for promise
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あの戦いから、半年。
浦原はすっかり寂しくなってしまった商店でぼんやりとしていた。
ふと、思い出したのは、彼女が言った言葉。
『今度、調べてみてください』
彼女の霊圧は戦いの後、どこを探しても見つからなかった。
その事が悲しくて、悲しくて、彼女の言葉を忘れていた。
どうして、今日思い出したのだろう。
本棚の随分前に買った植物辞典を調べる。
たしか彼女が興味を持って買った本のひとつだった。
五十音順の見出しのページをゆっくりと捲る。
その花のページは、最初の方だった。
大きく開いた鮮やかな花の写真。
赤や紫、白。一際色鮮やかなページだ。
指でページを、そっとなぞる。
やはり花言葉はロクなものじゃあなかった。
儚い恋、恋の苦しみ、見捨てられた、見放された。
(ほら、見たことか)
まるで、自分のようだと。
嘲笑が思わず零れそうになる。
ページの下を見れば、花の色ごとの花言葉が載っている。
白のアネモネは、真実、期待、希望。
思わず息を呑んだ。
まるで、彼女のようだった。
嘘偽りを言わず、期待以上の成長を見せ、世界の希望となった。
もう少し下の項目に目を向ければ、紫のアネモネの写真。
花言葉は『あなたを信じて待つ』。
浦原は、言葉が出なかった。
この花言葉を彼女は知っていたのだろうか?
不意に涙が、乾いた頬に一筋流れた。
「ごめんくださーい。」
ガラッと音を立てて開く引き戸。
逆光で、姿がよく見えない。
数ヶ月前まで、嫌という程聞いていた愛しい声。
浦原の止まっていた時間が、動き出す。
「ええっと、空座町に特別配備された、護廷十三隊、十二番隊所属の浦原名無しです!
この度は前十二番隊隊長である、浦原喜助殿にご挨拶に参上いたしました!」
黒い、死覇装。
さらりと揺れる黒髪。大きな黒い瞳。
腰に下げられた、斬魄刀。
姿は多少違えど、間違えるはずがなかった。
「…なんちゃって。
もー、何ですか浦原さん!驚かすためにセリフ練習までしたんですよ。無反応は酷くな」
名無しが言いきる前より早く、本を投げ捨て抱きしめた。
しっかりと、彼女はそこにいた。
夢でも幻でもない。
以前、百年間時を止めて眠っていた。
その時の目覚めぬ彼女を待つ時間よりも、長く永く感じた半年だった。
「…浦原さん、泣いてるんですか?」
「情けない顔なんで、見ないでください」
「何ですか、それ。凄いレア。ちょっと、写真撮らせてください。永久保存するんで」
「嫌っス」
「何でですか!っていうか、なんで会う前から泣いて…」
名無しの視線の先には、無残に投げられた一冊の本。
昔、彼女が買った植物図鑑だ。
「もしかして今、調べたんです?花言葉」
「…いやぁ、すっかり忘れてて」
「ちょっと。何で今日なんですか!」
「虫の報せ、って、ヤツっスかねぇ」
「………はっ、どこまで読みました!?」
「…ん?紫色の、アネモネの花言葉までっスけど」
「うわぁぁぁ、まだ赤いの読んでいませんよね!?」
名無しの様子が、おかしい。
あまりの彼女の動揺っぷりに、涙がすすっと引っ込んでしまった。
少し体を離せば、真っ赤な顔の名無し。またどうして。
「読んでませんけど」
「セーフ!破道の三十一『赤火砲』!!」
「あっ、ちょ!」
家の中で鬼道を使う死神がいるか。いや、今ここにいた。
土間に落ちていた本だけ、見事に燃えて灰になった。
「何で燃やすんっスか!」
「目の前で読んでほしくないからです!予め読んでて欲しかったんですってば!目の前で読まれたら、恥ずかしさでもう一度死んでしまいますよ!?私が!」
これまでにない程に、彼女の顔が紅潮していた。
今度、同じ本を買ってこっそり調べよう。
「えーっと、名無しサン。とりあえず、なんというか、」
「?、はい」
for promise#04
「――おかえりなさいっス」
「えへへ…ただいま帰りました!」
浦原はすっかり寂しくなってしまった商店でぼんやりとしていた。
ふと、思い出したのは、彼女が言った言葉。
『今度、調べてみてください』
彼女の霊圧は戦いの後、どこを探しても見つからなかった。
その事が悲しくて、悲しくて、彼女の言葉を忘れていた。
どうして、今日思い出したのだろう。
本棚の随分前に買った植物辞典を調べる。
たしか彼女が興味を持って買った本のひとつだった。
五十音順の見出しのページをゆっくりと捲る。
その花のページは、最初の方だった。
大きく開いた鮮やかな花の写真。
赤や紫、白。一際色鮮やかなページだ。
指でページを、そっとなぞる。
やはり花言葉はロクなものじゃあなかった。
儚い恋、恋の苦しみ、見捨てられた、見放された。
(ほら、見たことか)
まるで、自分のようだと。
嘲笑が思わず零れそうになる。
ページの下を見れば、花の色ごとの花言葉が載っている。
白のアネモネは、真実、期待、希望。
思わず息を呑んだ。
まるで、彼女のようだった。
嘘偽りを言わず、期待以上の成長を見せ、世界の希望となった。
もう少し下の項目に目を向ければ、紫のアネモネの写真。
花言葉は『あなたを信じて待つ』。
浦原は、言葉が出なかった。
この花言葉を彼女は知っていたのだろうか?
不意に涙が、乾いた頬に一筋流れた。
「ごめんくださーい。」
ガラッと音を立てて開く引き戸。
逆光で、姿がよく見えない。
数ヶ月前まで、嫌という程聞いていた愛しい声。
浦原の止まっていた時間が、動き出す。
「ええっと、空座町に特別配備された、護廷十三隊、十二番隊所属の浦原名無しです!
この度は前十二番隊隊長である、浦原喜助殿にご挨拶に参上いたしました!」
黒い、死覇装。
さらりと揺れる黒髪。大きな黒い瞳。
腰に下げられた、斬魄刀。
姿は多少違えど、間違えるはずがなかった。
「…なんちゃって。
もー、何ですか浦原さん!驚かすためにセリフ練習までしたんですよ。無反応は酷くな」
名無しが言いきる前より早く、本を投げ捨て抱きしめた。
しっかりと、彼女はそこにいた。
夢でも幻でもない。
以前、百年間時を止めて眠っていた。
その時の目覚めぬ彼女を待つ時間よりも、長く永く感じた半年だった。
「…浦原さん、泣いてるんですか?」
「情けない顔なんで、見ないでください」
「何ですか、それ。凄いレア。ちょっと、写真撮らせてください。永久保存するんで」
「嫌っス」
「何でですか!っていうか、なんで会う前から泣いて…」
名無しの視線の先には、無残に投げられた一冊の本。
昔、彼女が買った植物図鑑だ。
「もしかして今、調べたんです?花言葉」
「…いやぁ、すっかり忘れてて」
「ちょっと。何で今日なんですか!」
「虫の報せ、って、ヤツっスかねぇ」
「………はっ、どこまで読みました!?」
「…ん?紫色の、アネモネの花言葉までっスけど」
「うわぁぁぁ、まだ赤いの読んでいませんよね!?」
名無しの様子が、おかしい。
あまりの彼女の動揺っぷりに、涙がすすっと引っ込んでしまった。
少し体を離せば、真っ赤な顔の名無し。またどうして。
「読んでませんけど」
「セーフ!破道の三十一『赤火砲』!!」
「あっ、ちょ!」
家の中で鬼道を使う死神がいるか。いや、今ここにいた。
土間に落ちていた本だけ、見事に燃えて灰になった。
「何で燃やすんっスか!」
「目の前で読んでほしくないからです!予め読んでて欲しかったんですってば!目の前で読まれたら、恥ずかしさでもう一度死んでしまいますよ!?私が!」
これまでにない程に、彼女の顔が紅潮していた。
今度、同じ本を買ってこっそり調べよう。
「えーっと、名無しサン。とりあえず、なんというか、」
「?、はい」
for promise#04
「――おかえりなさいっス」
「えへへ…ただいま帰りました!」