間、銀時の呼吸が一瞬止まる。
――どうして古傷を見ただけで刀傷たと分かったのか。
「…よく分かったな」
「…ん?確かに…何ででしょう?」
答えは、銀時は分かっていた。
毎日のように彼女が『見ていた』からだ。
死体についた生々しい傷も、塞がりかけた傷の上から畳み掛けるように新たにつけられた刀傷も。
「…どっかのジジイの刀傷、見たからじゃねーの?」
「あ、確かに。もしかしたら、そうかもしれませんね」
そう言えば納得したように彼女が笑った。
思い出さなくていい。
あんな凄惨の度合いを越したような生き地獄は、忘れた方が幸せだ。
その時までは、銀時はそう考えていた。