for promise
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私が造った『器』が勝つか、かつての王が選んだ『器』が勝つか。
さぁ、見届けようじゃないか。
「実は今、お前がこの前戦った破面の男が来ているんだ。銀城達も――そして、浦原名無しも」
時々ノイズがはしる通信機を片手に、綱彌代時灘はとある子供に語りかける。
『姉様もですか!?』
「そうだ。お前が王である事を示す機会だ。その場に飛び、今度こそお前が王の器である事を示してくるといい」
「――あぁ、でも…彼女を『尸魂界』に足止めすることが、一番頼みたい事だな。
空座町の方もアウラが動いたようだかね」
『お任せ下さい!時灘様!』
「彼女にも現世の事を教えてやるといい。何やら彼は『大切なもの』のようだからね。親切、丁寧に、な。」
『流石時灘様!お優しいですね!』
(さて、)
「怒り、狂い、打ちひしがれるがいい。浦原名無し。」
私は君の心が折れてしまう音が、聴きたくて仕方がないんだ。
for promise#24
can't fear your own world-06
流魂街のはずれ。
かつて集落があったであろう場所は、今は寂れきっており、人の営みが感じられない場所だった。
辛うじて残っていた粗末な家屋は、先程までは滅却師と完現術者の戦いで半壊し、今は破面と元・破面によって完全な焼け野原にされてしまった。
地面に穿たれた大穴は生々しく、今もその轟音は絶えない。
涅骸部隊に新たに加えられた滅却師によって、完現術者――銀城空吾達を捕らえるはずだった。
それが突然、尸魂界にやったきたグリムジョーによって一時中断となってしまう…それだけならまだよかっただろう。
マユリが『保険』として連れてきていた破面達の中に、元・No.6のルピ・アンテノールがいなければ、の話だが。
ルピが落命した直接的な原因はグリムジョーだ。
かつての同胞でもあり、かつて『No.6』という座を巡って殺しあったこともある。
そして何より、彼らは元々破滅的に『馬が合わない』のだ。
人の神経を逆撫でする言い方を好むルピと、直情的かつ好戦的なグリムジョー。
弱者に興味はなく、しかし売られた喧嘩は倍で買い取る性格のグリムジョーと、人に見下されることが何よりも嫌うルピ。
彼らが話し合いで和解することなど、万が一にもありえない。
どちらかが死ぬまで殺し合う。
誰もがそう諦めに似た確信を抱いていた時だった。
「今度は生き返ってこれねぇように、爪先まで粉々にしてやろうかと思ったのによ」
「はは…ハハハ!やっぱりムカつくよねェ、グリムジョー!キミが相変わらずで安心したし…やっと『生き返った』って実感が湧いてきたよ!」
互いの虚閃が放たれた間合い。
瞬きをした瞬間、現れたのは黒い『裂け目』。
黒腔とは似て異なるそれに、轟音を立てていた赤黒い虚閃は呆気なく呑み込まれた。
「はいはい、ストップ。ストーップ!やるなら続きは虚圏でして頂戴。」
両者の間へ軽やかに降り立った名無しが、呆れた表情で声を上げた。
***
「何しに来た。今は殺り合ってる最中だ、邪魔立てするならお前も殺すぞ名無し。」
「それは嫌だなぁ…とりあえず落ち着こうか、グリムジョー。ここにはキミのお気に入り・黒崎くんはいないけど、何の御用?」
一旦手を止めるものの殺気を収めることのない獣のような男に対し、顬を押さえながら渋々訊ねる名無し。
仲が特別悪いわけではないが、飛び抜けていいわけでもない。
関係を説明するなら、かつて『うっかり』半殺しにしかけた相手であり、先の戦争では絶不調だった時に名無しの『足』になってくれた男。
恨みはない。むしろ結果的に言えば、どちらかというと恩の方が大きい。
とりあえずこの獣の方が理性的に話が出来ると踏んで、声を掛けたのだが――
「なに邪魔した上に僕を無視してんの、この女!」
激高したルピの白い触手が牙を剥き、名無しへと真っ直ぐ向かっていく。
それを一瞥した彼女は、細い指を指揮者のように真っ直ぐ振り下ろした。
凶刃と化していた八本の触手は、中程から先は『初めからなかった』かのように綺麗に切り取られた。
正しくは『空間ごと持っていった』と言うべきか。
黒い影が、残光のように空気に融けた。
「……は?……はぁっ!?」
「大人しくしようか。それとも身勝手な行動に出た『兵士』は、少しキツめのお灸をマユリさんに据えてもらう?」
緩やかに開かれていた手を固く握れば、完全詠唱破棄された縛道の『鎖条鎖縛』がルピを捕らえる。
耳障りな鎖の擦れる音が鳴った瞬間、華奢な少年の体躯は簀巻きのように鎖で捕らえられた。
「グリムジョー諸共ぶっ殺してやる!」と瞳孔ガン開きで激高しているルピだが、並の力では拘束は解けない。
自慢の武器である触手があれば話は別なのかもしれないが、虚閃を撃つ手段すら先程斬り落とされたばかりだ。
「……はー、興醒めだ。」
「ごめんね。」
戦うことに悦を感じる青い獣に向かって、小さく肩を竦めながら名無しが謝る。
そんな彼女をジトリと見下ろしながら、グリムジョーが気だるそうに溜息をひとつ吐いた。
どうやらこの場は牙を収めてくれるらしい。
「目当ては黒崎じゃねぇよ。とあるガキをぶっ殺すために来たんだよ」
「また物騒な…。」
「物騒なのはそのガキだ。
虚圏の王――いや、新たな『霊王』になるっつって、散々こっちで暴れた上に逃げたんだからな」
「…………ちょっと待って、グリムジョー。その話、もう少し詳しく」
聞かせて欲しい。
続けられるはずだった言葉は大きな霊圧に呑み込まれる。
それは重く、濁り、よく知っている――いや、知らない色をしていた。
似ているが、似ていない。
私は、ここまで『ツギハギ』ではない。
「姉様!お会いしたかったです!」
「あっ、こら!待たんかい!」
褐色の肌をした、黒髪の少年――いや、少女だろうか。
ベリーショートの黒髪を軽やかに揺らし、細腕を目一杯広げて空から降ってきた。
なんと平子真子付きで。
几帳面に切り揃えられた金髪を振り乱しながら追いかける様は、なんとも滑稽だが…生憎人間二人を熱烈キャッチするつもりはない。
名無しは、数歩下がって華麗に避けた。
さぁ、見届けようじゃないか。
「実は今、お前がこの前戦った破面の男が来ているんだ。銀城達も――そして、浦原名無しも」
時々ノイズがはしる通信機を片手に、綱彌代時灘はとある子供に語りかける。
『姉様もですか!?』
「そうだ。お前が王である事を示す機会だ。その場に飛び、今度こそお前が王の器である事を示してくるといい」
「――あぁ、でも…彼女を『尸魂界』に足止めすることが、一番頼みたい事だな。
空座町の方もアウラが動いたようだかね」
『お任せ下さい!時灘様!』
「彼女にも現世の事を教えてやるといい。何やら彼は『大切なもの』のようだからね。親切、丁寧に、な。」
『流石時灘様!お優しいですね!』
(さて、)
「怒り、狂い、打ちひしがれるがいい。浦原名無し。」
私は君の心が折れてしまう音が、聴きたくて仕方がないんだ。
for promise#24
can't fear your own world-06
流魂街のはずれ。
かつて集落があったであろう場所は、今は寂れきっており、人の営みが感じられない場所だった。
辛うじて残っていた粗末な家屋は、先程までは滅却師と完現術者の戦いで半壊し、今は破面と元・破面によって完全な焼け野原にされてしまった。
地面に穿たれた大穴は生々しく、今もその轟音は絶えない。
涅骸部隊に新たに加えられた滅却師によって、完現術者――銀城空吾達を捕らえるはずだった。
それが突然、尸魂界にやったきたグリムジョーによって一時中断となってしまう…それだけならまだよかっただろう。
マユリが『保険』として連れてきていた破面達の中に、元・No.6のルピ・アンテノールがいなければ、の話だが。
ルピが落命した直接的な原因はグリムジョーだ。
かつての同胞でもあり、かつて『No.6』という座を巡って殺しあったこともある。
そして何より、彼らは元々破滅的に『馬が合わない』のだ。
人の神経を逆撫でする言い方を好むルピと、直情的かつ好戦的なグリムジョー。
弱者に興味はなく、しかし売られた喧嘩は倍で買い取る性格のグリムジョーと、人に見下されることが何よりも嫌うルピ。
彼らが話し合いで和解することなど、万が一にもありえない。
どちらかが死ぬまで殺し合う。
誰もがそう諦めに似た確信を抱いていた時だった。
「今度は生き返ってこれねぇように、爪先まで粉々にしてやろうかと思ったのによ」
「はは…ハハハ!やっぱりムカつくよねェ、グリムジョー!キミが相変わらずで安心したし…やっと『生き返った』って実感が湧いてきたよ!」
互いの虚閃が放たれた間合い。
瞬きをした瞬間、現れたのは黒い『裂け目』。
黒腔とは似て異なるそれに、轟音を立てていた赤黒い虚閃は呆気なく呑み込まれた。
「はいはい、ストップ。ストーップ!やるなら続きは虚圏でして頂戴。」
両者の間へ軽やかに降り立った名無しが、呆れた表情で声を上げた。
***
「何しに来た。今は殺り合ってる最中だ、邪魔立てするならお前も殺すぞ名無し。」
「それは嫌だなぁ…とりあえず落ち着こうか、グリムジョー。ここにはキミのお気に入り・黒崎くんはいないけど、何の御用?」
一旦手を止めるものの殺気を収めることのない獣のような男に対し、顬を押さえながら渋々訊ねる名無し。
仲が特別悪いわけではないが、飛び抜けていいわけでもない。
関係を説明するなら、かつて『うっかり』半殺しにしかけた相手であり、先の戦争では絶不調だった時に名無しの『足』になってくれた男。
恨みはない。むしろ結果的に言えば、どちらかというと恩の方が大きい。
とりあえずこの獣の方が理性的に話が出来ると踏んで、声を掛けたのだが――
「なに邪魔した上に僕を無視してんの、この女!」
激高したルピの白い触手が牙を剥き、名無しへと真っ直ぐ向かっていく。
それを一瞥した彼女は、細い指を指揮者のように真っ直ぐ振り下ろした。
凶刃と化していた八本の触手は、中程から先は『初めからなかった』かのように綺麗に切り取られた。
正しくは『空間ごと持っていった』と言うべきか。
黒い影が、残光のように空気に融けた。
「……は?……はぁっ!?」
「大人しくしようか。それとも身勝手な行動に出た『兵士』は、少しキツめのお灸をマユリさんに据えてもらう?」
緩やかに開かれていた手を固く握れば、完全詠唱破棄された縛道の『鎖条鎖縛』がルピを捕らえる。
耳障りな鎖の擦れる音が鳴った瞬間、華奢な少年の体躯は簀巻きのように鎖で捕らえられた。
「グリムジョー諸共ぶっ殺してやる!」と瞳孔ガン開きで激高しているルピだが、並の力では拘束は解けない。
自慢の武器である触手があれば話は別なのかもしれないが、虚閃を撃つ手段すら先程斬り落とされたばかりだ。
「……はー、興醒めだ。」
「ごめんね。」
戦うことに悦を感じる青い獣に向かって、小さく肩を竦めながら名無しが謝る。
そんな彼女をジトリと見下ろしながら、グリムジョーが気だるそうに溜息をひとつ吐いた。
どうやらこの場は牙を収めてくれるらしい。
「目当ては黒崎じゃねぇよ。とあるガキをぶっ殺すために来たんだよ」
「また物騒な…。」
「物騒なのはそのガキだ。
虚圏の王――いや、新たな『霊王』になるっつって、散々こっちで暴れた上に逃げたんだからな」
「…………ちょっと待って、グリムジョー。その話、もう少し詳しく」
聞かせて欲しい。
続けられるはずだった言葉は大きな霊圧に呑み込まれる。
それは重く、濁り、よく知っている――いや、知らない色をしていた。
似ているが、似ていない。
私は、ここまで『ツギハギ』ではない。
「姉様!お会いしたかったです!」
「あっ、こら!待たんかい!」
褐色の肌をした、黒髪の少年――いや、少女だろうか。
ベリーショートの黒髪を軽やかに揺らし、細腕を目一杯広げて空から降ってきた。
なんと平子真子付きで。
几帳面に切り揃えられた金髪を振り乱しながら追いかける様は、なんとも滑稽だが…生憎人間二人を熱烈キャッチするつもりはない。
名無しは、数歩下がって華麗に避けた。