茜色ノ子鬼
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昔の、夢を見た。
茜色ノ小鬼#09
一番昔の記憶を辿れば、烏の面を着けた松陽と何処か銀時と雰囲気の似た少年。
「では行ってくる。世話は任せたよ」
「はい、先生」
ピシャリと閉まった襖を見送り、少年が顔を覗き込む。
「さて。名無し、何して遊ぼうか。」
「にいちゃんとかくれんぼ!」
私が顔を綻ばせれば、仏頂面の彼が僅かに微笑む。
「かくれんぼか。じゃあ先生の部屋の中で、だな」
「はぁい」
くしゃりと髪を撫でた彼の手は、優しくて、温かかった。
それは幼かった頃の、涙が出そうなくらい懐かしい記憶。
***
「名無し、」
桂に肩を揺さぶられ、目を覚ませばそこは野営地だった。
火を灯していた薪はすっかりと黒く燃え尽き、白く冷たい灰になっている。
「…小太郎。」
「怖い夢でも見たのか?」
そう言って心配そうに顔を覗き込む彼。
頬に触れれば、滴が一筋流れた感触がした。
「…大丈夫。少し、懐かしい夢を見ただけ」
朧月の下で曖昧に笑えば、桂が心配そうに眉を顰めるが「…そうか。」と返事をするだけだった。
深く追及して来ないのが彼なりの優しさだ。
これが銀時や高杉なら少し面倒だったかもしれない。
薄い雲に隠れた、ぼやりとした輪郭で浮く満月。
それを見上げれば、どうしてだろう。彼のことを思い出してしまうのは。
***
「一週間程、京や周辺地域で情報集めるぞ」
都に入る前に高杉がそう言った。
大人数で京へ短期間といえども潜伏するのは得策ではない。
坂本のツテで宿を取り、周辺各地で一週間程身を潜めて情報収集をすると言うのだ。
「戦道具は宿に隠しておけ。浪人を装って、各人情報収集に当たれ。」
鬼兵隊の長らしく、的確にほかの部隊にも指示を出していた。
異を唱える者はいなかった。誰しもが少しはガス抜きが必要だったからだ。
***
「わ…人がいっぱい」
宿の窓から人が往来する大通りを見下ろす。
精々、近くの村に行商人が来た時くらいの人だろう、と思っていたが…これは予想以上だった。
「あんま身を乗り出してると危ないぞ」
ぐいっと作務衣を後ろから引っ張られ、名無しは思わず尻餅をついた。
「いたっ…もう、銀時。急に引っ張らないでよ」
「そうじゃそうじゃ、金時。おなごはもちっと丁寧に扱わんとのぅ」
「バカヤロー、俺の名前は銀時だ、ってんだろうが。このモジャモジャは見せかけか?ん?」
坂本の頭を鷲掴みにして銀時が凄む。
今回はどうやらこの部屋割りらしい。桂に「二人の仲裁は頼むぞ」と言われたが…私がするのだろうか。
「さてと。私はちょっと京の薬屋さん見てくるよ。どんなのが置いてるのか見てみたいし」
「俺も、」
「銀時は休んでて。今朝まで不寝の番だったでしょ」
布団を一組畳へ敷けば、銀時は不満そうに口先を尖らせる。
「バカヤロー、こんな危険だらけの都会で女ひとり歩かせれるかっつーの」
「大丈夫でしょ。道行く女の子達はこんな色気のない格好していないし。それに、胸もペタンコだしね」
いつか銀時に言われた言葉を、少しの嫌味を込めてお返しする。
言葉に詰まる銀時と「アッハッハッハッハッ、こりゃ一本取られたのぅ、金時!」と笑っている坂本を尻目に、名無しは静かに部屋を出て行った。
茜色ノ小鬼#09
一番昔の記憶を辿れば、烏の面を着けた松陽と何処か銀時と雰囲気の似た少年。
「では行ってくる。世話は任せたよ」
「はい、先生」
ピシャリと閉まった襖を見送り、少年が顔を覗き込む。
「さて。名無し、何して遊ぼうか。」
「にいちゃんとかくれんぼ!」
私が顔を綻ばせれば、仏頂面の彼が僅かに微笑む。
「かくれんぼか。じゃあ先生の部屋の中で、だな」
「はぁい」
くしゃりと髪を撫でた彼の手は、優しくて、温かかった。
それは幼かった頃の、涙が出そうなくらい懐かしい記憶。
***
「名無し、」
桂に肩を揺さぶられ、目を覚ませばそこは野営地だった。
火を灯していた薪はすっかりと黒く燃え尽き、白く冷たい灰になっている。
「…小太郎。」
「怖い夢でも見たのか?」
そう言って心配そうに顔を覗き込む彼。
頬に触れれば、滴が一筋流れた感触がした。
「…大丈夫。少し、懐かしい夢を見ただけ」
朧月の下で曖昧に笑えば、桂が心配そうに眉を顰めるが「…そうか。」と返事をするだけだった。
深く追及して来ないのが彼なりの優しさだ。
これが銀時や高杉なら少し面倒だったかもしれない。
薄い雲に隠れた、ぼやりとした輪郭で浮く満月。
それを見上げれば、どうしてだろう。彼のことを思い出してしまうのは。
***
「一週間程、京や周辺地域で情報集めるぞ」
都に入る前に高杉がそう言った。
大人数で京へ短期間といえども潜伏するのは得策ではない。
坂本のツテで宿を取り、周辺各地で一週間程身を潜めて情報収集をすると言うのだ。
「戦道具は宿に隠しておけ。浪人を装って、各人情報収集に当たれ。」
鬼兵隊の長らしく、的確にほかの部隊にも指示を出していた。
異を唱える者はいなかった。誰しもが少しはガス抜きが必要だったからだ。
***
「わ…人がいっぱい」
宿の窓から人が往来する大通りを見下ろす。
精々、近くの村に行商人が来た時くらいの人だろう、と思っていたが…これは予想以上だった。
「あんま身を乗り出してると危ないぞ」
ぐいっと作務衣を後ろから引っ張られ、名無しは思わず尻餅をついた。
「いたっ…もう、銀時。急に引っ張らないでよ」
「そうじゃそうじゃ、金時。おなごはもちっと丁寧に扱わんとのぅ」
「バカヤロー、俺の名前は銀時だ、ってんだろうが。このモジャモジャは見せかけか?ん?」
坂本の頭を鷲掴みにして銀時が凄む。
今回はどうやらこの部屋割りらしい。桂に「二人の仲裁は頼むぞ」と言われたが…私がするのだろうか。
「さてと。私はちょっと京の薬屋さん見てくるよ。どんなのが置いてるのか見てみたいし」
「俺も、」
「銀時は休んでて。今朝まで不寝の番だったでしょ」
布団を一組畳へ敷けば、銀時は不満そうに口先を尖らせる。
「バカヤロー、こんな危険だらけの都会で女ひとり歩かせれるかっつーの」
「大丈夫でしょ。道行く女の子達はこんな色気のない格好していないし。それに、胸もペタンコだしね」
いつか銀時に言われた言葉を、少しの嫌味を込めてお返しする。
言葉に詰まる銀時と「アッハッハッハッハッ、こりゃ一本取られたのぅ、金時!」と笑っている坂本を尻目に、名無しは静かに部屋を出て行った。