茜色ドロップ//short story
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「名無し、迎えに来たぞ」
勝手知ったる庭のようにズケズケと真選組の敷地に入る銀時。
隊士も様々な事件を通して彼と関わったからか、ほぼ身内のような扱いだった。
まぁ土方だけは目くじらを立てているのだが。
「テメッ、何勝手に入った来てんだ!不法侵入だぞ、ゴラァ!」
「ザキくんが入れてくれたもーん、不法侵入じゃありませんー、ウチの子迎えに来ただけですぅ~」
「保育園か!山崎、あとでテメーは説教だ!」
騒がしくなった正門辺りへひょこりと顔を出したのは名無しだ。
後ろから悠々と付いてきている沖田もいる。
「なんだ旦那、もう来たんですかィ。お早いお迎えで」
「バカヤロー定時は17時だろうが。名無しがしなくてもな、残業代を請求するぞ。俺が。」
「どうぞどうぞ。請求先は土方さんでよろしく
頼みまさァ」
「総悟テメェ!聞こえてるぞ!」
いつものやり取りを聞き飽きたのか、名無しはわざわざ見送ってくれる近藤に頭を下げて「じゃあ、また来ますね」と笑っていた。
「銀時、お待たせ。」
「おー。じゃあ帰るか」
西に傾き始めた夕陽に向かって、烏が一羽カァと鳴いた。
***
醤油を一本買って、万事屋へ向かう帰り道。
銀時の右手にはビニール袋に入った醤油がタプタプと波打ちながら、ビニール音を立てて揺れていた。
「銀時、ごめんね。持ってもらって」
「このくらいはな。今日の夕飯はなんだ?」
「ん?肉じゃが」
…そういえば昨日仕込んでいたな。
きっと味が染みて美味しくなっているのだろう。
「明日は晴れかなぁ」
「夕陽が綺麗に見えたら次の日は晴れらしいぞ」
「へぇー。じゃあ明日は洗濯物いっぱい干そうかな」
ふにゃふにゃと機嫌の良さそうな笑顔で彼女が笑う。
少し前では考えられなかった表情だ。少なくとも、攘夷戦争中には。
やはり名無しは笑っている顔が一番似合っていた。
「沖田君と何話してたんだよ」
「ん?新作のお菓子貰ってたの。明日回診の帰りにスーパーで買って帰るね」
「おぅ。」
そんな他愛ない話なら、まぁいいのだど。
「しっかし、陽が沈むと寒くなってきたな」
「ねー。指先かじかんじゃったら仕事しにくいんだよねぇ、やだなぁ」
両手を擦り合わせながら暖を取る名無し。
細く白い指は男の俺の手とは、まるで別物のようだった。
「…ちっせぇ手。」
「銀時のが大っきいんだよー」
「そうかぁ?」
左手を「ん。」と突き出せば、比べるように重ねられる名無しの右手。
思った以上に小さな手へ触れて、不覚にも鼓動が跳ねた。
触れた手を離さないように指を絡めて握りしめれば、所謂『恋人繋ぎ』になる。
…こっちはエラい意識してるってェのに、まぁ名無しは知る由もないのだろう。
「銀時の手、大っきいね」
「だろ。」
あーあ、幼馴染や家族から昇格出来るのはいつになることやら。
勝手知ったる庭のようにズケズケと真選組の敷地に入る銀時。
隊士も様々な事件を通して彼と関わったからか、ほぼ身内のような扱いだった。
まぁ土方だけは目くじらを立てているのだが。
「テメッ、何勝手に入った来てんだ!不法侵入だぞ、ゴラァ!」
「ザキくんが入れてくれたもーん、不法侵入じゃありませんー、ウチの子迎えに来ただけですぅ~」
「保育園か!山崎、あとでテメーは説教だ!」
騒がしくなった正門辺りへひょこりと顔を出したのは名無しだ。
後ろから悠々と付いてきている沖田もいる。
「なんだ旦那、もう来たんですかィ。お早いお迎えで」
「バカヤロー定時は17時だろうが。名無しがしなくてもな、残業代を請求するぞ。俺が。」
「どうぞどうぞ。請求先は土方さんでよろしく
頼みまさァ」
「総悟テメェ!聞こえてるぞ!」
いつものやり取りを聞き飽きたのか、名無しはわざわざ見送ってくれる近藤に頭を下げて「じゃあ、また来ますね」と笑っていた。
「銀時、お待たせ。」
「おー。じゃあ帰るか」
西に傾き始めた夕陽に向かって、烏が一羽カァと鳴いた。
***
醤油を一本買って、万事屋へ向かう帰り道。
銀時の右手にはビニール袋に入った醤油がタプタプと波打ちながら、ビニール音を立てて揺れていた。
「銀時、ごめんね。持ってもらって」
「このくらいはな。今日の夕飯はなんだ?」
「ん?肉じゃが」
…そういえば昨日仕込んでいたな。
きっと味が染みて美味しくなっているのだろう。
「明日は晴れかなぁ」
「夕陽が綺麗に見えたら次の日は晴れらしいぞ」
「へぇー。じゃあ明日は洗濯物いっぱい干そうかな」
ふにゃふにゃと機嫌の良さそうな笑顔で彼女が笑う。
少し前では考えられなかった表情だ。少なくとも、攘夷戦争中には。
やはり名無しは笑っている顔が一番似合っていた。
「沖田君と何話してたんだよ」
「ん?新作のお菓子貰ってたの。明日回診の帰りにスーパーで買って帰るね」
「おぅ。」
そんな他愛ない話なら、まぁいいのだど。
「しっかし、陽が沈むと寒くなってきたな」
「ねー。指先かじかんじゃったら仕事しにくいんだよねぇ、やだなぁ」
両手を擦り合わせながら暖を取る名無し。
細く白い指は男の俺の手とは、まるで別物のようだった。
「…ちっせぇ手。」
「銀時のが大っきいんだよー」
「そうかぁ?」
左手を「ん。」と突き出せば、比べるように重ねられる名無しの右手。
思った以上に小さな手へ触れて、不覚にも鼓動が跳ねた。
触れた手を離さないように指を絡めて握りしめれば、所謂『恋人繋ぎ』になる。
…こっちはエラい意識してるってェのに、まぁ名無しは知る由もないのだろう。
「銀時の手、大っきいね」
「だろ。」
あーあ、幼馴染や家族から昇格出来るのはいつになることやら。