茜色ノ小鬼//short story
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「死ぬなら椿のように、一瞬で死にてェな」
攘夷戦争中、鉢巻を巻いた男はそう言った。
茜色ノ小鬼#椿堕つ、桜散る
「怪我の手当している時にそういうこと言っちゃうか」
「例えばの話さ」
一番軽症だったとはいえ、切り傷が身体中にある。
目の前の彼以外の手当は終わっているため、時間はたっぷりある。
ぽそりと呟いた彼の言葉に名無しは苦笑いを浮かべた。
「縁起でもないことを言わないでよね、晋助」
「ありえない話でもないだろ。今は戦争中だ」
ぶっきらぼうな彼の言葉に、名無しは静かに眉を寄せた。
彼の言うことはもっともだ。
今日で、何人の仲間の命が散ったか。考えるのも億劫だった。
「それでも、だよ」
言霊というものが本当にあるなら、口に瞬間それがいつか近い未来叶ってしまうような気がして。
ずっと不安が付き纏う。
一種の、これは呪いだ。
「例え手足かちぎれようが、刀が握れなくなろうが、死なせないのが私の仕事だもの」
「そこまで無様なら尚更トドメを刺して欲しいもんだな」
辰馬が仕入れた医療道具から包帯を取り出し、ガーゼを当てながら丁寧に高杉の二の腕に巻き付ける。
彼の手当もこれで何度目だろう。
綺麗に塞がらなかった古傷は、嫌というくらいに残ってしまっていた。
これからもこの傷は増えていくのだろう。
もしかしたら瀕死の重傷を負うかもしれない。
それでも、
「無様じゃないよ。死んでしまったら何もない、だから繋ぎ止める。
最後の最後まで、何としてでも生きてもらわなくちゃね」
包帯の処理を終え、薬箱へ丁寧に仕舞う名無し。
細い指先は高杉達と違って傷一つない。
それでも多くの仲間の血を吸っている、か細い手。
どれだけその手で遠くへ逝きそうな仲間を今世に引き戻したのだろう。
それこそ藻掻くように、足掻くように。
(まるで桜だな)
最後の散る瞬間ですら花でいようと悪足掻きをする。
頼りない蝋燭の火に照らされた名無しの横顔を眺めながら、高杉は俯いて小さく笑った。
本当にこの女なら手足がなくなっても俺を生かしそうで、少しだけ末恐ろしかった。
攘夷戦争中、鉢巻を巻いた男はそう言った。
茜色ノ小鬼#椿堕つ、桜散る
「怪我の手当している時にそういうこと言っちゃうか」
「例えばの話さ」
一番軽症だったとはいえ、切り傷が身体中にある。
目の前の彼以外の手当は終わっているため、時間はたっぷりある。
ぽそりと呟いた彼の言葉に名無しは苦笑いを浮かべた。
「縁起でもないことを言わないでよね、晋助」
「ありえない話でもないだろ。今は戦争中だ」
ぶっきらぼうな彼の言葉に、名無しは静かに眉を寄せた。
彼の言うことはもっともだ。
今日で、何人の仲間の命が散ったか。考えるのも億劫だった。
「それでも、だよ」
言霊というものが本当にあるなら、口に瞬間それがいつか近い未来叶ってしまうような気がして。
ずっと不安が付き纏う。
一種の、これは呪いだ。
「例え手足かちぎれようが、刀が握れなくなろうが、死なせないのが私の仕事だもの」
「そこまで無様なら尚更トドメを刺して欲しいもんだな」
辰馬が仕入れた医療道具から包帯を取り出し、ガーゼを当てながら丁寧に高杉の二の腕に巻き付ける。
彼の手当もこれで何度目だろう。
綺麗に塞がらなかった古傷は、嫌というくらいに残ってしまっていた。
これからもこの傷は増えていくのだろう。
もしかしたら瀕死の重傷を負うかもしれない。
それでも、
「無様じゃないよ。死んでしまったら何もない、だから繋ぎ止める。
最後の最後まで、何としてでも生きてもらわなくちゃね」
包帯の処理を終え、薬箱へ丁寧に仕舞う名無し。
細い指先は高杉達と違って傷一つない。
それでも多くの仲間の血を吸っている、か細い手。
どれだけその手で遠くへ逝きそうな仲間を今世に引き戻したのだろう。
それこそ藻掻くように、足掻くように。
(まるで桜だな)
最後の散る瞬間ですら花でいようと悪足掻きをする。
頼りない蝋燭の火に照らされた名無しの横顔を眺めながら、高杉は俯いて小さく笑った。
本当にこの女なら手足がなくなっても俺を生かしそうで、少しだけ末恐ろしかった。