for promise
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「平子さん、いつの間にシッター業始めたんですか?」
「いやいや。隊長業だけで手がいっぱいに決まっとるわ。つーか名無し、お前の身内だったんかい」
「身内も何も初対面ですけど。誰ですか、この子供。」
避けたにも関わらず、抱きつこうとしてくる子供。
それを首根っこを掴み、止める平子。
『姉様』と呼ぶ見知らぬ子供と、天敵とも言える隊長に対して勿論名無しはいい顔をしなかった。
「あっ、まずは御挨拶からですよね!
初めまして!自分は産絹彦禰と言います!」
「いや名前じゃなくて……」
「『王虚の閃光』」
名無しのすぐ横を通り過ぎる、赤黒い虚閃。
チリッと空気が焦げるように震え、肌を裂くような殺気が背後から向けられた。
正確に言えば、名無しの隣にいた『子供』に対して。
「ちょっと、グリムジョー!」
「コイツが俺の目的だ。邪魔だ、下がってろ。そのあと金髪の死神、テメーも後でぶっ殺す。」
「昔のことまだ根に持っとんか、お前!」
隊長羽織を少しばかり虚閃に持っていかれたのか。
汚れひとつなかった羽織の裾はボロボロに焦げ、平子は本気で冷や汗をかいていた。
「いけません!自分は時灘様に言いつけられた役目があるのですから!」
平子に掴まれていたはずの彦禰は、もう彼の手元にはいなかった。
グリムジョーの放った虚閃を避け、怯える様子もなくニコニコと笑顔を浮かべている。
しかし深緋の瞳は光を宿すことなく――そう、それはまるで深淵を覗いているようだ。
一言で言えば、まさに『異様』。
霊圧も、佇まいも、何もかもが。
「――ちょっと待って。トキナダ…って、綱彌代時灘のこと?」
あの悪辣に歪む笑みが、脳裏に過ぎる。
名無しがその名前を聞き逃すはずもなかった。
彼女の警戒レベルがトンと跳ね上がる。
それは纏う空気、滲み出る霊圧、声のトーン。全てだ。
「はい!時灘様には、今度こそ破面に『誰が王に相応しいか』力で示すこと。そして『姉様の足止めをしろ』と言いつけられています!」
「足止め?何のことや」
名無しの僅かに強ばった表情に気づかないフリをしつつ、平子が先程まで行動を共にしていた彦禰に問う。
そう。平子は知らなかったのだ。
『産絹彦禰』という子供が何者なのか。彼が何をしようとしていたのか。
恐らく知っていたなら止めていたであろう。
知っていたなら総隊長である京楽に報告していたであろう。
ここにいた『死神』は誰も産絹彦禰という子供を理解していなかった。
ここにいたグリムジョーは唯一、産絹彦禰という子供がいかに危険か識っていた。
「はい!現世にいる『浦原喜助』を、アウラさんとフォラルルベルナ社長が捕縛する間、自分は姉様を尸魂界にて足止めしろと!」
悪びれる様子もなく、満面の笑みで。
子供独特の無邪気さ…なんて一言で片付くものではない。
一周まわって凶悪に見えるその笑みは、場の空気を凍りつかせるには充分だった。
「――今、なんて言った?」
表情ひとつ変えず、名無しが問う。
聞き間違いであってほしい。この子供は、今、なんて言った?
頭の中で警鐘がガンガンと鳴り響く。
心臓の鼓動がバクバクと煩くて、五月蝿くて、うるさくて。
「浦原喜助を拉致します!時灘様はおっしゃってました!『彼には崩玉を作ってもらわねばならない』と!
だから殺しはしないそうです!よかったですね!時灘様はお優しい方なんですよ!」
「――――」
身体中の血が、沸騰しそうだ。
for promise#25
can't fear your own world-07
「おいルピ。」
「馴れ馴れしいんだよ、グリムジョー!」
「塵になりたくねぇだろ。貸し、ひとつだからな」
「は、」
そう一言ルピに言い渡し、響転で一瞬にして場から離脱するグリムジョー。
その場にいた平子も、血相変えて瞬歩で小高い岩場まで飛び退いた。
彼女の側にいた面々――正しくは彼女が…名無しが、激高する場面に居合わせたことがある二人は察した。
嵐がくる。
この子供は、彼女の中で最大級にして最悪の地雷を踏み抜いたのだ、と。
鞘から抜刀した斬魄刀・天狼を地面に突き穿てば、蒼い焔が彦禰に向かって地走る。
炎蒼仕上げのような縹色の刃が獰猛に煌めいた。
まるでこれは天変地異だ。
大地が怒るように辺りは蒼い炎に包まれ、肌に纏う空気は痛い程に震えている。
冷徹にして猛火のように。
冷酷にして轟々と。
冷血な獣が憤怒を滾らせ、牙を剥いた。
空気すら灰にしてしまいそうな燃え盛る青火は、天高い空をも焦がす勢いだ。
「…なるほど。あの時、あの夜、綱彌代時灘を殺しておくべきだったわ。」
「いけません!時灘様を殺すだなんて!」
怒りで声を震わせた名無しに向けて、悪気なく制止の声を上げる彦禰。
一聞するとまるで『神を殺すだなんて恐れ多い』と非難する聖職者のようだ。
いや。正しくは、産絹彦禰にとって『綱彌代時灘』は主君であり、創造主であり――
悪逆すら正義と錯覚した子供にとって、絶対的存在の綱彌代時灘は『神』でもあった。
「第一、姉様はここから動けません!」
背中に背負った、大太刀のような斬魄刀を抜く彦禰。
「だって、自分の方が強いですから!」
高らかに宣言された言葉は、燎原の火の如く燃え盛る炎に呑まれた。
「いやいや。隊長業だけで手がいっぱいに決まっとるわ。つーか名無し、お前の身内だったんかい」
「身内も何も初対面ですけど。誰ですか、この子供。」
避けたにも関わらず、抱きつこうとしてくる子供。
それを首根っこを掴み、止める平子。
『姉様』と呼ぶ見知らぬ子供と、天敵とも言える隊長に対して勿論名無しはいい顔をしなかった。
「あっ、まずは御挨拶からですよね!
初めまして!自分は産絹彦禰と言います!」
「いや名前じゃなくて……」
「『王虚の閃光』」
名無しのすぐ横を通り過ぎる、赤黒い虚閃。
チリッと空気が焦げるように震え、肌を裂くような殺気が背後から向けられた。
正確に言えば、名無しの隣にいた『子供』に対して。
「ちょっと、グリムジョー!」
「コイツが俺の目的だ。邪魔だ、下がってろ。そのあと金髪の死神、テメーも後でぶっ殺す。」
「昔のことまだ根に持っとんか、お前!」
隊長羽織を少しばかり虚閃に持っていかれたのか。
汚れひとつなかった羽織の裾はボロボロに焦げ、平子は本気で冷や汗をかいていた。
「いけません!自分は時灘様に言いつけられた役目があるのですから!」
平子に掴まれていたはずの彦禰は、もう彼の手元にはいなかった。
グリムジョーの放った虚閃を避け、怯える様子もなくニコニコと笑顔を浮かべている。
しかし深緋の瞳は光を宿すことなく――そう、それはまるで深淵を覗いているようだ。
一言で言えば、まさに『異様』。
霊圧も、佇まいも、何もかもが。
「――ちょっと待って。トキナダ…って、綱彌代時灘のこと?」
あの悪辣に歪む笑みが、脳裏に過ぎる。
名無しがその名前を聞き逃すはずもなかった。
彼女の警戒レベルがトンと跳ね上がる。
それは纏う空気、滲み出る霊圧、声のトーン。全てだ。
「はい!時灘様には、今度こそ破面に『誰が王に相応しいか』力で示すこと。そして『姉様の足止めをしろ』と言いつけられています!」
「足止め?何のことや」
名無しの僅かに強ばった表情に気づかないフリをしつつ、平子が先程まで行動を共にしていた彦禰に問う。
そう。平子は知らなかったのだ。
『産絹彦禰』という子供が何者なのか。彼が何をしようとしていたのか。
恐らく知っていたなら止めていたであろう。
知っていたなら総隊長である京楽に報告していたであろう。
ここにいた『死神』は誰も産絹彦禰という子供を理解していなかった。
ここにいたグリムジョーは唯一、産絹彦禰という子供がいかに危険か識っていた。
「はい!現世にいる『浦原喜助』を、アウラさんとフォラルルベルナ社長が捕縛する間、自分は姉様を尸魂界にて足止めしろと!」
悪びれる様子もなく、満面の笑みで。
子供独特の無邪気さ…なんて一言で片付くものではない。
一周まわって凶悪に見えるその笑みは、場の空気を凍りつかせるには充分だった。
「――今、なんて言った?」
表情ひとつ変えず、名無しが問う。
聞き間違いであってほしい。この子供は、今、なんて言った?
頭の中で警鐘がガンガンと鳴り響く。
心臓の鼓動がバクバクと煩くて、五月蝿くて、うるさくて。
「浦原喜助を拉致します!時灘様はおっしゃってました!『彼には崩玉を作ってもらわねばならない』と!
だから殺しはしないそうです!よかったですね!時灘様はお優しい方なんですよ!」
「――――」
身体中の血が、沸騰しそうだ。
for promise#25
can't fear your own world-07
「おいルピ。」
「馴れ馴れしいんだよ、グリムジョー!」
「塵になりたくねぇだろ。貸し、ひとつだからな」
「は、」
そう一言ルピに言い渡し、響転で一瞬にして場から離脱するグリムジョー。
その場にいた平子も、血相変えて瞬歩で小高い岩場まで飛び退いた。
彼女の側にいた面々――正しくは彼女が…名無しが、激高する場面に居合わせたことがある二人は察した。
嵐がくる。
この子供は、彼女の中で最大級にして最悪の地雷を踏み抜いたのだ、と。
鞘から抜刀した斬魄刀・天狼を地面に突き穿てば、蒼い焔が彦禰に向かって地走る。
炎蒼仕上げのような縹色の刃が獰猛に煌めいた。
まるでこれは天変地異だ。
大地が怒るように辺りは蒼い炎に包まれ、肌に纏う空気は痛い程に震えている。
冷徹にして猛火のように。
冷酷にして轟々と。
冷血な獣が憤怒を滾らせ、牙を剥いた。
空気すら灰にしてしまいそうな燃え盛る青火は、天高い空をも焦がす勢いだ。
「…なるほど。あの時、あの夜、綱彌代時灘を殺しておくべきだったわ。」
「いけません!時灘様を殺すだなんて!」
怒りで声を震わせた名無しに向けて、悪気なく制止の声を上げる彦禰。
一聞するとまるで『神を殺すだなんて恐れ多い』と非難する聖職者のようだ。
いや。正しくは、産絹彦禰にとって『綱彌代時灘』は主君であり、創造主であり――
悪逆すら正義と錯覚した子供にとって、絶対的存在の綱彌代時灘は『神』でもあった。
「第一、姉様はここから動けません!」
背中に背負った、大太刀のような斬魄刀を抜く彦禰。
「だって、自分の方が強いですから!」
高らかに宣言された言葉は、燎原の火の如く燃え盛る炎に呑まれた。