茜色ノ子鬼
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それは、昔々の物語。
茜色ノ小鬼#01
松陽に拾われた後、連れてこられたのはあばら家だった。
「名無し。名無しはいますか?」
松陽が声を掛ければ、奥からひょこりと顔を出すひとりの子供。
俺よりも幼く、手足が煤で黒くなっていた。
「おや。大丈夫ですか?」
「お米炊こうとして、古い煤を釜戸から出してたの」
「それはすみません。ありがとうございます」
くしゃりと松陽が頭を撫でると、口元をもじもじさせて照れくさそうな顔で子供は俯いた。
「そうだ名無し。今日からここに住むことになった銀時です。仲良くしてくださいね」
ズルズルと伸びっぱなしになった黒髪。
汚れや擦り傷で煤けた風貌。
男なのか女なのか分かりにくい姿をしているが、鈴のような声から察するに少女だということは分かった。
「お風呂を沸かしてくるので、銀時に名無しの着物をひとつ貸してあげてください」
「はい」
そう言って松陽は風呂場の方へ向かった。
彼女のものを借りる、とは言うものの…
(俺より断然チビなのに着れるのか?)
頭ひとつ分はゆうに小さい。
丈は短いだろうが…まぁ今のボロボロの着物よりはマシだろう。
彼女が取り出したのは紺色の着物。
新品とは言い難いが、ほつれをきちんと直しており大事に着ているのは目に見えて分かった。
「悪いな」
そう声を掛ければ、ビクリと小さく跳ねるガリガリの肩。
驚いたように見上げた顔は、これまたまばらに長く伸びた前髪で半分も見えなかった。
まるで貞子だ。
そう思った、瞬間だった。
はらりと揺れた黒い前髪の隙間から覗かせた、夕焼けを彷彿させるような色の瞳。
薄暗い部屋の中でも目立つ、一目見て鮮やかな色彩。
大きく見開かれた眼と視線が絡んだのは、一瞬だった。
ばっと顔を背け、顔を隠すように俯く名無しと呼ばれた子供。
松陽が「お風呂が沸きましたよ」と迎えにくるまで彼女の顔が上がることは一度もなかった。
茜色ノ小鬼#01
松陽に拾われた後、連れてこられたのはあばら家だった。
「名無し。名無しはいますか?」
松陽が声を掛ければ、奥からひょこりと顔を出すひとりの子供。
俺よりも幼く、手足が煤で黒くなっていた。
「おや。大丈夫ですか?」
「お米炊こうとして、古い煤を釜戸から出してたの」
「それはすみません。ありがとうございます」
くしゃりと松陽が頭を撫でると、口元をもじもじさせて照れくさそうな顔で子供は俯いた。
「そうだ名無し。今日からここに住むことになった銀時です。仲良くしてくださいね」
ズルズルと伸びっぱなしになった黒髪。
汚れや擦り傷で煤けた風貌。
男なのか女なのか分かりにくい姿をしているが、鈴のような声から察するに少女だということは分かった。
「お風呂を沸かしてくるので、銀時に名無しの着物をひとつ貸してあげてください」
「はい」
そう言って松陽は風呂場の方へ向かった。
彼女のものを借りる、とは言うものの…
(俺より断然チビなのに着れるのか?)
頭ひとつ分はゆうに小さい。
丈は短いだろうが…まぁ今のボロボロの着物よりはマシだろう。
彼女が取り出したのは紺色の着物。
新品とは言い難いが、ほつれをきちんと直しており大事に着ているのは目に見えて分かった。
「悪いな」
そう声を掛ければ、ビクリと小さく跳ねるガリガリの肩。
驚いたように見上げた顔は、これまたまばらに長く伸びた前髪で半分も見えなかった。
まるで貞子だ。
そう思った、瞬間だった。
はらりと揺れた黒い前髪の隙間から覗かせた、夕焼けを彷彿させるような色の瞳。
薄暗い部屋の中でも目立つ、一目見て鮮やかな色彩。
大きく見開かれた眼と視線が絡んだのは、一瞬だった。
ばっと顔を背け、顔を隠すように俯く名無しと呼ばれた子供。
松陽が「お風呂が沸きましたよ」と迎えにくるまで彼女の顔が上がることは一度もなかった。
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