for promise//short story
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羨ましい、と。
少しだけ思ってしまった。
瞳に映るもの
今日は真央霊術院は休みと聞いていたはず。
いわゆる自主勉強部屋で彼女は赤と白の袴を纏って、壁一面本に囲まれた部屋で勉強していた。
「まるで本の虫だな」
「あ、白哉くん。えーっと、三ヶ月ぶり?」
「…生前と変わりないようだな」
各所から生存確認のように休みを縫って、彼女に会ってきたと聞いていたが、本当に死神になっているとは。
ひと月程前に、ルキアも嬉しそうに報告してきた。
誰しもが彼女は文字通り『死んだ』と思っていた。
そう、義骸に入っていたが彼女は『人間』なのだから死ねば尸魂界に行く可能性は充分あった。あくまで可能性の話だが。
本当にこうして死神になっているあたり、運がいいのか、それとも彼女の不屈の精神故か。
「ちょうど良かった!剣術の稽古をお願いしたいんだけど」
「…隊長格に申し込むことだとは思わぬが?」
「少しはスパルタ気味の方がしょうに合ってるもの。」
そういえば彼女の師はあの男と四楓院夜一、大鬼道長だったことを思い出した。
「…半刻のみだ」
「やった!」
嬉しそうに破顔した彼女は慌ただしく広げていた本を手早く仕舞い、未だ浅打の斬魄刀を手に取った。
***
「踏み込みが甘い。」
「はい!」
彼女の身体の細さの割には重い斬撃が出るようになってきた。
が、これ以上は体作りの問題だ。
細く生白い、袖から覗く手首を見ながら白哉はぼんやりと思った。
しかしまぁよく鍛えられている。
人間時代に剣戟の躱し方は嫌という程叩き込まれたのだろう。見事な足さばきで紙一重で避けていく。
彼女の太刀筋は、どこかで見た記憶があった。
遠い遠い昔の記憶だ。まだ、白哉が幼かった頃の話。
眩い金髪。四方八方に跳ねた襟足。
黒い死覇装の上から纏った白い隊長羽織。
背中には『十二』の文字が誇らしく掲げられていた。
そうだ。あの男の太刀筋に、似ていた。
彼女が恐らく生涯で一番目にしたであろう白刃のソレに。
瞬きすら忘れたかのように真っ直ぐこちらを見遣る瞳には、きっと目標である『あの男』の背が映っているのだろう。
――少しだけ、
噛み合った刃を弾くように振るえば、彼女の浅打が宙を舞い、地に刺さった。
「半刻経ったぞ」
「えぇー…もう?
あー、手がジンジンする…やっぱり白哉くん強いなぁ」
痺れてしまったであろう手首を振りながらシノが笑う。
畏れるわけでもなく萎縮するわけでもなく。何度でも、彼女は立ち上がるのだ。
戦いの恐怖を踏み台にして、更に高く、遠くへ手を伸ばし。
「…はぁ。休憩にするぞ」
「はぁい。」
「その後、半刻だけもう一度付き合ってやろう」
「!」
ぱっと明るくなった表情を見て、思わず呆れたような溜息が出てしまった。
それは彼女に対してなのか、何だかんだで甘やかしている自分に対してなのか。白哉には分からなかった。
少しだけ思ってしまった。
瞳に映るもの
今日は真央霊術院は休みと聞いていたはず。
いわゆる自主勉強部屋で彼女は赤と白の袴を纏って、壁一面本に囲まれた部屋で勉強していた。
「まるで本の虫だな」
「あ、白哉くん。えーっと、三ヶ月ぶり?」
「…生前と変わりないようだな」
各所から生存確認のように休みを縫って、彼女に会ってきたと聞いていたが、本当に死神になっているとは。
ひと月程前に、ルキアも嬉しそうに報告してきた。
誰しもが彼女は文字通り『死んだ』と思っていた。
そう、義骸に入っていたが彼女は『人間』なのだから死ねば尸魂界に行く可能性は充分あった。あくまで可能性の話だが。
本当にこうして死神になっているあたり、運がいいのか、それとも彼女の不屈の精神故か。
「ちょうど良かった!剣術の稽古をお願いしたいんだけど」
「…隊長格に申し込むことだとは思わぬが?」
「少しはスパルタ気味の方がしょうに合ってるもの。」
そういえば彼女の師はあの男と四楓院夜一、大鬼道長だったことを思い出した。
「…半刻のみだ」
「やった!」
嬉しそうに破顔した彼女は慌ただしく広げていた本を手早く仕舞い、未だ浅打の斬魄刀を手に取った。
***
「踏み込みが甘い。」
「はい!」
彼女の身体の細さの割には重い斬撃が出るようになってきた。
が、これ以上は体作りの問題だ。
細く生白い、袖から覗く手首を見ながら白哉はぼんやりと思った。
しかしまぁよく鍛えられている。
人間時代に剣戟の躱し方は嫌という程叩き込まれたのだろう。見事な足さばきで紙一重で避けていく。
彼女の太刀筋は、どこかで見た記憶があった。
遠い遠い昔の記憶だ。まだ、白哉が幼かった頃の話。
眩い金髪。四方八方に跳ねた襟足。
黒い死覇装の上から纏った白い隊長羽織。
背中には『十二』の文字が誇らしく掲げられていた。
そうだ。あの男の太刀筋に、似ていた。
彼女が恐らく生涯で一番目にしたであろう白刃のソレに。
瞬きすら忘れたかのように真っ直ぐこちらを見遣る瞳には、きっと目標である『あの男』の背が映っているのだろう。
――少しだけ、
噛み合った刃を弾くように振るえば、彼女の浅打が宙を舞い、地に刺さった。
「半刻経ったぞ」
「えぇー…もう?
あー、手がジンジンする…やっぱり白哉くん強いなぁ」
痺れてしまったであろう手首を振りながらシノが笑う。
畏れるわけでもなく萎縮するわけでもなく。何度でも、彼女は立ち上がるのだ。
戦いの恐怖を踏み台にして、更に高く、遠くへ手を伸ばし。
「…はぁ。休憩にするぞ」
「はぁい。」
「その後、半刻だけもう一度付き合ってやろう」
「!」
ぱっと明るくなった表情を見て、思わず呆れたような溜息が出てしまった。
それは彼女に対してなのか、何だかんだで甘やかしている自分に対してなのか。白哉には分からなかった。
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