for promise
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新しい年になった。
するべき事はひとつ。
「じゃあ、挨拶に行ってきます。」
「名無しサン、本当に行っちゃうんっスかぁ~…」
「一応、私は現世に『駐屯』している身ですから。」
for promise#18
can't fear your own world-00
「ということで、明けましておめでとうございます。マユリさん」
「年始早々律儀だネ、全く。」
きっとこの人には元旦だとか三賀日だとか関係ないのだろう。
日付はただの納期の期日。目安。そんなところか。
名無しが持ち寄ったおせち料理をひょいひょい口に運びながら、マユリは片手間に資料を読み解いている。
阿近の計らいだろう。いつもは研究員で賑わっている技術開発局も今日は閑散としていた。
定期的に鳴る電子の機械音と、マユリが資料を捲る紙擦れの音。二人分の呼吸音。
「何を読んでいらっしゃるんですか?」
沈黙が居心地悪かったわけではないが、何となしに名無しはマユリへそっと尋ねた。
勿論、資料から少し目を離し、伊達巻を頬張った瞬間を見計らって・だ。
「新しい監視の『目』だヨ。鵯州に設計させたものが不備がないか確認しているのだが……いやはや、局員も私並に天才であれば気苦労は減るのだがネ。凡才の部下を持つと苦労するヨ」
別に見せても構わないと判断したのだろう。
コピーしていた予備の設計図を無造作に名無しへ寄越せば、やはり彼女は小さく首を傾げるばかりだった。
「資料を見ても私には分かりませんよ?もう…」
「だろうネ。」
クツクツと笑い、マユリは再び資料へ視線を落とす。
どうして十二番隊にスカウトされたのか。名無しは今でも不思議に思うばかりだ。
まぁ昔から縁のあった隊だから、歓迎してくれていることは一般隊士として冥利に尽きるのだが。
「でも監視なら映像局が一番お手の物じゃないんですか?」
「その映像局から手を切りたいから、十二番隊独自の物を造っているんだヨ」
…映像局と関わるとなにか不都合でもあるのだろうか。
聞いたら教えてくれるのかもしれないが、もしかしたら単純にマユリと映像局が不仲なのかもしれない。
サイケデリックな、我らの十二番隊隊長は残念ながら一般大衆から理解されにくい性格だ。
そこはそっとしておくとしよう。
――まぁ、要するに。
秘密裏に新たなインフラを設置しようとしている。
もしかしたら京楽は知っているのかもしれないが、殆どの護廷十三隊の隊士は知る由もないだろう。
「…それ、怒られません?」
「見つからなければいいのだヨ」
あぁ、ほらこういうことを言う。
相変わらず『自分ルール』を貫く、自由奔放な隊長を見て、名無しは新年早々苦笑いを浮かべるのであった。
***
さて。
京楽やマユリを始めとする面々に挨拶を済ませ、名無しはぶらりと繁華街を歩いていた。
新年だからだろう、所々店は閉まっていたがお目当ての和菓子屋はどうやら営業しているようだ。
「すみません、この大判焼きを六つと…あと金平糖ください。」
気の良さそうな店主に声を掛ければ、いい笑顔で紙袋を渡された。
ホカホカとまだ温かい大判焼きは、たっぷりと餡が入っているのだろう。見た目よりもずっしりとした重さに思わず頬が綻んだ。
金平糖は自分用のおやつだ。たまには気ままに歩きながら砂糖菓子を食べてもいいだろう。
星の欠片のような見た目の、色とりどりの小さな一粒。
コロリと口の中に頬張って、奥歯で噛み砕けばほんのり柚子の風味が口いっぱいに広がった。
なるほど。季節に合わせた味らしい。
橙色の金平糖は、蜜柑味だろうか。
大きな黒目を柔らかく細め、またひとつコロリと頬張った。
そんな様子を、遠目から眺めている人物が、ひとり。
「あれが浦原名無しか。」
灰色の髪に、色白の頬。
蛇のように鋭い目元からは、まるで物色するような視線を投げかけている男。
「時灘様!如何されましたか!」
「あぁ、彦禰。いや何、お前とよく似たモノを見ていただけさ」
『時灘』と呼ばれた男は、至極楽しそうに目元をとろりと蕩かせる。
まるでこれから行う彼の悪行へ、緩やかに想いを馳せるように。
するべき事はひとつ。
「じゃあ、挨拶に行ってきます。」
「名無しサン、本当に行っちゃうんっスかぁ~…」
「一応、私は現世に『駐屯』している身ですから。」
for promise#18
can't fear your own world-00
「ということで、明けましておめでとうございます。マユリさん」
「年始早々律儀だネ、全く。」
きっとこの人には元旦だとか三賀日だとか関係ないのだろう。
日付はただの納期の期日。目安。そんなところか。
名無しが持ち寄ったおせち料理をひょいひょい口に運びながら、マユリは片手間に資料を読み解いている。
阿近の計らいだろう。いつもは研究員で賑わっている技術開発局も今日は閑散としていた。
定期的に鳴る電子の機械音と、マユリが資料を捲る紙擦れの音。二人分の呼吸音。
「何を読んでいらっしゃるんですか?」
沈黙が居心地悪かったわけではないが、何となしに名無しはマユリへそっと尋ねた。
勿論、資料から少し目を離し、伊達巻を頬張った瞬間を見計らって・だ。
「新しい監視の『目』だヨ。鵯州に設計させたものが不備がないか確認しているのだが……いやはや、局員も私並に天才であれば気苦労は減るのだがネ。凡才の部下を持つと苦労するヨ」
別に見せても構わないと判断したのだろう。
コピーしていた予備の設計図を無造作に名無しへ寄越せば、やはり彼女は小さく首を傾げるばかりだった。
「資料を見ても私には分かりませんよ?もう…」
「だろうネ。」
クツクツと笑い、マユリは再び資料へ視線を落とす。
どうして十二番隊にスカウトされたのか。名無しは今でも不思議に思うばかりだ。
まぁ昔から縁のあった隊だから、歓迎してくれていることは一般隊士として冥利に尽きるのだが。
「でも監視なら映像局が一番お手の物じゃないんですか?」
「その映像局から手を切りたいから、十二番隊独自の物を造っているんだヨ」
…映像局と関わるとなにか不都合でもあるのだろうか。
聞いたら教えてくれるのかもしれないが、もしかしたら単純にマユリと映像局が不仲なのかもしれない。
サイケデリックな、我らの十二番隊隊長は残念ながら一般大衆から理解されにくい性格だ。
そこはそっとしておくとしよう。
――まぁ、要するに。
秘密裏に新たなインフラを設置しようとしている。
もしかしたら京楽は知っているのかもしれないが、殆どの護廷十三隊の隊士は知る由もないだろう。
「…それ、怒られません?」
「見つからなければいいのだヨ」
あぁ、ほらこういうことを言う。
相変わらず『自分ルール』を貫く、自由奔放な隊長を見て、名無しは新年早々苦笑いを浮かべるのであった。
***
さて。
京楽やマユリを始めとする面々に挨拶を済ませ、名無しはぶらりと繁華街を歩いていた。
新年だからだろう、所々店は閉まっていたがお目当ての和菓子屋はどうやら営業しているようだ。
「すみません、この大判焼きを六つと…あと金平糖ください。」
気の良さそうな店主に声を掛ければ、いい笑顔で紙袋を渡された。
ホカホカとまだ温かい大判焼きは、たっぷりと餡が入っているのだろう。見た目よりもずっしりとした重さに思わず頬が綻んだ。
金平糖は自分用のおやつだ。たまには気ままに歩きながら砂糖菓子を食べてもいいだろう。
星の欠片のような見た目の、色とりどりの小さな一粒。
コロリと口の中に頬張って、奥歯で噛み砕けばほんのり柚子の風味が口いっぱいに広がった。
なるほど。季節に合わせた味らしい。
橙色の金平糖は、蜜柑味だろうか。
大きな黒目を柔らかく細め、またひとつコロリと頬張った。
そんな様子を、遠目から眺めている人物が、ひとり。
「あれが浦原名無しか。」
灰色の髪に、色白の頬。
蛇のように鋭い目元からは、まるで物色するような視線を投げかけている男。
「時灘様!如何されましたか!」
「あぁ、彦禰。いや何、お前とよく似たモノを見ていただけさ」
『時灘』と呼ばれた男は、至極楽しそうに目元をとろりと蕩かせる。
まるでこれから行う彼の悪行へ、緩やかに想いを馳せるように。