茜色ノ子鬼
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「名無し、缶蹴りしよーぜ」
部屋でとある準備をしていると、銀時に声をかけられた。
参加したいのは山々だが、今日は用事がある。
茜色ノ小鬼#06
「なんだろうな、用事って」
缶蹴りの鬼になっている桂が不思議そうに呟きながら辺りを見回す。
捕まっているのは銀時と高杉。
隠れる場所が被ったとかで喧嘩している時に桂に捕まったのだ。なんとも情けない理由だった。
「最近アイツ付き合い悪いんだよな」
最近コソコソとひとりで何かしていることの方が増えたようだった。
時々道場に顔を出してはいるが、やはり頻度は減ったように見える。
「…よし、俺いちぬーけた」
「は?」
「誰も助けにこねーし、名無しについて行った方が楽しそうだしな」
「そりゃヅラが鬼なら誰も助けにこねーよ」
銀時と晋助が尻についた砂を払いながら立ち上がる。
「ヅラじゃない、桂だ」
「お前はどーすんだ?ヅラァ」
「ヅラじゃない、桂だと言ってるだろう、高杉!銀時!」
ぷりぷり怒りながら缶から離れる小太郎。
まぁつまり、そういうことらしい。
***
寺子屋の裏山に入ってしばらくすると、紺色の着物が木々の枝から見えた。
緑が鬱蒼と茂り始めた夏。
日差しがジリジリと照りつけて、蝉の鳴き声が四方八方から聞こえてきた。
「えっと、オトギリソウは…透かしたら葉っぱに黒い斑点…これかな…」
草をかき分けながら数種類の草を毟っては背中の籠に入れていく名無し。
姿勢を低くして歩くその様は子供が歩いていると言うより、籠が動いているようだった。
「本片手に、アイツ何してンだ?」
「あ。あれ、最近ずっと読んでるヤツじゃん」
枕元にいくつか重ねられている本の一つだ。
表紙には見覚えがあった。
「薬草の本か?」
「なんだ、ヅラお前知ってたのか?」
「何の本か気になって、聞いたら教えてくれたぞ」
少し読んでみたら、サッパリだったが。
そう答える桂を見て、少しだけムッとした表情になる銀時。
「アイツ俺には教えなかったくせに…」
ブツブツと文句を言う様を見て「女々しいやつ」と高杉が呟いた。
ポツ、ポツ
木々の隙間から滴が落ちる。
それは一瞬にして、覆い茂る葉を叩くような通り雨に変わった。
「げ、雨だ」
「オイ、俺の羽織を傘にしてんじゃねぇよ銀時!」
「銀時?」
夕立から籠の中身を守るためか、持っていた風呂敷を被せながら彼女が振り向く。
「ほら言わんこっちゃない」と桂が肩を竦めながら銀時と高杉を冷ややかな目で見た。
***
「そんな面白いことはしてないよ」
名無しが手ぬぐいで濡れた髪を雑把に拭いながら苦笑いをする。
籠から丁寧に同じ種類に分けつつ、彼女が説明しだした。
「これがオトギリソウ。そのままでも使えるけど、天日干しして乾燥させた方が保存きくから明日晴れたら乾燥させるの。傷や打撲に使えるから銀時達も覚えておいてもいいかもね」
これがミカンの皮を乾燥させた陳皮、カミツレの花を乾燥させたものはお腹の調子が悪い時に効く、など。
木製の小引出しごとひとつひとつ出し、丁寧に説明していった。
「…つまり薬の原料集めしてたってことか?」
「そうだよ」
桂が陳皮を摘みながら問えば、名無しは大きく首を縦に振った。
「教えてくれりゃあよかったのによ」
「だって銀時、教えたらついて行くって言いそうだったし…」
「そりゃお前、山って…熊やら蛇やらオバケや変態が出るんだぞ?」
「最後のふたつはともかく、熊や蛇には気をつけてるよ」
「けどなぁ…」
ブツブツと食い下がる銀時を見て、困ったように苦笑いを浮かべる名無し。
小さく肩を竦めながら、ポツポツと口を開いた。
「…その、驚かせたかったの。
ほら、道場には参加させてもらえないし、その…取り柄が、欲しくて」
それもある。
ただ一番の目的は『血』に頼らなくても、人を助けれるように。松陽はそう言いながら蘭学や漢方・薬草に関する本を渡してくれた。
その期待に、応えたかった。
「じゃあ、ほら。ん。」
高杉が腕を捲ればまだ真新しい、青痣になっている打ち身。
道場の手合わせの時に出来たのだろう。
「俺が患者第一号だな」
そう高杉が言えば、ぱぁっと表情が明るくなる名無し。
「すぐ用意するね」と言いながら、煎じるための土鍋と水を取りに奥へ走っていった。
「ヅラ、今から俺ぶん殴って青痣作ってくんね?」
「みっともない真似はよさないか、銀時」
部屋でとある準備をしていると、銀時に声をかけられた。
参加したいのは山々だが、今日は用事がある。
茜色ノ小鬼#06
「なんだろうな、用事って」
缶蹴りの鬼になっている桂が不思議そうに呟きながら辺りを見回す。
捕まっているのは銀時と高杉。
隠れる場所が被ったとかで喧嘩している時に桂に捕まったのだ。なんとも情けない理由だった。
「最近アイツ付き合い悪いんだよな」
最近コソコソとひとりで何かしていることの方が増えたようだった。
時々道場に顔を出してはいるが、やはり頻度は減ったように見える。
「…よし、俺いちぬーけた」
「は?」
「誰も助けにこねーし、名無しについて行った方が楽しそうだしな」
「そりゃヅラが鬼なら誰も助けにこねーよ」
銀時と晋助が尻についた砂を払いながら立ち上がる。
「ヅラじゃない、桂だ」
「お前はどーすんだ?ヅラァ」
「ヅラじゃない、桂だと言ってるだろう、高杉!銀時!」
ぷりぷり怒りながら缶から離れる小太郎。
まぁつまり、そういうことらしい。
***
寺子屋の裏山に入ってしばらくすると、紺色の着物が木々の枝から見えた。
緑が鬱蒼と茂り始めた夏。
日差しがジリジリと照りつけて、蝉の鳴き声が四方八方から聞こえてきた。
「えっと、オトギリソウは…透かしたら葉っぱに黒い斑点…これかな…」
草をかき分けながら数種類の草を毟っては背中の籠に入れていく名無し。
姿勢を低くして歩くその様は子供が歩いていると言うより、籠が動いているようだった。
「本片手に、アイツ何してンだ?」
「あ。あれ、最近ずっと読んでるヤツじゃん」
枕元にいくつか重ねられている本の一つだ。
表紙には見覚えがあった。
「薬草の本か?」
「なんだ、ヅラお前知ってたのか?」
「何の本か気になって、聞いたら教えてくれたぞ」
少し読んでみたら、サッパリだったが。
そう答える桂を見て、少しだけムッとした表情になる銀時。
「アイツ俺には教えなかったくせに…」
ブツブツと文句を言う様を見て「女々しいやつ」と高杉が呟いた。
ポツ、ポツ
木々の隙間から滴が落ちる。
それは一瞬にして、覆い茂る葉を叩くような通り雨に変わった。
「げ、雨だ」
「オイ、俺の羽織を傘にしてんじゃねぇよ銀時!」
「銀時?」
夕立から籠の中身を守るためか、持っていた風呂敷を被せながら彼女が振り向く。
「ほら言わんこっちゃない」と桂が肩を竦めながら銀時と高杉を冷ややかな目で見た。
***
「そんな面白いことはしてないよ」
名無しが手ぬぐいで濡れた髪を雑把に拭いながら苦笑いをする。
籠から丁寧に同じ種類に分けつつ、彼女が説明しだした。
「これがオトギリソウ。そのままでも使えるけど、天日干しして乾燥させた方が保存きくから明日晴れたら乾燥させるの。傷や打撲に使えるから銀時達も覚えておいてもいいかもね」
これがミカンの皮を乾燥させた陳皮、カミツレの花を乾燥させたものはお腹の調子が悪い時に効く、など。
木製の小引出しごとひとつひとつ出し、丁寧に説明していった。
「…つまり薬の原料集めしてたってことか?」
「そうだよ」
桂が陳皮を摘みながら問えば、名無しは大きく首を縦に振った。
「教えてくれりゃあよかったのによ」
「だって銀時、教えたらついて行くって言いそうだったし…」
「そりゃお前、山って…熊やら蛇やらオバケや変態が出るんだぞ?」
「最後のふたつはともかく、熊や蛇には気をつけてるよ」
「けどなぁ…」
ブツブツと食い下がる銀時を見て、困ったように苦笑いを浮かべる名無し。
小さく肩を竦めながら、ポツポツと口を開いた。
「…その、驚かせたかったの。
ほら、道場には参加させてもらえないし、その…取り柄が、欲しくて」
それもある。
ただ一番の目的は『血』に頼らなくても、人を助けれるように。松陽はそう言いながら蘭学や漢方・薬草に関する本を渡してくれた。
その期待に、応えたかった。
「じゃあ、ほら。ん。」
高杉が腕を捲ればまだ真新しい、青痣になっている打ち身。
道場の手合わせの時に出来たのだろう。
「俺が患者第一号だな」
そう高杉が言えば、ぱぁっと表情が明るくなる名無し。
「すぐ用意するね」と言いながら、煎じるための土鍋と水を取りに奥へ走っていった。
「ヅラ、今から俺ぶん殴って青痣作ってくんね?」
「みっともない真似はよさないか、銀時」