茜色ノ子鬼
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最近、死傷者が少なくなった。…気がする。
「名無し、お前ぶっ倒れるぞ。少しは寝ておけ」
まともな支援がない俺達攘夷志士は、正直食うのも困る時がある。
その中の医療現場だ。状況が悪いことなんて、誰しもが分かっていた。
「大丈夫。使った分の薬くらい作っておかなくちゃ」
気丈に振る舞う名無しを見て、僅かに胸の奥が痛くなった。
医療行為とは言え、今朝まで同じ釜の飯を食った仲間の血で両手を染めて裂けた肉を縫い合わせるなんて、俺には到底想像が出来なかった。
命を奪うことは容易い。
救うことは、歯痒くなる程に難しい。
戦場に立つ俺達や、常に人の死を見続けている名無しもそれはよく分かっている。
これが、戦だ。
「名無し。」
「ん?」
「無茶するなよ」
困ったように苦笑いを浮かべて「分かってるよ」と肩を竦める彼女の笑顔が、酷く遠くに見えてしまった。
茜色ノ小鬼#08
…無茶をするな、か。
彼らしい。
いや、もしかしたら少しずつ感づいているのかもしれない。
「…今は無茶くらいするよ」
大丈夫。
怒られるのは、全てが終わったあとで。
ザリ、と乾いた黒い粉末。
指先で触れば僅かに香る鉄の匂い。
それをいつもの薬草を砕いた粉に少量混ぜる。
(誰も、死なせはしない)
***
「こりゃ満身創痍のヤツらばかりじゃのう」
昼下がり。
血の匂いが立ち込める御堂に足を踏み入れたのは、知らない男だった。
「誰。」
懐に仕込んでいた短刀を抜き、切っ先を向ける。
蝉の鳴き声が、遠くで聞こえた。
「ワシか?ワシは坂本辰馬じゃ!」
名前を聞いているんじゃないんだけど。
「そうじゃなくて、」
「おいコラ辰馬テメェ、勝手にウロウロしてんじゃ」
坂本の後ろから出てきたのは、
「晋す……って、なんでゲロまみれなの」
「この阿呆にぶっかけられたんだよ」
高杉の瞳孔が開ききっている。…相当ブチ切れたのだろう。
「今日からコイツの部隊も合流する。辰馬、コイツがウチの後方支援やってる名無しだ」
これが、坂本辰馬との出会い方だった。
***
「男みたいな格好しちょるが、女じゃの。別嬪なのに勿体無いのぅ」
物資は坂本が仕入れてくれるらしい。
一同集まって何が必要か話し合っていると、不意に坂本が口を開いた。
さっきから視線が刺さるな、とは思っていたがまさかこんなことを言い出すとは。
「オイオイ、名無しのペタンコな胸板見て一発で分かるなんて辰馬の野郎ヤバすぎだろ」
「仕事するのに邪魔だから、前っからサラシで潰してるのよ」
銀時のセクハラ発言も大概だが、坂本の発言も大概だ。誰がペタンコだ。
隣にいた銀時をじとりと見遣った後に、小さく溜息をつく。
「なんでも仕入れれるって、言ったよね」
「もちろんじゃ。ワシに仕入れられないものはないぜよ」
注射器、最新の医学書、手術に使う道具一式、その他諸々。
必要なものを書いた紙を坂本に渡せば「このくらいなら大丈夫じゃろ、任せとき」と笑った。
これで少しは拾える命が増えればいいのだけど。
「もうすぐ京じゃけんのぅ。そこで仕入れるとするかの」
「ありがとう。助かるよ」
礼を言えば、眩い太陽のような笑顔を返された。
「名無し、お前ぶっ倒れるぞ。少しは寝ておけ」
まともな支援がない俺達攘夷志士は、正直食うのも困る時がある。
その中の医療現場だ。状況が悪いことなんて、誰しもが分かっていた。
「大丈夫。使った分の薬くらい作っておかなくちゃ」
気丈に振る舞う名無しを見て、僅かに胸の奥が痛くなった。
医療行為とは言え、今朝まで同じ釜の飯を食った仲間の血で両手を染めて裂けた肉を縫い合わせるなんて、俺には到底想像が出来なかった。
命を奪うことは容易い。
救うことは、歯痒くなる程に難しい。
戦場に立つ俺達や、常に人の死を見続けている名無しもそれはよく分かっている。
これが、戦だ。
「名無し。」
「ん?」
「無茶するなよ」
困ったように苦笑いを浮かべて「分かってるよ」と肩を竦める彼女の笑顔が、酷く遠くに見えてしまった。
茜色ノ小鬼#08
…無茶をするな、か。
彼らしい。
いや、もしかしたら少しずつ感づいているのかもしれない。
「…今は無茶くらいするよ」
大丈夫。
怒られるのは、全てが終わったあとで。
ザリ、と乾いた黒い粉末。
指先で触れば僅かに香る鉄の匂い。
それをいつもの薬草を砕いた粉に少量混ぜる。
(誰も、死なせはしない)
***
「こりゃ満身創痍のヤツらばかりじゃのう」
昼下がり。
血の匂いが立ち込める御堂に足を踏み入れたのは、知らない男だった。
「誰。」
懐に仕込んでいた短刀を抜き、切っ先を向ける。
蝉の鳴き声が、遠くで聞こえた。
「ワシか?ワシは坂本辰馬じゃ!」
名前を聞いているんじゃないんだけど。
「そうじゃなくて、」
「おいコラ辰馬テメェ、勝手にウロウロしてんじゃ」
坂本の後ろから出てきたのは、
「晋す……って、なんでゲロまみれなの」
「この阿呆にぶっかけられたんだよ」
高杉の瞳孔が開ききっている。…相当ブチ切れたのだろう。
「今日からコイツの部隊も合流する。辰馬、コイツがウチの後方支援やってる名無しだ」
これが、坂本辰馬との出会い方だった。
***
「男みたいな格好しちょるが、女じゃの。別嬪なのに勿体無いのぅ」
物資は坂本が仕入れてくれるらしい。
一同集まって何が必要か話し合っていると、不意に坂本が口を開いた。
さっきから視線が刺さるな、とは思っていたがまさかこんなことを言い出すとは。
「オイオイ、名無しのペタンコな胸板見て一発で分かるなんて辰馬の野郎ヤバすぎだろ」
「仕事するのに邪魔だから、前っからサラシで潰してるのよ」
銀時のセクハラ発言も大概だが、坂本の発言も大概だ。誰がペタンコだ。
隣にいた銀時をじとりと見遣った後に、小さく溜息をつく。
「なんでも仕入れれるって、言ったよね」
「もちろんじゃ。ワシに仕入れられないものはないぜよ」
注射器、最新の医学書、手術に使う道具一式、その他諸々。
必要なものを書いた紙を坂本に渡せば「このくらいなら大丈夫じゃろ、任せとき」と笑った。
これで少しは拾える命が増えればいいのだけど。
「もうすぐ京じゃけんのぅ。そこで仕入れるとするかの」
「ありがとう。助かるよ」
礼を言えば、眩い太陽のような笑顔を返された。