for promise
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「ちょっと。アンタあの子の上司なんでしょ?加勢しなくていいの?」
「必要に見えるかネ?私は今、データを取るのに忙しい。」
ゾンビ化した破面の一人、チルッチ・サンダーウィッチは近くにいた涅マユリに問いかけた。
――本当はここから逃げ出したい。
目の前で繰り広げられる『化物』と『化物』の戦いなんて、恐ろしすぎて見れたものじゃない。
あの中に飛び込め・と言わないところから察するに、このマッドサイエンティストは意外とまともなのかもしれない。
…飛び込んだところで、一瞬にして消し炭になるのは間違いないのだろうけど。
携帯機器でデータの入力や、地面に置いた計器の観察をするマユリ。
こんな流れ弾でいつ死んでもおかしくない距離でデータ採取だなんて……前言撤回。やはりこの男、頭のネジが二・三本吹き飛んでいる。
「彼女の本気が見れることは早々ない。
――まぁ、本気が出せているかという点になると、話は別だけどネ」
目を細めながらぽそりと呟く目の前の科学者は、どこか忌々しそうであった。
for promise#26
can't fear your own world-08
――思い出すのは、大きな巨漢の男。
沈丁花の紋を背負い、豪快に笑う和尚だ。
しかしその笑みはどこか達観しており、人間味に欠ける。まるで人間の皮を被ったロボット…いや、それこそ得体の知れない『怪物』のようだった。
彼女をどこの隊に所属させるか、と決めかねていた隊首会に突然現れた零番隊・兵主部一兵衛。
『何。ちとばかり『封』をしようかと思ってな。何せその娘は――』
有無を言わさぬ声。
拒否は許されない。
『贄』にならなかっただけマシといる状況だが、隊長が揃う中での『通達』はまさに屈辱の一言に尽きただろう。
しかし彼女は、憤悶も、屈辱も、理不尽すら呑み込み、今この場で刃を振るっている。
断れば尸魂界に対し仇なすであろう危険分子と認定され、呑めば『全力』を出すことは叶わない。
それでも受け入れた。
奥歯を静かに噛み締め、雪辱を胸の内に押し込めて。
***
――九割五分。
殆どの霊力を削がれているというのに、放つ霊圧は重々しく殺意に満ちていた。
『限定霊印』。
本来、隊長・副隊長格が現世に赴く際、周りの魂魄に影響を与えない為に霊力を抑制するシステムだ。
それを『存在があまりにも危険』という理由で、尸魂界にいる間でも問答無用で烙印を押された。
本来なら二割に抑制される霊力を、更に減らされた上で。
胸骨あたりに刻まれた、普段は見えない沈丁花の印。それはまるで烙印のようだった。
かといって、弱音をここで吐くわけにはいかない。
文句を言ってもあの忌々しい和尚には響かないだろう。
きっと『死なれたら困るのぅ』と、カタカタ笑うだけだ。
殺し合いの最中では不調の理由を掲げることができるはずがなく。
無様に殺されたとしても敗因を弁明できる機会はあるわけがない。
勿論、この目の前の子供に対しても例外ではない。
剣圧で圧された手首がジリジリと痛む。
霊力を込めれば、呪いのように痛む胸元が忌々しい。
限定霊印を下した兵主部一兵衛に対して、思わず舌打ちをしてしまう程に。
「ここにいる人達では姉様が一番強いはずなんですよね?だって、自分と『同じ』だと時灘様が仰ってましたから!」
光を宿さない、赤紅の瞳が愉しそうに細められる。
【子供というものは残酷な生き物だ。】
どこかで読んだ本の一節が、瞬きのように脳裏へ過った。
「なら姉様を斃せば自分が『王』に相応しいと証明できますね!」
『同じ』『王』『綱彌代時灘』
クロスワードのように意味を組み合わせば、自ずと見えてくるのは唯一無二の、かの存在。
縛られ、辛うじてヒトの形を保つ、『生き物』と形容し難い者……だった。
以前は、先の戦の首謀者にして滅却師の王。
――今や『霊王』と呼ばれる、異形の存在。
しかし名無しにとっては、至極どうでもいいことだった。
(考えるな。)
この目の前の子供が『何』であろうと、関係ない。
(『これ』は敵だ。)
綱彌代時灘の手の者であれば、浦原が連れ去られた場所へ案内させる。
知らなければ殺す。単純な話だった。
真央霊術院を卒業したものの、残念ながら剣士としての矜恃は持ち合わせてはいない。
私は、彼を護るための『牙』だ。
誇りを掲げるほど強くない。
護るためなら手段は問わない。
たまたま死神であることが都合よく、利害が一致した。ただそれだけだ。
「それではいきます!
――葬送り記せ『巳己巳己巴』」
彦禰が解号を唱えれば、天を覆い尽くすような白い『巨体』が現れる。
それは見紛うはずもない。
大きな四肢。胸に空いた虚ろな孔。
背に鱗を纏った、二足歩行をする山椒魚のような貌の怪物は間違いなく――
(虚。)
流魂街の大地を踏み鳴らす異常に大きい中級大虚に、名無しは内心何度目かの舌打ちを漏らした。
――全く、なんてものを斬魄刀に仕立てあげているんだか。あの刀鍛冶は。
「必要に見えるかネ?私は今、データを取るのに忙しい。」
ゾンビ化した破面の一人、チルッチ・サンダーウィッチは近くにいた涅マユリに問いかけた。
――本当はここから逃げ出したい。
目の前で繰り広げられる『化物』と『化物』の戦いなんて、恐ろしすぎて見れたものじゃない。
あの中に飛び込め・と言わないところから察するに、このマッドサイエンティストは意外とまともなのかもしれない。
…飛び込んだところで、一瞬にして消し炭になるのは間違いないのだろうけど。
携帯機器でデータの入力や、地面に置いた計器の観察をするマユリ。
こんな流れ弾でいつ死んでもおかしくない距離でデータ採取だなんて……前言撤回。やはりこの男、頭のネジが二・三本吹き飛んでいる。
「彼女の本気が見れることは早々ない。
――まぁ、本気が出せているかという点になると、話は別だけどネ」
目を細めながらぽそりと呟く目の前の科学者は、どこか忌々しそうであった。
for promise#26
can't fear your own world-08
――思い出すのは、大きな巨漢の男。
沈丁花の紋を背負い、豪快に笑う和尚だ。
しかしその笑みはどこか達観しており、人間味に欠ける。まるで人間の皮を被ったロボット…いや、それこそ得体の知れない『怪物』のようだった。
彼女をどこの隊に所属させるか、と決めかねていた隊首会に突然現れた零番隊・兵主部一兵衛。
『何。ちとばかり『封』をしようかと思ってな。何せその娘は――』
有無を言わさぬ声。
拒否は許されない。
『贄』にならなかっただけマシといる状況だが、隊長が揃う中での『通達』はまさに屈辱の一言に尽きただろう。
しかし彼女は、憤悶も、屈辱も、理不尽すら呑み込み、今この場で刃を振るっている。
断れば尸魂界に対し仇なすであろう危険分子と認定され、呑めば『全力』を出すことは叶わない。
それでも受け入れた。
奥歯を静かに噛み締め、雪辱を胸の内に押し込めて。
***
――九割五分。
殆どの霊力を削がれているというのに、放つ霊圧は重々しく殺意に満ちていた。
『限定霊印』。
本来、隊長・副隊長格が現世に赴く際、周りの魂魄に影響を与えない為に霊力を抑制するシステムだ。
それを『存在があまりにも危険』という理由で、尸魂界にいる間でも問答無用で烙印を押された。
本来なら二割に抑制される霊力を、更に減らされた上で。
胸骨あたりに刻まれた、普段は見えない沈丁花の印。それはまるで烙印のようだった。
かといって、弱音をここで吐くわけにはいかない。
文句を言ってもあの忌々しい和尚には響かないだろう。
きっと『死なれたら困るのぅ』と、カタカタ笑うだけだ。
殺し合いの最中では不調の理由を掲げることができるはずがなく。
無様に殺されたとしても敗因を弁明できる機会はあるわけがない。
勿論、この目の前の子供に対しても例外ではない。
剣圧で圧された手首がジリジリと痛む。
霊力を込めれば、呪いのように痛む胸元が忌々しい。
限定霊印を下した兵主部一兵衛に対して、思わず舌打ちをしてしまう程に。
「ここにいる人達では姉様が一番強いはずなんですよね?だって、自分と『同じ』だと時灘様が仰ってましたから!」
光を宿さない、赤紅の瞳が愉しそうに細められる。
【子供というものは残酷な生き物だ。】
どこかで読んだ本の一節が、瞬きのように脳裏へ過った。
「なら姉様を斃せば自分が『王』に相応しいと証明できますね!」
『同じ』『王』『綱彌代時灘』
クロスワードのように意味を組み合わせば、自ずと見えてくるのは唯一無二の、かの存在。
縛られ、辛うじてヒトの形を保つ、『生き物』と形容し難い者……だった。
以前は、先の戦の首謀者にして滅却師の王。
――今や『霊王』と呼ばれる、異形の存在。
しかし名無しにとっては、至極どうでもいいことだった。
(考えるな。)
この目の前の子供が『何』であろうと、関係ない。
(『これ』は敵だ。)
綱彌代時灘の手の者であれば、浦原が連れ去られた場所へ案内させる。
知らなければ殺す。単純な話だった。
真央霊術院を卒業したものの、残念ながら剣士としての矜恃は持ち合わせてはいない。
私は、彼を護るための『牙』だ。
誇りを掲げるほど強くない。
護るためなら手段は問わない。
たまたま死神であることが都合よく、利害が一致した。ただそれだけだ。
「それではいきます!
――葬送り記せ『巳己巳己巴』」
彦禰が解号を唱えれば、天を覆い尽くすような白い『巨体』が現れる。
それは見紛うはずもない。
大きな四肢。胸に空いた虚ろな孔。
背に鱗を纏った、二足歩行をする山椒魚のような貌の怪物は間違いなく――
(虚。)
流魂街の大地を踏み鳴らす異常に大きい中級大虚に、名無しは内心何度目かの舌打ちを漏らした。
――全く、なんてものを斬魄刀に仕立てあげているんだか。あの刀鍛冶は。