for promise
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「綱彌代時灘って、どんな人なんです?」
for promise#22
can't fear your own world-04
朽木家で頂いた夕食は、絶品の一言に尽きた。
しかし舌づつみを打っている間も、やはり先程の不愉快な男が脳裏にチラついてしまった。
――四大貴族の、綱彌代家。
先日、何者かに暗殺された一族。
その生き残りであり、次期当主の綱彌代時灘。
「……兄からその名前が出るのは、意外だな」
「だろうね。いや、さっき結婚申し込まれて。」
「け、結婚!?」
食後の茶を頂いている時だった。
白哉も僅かに目を見開き、驚きを隠せていなかった。
もっとも、ルキアに至っては声を裏返し、その特徴的な大きな瞳を零れそうなくらい開いていた。
思わず声を上げてしまった失態に気が付いたのか「すっ、すみません…失礼しました」と声を沈ませてしまったが。
「いや、やっぱりそういう反応だよね。気にしなくていいよ、ルキアちゃん」
驚くのも無理はない。彼女の反応は正常だろう。
「……して、返答は?」
「考えるまでもなくお断りしたよ。なんか面白半分っぽかったし」
第一の理由は浦原への罵倒だ。
しかしこの兄妹も、少なからず浦原喜助という男に迷惑をかけられた事案があるため、あえてそこは伏せたが。
「そもそも私が貴族の仲間入り〜って感じじゃないでしょ。
ここで呑気にお茶を頂いているのも、運良く白哉くんとルキアちゃんの友人になっているからであって、平々凡々な私がここにいるのも場違いってものよ。」
縁には恵まれていると自負している。
――本当にたまたまだ。
あの時、まだ幼かった白哉が夜一にからかわれ、髪紐をかけた鬼事をしていなければ。
一護がルキアと出会い、現世で知り合わなければ。
必然だったとしても、巡り合わせだったとしても。
「確かに兄はしがない商店で店子をやっている方が合う。」
質のいい玉露で喉を潤しながら、白哉が答える。
義兄のその優しい返答に、ルキアは自分の事のように頬を綻ばせ、友人の名無しはというと少しだけ照れくさそうに視線を泳がせた。
「……ちょっと質問いい?不愉快になったらごめんなさい。その、身分違いで結婚……って、どういうつもりでするのかなー…と。」
つい忘れがちになるが、白哉は寡夫だ。
屋敷にお邪魔した時にちらりと見えたが、彼の妻の――緋真の仏壇は手入れが行き届き、凛と咲いた花が添えられてあった。
冷静沈着が服を着て歩いているような彼だが、妻には並ならぬ愛情があるのだろう。
それが何だか友人として嬉しくて、彼らしいな・と内心大きく頷いた。
だからこそ、恐らくタブーではないと踏んで、そっと尋ねたのだが――。
「……貴族の結婚は、そもそも家と家の繋がりを強めるための意味合いが大きい。だが身分違いとなるとそれは当てはまらぬ。」
静かな声で白哉はポツポツと話しだす。
飲んでいた茶の手を止め、名無しと…同席していたルキアは黙って聞き入った。
「流魂街出身の血を混ぜるべきではない、と大多数の貴族は考えているだろう。……そもそも家とは血統であり、誇りだと考えている者が大半なのが現実だ。」
それはやがて掟となり、暗黙の了解になり。
雁字搦めの風習に捕われた貴族の界隈は、風通しがいいとはお世辞にも言えなかった。
「並々ならぬ逆境もあり、容易ではない茨の道だ。――しかしそれを乗り越えてでも添い遂げたいと思う想いに、理由など付けられぬ。必要なのは、覚悟だけだ。」
「兄様…」
掟を破り、結ばれようとした。
結果、罰だと言わんばかりに、天命は残酷だった。
あまりにも短かった、幸せな時間。
それでも確かに幸福だったと、慈しみに満ちた白哉の双眸は物静かに語っていた。
「……まぁ、そうだよねぇ。当たり前のこと聞いちゃったね。ごめん。」
「構わぬ。――して、綱彌代時灘だが、四大貴族の同胞ということを抜きにしても、正直私は好かぬ。」
ピシャリと。
彼にしては珍しく、客観性を排除した物言いに少しばかり面食らった。
礼節を欠いた一護に対して露骨に嫌そうな顔をするものの、キッパリと『嫌い』だと口にした事もないのに。
「……兄様が明確に嫌われるのは…珍しいですね。」
「――あやつは、妻を斬っておる。生涯、相容れぬ。」
ルキアがそろりと問えば……なるほど。それは妻を喪った彼としては絶対に認めてはならない人種だろう。
「詳しく知りたければ奴に聞けば良かろう。」
「…誰?」
「京楽だ。『蛆虫の巣』に奴がいたのは…当時の京楽が、綱彌代家で隠蔽しようとした罪を明るみに出したせいだと聞き及んでいる。」
飄々とした新・総隊長。
あぁ見えて根は真面目、しかして柔軟。
機転が利く細やかさを加味すれば、まさに新世代の総隊長として相応しい人物だろう。
――そういえばあの人は上級貴族出身だったか。
時灘の狼藉が許せなかったのだろう。彼らしい。
どういう経緯だとしても、相手のことは好意的には思っていないことは確かだ。
「……それ、逆に聞き辛いなぁ。」
「つまらぬ縁談だったのだろう。ならば忘れてしまえ。」
すっかり冷めてしまった玉露を飲み干し、白哉はあっさりした口調で答えたのであった。
for promise#22
can't fear your own world-04
朽木家で頂いた夕食は、絶品の一言に尽きた。
しかし舌づつみを打っている間も、やはり先程の不愉快な男が脳裏にチラついてしまった。
――四大貴族の、綱彌代家。
先日、何者かに暗殺された一族。
その生き残りであり、次期当主の綱彌代時灘。
「……兄からその名前が出るのは、意外だな」
「だろうね。いや、さっき結婚申し込まれて。」
「け、結婚!?」
食後の茶を頂いている時だった。
白哉も僅かに目を見開き、驚きを隠せていなかった。
もっとも、ルキアに至っては声を裏返し、その特徴的な大きな瞳を零れそうなくらい開いていた。
思わず声を上げてしまった失態に気が付いたのか「すっ、すみません…失礼しました」と声を沈ませてしまったが。
「いや、やっぱりそういう反応だよね。気にしなくていいよ、ルキアちゃん」
驚くのも無理はない。彼女の反応は正常だろう。
「……して、返答は?」
「考えるまでもなくお断りしたよ。なんか面白半分っぽかったし」
第一の理由は浦原への罵倒だ。
しかしこの兄妹も、少なからず浦原喜助という男に迷惑をかけられた事案があるため、あえてそこは伏せたが。
「そもそも私が貴族の仲間入り〜って感じじゃないでしょ。
ここで呑気にお茶を頂いているのも、運良く白哉くんとルキアちゃんの友人になっているからであって、平々凡々な私がここにいるのも場違いってものよ。」
縁には恵まれていると自負している。
――本当にたまたまだ。
あの時、まだ幼かった白哉が夜一にからかわれ、髪紐をかけた鬼事をしていなければ。
一護がルキアと出会い、現世で知り合わなければ。
必然だったとしても、巡り合わせだったとしても。
「確かに兄はしがない商店で店子をやっている方が合う。」
質のいい玉露で喉を潤しながら、白哉が答える。
義兄のその優しい返答に、ルキアは自分の事のように頬を綻ばせ、友人の名無しはというと少しだけ照れくさそうに視線を泳がせた。
「……ちょっと質問いい?不愉快になったらごめんなさい。その、身分違いで結婚……って、どういうつもりでするのかなー…と。」
つい忘れがちになるが、白哉は寡夫だ。
屋敷にお邪魔した時にちらりと見えたが、彼の妻の――緋真の仏壇は手入れが行き届き、凛と咲いた花が添えられてあった。
冷静沈着が服を着て歩いているような彼だが、妻には並ならぬ愛情があるのだろう。
それが何だか友人として嬉しくて、彼らしいな・と内心大きく頷いた。
だからこそ、恐らくタブーではないと踏んで、そっと尋ねたのだが――。
「……貴族の結婚は、そもそも家と家の繋がりを強めるための意味合いが大きい。だが身分違いとなるとそれは当てはまらぬ。」
静かな声で白哉はポツポツと話しだす。
飲んでいた茶の手を止め、名無しと…同席していたルキアは黙って聞き入った。
「流魂街出身の血を混ぜるべきではない、と大多数の貴族は考えているだろう。……そもそも家とは血統であり、誇りだと考えている者が大半なのが現実だ。」
それはやがて掟となり、暗黙の了解になり。
雁字搦めの風習に捕われた貴族の界隈は、風通しがいいとはお世辞にも言えなかった。
「並々ならぬ逆境もあり、容易ではない茨の道だ。――しかしそれを乗り越えてでも添い遂げたいと思う想いに、理由など付けられぬ。必要なのは、覚悟だけだ。」
「兄様…」
掟を破り、結ばれようとした。
結果、罰だと言わんばかりに、天命は残酷だった。
あまりにも短かった、幸せな時間。
それでも確かに幸福だったと、慈しみに満ちた白哉の双眸は物静かに語っていた。
「……まぁ、そうだよねぇ。当たり前のこと聞いちゃったね。ごめん。」
「構わぬ。――して、綱彌代時灘だが、四大貴族の同胞ということを抜きにしても、正直私は好かぬ。」
ピシャリと。
彼にしては珍しく、客観性を排除した物言いに少しばかり面食らった。
礼節を欠いた一護に対して露骨に嫌そうな顔をするものの、キッパリと『嫌い』だと口にした事もないのに。
「……兄様が明確に嫌われるのは…珍しいですね。」
「――あやつは、妻を斬っておる。生涯、相容れぬ。」
ルキアがそろりと問えば……なるほど。それは妻を喪った彼としては絶対に認めてはならない人種だろう。
「詳しく知りたければ奴に聞けば良かろう。」
「…誰?」
「京楽だ。『蛆虫の巣』に奴がいたのは…当時の京楽が、綱彌代家で隠蔽しようとした罪を明るみに出したせいだと聞き及んでいる。」
飄々とした新・総隊長。
あぁ見えて根は真面目、しかして柔軟。
機転が利く細やかさを加味すれば、まさに新世代の総隊長として相応しい人物だろう。
――そういえばあの人は上級貴族出身だったか。
時灘の狼藉が許せなかったのだろう。彼らしい。
どういう経緯だとしても、相手のことは好意的には思っていないことは確かだ。
「……それ、逆に聞き辛いなぁ。」
「つまらぬ縁談だったのだろう。ならば忘れてしまえ。」
すっかり冷めてしまった玉露を飲み干し、白哉はあっさりした口調で答えたのであった。