for promise
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「いい加減教えてくださっても構わないんじゃないです?」
保健室で一応仕事はしているらしい。
この人は本当になんでも出来るな、と思いながら、自販機で買ってきた缶コーヒーを差し出した。
跳ねた金髪に、シミひとつない白衣。
相変わらず胡散臭い出で立ちなのは、彼がそういう雰囲気を醸し出しているからなのか、はたまた先入観を持ってしまっているためか。
「何がスか?」
「わざわざ高校に潜り込んでる理由ですよ、もう。」
暖かいレモンティーのプルタブを起こしながら、保健室の丸椅子に座る。
放課後の人気のない保健室は、ストーブがついているのになんだか薄ら寒かった。
「そうっスね。そろそろお伝えしてもいいかもしれませんね」
ブラックの缶コーヒーを傾け、浦原があっさり頷く。
秘密主義な彼のことだから、きっと渋られると思ったので、この反応は少し予想外だ。
「じゃあ、ちょっとついて来て頂きましょっか。」
for promise#19
can't fear your own world-01
「重霊地には、霊脈というものがありまして。噛み砕いて言ってしまえば、そうですね…術式を展開するのに適した場所、と言えばいいっスかねぇ」
「……その霊脈がある場所が、高校の旧校舎に?」
「そっス。」
しばらく使われていない校舎だからだろう。
床の四隅には蜘蛛の巣が糸を引き、使い古された床はすっかり煤けていた。
「話は変わりますけど、名無しサンって『完現術者』って分かりますよね?」
「……織姫ちゃんや、茶渡くんのような能力者のことですよね?」
「その通り。」
その中には一護も含まれる。
彼が死神の力を失った時、確か完現術者達による騒動があった。
その件に関しては『あまり関わってはいけない』と遠ざけられていたので、詳細はあまり知らないのだが。
……一時期『毒ヶ峰リルカ』という少女を匿っていたのは、流石にひとつ屋根の下なので知っている。
「実は明言はしていなかったンっスけど、名無しサンも完現術者でした。」
「…………はい?」
「すみません、伏せる必要があったので。
……黒崎サンの力を奪うつもりだった完現術者――XCUTION。そんな中、名無しサンの力も彼らに知られてしまえば間違いなく狙われたでしょう。
霊圧遮断の指輪があったので黙っていれば安全圏っス。他にも事情はあったんっスけど…まぁ『関わらなくていい』と言った理由は、一番がそれっスかね」
空間の隷属させるこの力は、悪用すれば厄介なのだろう。
伏せられていた事に対して不服ではあるが、鵜呑みにしていた疑問はすんなりと納得できた。
「黒崎サンの完現術を狙っていた完現術者の半数以上は結果的に戦死。XCUTIONは壊滅しました。
しかしここ数ヶ月前に、XCUTIONが再び活動し始めちゃいまして。」
「残党が結成した、とか?」
「いえいえ。それが全然中身は違うんっス。名前だけが不自然に同じなだけで。」
「……どういうことです?」
「今度のXCUTIONは、新興宗教っス。」
「宗教?」
「えぇ。完現術者の集まりではなく、最近話題の新興宗教。そのはずなんっスけどねぇ…」
ガラリと浦原が開けたのは、多目的室。
だだっ広い部屋の四隅には使われていない長机が重ねられている。
物置と化しているその部屋の中央へ浦原が立ち、ひらひらと手招きされた。
「名無しサン。一応お窺いしますけど、縛道の詠唱破棄いけます?」
「?……えぇ、まぁ。」
「流石。じゃあ白打はお任せ下さい」
そう浦原が答えると、煤けた床に手を付いた。
地面に向かって、込められる霊圧。
水を打ったように静まり返っていた空気が、僅かに震えた。
「今、空座町には不自然なくらい『XCUTION』の信徒の方々が集まっていまして。
――ほら、早速来られましたよ。」
浦原が地面から手を離すと同時に、歪む空間。
空間の侵食……いや。異物を投入されるような違和感を感じ、名無しは居心地悪そうに眉をひそめた。
一部の空間がピクセルアートになったかのように、真っ二つに裂ける。
黒腔とは違う穴の開き方。
そこから這い出てきたのは、スーツを着込み、顔をガスマスクで覆った――
「……人間?」
「辛うじてっスけど。」
浦原の言っている意味が分からず、反射的に見上げた時だった。
振り上げられた警棒。
特殊な紋様が刻まれた鈍器を、威嚇のそれではなく明らかな殺意をもって振り下ろされる。
「っと、」
的確に腕を取り、一瞬にして組み伏せる浦原。
白衣の裾がふわりと揺れ、鮮やかな体捌きに『流石』と賞賛を送りたくなった。
言われた通りに縛道・ 鎖条鎖縛で縛り上げるが――
「まぁ、一人で打ち止めじゃないっスよねぇ」
「げ。」
空間を裂いて出てくる、同じスーツを纏った人間。
全員ガスマスクをつけている光景は、異様としか形容出来なかった。
「霊脈の異常を感知したンでしょうねぇ。まだまだ来るでしょうから、頑張りましょうね」
「そういうのは事前に説明してからにしてください!」
保健室で一応仕事はしているらしい。
この人は本当になんでも出来るな、と思いながら、自販機で買ってきた缶コーヒーを差し出した。
跳ねた金髪に、シミひとつない白衣。
相変わらず胡散臭い出で立ちなのは、彼がそういう雰囲気を醸し出しているからなのか、はたまた先入観を持ってしまっているためか。
「何がスか?」
「わざわざ高校に潜り込んでる理由ですよ、もう。」
暖かいレモンティーのプルタブを起こしながら、保健室の丸椅子に座る。
放課後の人気のない保健室は、ストーブがついているのになんだか薄ら寒かった。
「そうっスね。そろそろお伝えしてもいいかもしれませんね」
ブラックの缶コーヒーを傾け、浦原があっさり頷く。
秘密主義な彼のことだから、きっと渋られると思ったので、この反応は少し予想外だ。
「じゃあ、ちょっとついて来て頂きましょっか。」
for promise#19
can't fear your own world-01
「重霊地には、霊脈というものがありまして。噛み砕いて言ってしまえば、そうですね…術式を展開するのに適した場所、と言えばいいっスかねぇ」
「……その霊脈がある場所が、高校の旧校舎に?」
「そっス。」
しばらく使われていない校舎だからだろう。
床の四隅には蜘蛛の巣が糸を引き、使い古された床はすっかり煤けていた。
「話は変わりますけど、名無しサンって『完現術者』って分かりますよね?」
「……織姫ちゃんや、茶渡くんのような能力者のことですよね?」
「その通り。」
その中には一護も含まれる。
彼が死神の力を失った時、確か完現術者達による騒動があった。
その件に関しては『あまり関わってはいけない』と遠ざけられていたので、詳細はあまり知らないのだが。
……一時期『毒ヶ峰リルカ』という少女を匿っていたのは、流石にひとつ屋根の下なので知っている。
「実は明言はしていなかったンっスけど、名無しサンも完現術者でした。」
「…………はい?」
「すみません、伏せる必要があったので。
……黒崎サンの力を奪うつもりだった完現術者――XCUTION。そんな中、名無しサンの力も彼らに知られてしまえば間違いなく狙われたでしょう。
霊圧遮断の指輪があったので黙っていれば安全圏っス。他にも事情はあったんっスけど…まぁ『関わらなくていい』と言った理由は、一番がそれっスかね」
空間の隷属させるこの力は、悪用すれば厄介なのだろう。
伏せられていた事に対して不服ではあるが、鵜呑みにしていた疑問はすんなりと納得できた。
「黒崎サンの完現術を狙っていた完現術者の半数以上は結果的に戦死。XCUTIONは壊滅しました。
しかしここ数ヶ月前に、XCUTIONが再び活動し始めちゃいまして。」
「残党が結成した、とか?」
「いえいえ。それが全然中身は違うんっス。名前だけが不自然に同じなだけで。」
「……どういうことです?」
「今度のXCUTIONは、新興宗教っス。」
「宗教?」
「えぇ。完現術者の集まりではなく、最近話題の新興宗教。そのはずなんっスけどねぇ…」
ガラリと浦原が開けたのは、多目的室。
だだっ広い部屋の四隅には使われていない長机が重ねられている。
物置と化しているその部屋の中央へ浦原が立ち、ひらひらと手招きされた。
「名無しサン。一応お窺いしますけど、縛道の詠唱破棄いけます?」
「?……えぇ、まぁ。」
「流石。じゃあ白打はお任せ下さい」
そう浦原が答えると、煤けた床に手を付いた。
地面に向かって、込められる霊圧。
水を打ったように静まり返っていた空気が、僅かに震えた。
「今、空座町には不自然なくらい『XCUTION』の信徒の方々が集まっていまして。
――ほら、早速来られましたよ。」
浦原が地面から手を離すと同時に、歪む空間。
空間の侵食……いや。異物を投入されるような違和感を感じ、名無しは居心地悪そうに眉をひそめた。
一部の空間がピクセルアートになったかのように、真っ二つに裂ける。
黒腔とは違う穴の開き方。
そこから這い出てきたのは、スーツを着込み、顔をガスマスクで覆った――
「……人間?」
「辛うじてっスけど。」
浦原の言っている意味が分からず、反射的に見上げた時だった。
振り上げられた警棒。
特殊な紋様が刻まれた鈍器を、威嚇のそれではなく明らかな殺意をもって振り下ろされる。
「っと、」
的確に腕を取り、一瞬にして組み伏せる浦原。
白衣の裾がふわりと揺れ、鮮やかな体捌きに『流石』と賞賛を送りたくなった。
言われた通りに縛道・ 鎖条鎖縛で縛り上げるが――
「まぁ、一人で打ち止めじゃないっスよねぇ」
「げ。」
空間を裂いて出てくる、同じスーツを纏った人間。
全員ガスマスクをつけている光景は、異様としか形容出来なかった。
「霊脈の異常を感知したンでしょうねぇ。まだまだ来るでしょうから、頑張りましょうね」
「そういうのは事前に説明してからにしてください!」