for promise
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「――で、説明を要求します。」
「そうっスね。打ち止めみたいですし」
息一つ乱さず、浦原が白衣についた汚れを払い落とす。
彼の足元に転がるのは気絶した人間の山だ。
鈍く光る鎖の縛道に縛り上げられた、異様な集団。
彼らが持っていた警棒を拾い上げ、浦原は口を開いた。
「この特殊警棒は、相手の霊力を奪う力があります。死神が食らうと結構痛いでしょうねぇ」
「……つまりどういうことです?」
「彼らは、新興宗教XCUTIONの信徒っス。
――与えられたのはどうやら警棒だけじゃないみたいっスけど。」
浦原が手短にいた捕虜の首元をまさぐり、ちぎり奪ったのは――
「転界結柱のレプリカで、ミニチュア版ってトコっスかね。」
白い棒のような形状のネックレス。
転界結柱は名無しも知っている。以前の藍染による空座町決戦の時に使用した道具だ。
空間転移の原理を応用した、禁術の類。
名無しは空座町を尸魂界に『転移』させる為の要石として空座町に残ったので、この原理についてはよく知っていた。
「……さっきの突然現れたのはこれのせい…ではないですよね。柱がこっちにはないですし」
「あれはまぁ、犯人は分かってます。
――問題はこっちの転界結柱っス。どこでこれの作り方を知ったのやら」
「……待ってください。さっきの人が持ってるってことは、」
気絶してまるで死体のようになっている他の信徒の首元を漁れば、同じ物がやはり出てきた。
調べれば全員持っている。
小さく、レプリカとはいえ……間違いなくファッションでは、ないだろう。
「……何と入れ替えるつもりなんですかね」
「ロクなものではないでしょうね。少なくとも、入れ替える予定の《物》は現世にはありません。尸魂界か、虚圏か――」
ふぅ、と溜息をひとつ吐き出し、浦原がのっそり立ち上がる。
警棒と転界結柱を名無しに手渡し、申し訳なさそうに彼は笑った。
「お手数なんっスけど、これ資料として涅隊長に渡して来てください。ボクが行ったら露骨に嫌そうな顔をされるでしょうし…ほら、明日は来客の予定があるんで。」
「えーっと…檜佐木副隊長の瀞霊廷通信の取材……でしたっけ?」
「そっス。」
わざわざアポイントを取ってくるなんて、真面目な檜佐木らしい。
それを無下にする訳にもいかないだろう。
名無しは二つ返事で「わかりました。」と了承した。
for promise#20
can't fear your own world-02
「……以上が報告になります。」
資料を作る時間がなかったため、口頭での報告になってしまった。
警棒と転界結柱を興味深そうに手に取りながら、マユリは名無しの声に耳を傾けていた。
「フム。確かに異様だネ。この警棒に至っては完現術が使われているようだ。その新興宗教が以前のXCUTIONと全く無関係……ということははないだろうネ。」
「転界結柱の転送物に関しては何か心当たりはないですか?」
「ないヨ。」
ピシャリと即答され、名無しは「そうですか…」と小さく項垂れた。
作成方法はどこかで情報流出したに違いないのだが、今はそんな事を問答している暇などない。
何に使うつもりなのか分からなければ、XCUTIONの目的がみえてこないのだから。
「そう露骨に項垂れては困るヨ。天才の腕の見せ所がなくなってしまう。」
「――もしかして、転送元が分かるんですか!?」
「時間はかかるがネ。解析は一晩あれば十分だヨ」
「流石マユリさん、凄い!浦原さんがマユリさんを頼る理由が分かりますね!」
手放しで賞賛をすれば「まぁ当然のことだヨ。」と満更でもなさそうなマユリだった。
可愛い部下に嫌味なしに褒められれば誰だって鼻も高くなるだろう。
それが遠回しに『浦原喜助よりも優れている』と賛辞を添えられれば、尚更。
「今日はこっちに泊まりたまえ。無闇矢鱈に夜、出歩くものではないヨ。何かと最近物騒だからネ」
「何かあったんですか?」
マユリがそんなことを言うなんて珍しい。
特に意識して言ったわけではなかったらしい。こちらをちらりと一瞥して「あぁ、そういえば最近瀞霊廷にいなかったから知らなかったネ」と呟いた。
「映像局を管轄している四大貴族・綱彌代家の話は先日したネ」
「はい。マユリさんが手を切ろうとしてる部署でしたよね?」
「その一族が先日暗殺されたヨ。…ただ一人だけ残して。」
四大貴族ともなれば生まれ持ってして死神になることが約束されたような家系だ。
霊力の高さはお墨付き。何より己の身を守る術は人一倍叩き込まれているだろう。
更に周りには手厚い守衛もいたはずだ。
――それを突破した上での暗殺ともなれば…。
「それは確かに物騒ですね。」
「しかも生き残っているのは元・同郷ときた」
「同郷?」
「かつて『蛆虫の巣』に収監されていた男だヨ」
特別檻理。蛆虫の巣。
上層部から危険因子と判断された護廷十三隊隊士が、『脱隊』した先にある秘匿の監獄。
二番隊が管轄し、かつての浦原はその分隊を任されていた。
「それは、なんだかきな臭い話ですね。」
「一度見たことがある男だったがネ。つまらない男だったヨ」
もうこの話は終わりと言わんばかりに、手元の特殊警棒と転界結柱に視線を落とすマユリ。
働き者の上司に肩を竦め、名無しは小さく頭を下げた。
「そうっスね。打ち止めみたいですし」
息一つ乱さず、浦原が白衣についた汚れを払い落とす。
彼の足元に転がるのは気絶した人間の山だ。
鈍く光る鎖の縛道に縛り上げられた、異様な集団。
彼らが持っていた警棒を拾い上げ、浦原は口を開いた。
「この特殊警棒は、相手の霊力を奪う力があります。死神が食らうと結構痛いでしょうねぇ」
「……つまりどういうことです?」
「彼らは、新興宗教XCUTIONの信徒っス。
――与えられたのはどうやら警棒だけじゃないみたいっスけど。」
浦原が手短にいた捕虜の首元をまさぐり、ちぎり奪ったのは――
「転界結柱のレプリカで、ミニチュア版ってトコっスかね。」
白い棒のような形状のネックレス。
転界結柱は名無しも知っている。以前の藍染による空座町決戦の時に使用した道具だ。
空間転移の原理を応用した、禁術の類。
名無しは空座町を尸魂界に『転移』させる為の要石として空座町に残ったので、この原理についてはよく知っていた。
「……さっきの突然現れたのはこれのせい…ではないですよね。柱がこっちにはないですし」
「あれはまぁ、犯人は分かってます。
――問題はこっちの転界結柱っス。どこでこれの作り方を知ったのやら」
「……待ってください。さっきの人が持ってるってことは、」
気絶してまるで死体のようになっている他の信徒の首元を漁れば、同じ物がやはり出てきた。
調べれば全員持っている。
小さく、レプリカとはいえ……間違いなくファッションでは、ないだろう。
「……何と入れ替えるつもりなんですかね」
「ロクなものではないでしょうね。少なくとも、入れ替える予定の《物》は現世にはありません。尸魂界か、虚圏か――」
ふぅ、と溜息をひとつ吐き出し、浦原がのっそり立ち上がる。
警棒と転界結柱を名無しに手渡し、申し訳なさそうに彼は笑った。
「お手数なんっスけど、これ資料として涅隊長に渡して来てください。ボクが行ったら露骨に嫌そうな顔をされるでしょうし…ほら、明日は来客の予定があるんで。」
「えーっと…檜佐木副隊長の瀞霊廷通信の取材……でしたっけ?」
「そっス。」
わざわざアポイントを取ってくるなんて、真面目な檜佐木らしい。
それを無下にする訳にもいかないだろう。
名無しは二つ返事で「わかりました。」と了承した。
for promise#20
can't fear your own world-02
「……以上が報告になります。」
資料を作る時間がなかったため、口頭での報告になってしまった。
警棒と転界結柱を興味深そうに手に取りながら、マユリは名無しの声に耳を傾けていた。
「フム。確かに異様だネ。この警棒に至っては完現術が使われているようだ。その新興宗教が以前のXCUTIONと全く無関係……ということははないだろうネ。」
「転界結柱の転送物に関しては何か心当たりはないですか?」
「ないヨ。」
ピシャリと即答され、名無しは「そうですか…」と小さく項垂れた。
作成方法はどこかで情報流出したに違いないのだが、今はそんな事を問答している暇などない。
何に使うつもりなのか分からなければ、XCUTIONの目的がみえてこないのだから。
「そう露骨に項垂れては困るヨ。天才の腕の見せ所がなくなってしまう。」
「――もしかして、転送元が分かるんですか!?」
「時間はかかるがネ。解析は一晩あれば十分だヨ」
「流石マユリさん、凄い!浦原さんがマユリさんを頼る理由が分かりますね!」
手放しで賞賛をすれば「まぁ当然のことだヨ。」と満更でもなさそうなマユリだった。
可愛い部下に嫌味なしに褒められれば誰だって鼻も高くなるだろう。
それが遠回しに『浦原喜助よりも優れている』と賛辞を添えられれば、尚更。
「今日はこっちに泊まりたまえ。無闇矢鱈に夜、出歩くものではないヨ。何かと最近物騒だからネ」
「何かあったんですか?」
マユリがそんなことを言うなんて珍しい。
特に意識して言ったわけではなかったらしい。こちらをちらりと一瞥して「あぁ、そういえば最近瀞霊廷にいなかったから知らなかったネ」と呟いた。
「映像局を管轄している四大貴族・綱彌代家の話は先日したネ」
「はい。マユリさんが手を切ろうとしてる部署でしたよね?」
「その一族が先日暗殺されたヨ。…ただ一人だけ残して。」
四大貴族ともなれば生まれ持ってして死神になることが約束されたような家系だ。
霊力の高さはお墨付き。何より己の身を守る術は人一倍叩き込まれているだろう。
更に周りには手厚い守衛もいたはずだ。
――それを突破した上での暗殺ともなれば…。
「それは確かに物騒ですね。」
「しかも生き残っているのは元・同郷ときた」
「同郷?」
「かつて『蛆虫の巣』に収監されていた男だヨ」
特別檻理。蛆虫の巣。
上層部から危険因子と判断された護廷十三隊隊士が、『脱隊』した先にある秘匿の監獄。
二番隊が管轄し、かつての浦原はその分隊を任されていた。
「それは、なんだかきな臭い話ですね。」
「一度見たことがある男だったがネ。つまらない男だったヨ」
もうこの話は終わりと言わんばかりに、手元の特殊警棒と転界結柱に視線を落とすマユリ。
働き者の上司に肩を竦め、名無しは小さく頭を下げた。