茜色ノ小鬼//short story
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冬。
しんしんと降り積もる雪の中、廃寺の中で名無しはホッと息をついた。
「傷口も化膿していないですね。このまましばらく安静にしましょう」
「すまねぇな…」
負傷した怪我人の見回りを全員分終え、テキパキと片付けをし始める。
ここ数日は戦がなく穏やかだ。
雪が深すぎて進軍しようにも出来ないのだろう。
つい最近まで人が住んでいたのだろう、すっかり廃村になった家の中には家財道具が揃っていた。
雪深いこの季節、布団があるのは非常にありがたかった。寒さは怪我に堪える。
部屋を暖めるための囲炉裏に薪をくべる。
パチパチと火花が爆ぜる音がしんと静まり返った冬の空気に溶けた。
流石に連日の看病は体に堪える。
暖かい囲炉裏の火元も相まって、気が抜けた途端に睡魔が襲ってきた。
いくら家屋に残されてたとはいえ、布団の数に限りはある。
肌寒いが…まぁ仮眠を取るくらいだ、大丈夫だろう。
あまりの暖かさにウトウトと船を漕ぎ始めた時だった。
「おぉい。風邪引くぞ」
ぽん、と頭を撫でられ、ゆるゆると目を開けた。
眠気でボヤける目元を擦り、見上げれば白い羽織が目に入る。
「…銀時?」
「お疲れ。」
羽織を肩に掛けられ、隣にすとんと座り込む銀時。
彼が先程まで着ていたものだからか薄布の割には温かかった。
「こんなところで寝るなよ。布団、あるだろうが」
「いやぁ…それが全部使っちゃって」
丁度一組足りなかったのだ。
まぁ寝ずに看病するから自分が使わなければいいか、と思っていが…少し誤算だった。
「だからってンな薄着だと風邪引くだろうが」
「囲炉裏があったかいから大丈夫だよ」
「…医者の不養生とは言うけどよ、」
お前まさにそうだな。
はぁー…と長く深い溜息を吐きながら銀時が呆れた。
雨風凌げる屋根の下なんだから別にいいんじゃないかと思うが、彼からしたらそうもいかないらしい。
「ほら、こい」
「わっ」
腕を引かれ、連れてこられたのは怪我人とは別室の大広間。
本来は法事や説法をするときに使われていたのだろう御堂は、今は男所帯の巣窟になっていた。
所狭しと並べられた布団の、壁際に敷かれた布団を銀時が捲る。
「ほら入れ」
「…入れ、って。でも、」
「いいから。」
そう強く言われ遠慮がちに横になれば、銀時が滑り込むようにすぐ隣で横になった。
「えっと、あの…狭くない?」
「寒いからこれくらいで丁度いいんだよ」
「…小太郎に見つかったら、うるさくない?」
「ほっとけほっとけ。湯たんぽが欲しかったから、これでいーんだよ」
湯たんぽ。
…まぁ体温は確かに低くないけど、銀時もそれなりに体温は高かったはず。
抗議しようかと思ったが、彼に何を行っても布団から出させて貰えそうにないので諦めた。
壁板と銀時に挟まれるような形でどの道逃げ場はない。
「…子供の頃以来じゃない?一緒に寝るの」
「おー、先生が怪談話した時の夜とかな」
「…あれ?その時は銀時が布団に入って来なかったっけ?」
「細かいことはいいんだよ」
黙っとけ、と言わんばかりに抱きしめられる。
人肌の生暖かい体温が眠気を誘う。
微睡む意識、力強い心臓の鼓動。
目を閉じれば睡魔はすぐそこだった。
「…ねむい、」
「だろうな。最近寝てなかっただろ」
「それが私の仕事だもの…」
着物の襟元から覗く胸板に頬を擦り寄せれば、僅かに銀時の身体が揺れた…気がした。
「…おま……ったく、何かあったら起こしてやるから、今は寝ろ」
「ん…」
「……おやすみ」
とろりと溶ける意識の向こうで彼がそっと髪を撫でる感覚と酷く優しい声が聞こえると同時に、私は意識を手放した。
茜色ノ子鬼#寒がり
寒い冬、あたたかい腕の中で。
しんしんと降り積もる雪の中、廃寺の中で名無しはホッと息をついた。
「傷口も化膿していないですね。このまましばらく安静にしましょう」
「すまねぇな…」
負傷した怪我人の見回りを全員分終え、テキパキと片付けをし始める。
ここ数日は戦がなく穏やかだ。
雪が深すぎて進軍しようにも出来ないのだろう。
つい最近まで人が住んでいたのだろう、すっかり廃村になった家の中には家財道具が揃っていた。
雪深いこの季節、布団があるのは非常にありがたかった。寒さは怪我に堪える。
部屋を暖めるための囲炉裏に薪をくべる。
パチパチと火花が爆ぜる音がしんと静まり返った冬の空気に溶けた。
流石に連日の看病は体に堪える。
暖かい囲炉裏の火元も相まって、気が抜けた途端に睡魔が襲ってきた。
いくら家屋に残されてたとはいえ、布団の数に限りはある。
肌寒いが…まぁ仮眠を取るくらいだ、大丈夫だろう。
あまりの暖かさにウトウトと船を漕ぎ始めた時だった。
「おぉい。風邪引くぞ」
ぽん、と頭を撫でられ、ゆるゆると目を開けた。
眠気でボヤける目元を擦り、見上げれば白い羽織が目に入る。
「…銀時?」
「お疲れ。」
羽織を肩に掛けられ、隣にすとんと座り込む銀時。
彼が先程まで着ていたものだからか薄布の割には温かかった。
「こんなところで寝るなよ。布団、あるだろうが」
「いやぁ…それが全部使っちゃって」
丁度一組足りなかったのだ。
まぁ寝ずに看病するから自分が使わなければいいか、と思っていが…少し誤算だった。
「だからってンな薄着だと風邪引くだろうが」
「囲炉裏があったかいから大丈夫だよ」
「…医者の不養生とは言うけどよ、」
お前まさにそうだな。
はぁー…と長く深い溜息を吐きながら銀時が呆れた。
雨風凌げる屋根の下なんだから別にいいんじゃないかと思うが、彼からしたらそうもいかないらしい。
「ほら、こい」
「わっ」
腕を引かれ、連れてこられたのは怪我人とは別室の大広間。
本来は法事や説法をするときに使われていたのだろう御堂は、今は男所帯の巣窟になっていた。
所狭しと並べられた布団の、壁際に敷かれた布団を銀時が捲る。
「ほら入れ」
「…入れ、って。でも、」
「いいから。」
そう強く言われ遠慮がちに横になれば、銀時が滑り込むようにすぐ隣で横になった。
「えっと、あの…狭くない?」
「寒いからこれくらいで丁度いいんだよ」
「…小太郎に見つかったら、うるさくない?」
「ほっとけほっとけ。湯たんぽが欲しかったから、これでいーんだよ」
湯たんぽ。
…まぁ体温は確かに低くないけど、銀時もそれなりに体温は高かったはず。
抗議しようかと思ったが、彼に何を行っても布団から出させて貰えそうにないので諦めた。
壁板と銀時に挟まれるような形でどの道逃げ場はない。
「…子供の頃以来じゃない?一緒に寝るの」
「おー、先生が怪談話した時の夜とかな」
「…あれ?その時は銀時が布団に入って来なかったっけ?」
「細かいことはいいんだよ」
黙っとけ、と言わんばかりに抱きしめられる。
人肌の生暖かい体温が眠気を誘う。
微睡む意識、力強い心臓の鼓動。
目を閉じれば睡魔はすぐそこだった。
「…ねむい、」
「だろうな。最近寝てなかっただろ」
「それが私の仕事だもの…」
着物の襟元から覗く胸板に頬を擦り寄せれば、僅かに銀時の身体が揺れた…気がした。
「…おま……ったく、何かあったら起こしてやるから、今は寝ろ」
「ん…」
「……おやすみ」
とろりと溶ける意識の向こうで彼がそっと髪を撫でる感覚と酷く優しい声が聞こえると同時に、私は意識を手放した。
茜色ノ子鬼#寒がり
寒い冬、あたたかい腕の中で。
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