茜色ドロップ//short story
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「こんにちはー、回診に来ましたー」
屯所の門から聞こえる声。
週に一度、彼女はここに来る。
茜色ドロップ#ハロー真選組
「いや最近ケツが痛くてさァ」
「痔かもしれませんよ。なんなら触診しましょうか?」
「…え。いやいやいや、そしたらお互いお嫁に行けなくない?ほら、こんなオッサンのケツ穴なんて触ったら名無しちゃん大変なことに、」
「近藤さんはどちらかというとお婿というか、旦那様になられる方では。大丈夫ですよ、私は気にしませんから。」
「やめて!少しは気にして!とりあえず塗り薬でいいから!」
「様子見されますか?分かりました。
あと問診票にお妙さんへのアプローチ相談書くのはやめましょう。とりあえず、指輪のプレゼントはオススメしません。お花のプレゼントとか如何ですか?」
総悟が終わり、今は近藤さんの番だ。
障子越しに問診なのか問診じゃないのかよく分からねぇ会話が聞こえてくる。
…次は俺なんだが、気が重てェ。
「はい、次は土方さん」
来た。
「頑張れよ、トシ」と言いながら近藤さんが俺の肩を叩く。何が頑張れよ、だ。
渋々部屋に入れば、事前に書かされた問診票をガン見している目の前の女。
紺色の作務衣に白衣を羽織った格好は色気のイの字もない。
黒い瞳がじとりと俺を見遣る。…どうやら今月も説教らしい。
「土方さん、コレステロール値が下がっていませんよ。LDLコレステロールが151って何ですか、ポケモ●の数ですか?」
「馬鹿野郎、俺からマヨネーズ取ったら何が残るんだ。あとポケモンは今は807種類だ」
「何が残るって…………タバコ、ですかね。」
にこっと彼女が、それはそれは綺麗な笑顔で笑う。
…マズイ。
「一日15本も多いですけど、この自己申告嘘ですよね?一日に二箱から三箱消費してるって、聞いてますよ。」
「なっ、だ、誰からだ!」
「それは守秘義務がありますから。」
バインダーをパタンと閉じればいつもの小言タイムの始まりだ。
あまりくどくはないが、やはり耳が痛い話なのでどうしても聞くのは億劫になってしまう。
それが多少気になる女からだとしても、だ。
「ダメですよ、身体が資本なんですから。
近藤さんについて行くぞ、って言ってますけど、早死にしたら『憑いていく』になるんですよ?」
「…それは洒落にならねぇけどよ、」
「そうでしょう?今の若いうちに少しずつ量を減らしていきましょう。
真選組の中では土方さんが一番数値悪いんですから」
沖田さんにバカにされますよ。
そう言って彼女は苦笑いを浮かべる。
…外部の人間にも不仲なのが周知の事実、というのは少し恥ずかしい。
「いつもお仕事大変だとは思いますけど、ストレスの溜めすぎはよくないですよ。土方さんの場合、嗜好品に走りがちになりますし」
「ストレス解消、ねぇ」
「お休みの日はちゃんと休んでますか?誰か誘って遊びに行ったり、普段あまりしないことすると意外と楽しかったりしますよ」
にこにことポジションな提案をしてくるあたりが彼女らしい。
前任のジジイはもっと口煩かったがその辺は流石同世代、と言うべきか。
「…遊びに、ねぇ。それこそアンタは休んでなさそうなイメージだがな」
「休んでますよー。甘味食べに行ったり、大食い大会の観戦に行ったりとか、安売りスーパーを行脚したりとか」
「……って、それ万事屋連中絡みじゃねーか」
「すごい、よく分かりましたね」
そんなの分かるわ。
喉まで出掛けた言葉をグッと呑み込み、俺はひとつため息を吐いた。
周りに振り回されているのは、彼女も同じらしい。
俺と一番大きく違う点は、その振り回されている状況を彼女も楽しんでいる点だろう。
懐が広いというか、なんというか。
「…次いつ休みだ」
「次ですか?来週の木曜日ですね」
「そこ空けとけ。ここまで言ったんだからストレス解消に付き合ってもらうぞ」
「構いませんよ。予定ありませんし」
まさかの。
自分でも思わず肩透かし食らってしまいそうなくらい、すんなりOK貰ってしまった。
…デート、だということは彼女は気づいていないだろう。いや、むしろデートとも思われていないだろうな。
ストレス解消に付き合っている、と思われているなら仕方ない。全力で付き合って貰おうじゃねーか。
決戦は来週の木曜日。
…とにかく邪魔が入りませんように。
俺は初めて神に祈った。
屯所の門から聞こえる声。
週に一度、彼女はここに来る。
茜色ドロップ#ハロー真選組
「いや最近ケツが痛くてさァ」
「痔かもしれませんよ。なんなら触診しましょうか?」
「…え。いやいやいや、そしたらお互いお嫁に行けなくない?ほら、こんなオッサンのケツ穴なんて触ったら名無しちゃん大変なことに、」
「近藤さんはどちらかというとお婿というか、旦那様になられる方では。大丈夫ですよ、私は気にしませんから。」
「やめて!少しは気にして!とりあえず塗り薬でいいから!」
「様子見されますか?分かりました。
あと問診票にお妙さんへのアプローチ相談書くのはやめましょう。とりあえず、指輪のプレゼントはオススメしません。お花のプレゼントとか如何ですか?」
総悟が終わり、今は近藤さんの番だ。
障子越しに問診なのか問診じゃないのかよく分からねぇ会話が聞こえてくる。
…次は俺なんだが、気が重てェ。
「はい、次は土方さん」
来た。
「頑張れよ、トシ」と言いながら近藤さんが俺の肩を叩く。何が頑張れよ、だ。
渋々部屋に入れば、事前に書かされた問診票をガン見している目の前の女。
紺色の作務衣に白衣を羽織った格好は色気のイの字もない。
黒い瞳がじとりと俺を見遣る。…どうやら今月も説教らしい。
「土方さん、コレステロール値が下がっていませんよ。LDLコレステロールが151って何ですか、ポケモ●の数ですか?」
「馬鹿野郎、俺からマヨネーズ取ったら何が残るんだ。あとポケモンは今は807種類だ」
「何が残るって…………タバコ、ですかね。」
にこっと彼女が、それはそれは綺麗な笑顔で笑う。
…マズイ。
「一日15本も多いですけど、この自己申告嘘ですよね?一日に二箱から三箱消費してるって、聞いてますよ。」
「なっ、だ、誰からだ!」
「それは守秘義務がありますから。」
バインダーをパタンと閉じればいつもの小言タイムの始まりだ。
あまりくどくはないが、やはり耳が痛い話なのでどうしても聞くのは億劫になってしまう。
それが多少気になる女からだとしても、だ。
「ダメですよ、身体が資本なんですから。
近藤さんについて行くぞ、って言ってますけど、早死にしたら『憑いていく』になるんですよ?」
「…それは洒落にならねぇけどよ、」
「そうでしょう?今の若いうちに少しずつ量を減らしていきましょう。
真選組の中では土方さんが一番数値悪いんですから」
沖田さんにバカにされますよ。
そう言って彼女は苦笑いを浮かべる。
…外部の人間にも不仲なのが周知の事実、というのは少し恥ずかしい。
「いつもお仕事大変だとは思いますけど、ストレスの溜めすぎはよくないですよ。土方さんの場合、嗜好品に走りがちになりますし」
「ストレス解消、ねぇ」
「お休みの日はちゃんと休んでますか?誰か誘って遊びに行ったり、普段あまりしないことすると意外と楽しかったりしますよ」
にこにことポジションな提案をしてくるあたりが彼女らしい。
前任のジジイはもっと口煩かったがその辺は流石同世代、と言うべきか。
「…遊びに、ねぇ。それこそアンタは休んでなさそうなイメージだがな」
「休んでますよー。甘味食べに行ったり、大食い大会の観戦に行ったりとか、安売りスーパーを行脚したりとか」
「……って、それ万事屋連中絡みじゃねーか」
「すごい、よく分かりましたね」
そんなの分かるわ。
喉まで出掛けた言葉をグッと呑み込み、俺はひとつため息を吐いた。
周りに振り回されているのは、彼女も同じらしい。
俺と一番大きく違う点は、その振り回されている状況を彼女も楽しんでいる点だろう。
懐が広いというか、なんというか。
「…次いつ休みだ」
「次ですか?来週の木曜日ですね」
「そこ空けとけ。ここまで言ったんだからストレス解消に付き合ってもらうぞ」
「構いませんよ。予定ありませんし」
まさかの。
自分でも思わず肩透かし食らってしまいそうなくらい、すんなりOK貰ってしまった。
…デート、だということは彼女は気づいていないだろう。いや、むしろデートとも思われていないだろうな。
ストレス解消に付き合っている、と思われているなら仕方ない。全力で付き合って貰おうじゃねーか。
決戦は来週の木曜日。
…とにかく邪魔が入りませんように。
俺は初めて神に祈った。