茜色ドロップ//再会篇
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「ごめんくださーい」
玄関から、声が聞こえる。
そういえば昨日は散々お登勢の店で飲んで…そこから記憶がない。
目を覚ませば、だいぶ見慣れてきた天井の木目が目に入る。
利き手が使えない不便さを感じながら、銀時は気怠い身体で玄関まで歩いて行った。
「ハイハイ、スンマセンね。万事屋はこの通り絶対安静だから休みなんだっつーの…」
「だからと言ってお昼過ぎまで寝ているのは感心しませんね。駄目ですよ、規則正しい生活が一番身体にいいんですから」
眠たげな眼差しが一気に覚醒する。
それは昨日再会した幼馴染が玄関に立っていたからだった。
「おはようございます、坂田さん。」
買い物袋を持って満面の笑みで立っている名無しを見て、銀時は思わず目眩がした。
茜色ドロップ//再会篇#02
「…何でいんの?」
「えっと、お登勢さんという方から『利き手が使えないから飯すら作れないらしくてね。悪いけど金払うからヘルパーで来てくれないかい?』って言われたので…」
あのババア。
勘がいい。良すぎる。ムカつくほどに。
「…ええっと、ご迷惑だったら戻りますけど、」
「いや。迷惑じゃねぇ」
…馬鹿。
そこは追い返すとこだろうが、どうしてそう返事しちゃうんだよ、俺。
「よかった!その様子じゃ…お昼ご飯まだですよね?
炒飯でいいですか?すぐ作るので」
「あ、あぁ。」
ぎこちなく返事をして台所に通せば、何日か前の食器が流しに置きっぱなしだった。
…少し恥ずかしい。
「冷蔵庫、開けちゃっても大丈夫ですか?」
「いちご牛乳しか今は入ってねーけど、それでよければ」
そう言えば楽しそうに名無しが笑った。
…昨日から俺はもしかしたら夢を見ているんじゃないのかと、錯覚してしまう。
勿論これは現実で、二日酔いも現実だ。
「坂田さん?」
「え。…なんだ?」
「変なことしませんから、座って待ってて下さったらいいですよ。」
困ったように笑う名無し。
確かに彼女の言うことは尤もだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
…彼女にこんなよそよそしく喋るなんて、何だか違和感があった。
***
「うめぇ」
「それはよかった。こっちに来てからやっと普通の料理を覚え始めまして…」
左手ならレンゲで食べれるからか、多少不格好な食べ方だが苦労はしなかった。
すきっ腹だった胃袋が満たされる感覚は、幸福感でいっぱいになる。
それが久方ぶりの幼馴染が作った手料理なら尚更。
「今まで何作ってたんだよ」
「…………笑いません?」
「笑わねーよ。…多分。」
「ジビエ料理。」
「ぶっ!」
炒飯噴いた。
「あ、酷い!笑わないって言ったじゃないですか!」
「だって、お前、」
『銀時、晋助、小太郎!見てみて、今日の夕飯はぼたん鍋だよ!』
『ぼたん?なんだそれ』
『猪肉。知らないの?』
『は!?』
『名無しが捕まえたんですよ。昔から狩りは得意でしたもんねぇ』
『松陽。シレッととんでもねェ発言してるけどよ、普通子供は猪なんか仕留めねーから。
名無し。お前、最近薬草取ったり野生の子と化してたけどよ、何なんだ?前世はモン〇ターハンターか何かだったわけ?』
『……銀時に会う前はこれが普通だったけど…』
本当に人は見かけによらねぇ。
子供ながらにそう思った出来事だった。懐かしい。
「…そういうとこは変わってもよかったんじゃねーの?」
「前もこんな感じだったんですか?」
「まぁ、な。」
ゆっくり咀嚼しながら気のない返事を返す。
一緒に出された卵スープも美味い。他人の手料理なんて久しぶりに口にした。
「ごちそーさん」
「お粗末様でした。
…さてと。洗い物したら何からしましょうか。掃除洗濯、なんでもしますよ」
作務衣の袖を捲り上げながら名無しが笑う。
ヘルパーというか、もはや家政婦だろう。これは。
「つーか、いいのか?仕事は」
「ドクターが二日か三日に一回くらいならいいぞ、ってお登勢さんに言われてましたから。
大丈夫ですよ、お気になされないで下さい」
洗濯物からしちゃいますね。
そう言って彼女は食器を片付けて脱衣所に向かった。
…これじゃあまるで同棲しているみたいだな。
昨日の俺の憂鬱は一体何だったんだ。
自由のきく左手で思わず顳顬を抑える銀時であった。
玄関から、声が聞こえる。
そういえば昨日は散々お登勢の店で飲んで…そこから記憶がない。
目を覚ませば、だいぶ見慣れてきた天井の木目が目に入る。
利き手が使えない不便さを感じながら、銀時は気怠い身体で玄関まで歩いて行った。
「ハイハイ、スンマセンね。万事屋はこの通り絶対安静だから休みなんだっつーの…」
「だからと言ってお昼過ぎまで寝ているのは感心しませんね。駄目ですよ、規則正しい生活が一番身体にいいんですから」
眠たげな眼差しが一気に覚醒する。
それは昨日再会した幼馴染が玄関に立っていたからだった。
「おはようございます、坂田さん。」
買い物袋を持って満面の笑みで立っている名無しを見て、銀時は思わず目眩がした。
茜色ドロップ//再会篇#02
「…何でいんの?」
「えっと、お登勢さんという方から『利き手が使えないから飯すら作れないらしくてね。悪いけど金払うからヘルパーで来てくれないかい?』って言われたので…」
あのババア。
勘がいい。良すぎる。ムカつくほどに。
「…ええっと、ご迷惑だったら戻りますけど、」
「いや。迷惑じゃねぇ」
…馬鹿。
そこは追い返すとこだろうが、どうしてそう返事しちゃうんだよ、俺。
「よかった!その様子じゃ…お昼ご飯まだですよね?
炒飯でいいですか?すぐ作るので」
「あ、あぁ。」
ぎこちなく返事をして台所に通せば、何日か前の食器が流しに置きっぱなしだった。
…少し恥ずかしい。
「冷蔵庫、開けちゃっても大丈夫ですか?」
「いちご牛乳しか今は入ってねーけど、それでよければ」
そう言えば楽しそうに名無しが笑った。
…昨日から俺はもしかしたら夢を見ているんじゃないのかと、錯覚してしまう。
勿論これは現実で、二日酔いも現実だ。
「坂田さん?」
「え。…なんだ?」
「変なことしませんから、座って待ってて下さったらいいですよ。」
困ったように笑う名無し。
確かに彼女の言うことは尤もだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
…彼女にこんなよそよそしく喋るなんて、何だか違和感があった。
***
「うめぇ」
「それはよかった。こっちに来てからやっと普通の料理を覚え始めまして…」
左手ならレンゲで食べれるからか、多少不格好な食べ方だが苦労はしなかった。
すきっ腹だった胃袋が満たされる感覚は、幸福感でいっぱいになる。
それが久方ぶりの幼馴染が作った手料理なら尚更。
「今まで何作ってたんだよ」
「…………笑いません?」
「笑わねーよ。…多分。」
「ジビエ料理。」
「ぶっ!」
炒飯噴いた。
「あ、酷い!笑わないって言ったじゃないですか!」
「だって、お前、」
『銀時、晋助、小太郎!見てみて、今日の夕飯はぼたん鍋だよ!』
『ぼたん?なんだそれ』
『猪肉。知らないの?』
『は!?』
『名無しが捕まえたんですよ。昔から狩りは得意でしたもんねぇ』
『松陽。シレッととんでもねェ発言してるけどよ、普通子供は猪なんか仕留めねーから。
名無し。お前、最近薬草取ったり野生の子と化してたけどよ、何なんだ?前世はモン〇ターハンターか何かだったわけ?』
『……銀時に会う前はこれが普通だったけど…』
本当に人は見かけによらねぇ。
子供ながらにそう思った出来事だった。懐かしい。
「…そういうとこは変わってもよかったんじゃねーの?」
「前もこんな感じだったんですか?」
「まぁ、な。」
ゆっくり咀嚼しながら気のない返事を返す。
一緒に出された卵スープも美味い。他人の手料理なんて久しぶりに口にした。
「ごちそーさん」
「お粗末様でした。
…さてと。洗い物したら何からしましょうか。掃除洗濯、なんでもしますよ」
作務衣の袖を捲り上げながら名無しが笑う。
ヘルパーというか、もはや家政婦だろう。これは。
「つーか、いいのか?仕事は」
「ドクターが二日か三日に一回くらいならいいぞ、ってお登勢さんに言われてましたから。
大丈夫ですよ、お気になされないで下さい」
洗濯物からしちゃいますね。
そう言って彼女は食器を片付けて脱衣所に向かった。
…これじゃあまるで同棲しているみたいだな。
昨日の俺の憂鬱は一体何だったんだ。
自由のきく左手で思わず顳顬を抑える銀時であった。