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「瀞霊廷通信の取材、っスか?」
「そうなんです」
瀞霊廷通信リポーター
「ミ●ドの何が駄目なんでしょうね…」
「そりゃ『女性死神は必見!現世に行ったら食べたいオススメスイーツ』特集で●スドはないっスよ」
「何でですか!?ゴールデンチョコレート美味しいじゃないですか!」
「そりゃ美味しいっスけど」
大変ショックを受けているシノ。
無理もない。死神になった年数を足して数えても18、9年程しか生きていない小娘が選ぶのだから。
彼女の手料理は絶品だが、如何せん節約生活が身に染みついているからか駄菓子ですら満足そうに食べている。…いや、駄菓子も美味しいけども。
「それこそ織姫ちゃんとか現世の現役女子大生にお願いすればいいのでは?」
「先月、檜佐木副隊長もそう思ったらしいんっスけど…ゲテモノスイーツを紹介されて松本副隊長以外にはウケなかったそうっス」
「ゲテモノ。」
冷静になって考えてみると、現世の人間に瀞霊廷通信の記事を依頼する檜佐木もどうかとは思う。
「そもそも何なんですか、スイーツって。おやつか、甘味と言いなさいよ」
「シノサン、時代錯誤凄いっスね」
「祖母に育てられた十年は長いですよ。人生の殆どを昭和初期生まれに育てられたらこうなりますって」
「全国のおばあちゃんっ子に風評被害が飛び火してるっスけど?」
ちゃぶ台にうつ伏しながらウンウンうなるシノ。
そんなに悩むなら寄稿を断ればいいのに、と思うが…そういうわけにはいかないらしい。
「決して、料理が人様にウケるからといって、いろんな美味しい店を知ってるわけじゃないんですけどね…」
そう。
彼女の料理の腕前が原因で、今回依頼される現状に至ったのだ。
現在この残念な結果になっている要因は二つ。
一つは、まず彼女がこっちの世界にやって来て最初に足を踏み入れたのは瀞霊廷だ。そこで一年を過ごした。
それから現世に来たものの、すぐに長い眠りについたシノ。
目覚めてから念願の女子高生になったものの、必要最低限の学校。店の手伝いと家事。
更に寝る間も惜しんでの修行と、修行と、修行だった。
その修行をみっちり叩き込んだ側の身としては、少しだけ申し訳ない気分になる。
二つ目は、料理完璧人間が身近に二人もいたのが原因だろう。彼女の祖父と祖母だ。
祖父は魚を捌いたり酒を仕入れたりをしていたそうだが、大きな要因は彼女の祖母だ。
和洋中は勿論、菓子も洋菓子和菓子何でも作れたとか。
プロもビックリの腕前だったようで、その腕前は見事に孫の彼女が継いでしまっている。
結局のところ、外出して買い食いというものを殆ど経験しなかった。また、する必要なかったシノは今に至る。
「断っちゃえばいいじゃないっスかぁ」
「…だって檜佐木さん、必死の形相で頼んでくるから…」
先日、定期報告のため尸魂界に帰ったら捕まったらしい。
滅却師との戦争後の尸魂界は未だに慌ただしい。
復興は順調だが、どうしても瀞霊廷通信の記事の書き手がいなかった。
しかし定期発行を望む声は多い。
寄稿をノーと断れない彼女らしい。そういう所が浦原は好きなのだけど。
「こうしましょ。明日、美味しい店を探しに行きましょ」
「え。浦原さんと二人で?」
「ボクは付き添いっスよぉ」
「…じゃあ、誰が?」
「美意識高そうな、シノサンがよく知ってるヒトっスよ」
そう言われてもピンと来ないらしい。シノは小さく首を傾げるだけだ。
まぁ隊長業は忙しいだろうけど、一日くらいは大丈夫だろう。
浦原はポケットから伝令神機を取り出し、ある人物の番号を呼び出した。
***
「よぉ、シノ。元気そうやな」
「シノさん、こんにちは」
義骸に入って現世にやって来たのは、平子と雛森だった。
意外な人物にシノは少しだけ目を見開いた。
「…平子さん?」
「そっス。最近、伝令神機の機能で流行ってる『シニスタグラム』で平子サン、沢山写真上げてますし」
元の世界にあったインスタみたいなものだろうか。
話には聞いたことがあるが、初めて持った携帯電話が伝令神機だからサッパリ分からなかった。
「浦原さんもやってるんですか?」
「えぇ。シノサン手作りのご飯の自慢写真を」
「何やってるんですか。」
伝令神機を見せられれば各所からのコメントが凄いことになっていた。
マユリからは『自慢も大概にしろ浦原喜助!その内シノを拉致してやる、餓死するがいいヨ!』と書かれてる。
…いや、拉致は勘弁して欲しい。
他にも食事処の開設はまだなのか、とか、今度は白玉あんみつを!(これはルキアだ)とか、様々な声が寄せられている。
嬉しい反面、これはかなり恥ずかしい。頭が痛くなってきた。
「で、いつも仕事を頑張る部下を労うために、桃も連れてきたってわけや」
「私、お邪魔しても良かったんですか?これ…」
「いや、女の子が来てくれる方が嬉しいから是非。むしろ帰らないで、お願いします。変人と変態と回るのは絶対に嫌だ。」
「変人は言い過ぎっスよぉ、シノサン。ボクはちょっとお茶目くらいですって」
「喜助ェ、オマエは間違いなく変態の方やし、鏡見ながらお茶目って言うてみ。間違いなく鏡が粉砕するで」
「隊長、変人なのは否定しないんですね」とぽそりと雛森が呟くが、もう慣れてしまったのか平子は知らぬ存ぜぬを押し通した。
かくして、シニスタ映えスイーツを探しに不思議な組み合わせの四人は出かけるのであった。
***
「こ、ここなら、どうなんですか!?」
何軒目だ。
平子の確認を取ると「ここはえぇ店やな」と許可を頂けた。
何せ現世生活が長かった平子は、大抵のカフェやらケーキ屋を見事に網羅していた。
ここは味はいいけど写真に映えはフツーやねん、とか、ここはアカン。見かけ倒しや、などNGが凄かった。鬼監督か。
幸いゲストの雛森は店巡りや途中に寄った雑貨屋に大満足のようで、とても楽しそうで安心した。
歩き疲れはしていないが、尽く出される却下にシノは疲労困憊していた。
「疲れた…」
「パフェ、っスか」
「ええんちゃう?見た目、果物が盛られてて豪華やし、味も農家から卸した果物が評判やで」
「詳しいですね!隊長」
「当たり前や、情報の多さはモテる秘訣やで」
素直に褒めてくれる雛森の言葉が嬉しいのか、自慢げな顔の平子。案外この隊長と副官はちょうどいいコンビなのかもしれない。
まぁ、モテるかどうかは、さておき。
「桃ちゃん、何にする?」
「わぁ、沢山メニューあるんだね。私はイチジクパフェにしようかなぁ」
「じゃあ、私は白桃パフェ」
「俺はぶどうパフェやな。喜助はどないすんねん」
「ボクはコーヒーで」
「なんや、つまらんヤツやな」
「いいんっスよ、ボクはただの付き添いっスから」
たしかにこの男がフルーツパフェを食べている姿は想像出来ない。
いつものヘラヘラした笑顔で注文を店員へ伝える浦原。
その様子を眺めながら、そう言えばコイツは人の顔色を気にしないタイプだった、と平子は思い出した。
しばらくするとパフェが三つと、ホットコーヒーが来た。
たしかに豪華だ。写真映えすること間違いなしだろう。
「えぇか、シノ。いかに美味そうに撮るかがキモなんや。アングルは普通じゃアカン。照明や背景も拘って、」
「平子さん、お手本見せてほしいです」
「一枚だけやで」
そう言って手早く撮り、伝令神機の画面を見せる。
確かに美味しそうに見える。
「わぁ、隊長写真お上手ですね!」
「おぉ。これ檜佐木さんに送る用に頂いてもいいですか?」
「構わんで」
そう言ってシノに送った後に気がつく平子。
「って、待て。オマエ写真は自分で」
「すみません、もうパフェ食べちゃいました」
既にパフェスプーンが刺さっており、平子も文句を言う気も失せたのだろう。
平子が「今回だけやで」と言い、ぶどうパフェをつつき始めた。
雛森も満足そうで「普段の疲れがとんじゃいますね!」と言いながら頬張っていた。女性死神の生の感想はありがたい。
「シノサン、あーん」
コーヒーを啜っていた浦原がごく自然に口を開ける。
「はい。」
さも普段の行動のように、一口掬って口に運んだ。
その光景を見た雛森が、隣の席にいた平子に小声で話しかける。
(えっ、浦原さんとシノさんって、)
(まだ付き合ってへんで。両片思いってやつやな)
(でも今普通にあーん、って)
(間接キスにシノが気づいてへんだけやろ。多分指摘したら恥ずかしがって、一生喜助のやつおこぼれにありつけんから黙っとき)
もぐもぐと美味しそうにパフェを頬張るシノ。
それを時々ねだり、一口貰う浦原の顔は至極幸せそうだ。
その光景を見て、雛森が微笑ましそうにその二人を眺めている。
(平和やな)
ついこの間まで死線をくぐってきたとは思えない程に、和やかな空気。
ずっと戦ってきたのだ、死ぬまでこのまま平和を満喫してもバチは当たらないだろう。
平子はスプーンを置き、伝令神機を手に取る。
その微笑ましい光景をファインダーにおさめると、満足そうに微笑んでぶどうをひと齧りした。
それは今の平和のように、とても甘く、とろけるような味だった。
「そうなんです」
瀞霊廷通信リポーター
「ミ●ドの何が駄目なんでしょうね…」
「そりゃ『女性死神は必見!現世に行ったら食べたいオススメスイーツ』特集で●スドはないっスよ」
「何でですか!?ゴールデンチョコレート美味しいじゃないですか!」
「そりゃ美味しいっスけど」
大変ショックを受けているシノ。
無理もない。死神になった年数を足して数えても18、9年程しか生きていない小娘が選ぶのだから。
彼女の手料理は絶品だが、如何せん節約生活が身に染みついているからか駄菓子ですら満足そうに食べている。…いや、駄菓子も美味しいけども。
「それこそ織姫ちゃんとか現世の現役女子大生にお願いすればいいのでは?」
「先月、檜佐木副隊長もそう思ったらしいんっスけど…ゲテモノスイーツを紹介されて松本副隊長以外にはウケなかったそうっス」
「ゲテモノ。」
冷静になって考えてみると、現世の人間に瀞霊廷通信の記事を依頼する檜佐木もどうかとは思う。
「そもそも何なんですか、スイーツって。おやつか、甘味と言いなさいよ」
「シノサン、時代錯誤凄いっスね」
「祖母に育てられた十年は長いですよ。人生の殆どを昭和初期生まれに育てられたらこうなりますって」
「全国のおばあちゃんっ子に風評被害が飛び火してるっスけど?」
ちゃぶ台にうつ伏しながらウンウンうなるシノ。
そんなに悩むなら寄稿を断ればいいのに、と思うが…そういうわけにはいかないらしい。
「決して、料理が人様にウケるからといって、いろんな美味しい店を知ってるわけじゃないんですけどね…」
そう。
彼女の料理の腕前が原因で、今回依頼される現状に至ったのだ。
現在この残念な結果になっている要因は二つ。
一つは、まず彼女がこっちの世界にやって来て最初に足を踏み入れたのは瀞霊廷だ。そこで一年を過ごした。
それから現世に来たものの、すぐに長い眠りについたシノ。
目覚めてから念願の女子高生になったものの、必要最低限の学校。店の手伝いと家事。
更に寝る間も惜しんでの修行と、修行と、修行だった。
その修行をみっちり叩き込んだ側の身としては、少しだけ申し訳ない気分になる。
二つ目は、料理完璧人間が身近に二人もいたのが原因だろう。彼女の祖父と祖母だ。
祖父は魚を捌いたり酒を仕入れたりをしていたそうだが、大きな要因は彼女の祖母だ。
和洋中は勿論、菓子も洋菓子和菓子何でも作れたとか。
プロもビックリの腕前だったようで、その腕前は見事に孫の彼女が継いでしまっている。
結局のところ、外出して買い食いというものを殆ど経験しなかった。また、する必要なかったシノは今に至る。
「断っちゃえばいいじゃないっスかぁ」
「…だって檜佐木さん、必死の形相で頼んでくるから…」
先日、定期報告のため尸魂界に帰ったら捕まったらしい。
滅却師との戦争後の尸魂界は未だに慌ただしい。
復興は順調だが、どうしても瀞霊廷通信の記事の書き手がいなかった。
しかし定期発行を望む声は多い。
寄稿をノーと断れない彼女らしい。そういう所が浦原は好きなのだけど。
「こうしましょ。明日、美味しい店を探しに行きましょ」
「え。浦原さんと二人で?」
「ボクは付き添いっスよぉ」
「…じゃあ、誰が?」
「美意識高そうな、シノサンがよく知ってるヒトっスよ」
そう言われてもピンと来ないらしい。シノは小さく首を傾げるだけだ。
まぁ隊長業は忙しいだろうけど、一日くらいは大丈夫だろう。
浦原はポケットから伝令神機を取り出し、ある人物の番号を呼び出した。
***
「よぉ、シノ。元気そうやな」
「シノさん、こんにちは」
義骸に入って現世にやって来たのは、平子と雛森だった。
意外な人物にシノは少しだけ目を見開いた。
「…平子さん?」
「そっス。最近、伝令神機の機能で流行ってる『シニスタグラム』で平子サン、沢山写真上げてますし」
元の世界にあったインスタみたいなものだろうか。
話には聞いたことがあるが、初めて持った携帯電話が伝令神機だからサッパリ分からなかった。
「浦原さんもやってるんですか?」
「えぇ。シノサン手作りのご飯の自慢写真を」
「何やってるんですか。」
伝令神機を見せられれば各所からのコメントが凄いことになっていた。
マユリからは『自慢も大概にしろ浦原喜助!その内シノを拉致してやる、餓死するがいいヨ!』と書かれてる。
…いや、拉致は勘弁して欲しい。
他にも食事処の開設はまだなのか、とか、今度は白玉あんみつを!(これはルキアだ)とか、様々な声が寄せられている。
嬉しい反面、これはかなり恥ずかしい。頭が痛くなってきた。
「で、いつも仕事を頑張る部下を労うために、桃も連れてきたってわけや」
「私、お邪魔しても良かったんですか?これ…」
「いや、女の子が来てくれる方が嬉しいから是非。むしろ帰らないで、お願いします。変人と変態と回るのは絶対に嫌だ。」
「変人は言い過ぎっスよぉ、シノサン。ボクはちょっとお茶目くらいですって」
「喜助ェ、オマエは間違いなく変態の方やし、鏡見ながらお茶目って言うてみ。間違いなく鏡が粉砕するで」
「隊長、変人なのは否定しないんですね」とぽそりと雛森が呟くが、もう慣れてしまったのか平子は知らぬ存ぜぬを押し通した。
かくして、シニスタ映えスイーツを探しに不思議な組み合わせの四人は出かけるのであった。
***
「こ、ここなら、どうなんですか!?」
何軒目だ。
平子の確認を取ると「ここはえぇ店やな」と許可を頂けた。
何せ現世生活が長かった平子は、大抵のカフェやらケーキ屋を見事に網羅していた。
ここは味はいいけど写真に映えはフツーやねん、とか、ここはアカン。見かけ倒しや、などNGが凄かった。鬼監督か。
幸いゲストの雛森は店巡りや途中に寄った雑貨屋に大満足のようで、とても楽しそうで安心した。
歩き疲れはしていないが、尽く出される却下にシノは疲労困憊していた。
「疲れた…」
「パフェ、っスか」
「ええんちゃう?見た目、果物が盛られてて豪華やし、味も農家から卸した果物が評判やで」
「詳しいですね!隊長」
「当たり前や、情報の多さはモテる秘訣やで」
素直に褒めてくれる雛森の言葉が嬉しいのか、自慢げな顔の平子。案外この隊長と副官はちょうどいいコンビなのかもしれない。
まぁ、モテるかどうかは、さておき。
「桃ちゃん、何にする?」
「わぁ、沢山メニューあるんだね。私はイチジクパフェにしようかなぁ」
「じゃあ、私は白桃パフェ」
「俺はぶどうパフェやな。喜助はどないすんねん」
「ボクはコーヒーで」
「なんや、つまらんヤツやな」
「いいんっスよ、ボクはただの付き添いっスから」
たしかにこの男がフルーツパフェを食べている姿は想像出来ない。
いつものヘラヘラした笑顔で注文を店員へ伝える浦原。
その様子を眺めながら、そう言えばコイツは人の顔色を気にしないタイプだった、と平子は思い出した。
しばらくするとパフェが三つと、ホットコーヒーが来た。
たしかに豪華だ。写真映えすること間違いなしだろう。
「えぇか、シノ。いかに美味そうに撮るかがキモなんや。アングルは普通じゃアカン。照明や背景も拘って、」
「平子さん、お手本見せてほしいです」
「一枚だけやで」
そう言って手早く撮り、伝令神機の画面を見せる。
確かに美味しそうに見える。
「わぁ、隊長写真お上手ですね!」
「おぉ。これ檜佐木さんに送る用に頂いてもいいですか?」
「構わんで」
そう言ってシノに送った後に気がつく平子。
「って、待て。オマエ写真は自分で」
「すみません、もうパフェ食べちゃいました」
既にパフェスプーンが刺さっており、平子も文句を言う気も失せたのだろう。
平子が「今回だけやで」と言い、ぶどうパフェをつつき始めた。
雛森も満足そうで「普段の疲れがとんじゃいますね!」と言いながら頬張っていた。女性死神の生の感想はありがたい。
「シノサン、あーん」
コーヒーを啜っていた浦原がごく自然に口を開ける。
「はい。」
さも普段の行動のように、一口掬って口に運んだ。
その光景を見た雛森が、隣の席にいた平子に小声で話しかける。
(えっ、浦原さんとシノさんって、)
(まだ付き合ってへんで。両片思いってやつやな)
(でも今普通にあーん、って)
(間接キスにシノが気づいてへんだけやろ。多分指摘したら恥ずかしがって、一生喜助のやつおこぼれにありつけんから黙っとき)
もぐもぐと美味しそうにパフェを頬張るシノ。
それを時々ねだり、一口貰う浦原の顔は至極幸せそうだ。
その光景を見て、雛森が微笑ましそうにその二人を眺めている。
(平和やな)
ついこの間まで死線をくぐってきたとは思えない程に、和やかな空気。
ずっと戦ってきたのだ、死ぬまでこのまま平和を満喫してもバチは当たらないだろう。
平子はスプーンを置き、伝令神機を手に取る。
その微笑ましい光景をファインダーにおさめると、満足そうに微笑んでぶどうをひと齧りした。
それは今の平和のように、とても甘く、とろけるような味だった。